航空・空港業界とは?業界研究に役立つ基礎知識&最新トピックス

航空・空港業界は、航空機による輸送を担う航空会社と、空港を管理・運営する空港運営会社から成り立つ業界です。業界の概要や仕事内容、押さえておきたい業界の最新トピックスなど、就活準備に役立つ情報をまとめました。

航空・空港業界とは

航空・空港業界とは、航空機による輸送サービスを担う航空会社と、空港の管理・運営を行う空港運営会社から成り立つ業界です。航空機は鉄道や船舶と比べて移動時間を大幅に短縮することができ、かつ品質管理の難しい物資の輸送にも対応しやすいことから、ほかでは代替しにくい輸送手段として利用されています。今後も国際的な輸送・移動手段の要として、高い需要を誇る業界といえるでしょう。

一方、国際的なインフラにかかわるという業界の性質上、国際経済や世界的な感染症の流行などの影響を受けやすい業界でもあります。世界情勢によっては採用人数が調整されることもあるため、業界の採用動向をチェックしておくと安心です。

航空・空港業界のやりがい

航空・空港業界の魅力は、人や物の移動を支える、責任ある仕事に携われる点です。海     外の方とつながる機会も多く、日常ではなかなか味わえないグローバルな経験ができるところも魅力の一つといえます。

また、航空・空港業界は、接客に携わるグランドスタッフや客室乗務員、運航上の安全を守る整備士やディスパッチャー、航空機の操縦を担うパイロットなど、職種によって専門性が異なります。人命に直結する業務が多いことから研修や勉強が欠かせませんが、自分の強みや関心を生かしつつ、専門性を磨きやすい業界といえるでしょう。

航空会社の種類

航空会社は大きく、フルサービスキャリア(FSC)、ローコストキャリア(LCC)、ミドルコストキャリア(MCC)の3つに分類されます。いずれも「人や貨物を安全に運ぶ」という使命は共通しており、安全性に大きな差はありません。その上で、フルサービスキャリアはマイルサービスや機内での快適性といった付加価値を提供し、ローコストキャリアは低価格化を目指すなど、サービスの重点の置き方に違いがあります。それぞれの特徴と代表的な企業を見てみましょう。

フルサービスキャリア(FSC)

フルサービスキャリア(FSC)は、より快適な空の旅を提供する航空会社です。機内食の提供や、運休が発生した際の振り替え対応といったさまざまなサービスがそろっている  ほか、国内外の路線を幅広くカバーしているところが特徴といえます。    

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • ANAホールディングス株式会社(全日本空輸)
  • 日本航空株式会社(JAL)

ローコストキャリア(LCC)

ローコストキャリア(LCC)は、サービスの簡略化・効率化によって、よりリーズナブルな運航を実現している航空会社です。機内サービスも必要最小限になっていることが多く、価格重視の利用者層に支持されています。

もともとは地方空港やアジア近距離路線を中心とした路線に力を入れていましたが、近年では中長距離路線に進出している企業も出てきています。

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • Peach Aviation株式会社
  • ジェットスター・ジャパン株式会社    

ミドルコストキャリア(MCC)

ミドルコストキャリア(MCC)は、FSCとLCCの中間に位置づけられる航空会社です。運賃はFSCより割安でありつつも、座席指定や受託手荷物が基本料金に含まれているなど、一定の快適性を備えているところが特徴といえます。

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • スカイマーク株式会社
  • 株式会社AIRDO

空港運営会社など、航空にかかわる企業も

航空・空港業界には、航空会社だけでなく、空港を管理・運営する会社も含まれます。滑走路や誘導路などの管理をはじめ、空港ターミナル内での物販や飲食サービスの提供などが主な業務です。

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • 成田国際空港株式会社
  • ANAスカイビルサービス株式会社

航空・空港業界の主な職種

航空・空港業界には多様な専門職があり、国家資格を必要とする仕事も珍しくありません。また、勤務地が空港であっても、所属先は航空会社、専門委託会社、官公庁などさまざまです。ここでは代表的な職種の仕事内容と主な就職先を紹介します。

パイロット

航空機の操縦を担うポジションです。安全なフライトを実現するため、「事業用操縦士」や「定期運送用操縦士」といった国家資格を取得した人のみが従事できます。主な就職先は航空会社ですが、官公庁や航空機使用事業会社(航空機を使った測量や写真撮影など     を行う企業)に勤めるケースもあります。

