残業代とは?どんなときに支払われる?就活の際に知っておきたい内容をプロが解説

「残業代」は、どのような場合に、どの程度支払われるのでしょうか。この記事では残業の種類や支払われる残業代の割増率について、わかりやすく解説します。併せて、求人情報などで見かける「固定残業代」の詳細など、事前に押さえておきたいポイントをプロが詳しく解説します。

この記事のまとめ

  • 「残業代」とは、「所定労働時間」を超えて働いた場合に支払われる賃金を指します
  • 割増賃金が発生するケースには、「時間外労働」「深夜労働」「休日労働」の3種類があり、それぞれ割増率が異なります
  • 「固定残業代」とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支給する制度で、一定時間を超えて働いた場合には、超過分の残業代が別途支払われます
  • フレックスタイム制や裁量労働制、年俸制であっても、条件によっては残業代が支給される場合があります

残業代とは?

残業代とは、企業が設定した「所定労働時間」を超えて働いた際に支払われる賃金のことです。所定労働時間は就業規則や労働契約書に記載されており、従業員によって時間が異なる場合があります。

所定労働時間と法定労働時間の違い

所定労働時間は各企業が独自に決めた労働時間で、休憩時間を除いた「実際に働く時間」です。例えば、始業が9時、終業が17時、休憩が1時間の場合、所定労働時間は7時間です。所定労働時間は、「法定労働時間」の範囲内であれば、企業が自由に設定できます。

一方で、「法定労働時間」は、労働基準法という法律で定められた労働時間の上限です。原則として「1日8時間・1週40時間」を超えて働かせてはいけないと決められています。

企業が従業員に法定労働時間を超えた残業を行わせるためには、労働基準法36条に基づく労使協定(36協定)の締結・届け出などが必要です。また、36協定で定めた時間数を超えて残業させることはできません。

所定労働時間:各企業が独自に設定した労働時間。8時間の企業もあれば、7時間30分などの企業もある。

法定労働時間:法律で定められた労働時間の上限。原則として「1日8時間・1週40時間」を超えて働かせてはいけないと決められている。

残業は「法定内残業」「法定外残業」の2種類ある

残業には、大きく分けて「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があります。

例えば、企業の所定労働時間が1日7時間の場合、8時間働いたとしても、法律上の制限(1日8時間)を超えていないため、「法定内残業」に当たります。この場合、超過した1時間分の残業代は、通常の時給相当額が支払われるケースが一般的です。

一方、1日の労働時間が8時間を超えた場合は、「法定外残業(時間外労働)」となります。法定外残業の場合、通常の時給相当額に25パーセント以上を上乗せした割増賃金(時間外手当)を支払うことが法律で義務付けられています。このように同じ残業でも、法定内か法定外かによって、支払われる残業代の金額が異なります。

法定内残業と法定外残業のイメージ

割増賃金が発生する場面は3種類ある

法定労働時間を超えた場合に支払われる割増賃金には、「時間外手当」だけでなく、「深夜手当」や「休日手当」もあります。例えば、22時以降に残業した場合は、時間外手当(割増率25パーセント以上)と深夜手当(割増率25パーセント以上)の両方が適用されます。そのため、合計で50パーセント以上の割り増しとなり、通常の時給相当額の1.5倍以上の賃金が支払われることになります。

また、労働基準法では、週に1日または4週間を通じて4日以上は必ず休ませる「法定休日」を設けることが定められています。この法定休日に出勤した場合は、時間帯に関係なく、通常の時給相当額に35パーセント以上の割り増しを加えた休日手当が支払われます。

法定休日に出勤して22時以降に勤務した場合も、休日手当と深夜手当の両方が適用され、合計で60パーセント以上の割り増しとなります。

種類支払われる条件割増率
時間外
(時間外手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25パーセント以上
時間外労働が1カ月60時間を超えたとき50パーセント以上
深夜(深夜手当)22時から翌5時までの間に勤務したとき25パーセント以上
休日(休日手当)法定休日に勤務したとき35パーセント以上

