不動産業界は、さまざまな不動産の開発・販売・賃貸・管理を担う業界です。不動産業界のビジネスモデルや主な職種、業界の最新動向や知っておきたい課題など、就活準備に役立つ情報をわかりやすくまとめました。

不動産業界とは
不動産業界とは、土地や建物といった「不動産」を扱う業界です。仕入れた土地に合った建物の開発や、建物の管理、不動産投資のサポートなど、多様なサービスを通して収益を上げています。
不動産業界のやりがい
不動産業界は住まいや街といった、長く残るものを扱うことから、仕事の成果が目に見えやすい業界でもあります。また、大手企業で都市開発に携わる働き方もあれば、地域密着型の不動産会社として独立する方法もあるなど、働き方も多種多様です。多様なキャリアの中から、自分にマッチした働き方を見つけやすい業界ともいえるでしょう。
不動産業界のビジネスモデル
不動産業界には、大きく分けて「開発」「販売」「賃貸」「管理」という4つのビジネスモデルがあります。それぞれのビジネスモデルの特徴をまとめました。

不動産開発
仕入れた土地に合った建物を企画・建設し、販売や賃貸によって収益を得るビジネスモデルです。対象となる建物はマンションやリゾート施設、商業施設、戸建て住宅、オフィスビルなど、多岐にわたります。主にデベロッパーと呼ばれる開発業者が土地の仕入れや企画を行い、ゼネコンと呼ばれる総合建設会社が建設工事を担うのが一般的です。
なお、戸建て住宅の分野では、ハウスメーカーが大きなシェアを占めています。ハウスメーカーとは、自社で住宅の設計・建設から販売までを一貫して手がける企業のことです。顧客の要望に合わせて住宅を設計・販売する「注文住宅」や、土地と建物をセットで販売する「建売住宅」などを通して収益を伸ばしています。
代表的な企業としては、以下が挙げられます。
・デベロッパー
- 三井不動産株式会社
- 三菱地所株式会社
・ゼネコン
- 清水建設株式会社
- 大成建設株式会社
・ハウスメーカー
- 大和ハウス工業株式会社
- 積水ハウス株式会社
不動産販売
不動産販売とは、主に住宅やオフィスビル、商業施設などの建物を売買する事業を指します。どういった立場で販売にかかわるかによって、「自社販売」「販売仲介」「代理販売」の3つに分けられます。
自社販売
自社で開発・保有した物件を、自ら売り主として販売します。取り扱う物件は、戸建て住宅や分譲マンション、オフィスビル、商業施設、リゾート施設などさまざまです。
販売仲介
物件を売りたい人と買いたい人のマッチングをサポートし、売買契約が成立した際に仲介手数料を受け取ります。新築・中古の戸建て住宅やマンションの売買でよく取られる形態といえます。
代理販売
物件のオーナーの代理人、もしくは代理契約を結んだ事業者として、物件の広告宣伝・集客・営業・契約などを代行します。新築の分譲マンションなどは、この形態で販売されることも珍しくありません。
不動産販売の代表的な企業としては、以下が挙げられます。
- 東急リバブル株式会社
- 三井不動産リアルティ株式会社
不動産賃貸
不動産賃貸とは、自社が所有する物件を入居者やテナントに貸し出すことで、賃料を得るビジネスモデルです。対象は賃貸住宅やオフィスビル、商業施設など幅広く、長期的に安定した収益を確保できる点が特徴です。
また、「物件を借りたい人」と「物件を貸したいオーナー」をつなぐ賃貸仲介というビジネスモデルも存在します。個人向け・法人向けを問わず幅広い物件を仲介しており、契約成立時に得られる仲介手数料が主な収益源です。
代表的な企業としては、以下が挙げられます。
- 株式会社ハウスメイトパートナーズ
- 大東建託株式会社
不動産管理
不動産管理は、オーナーに代わって物件を維持・運営する仕事です。入居者対応や修繕の手配といった基本業務に加えて、収益の最大化もサポートするプロパティマネジメント会社や、清掃・修繕・警備に特化したビルマネジメント会社など、管理の仕方にも幅があります。
代表的な企業としては、以下が挙げられます。
- 日本ハウズイング株式会社
- 三菱地所プロパティマネジメント株式会社
不動産業界の主な職種
不動産業界には、不動産を販売する営業から、街づくりに携わることもある企画・開発、建物を維持する物件管理、現場を支える事務まで、幅広い職種があります。不動産業界の代表的な職種を見てみましょう。
営業
顧客に不動産を提案し、契約をまとめる仕事です。不動産は顧客にとって高価な買い物となるため、営業としての提案力や、信頼を得るコミュニケーション力、相手のニーズをくみ取るヒアリング力などが求められます。