客室乗務員(CA)

機内サービスの提供を通して、安心・快適な空の旅を支える仕事です。緊急時の対応や保安要員としての役割も担っており、人命を守る責任の大きい職種でもあります。航空会社が主な就職先です。

グランドスタッフ

空港カウンターでの搭乗手続きや案内を担う職種です。航空会社に所属する場合もありますが、空港の地上業務専門の委託会社に就職するケースも多くあります。

グランドハンドリング

航空機の誘導や手荷物の積み降ろし、給油といった地上支援を行う職種です。主な就職先としては航空会社のほか、空港の地上業務を担う委託会社に入社するケースも多いです。

航空整備士

航空機の点検・整備を行う技術職です。就業に際して、国家資格である「航空整備士」資格が必要となります。主な就職先は航空会社や航空機整備会社、官公庁、メーカーなどです。

ディスパッチャー(運航管理)

フライトプランの作成や気象状況の確認を通して、航空機の運航を地上からサポートする仕事です。航空会社に就職後、実務経験を積みながら、国家資格(運航管理者技能検定)の取得を目指します。

航空管制官

空港にある管制塔から、航空機の離着陸や飛行経路をサポートする仕事です。国土交通省航空局に所属する国家公務員であり、公務員試験を経て全国の航空交通管制部や空港事務所に配属されます。

税関職員

空港の手荷物検査や通関業務を担う国家公務員です。総合職の場合は財務省、一般職の場合は各地の税関が就職先となります。

航空・空港業界が抱える課題

航空・空港業界は社会的なインフラとしての需要が高く、航空旅客数も年々増加しています。コロナ禍の影響で一時的に旅客数が減った時期もありますが、インバウンド需要を追い風に、国際線を軸に業績を伸ばしています。

一方で、業界としては、以下の2つの課題を抱えています。

  • パイロットの高齢化(2030年問題)
  • 脱炭素への対応

1つ目の課題は「2030年問題」と呼ばれる、パイロットの高齢化です。航空事業への需要が引き続き高まっていく中で、2030年にはバブル期に雇用されたパイロットが定年を迎えることから、パイロット不足が懸念されています。後進の育成にも時間がかかりやすい職種であることを受けて、シニア層パイロットの再雇用や、外国人パイロットの受け入れなどを行う企業も増えています。

2つ目の課題は、脱炭素をはじめとする環境への対応です。航空機はほかの輸送手段に比べてCO₂排出量が多い傾向にあるため、航空業界は環境対策に対する姿勢や、SDGsへの取り組みが特に問われやすくなっています。このような世情を受けて、各社は燃費効率を高める加工を施した機体の開発や、植物由来の航空燃料の活用を進めています。今後も地球に優しい輸送手段の在り方に向き合っていく必要があるでしょう。

航空・空港業界の注目トピックス

最後に、航空・空港業界を希望する就活生が知っておきたいトピックスを簡単にご紹介します。

DXの推進

航空・空港業界では以前からデジタル化が進められてきましたが、コロナ禍を機に非接触ニーズが高まり、DX化の動きが一層加速しました。具体的には、空港での顔認証ゲートや自動チェックイン機、スマホアプリを活用した搭乗手続きなど、利便性と安全性を高める取り組みが広がっています。

中長距離LCCの需要が拡大

もともとLCCは、導入コストを抑えやすい小型の航空機を多く使ってきました。小型機は燃料の関係で長距離飛行が難しいこともあり、LCCが取り扱う路線も、アジア圏や国内といった短距離路線に限られやすかったといえます。

ところが近年の技術発達により、中長距離を飛行できる小型機が登場しました。これにより、LCCも太平洋路線などの中長距離路線に参入しやすくなっています。実際に中長距離路線に進出するLCCも増えていることから、国際線業務や海外赴任に関心のある学生にとっては、キャリアのチャンスが広がりやすくなったといえるでしょう。

終わりに

航空・空港業界の概要や仕事内容、業界動向などについてご紹介しました。航空・空港業界は職種によって、専門性が大きく異なりやすい業界です。航空・空港業界に関するインターンシップやオープン・カンパニーに興味がある方は、下記ページもぜひチェックしてみてください。

吉田賢哉さんプロフィール写真

監修

吉田賢哉(よしだ・けんや)さん

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。