残業代が支払われない可能性がある職業

原則として、残業代(割増賃金)は労働基準法に基づいて支払われますが、一部の職業については、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないケースがあります。

一例として、次のような職業の労働者が挙げられます。

農林・畜産・養蚕・水産事業に従事する労働者自然条件に左右されやすく、労働時間の管理が難しいことから、原則として労働時間規制の対象外とされています。
管理監督者である労働者経営者と一体的な立場で、労務管理や人事権限を持つなど、一般の従業員とは役割が大きく異なる場合には、残業代が支払われないことがあります。
ただし、「管理職」という肩書だけで、これに該当するかどうかが判断されるわけではありません。
機密の事務を取り扱う労働者秘書など、経営上の重要な情報を扱い、労働時間の管理になじまない業務に従事している場合が該当します。
監視・断続的労働に従事する労働者守衛や宿直業務など、業務の大半が待機時間となるような働き方で、かつ労働基準監督署の許可を受けている場合に限り、適用除外となります。
高度プロフェッショナル制度が適用される労働者年収要件などの条件を満たし、高度で専門的な業務に従事する場合には、労働時間規制が適用されません。
ただし、この制度は高度な専門知識や経験を持ち、年収が1075万円以上の人が対象になるので、新卒採用でこれに該当するケースはほぼありません。

なお、これらに該当する場合でも、すべてのケースで残業代が一切支払われないとは限りません。例えば、一例として挙げた職業のうち「高度プロフェッショナル制度が適用される労働者」以外には、深夜手当が支払われます。

求人情報や労働契約書の内容をよく確認し、不明点があれば事前に質問することが大切です。

残業代を確認した方が良い理由

求人情報などを見る際、残業代の支払いについて明確に説明されているか確認しましょう。

残業代の支払いに関するルールは、法律で厳しく定められています。もし、残業代の説明が曖昧な場合は、コンプライアンス(法令順守)に対する意識が低い可能性があるため注意が必要です。

残業代は、就職後の実質的な収入にも大きく影響します。例えば、固定残業代制度を採用している企業では、あらかじめ一定時間分の残業代が給与に含まれているため、設定された時間を超えて働かない限り、残業をしても実際の支給額は増えません。

つまり、残業時間が同じでも、固定残業代制度を採用しているかどうかによって、収入に大きな差が生じる可能性があります。

また、残業代に関する規定、特に固定残業代の有無は、その企業がどの程度の残業を想定しているかを判断する一つの目安にもなります。

入社後に「こんなに残業が多いなんて聞いていない」「もっと残業代を受け取れると思っていた」といったトラブルが起きないよう、残業代は慎重に確認しましょう。

固定残業代とは?

固定残業代とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支給する制度のことです。「みなし残業代」と呼ばれることもあり、求人情報や募集要項で目にする機会も少なくありません。

固定残業代の仕組み

固定残業代制度の給与は、一般的に次のような内訳で構成されています。

  • 基本給:○○万円
  • 固定残業代:△△円(例:月30時間分として支給)
  • 合計支給額:□□円

この制度の特徴は、実際の残業時間にかかわらず、設定された時間分の残業代が毎月必ず給与に含まれる点です。例えば、残業が0時間でも20時間でも、固定残業代として△△円は変わらず給与に含まれます。

