自己分析や企業研究を進めてみても、「やりたいことがない」「志望企業が選べない」と悩む就活生もいるのでは?やりたいことが明確になっていない人向けに、企業探しのコツ、選考で「入社後にやりたいことは?」と聞かれたときの対処法を、採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。
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目次
選考を通して企業が知りたいのは、やりたいことがどれだけ具体的に思い描けているかよりも、学生の仕事選びの軸が自社とマッチしているかどうか。本人のやりたいことに対して、その企業でできる仕事や環境がなければ、入社しても辞めてしまうリスクを懸念して確認していることが考えられます。
就活の面接で「やりたいこと」を質問されたら、一般論ではなく、自分自身の話として、なぜやりたいのかを具体的な根拠と共に説明しましょう。自分のライフヒストリー(成育歴)や過去の経験、出会った人など、自分と関連した理由と一緒にやりたいことを語れるようにしておくことが大切です。やりたいことが特にないという場合は、「社会人としてどうありたいか」など、働く姿勢について語るとよいでしょう。
私は、多くのサービス事業を手掛ける御社での仕事を通して、多様な価値観が認められる社会をつくりたいと思っています。
個々人がイキイキと過ごせるようになることが、社会全体の活力につながると考えているからです。
この答え方では、「なぜ多様な価値観が重要だと思うのか?」という背景が語られていません。そのため、面接担当者からすると、なぜやりたいのか具体的な根拠を見つけることができず、「これは、学生が本当にやりたいことなのか?」と思われてしまう可能性も高いでしょう。
選考で「こんなことをやりたい」と話す学生さんの中には、自己分析や企業研究などを進めた結果、「商社に行きたい」「マーケティングがやりたい」のように、それらしいものを「やりたいこと」と思い込んでしまうケースも少なくありません。やりたいことを説明しようとしたときに、一般論に終始してしまい、自分自身の話に結び付かない場合は注意が必要です。もう一度立ち止まって、自分自身の体験を振り返ってみましょう。
私は、多くのサービス事業を手掛ける御社での仕事を通して、多様な価値観が認められる社会をつくりたいと思っています。
理由は、大学の学園祭のイベント企画の経験から、参加メンバーの多様な価値観を認め合うことで、より良い企画が実現できると実感したからです。
イベント内容を企画する際、私は学年問わずメンバー全員に意見を出してもらい、意見を否定することなく聞いた上で検討を進めるように提案しました。
その結果、お互いの興味や価値観を尊重しつつ、みんなが主体性を持って企画・検討、当日のイベント運営に取り組む姿を目の当たりにし、イベントも大盛況に終わりました。
この経験から、御社の事業を通じて、多様な価値観が認められる社会を実現したいと思っています。
自分のライフヒストリー(成育歴)や過去の経験、出会った人など、自分と関連した具体的を話が、やりたいことの根拠として挙げられているため、説得力があります。
就活の面接までに、その企業で具体的にやりたいことが見つけられなかった場合は、「その企業でどう働いていきたいか」「社会人としてどうありたいか」などを語れるようにしましょう。また、与えられた環境に対して柔軟に適応する姿勢をアピールするのもよいでしょう。例えば、「具体的にやりたいことはまだわかりません。ただ、私が役立てる範囲で、お客さまや社内のメンバーに対して貢献できる社会人になりたいと思っています」というような答え方をするのも一つの手です。
「やりたいこと」が見つからないという就活生の多くは、以下のようなことで悩むことが多いように思います。ここでは、それぞれに対する対処法を紹介していきます。
Will・Can・Mustとは、やりたいこと(Will)、自分のできること(Can)、入社後に求められること(Must)をそれぞれ洗い出す手法で、3つが一致している仕事が適職でベストだという考え方です。なりたいものがない場合には、WillとCanを分けて、まずはCanから書き出してみましょう。キャリア形成をCan→Must→Willの順で考えると、入社後にギャップなく活躍しやすいといわれています。
●ポイント
Canを考える際には、「自分には得意なこと、アピールできることが何もない」という先入観は捨てましょう。人間には絶対的な強みや弱みはありません。あるのは性格特徴だけです。そしてその性格特徴が、強みになるか、弱みになるかは、置かれた環境(入社後に求められること:Must)に左右されるからです。自分の性格特徴を生かすためにも、入社後にどんなことが求められるかを企業研究しましょう。
就業体験のあるインターンシップに参加し、その企業のリアルな業務にかかわることができれば、各職種の業務内容について身をもって知ることもできるでしょう。その職種の実際の業務を体験することで、自分の能力や適性がその業務にフィットしているかどうかを確認できます。