不動産開発
資産価値の高い土地を仕入れ、その立地に最も適した建造物を企画した上で、ゼネコンなどの施工会社と連携しながら建物の完成までをサポートするポジションです。住宅やオフィスビルはもちろん、都市開発に携わることもあります。土地の収益性やリスクを見極める分析力や、好条件の土地をいち早く見つける情報収集力、魅力的な不動産を提案する企画力などが求められます。
物件管理
賃貸住宅やオフィスビルの運営をサポートする仕事です。入居者対応や家賃管理、修繕手配、設備点検などを通じて、物件の資産価値を守ります。
事務
自社の業務がスムーズに進むよう、さまざまな事務手続きを担います。営業事務や契約事務といった専門的な事務に加え、経理・人事・労務・総務・広報など幅広い分野があります。
不動産業界の動向と今後の課題
不動産業界は、国内においても重要な産業の一つです。業績は堅調に推移しており、不動産を扱う宅地建物取引業者数も右肩上がりに増えています(国土交通省・2024年度「宅地建物取引業法の施行状況調査」より)。今後も人々の生活を支える業界として、引き続き高い需要が見込める業界といえるでしょう。
一方で、業界として以下のような課題も抱えています。
不動産業界の課題1:少子高齢化
1つ目の課題は、少子高齢化による新築需要の低下です。住宅の主な購買層である現役世代の減少に伴い、新築不動産の着工数も減っていくことが予想されます。物価高騰によって不動産の買い控えも起こりやすくなっていることから、今後の新築市場は縮小傾向にあるといえるでしょう。
ただ、住まいの需要は引き続き高く、中古マンションやリノベーション住宅、高齢者向け住宅のニーズも増えています。今後は「限られた顧客をより早く獲得し、最適な住まいを提供すること」が、企業にとっていっそう重要な課題となっていくでしょう。
不動産業界の課題2:空き家の増加
2つ目の課題は、空き家の増加です。昨今の日本では人口の減少や少子高齢化により、居住者がいない家が年々増えています。空き家を放置すると倒壊や治安悪化のリスクもあることから、不動産業界には住宅のリフォーム・リノベーション事業による改善が期待されています。
不動産業界の課題3:DX化の遅れ
3つ目の課題は、DX化の遅れです。不動産業界では「実際に物件を見て決めたい」という顧客心理が根強く、接客をオンライン上に移行しにくい特性があります。さらに、契約を獲得すればするほど営業個人のボーナスが上がる「歩合制」が一般的であることから、顧客情報が会社に還元されにくいところも特徴です。そのため、企業全体としてデジタルマーケティングやDXへの取り組みは後回しになりやすい傾向にありました。
ただ近年では、大手はもちろんベンチャー企業でも、DX化を積極的に推進する動きが見られます。気になる物件の内装や周辺環境をオンラインで確認できる「オンライン内見」や、物件の適正価格をAIがすぐに判定してくれる「AI査定」、建物内の導線をITで効率化する試みなども広がっており、今後の注目ポイントといえるでしょう。
不動産業界の注目トピックス
昨今の不動産業界の注目トピックスとしては、「持ち家志向の低下」が挙げられます。持ち家志向が低下している背景には、物価高や人件費高騰の影響で新築住宅の価格も高くなっていることや、居住地としての人気が高い都市部では賃貸マンションが中心となっていること、リモートワークの浸透で一つの場所に住み続けるライフスタイルが変化していることなど、複合的な要因が挙げられるでしょう。
このような変化を受けて、不動産業界では賃貸住宅や中古住宅のリノベーション・リフォーム事業に力を入れる企業が増えています。サブスクリプション型で複数の住居に住み替えられるサービスなども登場しており、今後も市場ニーズに応じた新しい住まいの形が生まれていくことが予想されます。業界研究の際は、不動産業界の新しい取り組みにも注目してみるとよいでしょう。
終わりに
不動産業界の概要や仕事内容、最新の動向などについてご紹介しました。不動産業界は人々の暮らしや経済活動に欠かせない業界であるため、需要がなくなることはありません。しかし、市場の不動産へのニーズは、時代の変化に応じて移り変わっていきます。就活準備の際には、こうした変化を踏まえて業界研究を深めることが、自分に合ったキャリア選択につながるでしょう。
不動産業界のインターンシップやオープン・カンパニーに興味がある方は、下記ページもぜひチェックしてみてください。
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。