一方で、設定された時間を超えて残業した場合には、その超過分の残業代を別途、全額支払うことが法律で義務付けられています。

例えば「月30時間分」の固定残業代が設定されている場合に40時間残業したときは、超えた10時間分の残業代が追加で支払われなければなりません。

逆に、残業が10時間しかなかったとしても、30時間分の固定残業代が減額されることはありません。

求人情報を見るときのポイント

固定残業代を導入している企業では、給与の内訳として「基本給」と「固定残業代」を明確に分けて、金額と時間を具体的に記載する必要があります。

例えば、次のような表記です。

A社:(大学卒、大学院卒ともに)月給23万円

※固定残業代4万円(25時間分)を含む。超過分・諸手当は別途支給。

B社:(大学卒、大学院卒ともに)月給23万円

※諸手当別途支給。

一見すると同じ「月給23万円」でも、A社は25時間分の残業代がすでに含まれているのに対して、B社は残業をした場合に別途残業代が支払われることになります。ただし、この記載だけではB社の残業代の詳細な扱いは判断できないため、注意が必要です。

給与は働く上で非常に重要な条件です。固定残業代の有無や、その時間・金額が明記されているかどうかを、応募前に確認するようにしましょう。

なお、固定残業代は残業を前提・強制する制度ではありません。所定労働時間通りに働いていれば、問題はありません。

また、45時間を超える固定残業時間は違法と判断される可能性があります。そのため、45時間を超える固定残業時間を設定している求人情報には注意が必要です。

この場合、残業代は支給される?気になる残業代Q&A

近年は、働き方の多様化に伴い、さまざまな制度が導入されています。では、そうした制度の下でも残業代は支払われるのでしょうか。その疑問に対して、わかりやすく解説していきます。

フレックスタイム制では、残業代は支給される?

フレックスタイム制とは、「清算期間(1カ月などの一定期間)」の中で、あらかじめ決められた「総労働時間」に合わせて働く制度です。総労働時間の範囲内で、始業・終業時刻や1日の働く時間を自分で調整することができます。

清算期間が終了した段階で、実際に働いた時間の合計が、あらかじめ定めた総労働時間を上回っていた場合に、その超過分に対して残業代が支払われます。

例えば清算期間が1カ月で、総労働時間が160時間の月に合計180時間働いたとすると、超過した20時間分に対して残業代が支給されます。

フレックスタイム制の残業代イメージ

フレックスタイム制について詳しく知りたい方はこちら

裁量労働制では、残業代は支給される?

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた「みなし労働時間」(実際の労働時間にかかわらず、一定時間働いたものとして扱う時間)の分だけ働いたものとして賃金が支払われる制度です。

始業・終業時刻や1日の労働時間については、労働者本人の裁量に委ねられている点が特徴です。ただし、裁量労働制を適用できる業務は法律で定められており、どの職種でも自由に導入できるわけではありません。

この制度では、「みなし労働時間」が設定されているため、原則として通常の残業代は支払われません。しかし、裁量労働制であっても、次のようなケースでは割増賃金が支給されます。

  • みなし労働時間が、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて設定されている場合(割増賃金は別途支払われるのではなく、あらかじめ給与に組み込まれる形で支給されます)
  • 22時から翌5時までの深夜時間帯に働いた場合
  • 法定休日に働いた場合

年俸制では、残業代は支給される?

年俸制とは、1年間に支払う給与の総額をあらかじめ定め、その金額を月ごとに分割して支給する給与形態です。支給方法は企業によって異なり、12カ月で均等に支払う場合もあれば、年俸の一部を賞与として、特定の時期にまとめて支給する場合もあります。

年俸制であっても、労働基準法が適用される点は変わりません。そのため、法定労働時間を超えて働いた場合や22時〜翌5時の深夜時間帯に勤務した場合、法定休日に出勤した場合には、原則として割増賃金が支給されます。

大橋 史典さん

監修

大橋 史典さん

社会保険労務士/社会保険労務士法人プロテクトスタンス
人事労務のスペシャリストとして、従業員とのトラブル防止や職場環境の整備などに取り組む。弁護士や税理士の資格も有しているほか、テレビの報道番組や情報番組、新聞社、Webメディアから依頼を受けて話題のニュースを解説するなど、メディアへの出演実績も多数。

社会保険労務士法人プロテクトスタンス はこちら https://ps-lsc.com/

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。