
メーカー業界とは「もの(製品)」を生産する企業群のことで、製造業とも呼ばれています。日本のGDP(国内総生産)の2割を占めるメーカー業界の特徴や、商社との違い、主な職種や今後の業界動向など、就活準備に役立つ情報をまとめました。
メーカー業界とは
メーカー業界は、原材料や部品、製品などをつくり出し、消費者に届けている業界です。製造業とも呼ばれているこの業界は日本のGDPの2割を占めており、優れたものづくりが日本の産業や文化の発展を支えてきました。
メーカー業界の製造現場には、大きく分けて国内拠点と海外拠点があります。かつては国内にマザー工場(※)や研究開発拠点、海外に量産拠点を置く傾向にありましたが、近年は円安や海外人件費の上昇などの理由から、国内生産に回帰する動きも見られます。海外拠点においても単なる量産ではなく、現地市場に合わせた企画やカスタマイズを行うケースが増えているため、今まで以上に国内外の連携が求められる業界と言えるでしょう。
※国内外に展開する複数の工場を統括し、品質管理や人材育成のモデルとなる中核拠点
メーカーと商社の違い
メーカーと商社はどちらも製品にかかわる仕事ですが、メーカーは「自社で製品をつくり出す側」、商社は「幅広い品物や技術の中から、顧客のニーズに合うものを選んで届ける側」であるところが大きな違いです。
なお、メーカー業界の採用面接において、「なぜ商社ではなくメーカーで働きたいのか」と、比較して問われることもあります。「ものづくりを行う側として価値を生み出したい」のか、「幅広い商品を組み合わせて価値を届けたい」のかを考え、志望動機に反映しておくと良いでしょう。
メーカー業界の分類と主な企業
手がけている工程によって、メーカーは「素材メーカー」「部品メーカー」「加工・組立メーカー」「一貫型メーカー」の4つに分類することができます。それぞれの特徴をまとめました。
素材メーカー(上流工程)
素材メーカーは、化学素材や樹脂、ゴム、鉄鋼、非鉄金属、紙、ガラスといった、製品のもととなる素材をつくっているメーカーです。新しい素材の開発研究も担っており、さまざまな産業の発展を支えています。
主な企業としては、以下が挙げられます。
- 日本製鉄株式会社
- 東レ株式会社
- 富士フイルムホールディングス株式会社
部品メーカー(中流工程)
他社メーカーで生産された素材をもとに、さまざまな部品を製造します。エンジン・ブレーキ・ボディーなどをつくる自動車部品メーカーや、半導体・モーター・コンデンサーなどをつくる電子部品メーカー、シリンダーやポンプなどをつくる機械部品メーカーなどが有名です。
主な企業としては、以下が挙げられます。
- 株式会社デンソー
- TDK株式会社
加工・組立メーカー(下流工程)
加工された部品をもとに、最終的な製品の形に組み立てるメーカーです。自動車や家電、産業機械、精密機器などが代表例で、消費者向け製品を手がける企業もあれば、企業向け(BtoB)の完成品を手がける企業もあります。
主な企業としては、以下が挙げられます。
- トヨタ自動車株式会社
- パナソニック株式会社
- 株式会社日立製作所
一貫型メーカー(上流~下流工程)
原料(素材)の加工から製品化までを、自社グループだけで一貫して行うメーカーです。化粧品メーカーや医薬品メーカーなどが代表的と言えます。
主な企業としては、以下が挙げられます。
- 武田薬品工業株式会社
- 株式会社資生堂
- 株式会社コーセー
BtoBメーカーとBtoCメーカーの違い
メーカーは製品を販売する相手に応じて、BtoB型とBtoC型に分けることができます。BtoB(Business to Business)型は企業向けに製品をつくるメーカー、BtoC(Business to Consumer)型は一般消費者向けに製品をつくるメーカーです。
BtoBメーカーは、ものづくりを通して顧客企業の事業活動を支えているところが特徴です。最終的な製品としては表に名前が出ないこともありますが、顧客企業の課題やものづくりに向き合うやりがいがあります。
一方、BtoCメーカーは食品や化粧品、自動車、家電など、消費者が直接手に取る製品をメインに扱うメーカーです。商品の売れ行きや口コミなどから仕事の手応えを感じやすいほか、流行やライフスタイルの変化に合わせて商品を改良したり、ブランドの見せ方を工夫したりする面白さもあります。自分がどのような相手に価値を届けたいのかを考えながら、志望先のメーカーを検討してみると良いでしょう。
メーカー業界の主な職種
メーカー業界には、製品の販路を広げる営業や、製品を安定して製造するための生産管理、原材料を確保する資材調達といった、さまざまな職種があります。メーカー業界の主な職種をまとめました。
営業
