サービス業界とは、教育、福祉・介護、旅行・ホテル、レジャー、外食、人材、不動産など、無形のサービスを販売・提供することを主たる事業分野としている業界。
インフラ業界とは、鉄道、航空、空港、電力、ガス会社などのように、社会の基盤となる、私たちの生活に密着したサービス・仕組みを提供することが主たる事業の業界のことだ。
サービス・インフラ業界には多くの分野・企業が含まれており、そのビジネスモデルも多彩だ。共通しているのは、「持っている経営資源(モノやヒト)を生かして、顧客に価値のあるサービス(無形のモノ)を提供することで収益を上げる」という点である。
例えば、教育業界では学習塾や進学予備校が持っている経営資源のうち、教室などの設備や教材が「モノ」に相当する。「ヒト」は講師などだ。これらを生かして、授業というサービスを提供し、受講料という対価を得るというビジネスモデルだ。
インフラ業界の場合も、鉄道会社の鉄道事業で考えてみると、「モノ」は路線や駅など。「ヒト」は運転士や整備士などで、これらの経営資源を生かして電車を動かして人を運ぶというサービスを提供し、乗客から対価として運賃を得ることで、収益を上げている。
サービス業は、製品など具体的なモノを販売する事業と異なり、サービスを提供したその場で消費される。刻々と変化する消費者のニーズに素早く対応するために、常にアンテナを張り、消費者が何を求めているのか探り続ける姿勢が企業には求められる。各社は、ITをより積極的に活用して消費者一人ひとりの購買履歴を収集・分析するなどして、マーケティングに力を入れる動きを見せている。
また、少子高齢化が進む中で、人手不足を補うことが重要な課題の一つになっている。各社は産性やサービス水準の向上に関する取り組みを進めているが、その中でロボットやAI、IoTなどの活用を通じ、省力化や効率化を図る動きがより本格化していきそうだ。
インフラ業界は、環境意識の高まりを受け、エネルギーの脱炭素化に向けてどう取り組むかという課題や、ニーズが高まっている再生可能エネルギーへの取り組みが求められている。
SDGs(※1)の17の目標のうち、7番目にうたわれているのが、「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」。実現には再生可能エネルギー(※2)の研究・開発、実用化が必須だ。
再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みは電力、ガス会社が研究を続けているだけでなく、洋上風力発電の普及に向けて、2018年には「再エネ海域利用法」が成立するなど、法整備の観点からも新たなエネルギー供給に向けた取り組みが進められている。
また企業の社会的責任として、RE100宣言(後述)をするなど、省エネの取り組みとして電力使用量を減らすとともに、太陽光パネルの設置や、外部調達の電力を再生可能エネルギーに転換することで、二酸化炭素排出量削減を目指す企業はますます増えるだろう。
なお、インフラ業界にとっても、少子高齢化とそれに伴う人口減少は大きな課題だ。インフラの利用者が減少していく中で、どのように収益を上げ、インフラ提供を維持していくかが問われている。
(※1)Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標。2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年をまでの達成を目指すために掲げた17の目標のことを指す。
(※2)太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(食品廃棄物や家畜のふん尿といった「生物由来の有機物」)などを使って作られたエネルギーのこと。
日本政府観光局によると、2019年の訪日外国人旅行者数は約3188万人(推計値)。政府は、2030年には訪日外国人旅行者数を6000万人にまで増やす目標を立て重視しており、長期的にインバウンド(訪日外国人旅行者)に関連したビジネスの重要度が高まっていくとの見方がある。サービス業界ではレジャー、ホテル、旅行業界、インフラ業界では航空・空港、鉄道業界にとっては大きな影響があるトピックとして、注目しておきたい。
