企業から内定を得ると、「内定承諾書」の提出を求められるのが一般的です。この内定承諾書は、そもそもどんな意味を持つ書類なのでしょうか。「どこを確認すればいいの?」「サインして提出するとどうなる?」「内定承諾書にサインしたら、内定辞退はできなくなるの?」といった疑問に答え、返送する際のマナーも紹介します。
目次
内定に関する書類は、「内定承諾書」「内定通知書」「採用通知書」などがあり、普段から馴染みのあるものではないので、どんな書類なのか、またどう違うのかわからないという人も多いでしょう。ここでは、そんな疑問について解説します。
内定を得ると、通常、内定先企業から内定を書面で知らせる「内定通知書」あるいは「採用通知書」が送られてきます。これらは企業が学生に交付するものです。一方、学生側が企業に提出するのが「内定承諾書」。これは、内定を得た学生が「企業に対して内定を承諾し、入社することを誓約する」書類です。一般的には、企業から内定通知書が送付される際に、内定承諾書が同封されているので、学生側はそれに署名・捺印して返送することになります。
「内定を承諾し、入社することを誓約」した場合は、学生に対しても法的拘束力が生じます。とは言え、民法では労働契約は解約の申し出から2週間で解約できると定められているので、実質的には学生への強い拘束力はないと言えます。
ただし、入社の意思が固まっていないのに内定承諾書を出すべきではありません。入社する意思を書面で伝えれば、企業側は学生が入社すると判断し、受け入れに向けた準備を進めていくと考えられます。内定承諾書を出したあとで内定を辞退すれば、企業の担当者に迷惑をかけてしまうことになるでしょう。原則として、複数の企業に内定承諾書を提出するのは避けるようにしましょう。
続いて、内定承諾書が届いてからの流れを紹介します。
内定通知の書類が届く際は、以下のものが同封されていることが一般的です。
・内定通知書
・内定承諾書
・条件提示書
内定承諾書には通常、「入社することを承諾します」「正当な理由なく入社を拒否しません」といった文言のほか、内定取り消し事由が書かれています。一般的には、
(1)内定者が単位取得不足などで大学を卒業できなかった場合
(2)内定者が病気やケガなどの健康上の理由により働けない状態になった場合
(3)内定者に犯罪行為があった場合
(4)会社の業績悪化など経営上やむを得ない場合
など、内定が取り消される条件が記載されており、それに対して「異議申し立てをしません」といった文言が書かれています。
内定承諾書が送られてきたときは、同封されている条件提示書などの書類の中に労働条件が記載されているのが一般的です。労働時間、業務内容、賃金などの処遇について、就活中に聞いていた内容と相違ないかどうかを確認しましょう。
書かれていた内容に同意する場合は、内定承諾書に署名・捺印し、返送期日までに届くように送付します。内定の意思が固まっている場合は、期日にかかわらずできるだけ早く返送したほうが、企業の担当者はその後の手続を迅速に進めやすくなります。
内定承諾書を返送する際は「添え状(送付状、カバーレター)」をつけて送ります。
「添え状」とは、書類を送付する際の表紙の役目を果たすもので、ビジネスシーンで一般的に使われる文書の一つです。「誰が」「何を」「何のために」送ったのかが相手にひと目でわかるよう、添え状には「日付」「宛名」「自分の名前と連絡先」「件名」「本文」「同封書類」を記載します。
内定承諾書を企業に返送する際の添え状の書き方を紹介します。
20XX年◯月◯日
株式会社リクナビ商事
人事部 人事課
◯◯□□様
◯◯大学□□学部◯◯学科
りくなび太郎
携帯番号:000-0000-0000
メール:tarou@××××.ac.jp
内定承諾書送付の件
拝啓
時下、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。このたびは内定通知書をご送付いただきましてありがとうございました。つきましては、内定承諾書をお送り致しますのでご査収ください。
貴社に内定をいただくことができ、大変うれしく思っております。今後とも、ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
敬具
記
・内定承諾書 1通
以上
・提出日の日付を右上に
・宛名は左上に入れる
・自分の名前と連絡先は、日付の下に書く
・一目でわかるように件名は中心に入れる
・本文は目的がわかるように簡潔に
・同封書類を箇条書きで記入する
本文には、入社に向けた前向きな気持をひとこと添えても良いでしょう。ただしあくまでも添え状なので、長々と入社の気持ちを伝えるのではなく、端的にまとめて入れるようにしましょう。
添え状(送付状)の書き方について、詳しく知りたい人はこちらの記事がオススメ↓
企業が内定を出すと、その時点で企業と学生の間に労働契約が成立します。とはいえ、前述した通り民法上は、労働契約は労働者側から入社日から2週間前に申し出れば解約できると定められているので、実質的には学生への強い拘束力はなく、内定承諾書を提出したあとであっても内定辞退は可能です。
万が一内定承諾書を提出したあとにやむを得ない事情で辞退することになった場合は、社会人としてのマナーを考えて対応することが大切。気を付けておきたいポイントを紹介します。
重要なのは、できるだけすみやかに企業に内定辞退の連絡をすること。内定承諾書の返送があった場合、企業は入社に向けての準備を進めていることでしょう。直接お詫びを伝えるためにも、電話で担当者に直接、話すようにしましょう。メールで簡単にすませるのはオススメできません。
また電話だけだと記録に残りませんので、電話の前、もしくは後にメールを送り、履歴を残しておくと良いでしょう。
内定辞退の電話をする際は、落ち着いて話せるよう、担当者が忙しい時間を避けてかけましょう。一般的な企業であれば、始業1時間後〜お昼休み前、または14〜17時ごろが目安です。
担当者と電話がつながったら、内定を辞退することを簡潔に伝え、お詫びしましょう。具体的には、「内定を辞退させていただきたく、ご連絡差し上げました。申し訳ございません」などと伝えます。理由を細く説明する必要はありませんが、先方から「理由を聞かせていただけますか」などと尋ねられた場合は、「別の会社の内定をお受けすることになりました」「いろいろと考えた結果、私のやりたいことができるのは別の会社だと思いました」といったように率直に答えて構いません。
電話をかけたタイミングで担当者が不在だった場合、伝言ですませるのは避け、「◯◯様は何時頃お戻りのご予定でしょうか」と尋ねて改めてかけなおします。
ただし、担当者が出張などで不在にしていてその日のうちに話す機会が得られそうにない場合は、内定辞退の意思を早く伝えることを優先したほうがいいでしょう。「実は内定を辞退させていただきたくご連絡させていただいたのですが、◯◯様にお伝えいただける方はいらっしゃいますか」などと尋ね、代わりの人に内定を辞退する旨を伝えましょう。
内々定または内定を得た企業について、業界の情報をチェックしてみよう。
また、後から担当者から問い合わせの連絡が来る可能性もありますので、言づけた日時、先方のお名前をメモしておくと良いと思います。
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【監修】社会保険労務士法人大槻経営労務管理事務所 武澤健太郎さん
社会保険労務士法人大槻経営労務管理事務所 役員。専門は、個別労使紛争を含む労務相談。各種講師依頼も多く、臨検セミナーなど多数行っている著書に『就業規則のつくり方・見直し方』(共著)がある。
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【監修】峯 陽子さん
約20年の専業主婦の後、人材育成会社で企業の社内研修講師などを経て、独立。企業の会社研修の講師のほか、女性の社会復帰支援、学生へのキャリア育成セミナー・マナー講座なども担当。
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