働きやすい環境を求め「ホワイト企業で働きたい」と考えている人もいるでしょう。ホワイト企業とは具体的にはどういった企業で、どのような特徴があり、どう見極めると良いのかを、株式会社人材研究所の曽和利光さんにうかがいました。本当の意味でのホワイト企業を探すならば、ランキング・認定・福利厚生だけに注目してはいけない理由も解説しています。
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就活をしていると、働きやすい会社、社員のための制度が整っている会社で働きたいと考える学生は少なくないでしょう。そういった希望をひとまとめにして、「ホワイト企業で働きたい」という言葉で表現するケースも少なくありません。
しかし、この「ホワイト企業」という言葉は、実は曖昧なもの。この制度や特徴があればホワイト企業だ、と言えるような明確な状態や定義はありません。人によって働きやすい環境や、重視する社内制度は異なるからです。
それでも「ホワイト企業とは何か」を考えるとしたら、以下の3つの考え方ができるでしょう。
ホワイト企業について考える前に、逆説的にブラック企業について考えてみましょう。働きやすい環境が人によってさまざまであるように、働きづらい環境も人によってさまざまです。
例えば、残業時間が長く、求められる仕事の質が高くてハードワークが求められる企業があったとしましょう。そのことを知らないままに入社してしまえばそれはブラックな企業かもしれませんが、企業が事前に明確かつ適切に情報を開示し、学生も覚悟の上で、それ以外の部分に強い魅力を感じて入社をしていれば、同じ状況であっても「自分たちはストイックに仕事をしているだけだ」と捉えるかもしれません。
つまり、自分にとっての働きやすい企業としてホワイト企業を探す場合には、物理的な雇用契約の条件だけではなく、「こういうつもりで入社した」という心理的な契約も含めて、働く上での良い面・悪い面の両方の仕事情報をきちんと開示している企業であることが大切です。近年では、こうした企業としては開示しにくい情報も含めて開示する取り組みをリアリスティックジョブプレビュー(現実的な仕事情報の事前開示)と言い、重視されるようになってきています。
ブラック企業ではないという意味では、このリアリスティックジョブプレビューを行い、うそやごまかしなく仕事情報を明確かつ適切に開示して従業員との合意が取れている企業は、ある意味でホワイト企業とも言えるでしょう。
従業員の心身の健康を大切にしている企業も、ホワイト企業と言えるでしょう。例えば、従業員が身体的・精神的・社会的に満たされている状態になるよう環境や制度を整えていく「ウェルビーイング経営」をしている企業や、従業員の健康を重要な経営指標と捉え、健康の管理と増進に積極的に取り組む「健康経営」をしている企業などがこれに当たります。
これらの考え方は、福利厚生や労働環境の整備や充実など、わかりやすい形で表れているケースが多いため、「ホワイト企業」と聞くと、これらの特徴をパッと思いつく人も多いのではないでしょうか。国や行政が定めているような〇〇認定を取得しているような企業も、ここに当てはまります。
一方で、福利厚生や制度さえ充実していれば、本当に働きやすいのか?というと、一概には言えません。働く上では、どんな組織で、どんな仕事をするのか、そこに自分なりのやりがいを感じられるかといったことも大切だからです。制度や福利厚生ばかり注目してしまい、肝心の仕事内容が自分には合っていなかった…というミスマッチが起きないように注意しましょう。
仕事をする上では、どんな組織で、どんな仕事をするのか、そこに自分なりのやりがいを感じられるかといったことも大切だと前述しました。ホワイト企業の場合は、従業員が組織に対しても、仕事に対しても満足していて、高い貢献意欲を持っているケースが多いと言えるでしょう。これを、人事用語では「エンゲージメントが高い状態」と言います。
エンゲージメントには2種類あるといわれており、1つが仕事に対して感じるワークエンゲージメントです。ワークエンゲージメントは、「仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)」「仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)」「仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)」の3つがそろった状態です。エンゲージメントの2つめは従業員と企業との間の関係性を表すもので、従業員エンゲージメントと言います。これは仲間や組織への貢献意欲に近く、自発的に「会社に貢献したい」と思う意欲のことを指します。
会社説明会やインターンシップ等のキャリア形成支援プログラム、OB・OG訪問などで先輩社員と話す機会があれば、これらを感じられるかどうかをチェックしてみるのも良いでしょう。