顧客企業に対して自社製品を提案し、販売につなげるポジションです。単に製品を売るだけでなく、顧客のニーズに応じて別の製品を提案したり、新しい流通ルートを開拓したりすることもあります。
生産管理
製品の需要を予測した上で、製品の生産管理を行うポジションです。近年はAIの導入により、生産量の最適化や設備メンテナンスの効率化もよりスムーズにできるようになっています。
商品企画
市場のニーズを調査・分析した上で、新製品の企画や、既存品の改良を提案するポジションです。BtoBメーカーでは顧客企業の課題や技術動向、BtoCメーカーでは消費者のニーズや購買行動を読み解く力が求められます。
研究開発
新製品の製造や既存品の改良に向けて、日々さまざまな研究開発を行う職種です。素材メーカーや自社生産・加工メーカーの場合は、素材や技術などの基礎研究も行われます。昨今はオープンイノベーションに力を入れる企業も多いことから、研究に必要な専門性に加えて、社外の関係者と連携していく協調性も求められる傾向があります。
品質管理
完成した製品の品質をチェックし、必要に応じて改善するポジションです。単に不良品を見つけるだけでなく、再発防止に向けて適切な製造工程をつくることも大切な業務の一つです。
資材調達
製品づくりに必要な原材料や部品を、国内外から調達するポジションです。価格だけでなく、納期や供給リスクなどを踏まえた上で調達先を選びます。サプライチェーンリスクを軽減するため、特定の地域や企業に依存し過ぎない体制づくりも求められます。
メーカー業界の将来性と課題
メーカー業界は日本の基幹産業の一つであり、今後も多くの企業活動にとって欠かせない業界です。一方で、技術革新や国際競争など、対応すべき課題も多くあります。
具体的な課題としては、以下が挙げられます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化への対応
近年は、工場の自動化やAIの活用が進み、製造現場を含めた幅広い業務でデジタル技術が使われるようになっています。一方で、国内の製造業では、現場の工夫や熟練した技術で生産を支えてきた企業も少なくありません。そのため、熟練技術をIT活用などで継承することに加え、デジタル技術ならではの業務効率化を実現するなど、DX化を推進する余地が大きいと言われており、今後の改善が求められています。
脱炭素に向けた対応
日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。製造業の各企業にも二酸化炭素などの排出削減が求められていることから、今後はよりエコな製造プロセスの確立と、企業としての競争力を両立していくことが求められるでしょう。
特定技能外国人の受け入れ
少子高齢化により、昨今は国内の人材だけで働き手を確保することが難しくなっています。こうした背景を受けて、製造業では特定技能外国人の受け入れが広がっており、工業製品製造業分野では2024〜2028年度の受け入れ見込み人数が約17万人となりました。今後は多様な人材が働きやすい職場づくりや、教育・サポート体制の整備も重要になっていくでしょう。
メーカー業界における知っておきたいトピックス
最後に、就活生が知っておきたいメーカー業界のトピックスをご紹介します。
サプライチェーンリスクへの対応
昨今は、諸外国による貿易管理措置が立て続けに実施されたことで、物資の輸入や完成品の輸出に影響が出ています。製造業のビジネスでは多くの部品や原材料が必要となるため、特定の国や企業に原材料の調達を頼り過ぎないサプライチェーンの構築が不可欠です。各メーカーは調達先を増やしたり、生産拠点を分散したりすることで、安定的にものづくりを続けられる体制づくりを急いでいます。
フィジカルAIの広がり
メーカー業界で注目されている技術の一つが「フィジカルAI」です。フィジカルAIとは、文章や画像などを扱う生成AIとは異なり、ロボットなどを通じて実際の物理空間で働くAIのことを指します。
製造業ではこれまでも、ロボットによる生産の自動化や省力化が進められてきました。フィジカルAIの発達により、現場の生産性のさらなる向上や省人化が期待されています。
まとめ
メーカー業界の特徴や主な職種、業界の動向などについてご紹介しました。メーカー業界は日本経済の土台を支える基幹産業の一つであり、脱炭素への対応や人手不足、サプライチェーンリスクといったさまざまな課題にも向き合っています。メーカー業界に関するインターンシップやオープン・カンパニーに興味がある方は、下記ページもぜひチェックしてみてください。
東京工業大学(現:東京科学大学)大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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