インバウンドはすでに地方にも広がりつつあるが、2019年はラグビーワールドカップにより、多くの外国人が日本を訪問・滞在した。今後は、リピーターの訪問先として地方でのビジネスチャンスが拡大していく期待されている。観光庁が取り組んでいる「テーマ別観光による地方誘客事業」のように、「食」「建築物」「アニメ」などの観光資源を活用して全国各地を訪れてもらうための取り組みが広がりそうだ。
また、インバウンド拡大に向け、国土交通省は地方空港の国際線着陸料の軽減措置を取り、LCC(Low-Cost Carrierの略、格安航空会社)の海外から地方への乗り入れを後押ししている。
一方で、2020年に入って、新型コロナウイルスの世界的な流行があり、日本を訪れる外国人旅行者の減少も懸念される。また、新型コロナウイルスの影響で、東京オリンピック・パラリンピックの開催も2021年に延期となった。近年インバウンド関連ビジネスは拡大が続いてきたが、市場が縮小するリスクについても、注意を払っていく必要がある。
国立社会保障・人口問題研究所によると、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は2019年9月現在で28.4%。2025年には30.0%となる見込みだ。介護や食事に関するサービスには、異業種からの参入も多く、今後より多くのビジネスアイデアが生まれ、新サービスが開発されていくだろう。
加えて、高齢者を意識した旅行プランや、見守りサービス、在宅配食サービス、婚活支援など、シニア向けサービスは確実に増えていくだろう。
少子高齢化によるもう1つの側面が、労働力人口(15歳以上で、労働する能力と意思を持つ者の数)の減少だ。外国人労働者の受け入れ・活用でサービスを維持・向上させていくことも考えなくてはならなくなるだろう。もう一方では、サービスロボットによる省力化や無人化が進むと考えられる。無人レジや、清掃ロボット、フロントの自動チェックイン・チェックアウトなど、接客、調理、清掃などさまざまな分野で、ロボット化やAI、IoTなどの技術が利用されていく。
鉄道業界は、これまで輸送サービスによる売り上げと沿線開発による不動産利益などを中心とする収益スタイルを築き上げてきた。しかし、少子高齢化で通勤・通学での鉄道の利用者数は減り、働き方改革でテレワークなどが進むと、通勤というスタイルそのものが変わる可能性もある。さらに、自動車の自動運転技術の高まりなどにより、人々の鉄道やバスなどを利用する機会の減少や、駅という場所の魅力・価値が相対的に下がることも懸念される。
こうした状況を踏まえ、駅の新たな魅力の創出や、鉄道事業にこだわらない地元を活性化するビジネスや、地域に住む人に求められる総合的なサービスを提供しようとする意識が高まっている。
例えば、駅の敷地内を活用したスーパーや書店、宅配便の取り次ぎサービスなどの「駅ナカ」ビジネスの強化や、ハウスクリーニングサービス、駅で預けて郊外の保育園へ送迎してもらえる送迎保育ステーションなど、沿線開発で培ってきた経営資源を生かしつつ、駅に限定しない多角的な事業運営が進む。
RE100とは、再生可能エネルギーだけで自分たちの事業を行おうと目標を掲げる企業が加盟するイニシアチブ。世界的な課題になっている環境問題への取り組みとして、世界的な大企業をはじめとする211社が加盟(2019年12月現在)。日本でも28社が加盟し、具体的な期限と目標達成率を提示してRE100 を宣言している。
店舗に来た客に対して、最適なサービスを提供する。最近では、外国語での対応や高度な提案力を求められるケースが増えている。
店舗のリーダーとして、店舗運営や人材の管理・育成などを担当。店舗に合った経営方針を立て、実行することが必要だ。
複数の店舗を担当し、店長に指示やアドバイスなどを行う。自社の店舗だけでなく、傘下のフランチャイズ店舗を管理することも。
人材サービスやホテル・レジャー業界などで、企業からニーズを聞き出し、最適なサービスを提案する役割。
さまざまな調査データを集め、市場の動きをキャッチする。現在のサービスを評価したり、新サービスを開発したりする際には欠かせない。
駅や線路、空港、発電所、送電設備、ガスタンクなどの施設を管理する。
車両や機体などの保守・整備・点検および整備スケジュールの管理を行う。いずれも小さな変化に細心の注意を払い、故障を未然に防ぎ、安全な輸送を実現するための仕事だ。