なお、エンゲージメントが高まるのには順番があり、まずワークエンゲージメントが高まり、その後に従業員エンゲージメントが高まるといわれています。このことから考えても、自分にとってのホワイト企業を探す場合に仕事内容が大事であることがわかるでしょう。
世間一般的には、ホワイト企業というと、前述した特徴2を満たす、従業員の心身の健康を大切にしている企業をイメージしがちです。就活でも、福利厚生が整った企業のランキングや、国や行政が定めた各種認定などを気にしてしまうケースは多いでしょう。
しかし、労働環境が整っていて残業時間が少なく年収が高い仕事であっても、「自分で考える仕事がまったくなく、スキルが身につかなさそう」「このままこの仕事を続けていて大丈夫かな」など不安を感じて早期退職をしてしまう若い社員は少なくありません。働き方改革関連法によって時間外労働の上限規制が導入されたこともあり、新卒で入社した従業員の労働時間は減少しました。労働環境だけで考えると働きやすくなっているはずなのに、早期退職者が増えているという近年の傾向もあります。「ただ従業員に優しいだけの企業」で働くことが、本当に自分にとって良いことなのかは考え直してみる必要があるでしょう。
特に国や行政による認定は、ある特定の要件に特化しているケースも多いので、自分にとってその指標が重要かどうかはまた別です。福利厚生が整っている企業のランキングも同様に、その福利厚生が自分にとって必要なものかどうかまでは判断できないと言えるでしょう。
本当の意味で自分にとって働きやすく、働きがいのある企業をホワイト企業と定めるのであれば、前述した特徴3(従業員が仕事と組織に対して高い貢献意欲を持っている)のように、自分も仕事と組織に対して高い貢献意欲を持てそうかどうかも大切にしてみてください。
気になる企業がホワイトかどうかを見極めるためのポイントを解説します。
企業として開示しにくい情報も含めて開示しているかを確認してみましょう。例えば、以下のような情報を開示している企業は、リアリスティックジョブプレビュー(現実的な仕事情報の事前開示)ができていると言えるでしょう。
早期退職率は、企業からすると働くに当たってきちんと合意形成できたと思っていたのに、実はできなかった人の割合でもあります。これらの割合が高い場合には、もしかすると、事前の情報開示が不十分だったためにギャップが生まれてしまっていたのかもしれないと推測することもできます。
ウェルビーイング経営や健康経営をしている企業などでは、環境や制度を整えていることが多いと言えます。企業によっては、国や行政による認定を取得しているケースもあるので参考にしてみるのも良いでしょう。
自分にとって働きがいがある仕事なのか、この組織に貢献したいと思えるような社風や仲間なのかを確認しましょう。ここでは、「自分にとってどうなのか」というポイントが大切になります。
自分にとって働きやすく、働きがいのある企業をホワイト企業だと定めた場合、そういった企業を探すためには、まず自己分析が欠かせません。
自分は何を大切にしていて、どんな環境や仲間・組織の中で力を発揮することができるのか、どんなことにやりがいを感じて、どんな力を身につけていきたいのかを、整理することから始めましょう。
その上で、それらを満たすにはどういった企業での仕事があるかを探していきます。気になる企業を見つけたら、企業研究や職種研究をしながら「仕事にやる気を感じ、組織や仲間に貢献したいと思えるのか」を考えてみましょう。自分で調べただけではわからないこと、実態が見えないこともあるはずなので、なるべく機会を見つけてOB・OG訪問をすることをオススメします。
OB・OG訪問では、どんな属性でどんな価値観の人が集まった組織なのかをまず確認し、自分の価値観とマッチするのかを考えましょう。価値観を確認するためには、なぜその企業で働こうと思ったのか、どんなことにやりがいを感じているのかなどを確認すると良いでしょう。また、そこで働く先輩社員が、自社のことをどう感じているのかも確認すると良いでしょう。
もしも話を聞いた先輩社員が自分に似た価値観を持っていた場合には、その人が仕事にやりがいを感じている理由/感じられない理由、組織への貢献意欲を持っている理由/持てない理由は、入社後に自分も同じように感じることかもしれません。
自分にとってのホワイト企業を探すには、各種認定やランキングばかりに注目してはいけないと前述しました。一方で、ある特定の要件を満たしている企業を探す場面においては、認定制度やランキングは有効とも言えるでしょう。
参考までに、いくつかの認定制度を紹介しておきます。
【一般財団法人日本次世代企業普及機構(通称:ホワイト財団)認定】
【厚生労働省認定】
【厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」記載】
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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