インターンシップについて詳しく知りたい人はこちら
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モチベーショングラフは、今までにあった出来事を振り返ってみて、モチベーションが上がったとき、下がったときをグラフ化して、そのときにあった出来事や当時の気持ちを書き出して、自己分析をする方法です。グラフにすると、ひと目で「自分はどんなときに楽しいと感じてきたのか」「何をしているときがつらかったのか」などを把握できるので、あなたが人生の中で大切にしていることが具体化されてくるでしょう。
●ポイント
気持ちや行動の理由を振り返る作業では、「当時は、ただ楽しそうだったから」くらいの理由だと思っても、なぜ楽しいと思ったのか、何があると楽しいのかなど、言葉にしてみると考えやすくなります。
やりたいことがない状態は就活をする上でマイナスにはなりません。ただ、数多くの中からどのように企業を探せばよいのか悩んでしまうかもしれません。どんな観点で見ていくとよいか、探し方のヒントを紹介します。
「やりたいことがなくて企業選びに悩む」という就活生にオススメしたいのは、就活サイトの検索ボックスに企業名や業界、職種ではなく、自分の趣味や興味のあることを表すワードを入れて企業検索をすることです。企業選び…と思うと気構えてしまいますが、最初の切り口は、自分がなんとなく好きなもの、身の回りにあるもので大丈夫。リクナビには「フリーワードから探す」という機能があるので、それを活用してみるのもよいでしょう。
例えば、「ワイン」に興味がある人は、検索ボックスに「ワイン」と入力してみましょう。
検索結果には、ワインの専門商社もあれば、ワイン関連商品のメーカー、ワイン情報を発信するメディアの運営企業など、さまざまな形でワインにまつわる企業が表示されます。
こうやって調べてみると、「ワインに興味があるから食品業界かな」と思って業界から企業を調べたときには出てこなかった企業に出会うことも。
「将棋」「マンガ」「哲学」などいろんなワードで検索して表示された検索結果を見ていくと、自分が関心のあるワードにまつわるビジネスを手掛ける企業やビジネスの全体像も見えてくるでしょう。これといって興味のあるものがない場合は、例えば「ボールペン」のように身の回りにある目についたものを検索ボックスに入れてみると、思いがけない企業を知ることができるかもしれません。
企業との出会い方は、どんな形でも問題ありません。すでに予約していた説明会と説明会の空き時間にちょうどよく説明会をしていたから、面白そうな社内サークルがあったから、憧れの先輩が選考を受けていたからなど、なんでもよいのです。
例えば、こんな企業との出会いもあるかもしれません。
自分が好きな「将棋」で検索してみたら、将棋サークルがある企業が出てきた。
↓
事業内容は将棋に直接かかわることはないが、事業内容を読んでみたら意外に面白そうだ。
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試しに会社説明会に行ってみたら、働くイメージが持て、社員の人柄にもひかれて志望度が上がった。
面接の際に、志望動機や「当社を知った理由は?」と聞かれたら、「将棋が好きで検索していたら、御社を見つけました。事業内容を調べていた際、~という点に興味を抱き、会社説明会で社員の方の仕事のエピソードに共感しました」というように、正直に伝えても嫌な顔をする人事はいないと思いますよ。
やりたいことが明確になっていないと、選考に応募する企業を選んだり、エントリーシートや面接で志望動機を答えたりできない、と思っている就活生の方も多いと思います。
けれど、やりたいことを明確にするのは難しいもの。社会人でさえ、何年か働く中で「もしかしたらこの仕事が『やりたいこと』なのかも」とようやくわかる程度。働く前から「これがやりたい」だなんて言えなくても当然です。
やりたいことがないのは、何にもとらわれず、チャンスが訪れたときにさっとつかめるオープンマインドの状態。全然悪いことではありません。
有名なキャリア理論の一つに、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「計画された偶発性理論」というものがあります。
これは「個人のキャリアの8割は偶発的に決定される」という考え方で、キャリアを予想して積み上げるのではなく、偶然訪れたチャンスをつかんで設計していこうというものです。
やりたいことを決めているより、やりたいことがない方が、良いキャリアを積める可能性の高いポジティブな状態と捉えて、就活に臨んでみてはどうでしょうか。
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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