必要な資材や設備を必要量発注し、適切なタイミングと価格で購入する。仕入れ先の開拓や金額交渉なども行う。事業コストを左右する仕事だ。事業内容によって、日常的な消耗品から特殊部品や車両までその範囲は広い。
電車の運行管理では、電車が遅れずにダイヤに基づいて駅間を移動できるように、状況把握をして指示を出す。飛行機の運航管理では、気象情報や機体の状態、貨物の重量などの情報に基づいて飛行プランを作成する。
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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※記事制作時の業界状況を基にしています
志望業界や志望企業を絞り込んだり、志望動機をまとめたりするうえで、業界や業種への理解を深めるために「
業界ナビでは、各業界の仕組みや現状など、業界研究に役立つ情報をわかりやすく解説しています。業界の平均
教育業界には、幼稚園、小学校、中学校、高等学校などの教育機関のほか、就学期の子どもを対象とした学習塾・予備校などの学習支援機関、社会人を対象にした語学・資格スクールやカルチャースクール、企業向けの社員研修を扱う企業など、幅広い企業がある。
高齢者や障がい者など日常生活に何らかの支援を必要としている人に対して、さまざまな形でサービスを提供するのが「福祉・介護」業界だ。広義には児童保育も含まれる。
ここでは、公社とは公益社団法人や公益財団法人など、私的な利益を追求するのではなく、公(おおやけ)、つまり社会のために存在している企業、または団体を指す。かつて中央官庁が担当していた事業のうち、一定の事務・事業を分離し、業務の質の向上や活性化などを狙って設立された独立行政法人も公社の一つと言える。
人材サービス業は、顧客企業のニーズに応じて人材を派遣したり、紹介・斡旋したりする事業だ。ビジネスの変化スピードが高まる中で、「新たな事業部門に適した人材を集めたい」「業務拡大に伴い早急に人員を確保したい」「勤怠管理を丸ごと委託したい」など顧客企業のニーズも多様化し、需要も高まっている。
鉄道会社は、人やモノを運ぶ移動手段としての鉄道を維持・運行している企業だ。また、多くの人々が集まる「駅」を基点とし、不動産、小売業、ホテル、レジャー施設といった事業を運営しているところもある。
目次航空・空港業界とは航空・空港業界の仕組み航空・空港業界にかかわる職種航空・空港業界の現状航空・空
レジャー・アミューズメント・パチンコ業界は、テーマパークや遊園地、動物園や水族館、ゲームセンター、カラオケ、パチンコホールなどの運営を通じて娯楽を提供している。
ホテル業界は利用者に対し、宿泊するための部屋や、ホテル内のレストランや結婚式場での各種サービスを提供している。ホテルや旅館の客室は、下図のように、自社サイトによる直接販売と、旅行会社・旅行代理店や旅行予約サイトなどを通じた委託販売によって消費者に提供される。近年は、インターネットからの予約が主流になりつつある。また、旅行予約サイトなどでは、ホテルの予約だけでなく、鉄道や飛行機の旅行券も併せて「セット予約」できる場合も多く、消費者の利用は増えている。
一般的に旅行業界とは、旅行者のための移動手段や宿泊施設手配、パッケージ旅行のプラン作成や販売などの事業に携わる者を指す。法律上、旅行業に従事する「旅行会社」と旅行業者代理業を行う「旅行代理店」の2つに分類される。
店舗に行って食事をすることを「外食」と呼ぶのに対し、弁当や総菜など、家庭外で調理された食品を持ち帰って自宅で食べることを「中食(なかしょく)」と呼ぶ。フードサービス業界は、レストラン、ファストフード店、喫茶店、居酒屋などの「外食」を手がける企業と、いわゆる「デパ地下」で弁当や総菜などを販売して「中食」に携わる企業とに大きく分かれている。
不動産業界とは、土地や建物などにかかわる業界のこと。商業施設、ビル、マンション、リゾート施設などを開発するデベロッパー(開発業者)、注文住宅や、建売住宅などを手がけるハウスメーカー、物件の売買・賃貸を仲介する不動産仲介業者なども、不動産業の重要な役割を担っている。
※1 2024年3月6日時点のリクナビ2024の掲載情報に基づいた各企業直近集計データを元に算出