選考が進み、最終面接や最終面接に近い段階になると、役員が面接を担当する場合があります。いわゆる「役員面接」です。そこでは、いったいどんなことを聞かれて、何を準備していくと良いのでしょうか?人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。
前提としてひとつ押さえておいてほしいのが、役員面接が行われるタイミングは企業によって異なるということです。最終面接を役員が担当する企業があれば、最終面接の1つ前の面接を役員が担当する企業もあり、さまざまです。ここでは、比較的多いパターンである「役員による最終面接」を想定してお話しします。
最終面接とそれまでの面接の違いとして、大手企業を例に説明します。大手企業の場合、選考の初期段階から中期段階では、一般社員や人事が面接を担当し、「応募者の人となりや志向が自社に合っているか」「応募者の能力・スキルが自社で働くために必要な水準に達しているか」などを見ます。そうして求める人材像に合致した学生を最終面接までに絞り込み、その中から、最終的に誰に内定を出すかを判断する。それが、最終面接です。
内定を出す学生を判断する材料として、役員面接(最終面接)で企業が注目するものは大きく2つあります。それは「学生が持つ特徴の程度」と「志望動機」です。
「学生が持つ特徴の程度」とは、学生一人ひとりが売りとしている特徴の程度の甚だしさのこと。「レベル感」「難易度」と言い換えてもいいでしょう。前述した通り、最終面接まで進んだ学生は皆、その企業の求める水準に達しており、採用して良いと思える人ばかり。その中でさらに人数を絞るために、個人の特徴の程度の甚だしさに注目するというわけです。例えば、アピールポイントが「努力家であること」なら、どのくらいの努力家なのか、「コミュニケーション能力が高いこと」であれば、どのくらいコミュニケーション能力が高いのかなどを見て、僅差であっても抜きんでている人から内定を出します。
「志望動機」も同様です。多くの企業は、選考の初期段階では志望度の高さは重視していないことが多いです。むしろ、「最初から志望度の高い人はいない。志望度は選考を通じて企業が学生に働きかけて高めていってもらうもの」という認識でいます。しかし、最終面接にもなると、志望度の高さが学生を比較する要素の一つになってきます。すなわち、同じくらいの能力を持つ人が当落線上にたくさんいる中で一歩抜きんでるには、モチベーションの高さが差別化になるというわけです。
ここまで、曽和さんのお話を紹介しましたが、実際に面接を担当した役員は、どのような観点で学生を見ているのでしょうか。役員面接経験者429人にアンケートを実施しました。
■新卒採用の役員面接では、学生のどのようなことを知りたいですか?(n=429、複数回答)
最も多かったのが「入社意欲」(57.6%)。次に、「会話力、論理的思考能力などの学生の特徴」(56.9%)、「企業とのマッチ度」(51.7%)が続き、上位2項目は、曽和さんの「最終面接では、『特徴の程度』と『志望動機』が見られる」というお話と合致しています。 さらに、具体的な質問内容として、以下の回答などが集まりました。
学生の特徴を知る場合、多くの面接担当者は学生時代の経験について尋ねるようです。この場合、結論だけを伝えるのではなく、エピソードを交えて伝えることで面接担当者がよりイメージしやすくなりますので、意識してみましょう。
自社への入社意欲や企業とのマッチ度を問う場合、単刀直入に「志望理由」を尋ねることが多いようです。その際、なぜこの会社なのか、この会社で実現したいことはなんなのか、といったことも併せて伝えられると、より入社意欲を伝えられることでしょう。
将来のビジョンを問う場合、その会社で実現したいことのほかに、どんな働き方・生き方をしたいのか、といったことを尋ねることが多いようです。なりたい将来像を明確にしておくと、このような質問をされた場合にも、スムーズに答えられるでしょう。
その企業についてどのような考えを持っているのか、といったことが知りたい場合、このような質問をされることが多いようです。志望動機と共に、その企業に対してのあなたの考えをまとめておくと良いでしょう。
次に、最終面接で注目される、「自分の特徴の程度」や「志望動機」を的確に伝えるにはどのような準備をすれば良いか、採用のプロ・曽和さんに聞きました。
自分の特徴の程度を伝えるのに最も重要なことは、「難易度を説明する」ことです。例えば、「コーヒーチェーンで時間帯責任者を務めていました」では、アルバイト先で時間帯責任者を務める学生はたくさんいますから、その難易度がよくわかりません。重要なのは、相手に伝わるように語ること。「東京駅構内の喫茶店(店名を伝えられるとなお可)で時間帯責任者を務め、3人のスタッフでのべ1000人の接客をしていました」など、固有名詞や、規模や難易度がわかる具体的な数字を示しましょう。すると、一度の説明で面接担当者に難易度が伝わります。 難易度を的確に説明できなかったために、面接担当者の理解を得られず落ちてしまうのはもったいないことです。ただし、経験を盛って話すのはやめましょう。それで仮に通過しても、入社後苦労するだけです。
志望動機は、「自らのライフヒストリーに基づいた志望理由」を準備し、伝えましょう。どういうことかというと、学生が話す志望動機には「what」と「why」の2種類があります。 「what」は、その会社の「何に」共感したかということ。このような志望動機は、マイナスにはなりませんが、プラスにもなりません。社員なら知っていることを話すわけですから、面接担当者は「うちはそういう会社だけど、あなたとなんの関係が?」と感じるばかりです。 一方「why」の志望動機とは、「なぜ」その企業で働きたいと思ったかというもの。この「why」を理屈ではなく、自らの経験をはじめとしたライフヒストリーに基づいて話すことができれば、面接担当者は「そういった経験・考えがあるなら、モチベーションを高く持ってうちの仕事をやってもらえるかもな」とプラスに受け止めるでしょう。
最後に、曽和さんから役員面接や最終面接に臨む際のアドバイスを頂きました。 「『役員による最終面接』を想定して説明しましたが、内定を出す・出さないという判断を役員面接で行うか、別の役職者の面接で行うかなどは、企業によって異なります。また、役員による最終面接であっても、志望動機を軽く確認されるだけで厳格な判断がされない場合もあります。 したがって、選考が進んできて『次の面接』がどのようなものか気になる場合は、『選考プロセスのどの段階なのか』『面接担当者の役職や年齢』『次の面接の通過率はどれくらいなのか』などを人事に事前に確認してみるのも一つの手です。企業によっては教えてもらえる場合があります。 いずれにしても、選考が進んできて『そろそろ役員面接かも?』と思っている人は、今回ご紹介した準備方法を参考にしてみてください」
【調査概要】
調査期間:2018年7月27日~7月28日
調査サンプル:1~5年以内に新卒採用を担当したことがある役員429人
調査協力:株式会社ジャストシステム
インターンシップ&キャリアや就活準備に役立つ情報をX(旧Twitter)でも発信中!
——————————————————
【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
——————————————————
【質問例あり】最終面接での逆質問は、どんな質問をすればいい?
最終面接で「何か聞きたいことはありますか?」と言われた時、どんな逆質問をしたらいいのか例文つきで紹介
面接で聞かれることが多い「志望動機」。どんなポイントに注意して、何を伝えればいいのでしょうか。リクル
【プロが解説】自己PRで使えるアピールポイントの見つけ方・伝え方
エントリーシート(ES)や面接で聞かれることが多い「自己PR」。何をアピールすればいいかわからない!