内定した先輩たちが「私の就活の軸は、〇〇でした」と話していたり、就活準備を進めていると、「就活の軸を考えておいた方がいいよ」とアドバイスを受けたりした人もいるのではないでしょうか。また、面接などの選考の場面で「就活の軸」を問われたと聞いて、どんなふうに答えたらよいか気になっている人もいるかもしれません。「就活の軸」とは何か、考えておく必要があるのか、選考のどんな場面で尋ねられるのかなどを解説。就活を経験した社会人の先輩に、どんな「就活の軸」を持って就活を進めていったかのインタビューも紹介します。
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目次
そもそも「就活の軸」とは何のことでしょうか?人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。
「就活の軸」とは、会社選びや仕事選びの自分なりの基準のこと。就活時には、社会人になってどんな仕事、どんな働き方をしたいか、入社後のことについても考えておきたいものです。自分に合った仕事や企業は何か、環境選びの基準として必要になるのが「就活の軸」なのです。
基準は、「自分に関する基準」と「自分以外に関する基準」の2つに分けて考えることができます。
「自分に関する基準」とは、“こういう人になりたい”、“こんなキャリアを積んでいきたい”というもの。仕事を通じて自分がどうなりたいかにフォーカスしている基準です。一方、「自分以外に関する基準」とは、“大企業である”、“英語が使える仕事”のような企業の状況についての基準。
本来、どちらを就活の軸にしてもいいのですが、「自分以外に関する基準」を明確にしていないと企業選びができない…と考える学生さんが多くいるようです。「自分はこうなりたい。これができる環境であればどんな企業・仕事でもいい」という考えも立派な基準。自分がどういう人生を送りたいか、という観点で「就活の軸」を考えてもいいと思います。
とはいえ、「自分はどうなりたいか」を明確に言語化するのは、やってみようとすると難しいもの。あらかじめ「就活の軸」を設定して、それに基づいて企業を探すのもスムーズかもしれません。ただ、その軸がわからずに就活準備が進まなくなってしまう人もいるでしょう。そんなときは、複数の企業を一覧で見て「興味があるか、興味がないか」をジャッジしてみる方法をオススメします。
例えばリクナビでイベント(合同企業説明会)に参加する企業一覧を見たり、自分が気になる業界などで検索したりしてみましょう。数十社の企業について、その企業の仕事について知りたいと思うか思わないか、なんとなく好きと思えるか思えないか。感覚的に好きか嫌いかで振り分けてみましょう。
そして、興味があると思った企業の共通点を考えてみましょう。そうすることで、言語化できていなかった自分の価値観に気づき、自分なりの「就活の軸」が見えてくるのです。
「就活の軸」は、面接などでも聞かれることがあります。選考する企業としては、「なぜうちの会社を選んだのか?」の理由を持っている学生か、選んだ理由がない学生なのか聞いてみないとわからないからです。選考前に自分の価値観を言語化することで、聞かれたときの準備ができるでしょう。
実際に就活を経験した先輩たち300人に、就活を進める上で「就活の軸」が必要だと思うか、選考の中で尋ねられることがあったか、アンケートで聞きました。
■就活を進める上で、「就活の軸」を考えておくことは必要だと思いますか? (n=300、単一回答)
「就活の軸」を考えておく必要があるか先輩たちにアンケートしたところ、「はい」と答えた先輩は86.3%という結果になりました。
具体的に必要だと思った理由としては、次のような声がありました。
続いて、実際に選考では「就活の軸」がどれくらい聞かれるのか、先輩たちはどのように回答したのか、アンケート結果を紹介します。
■選考時に、「就活の軸」を尋ねられましたか?(n=300、単一回答)
まず、選考時に「就活の軸」を聞かれたか先輩たちに聞いたところ、40.0%の人が「はい」と回答しました。その先輩たちに「就活の軸」を尋ねられたのはどんなときか聞いた結果が以下になります。
■「就活の軸」を尋ねられたのは、どんなときでしたか?(n=120、複数回答)
では、先輩たちは実際にどんなことを「就活の軸」と答えたのでしょう。先輩たちの回答をいくつか紹介します。
では、選考で企業が「就活の軸」を聞くのはなぜでしょうか。答えを準備するときのポイントと併せて曽和さんに聞きました。
企業が選考で「就活の軸」を聞くのは、その学生がどうしてうちの会社を選んだのか、学生が求めるものを、当社は本当に提供できるのかを選考の段階で確認するためです。ただ、企業の価値観に合う人材だけでなく、多様な考えの人材に入社してほしいという企業の意向は年々高まっています。
「就活の軸」は自分に合う企業を選ぶための基準なので、選考時に取り繕う必要はありません。
例えば、そこまで強い成長欲求がないにもかかわらず、「成長できる環境かどうかが私の就活の軸です」と言って入社してしまったら、入社後に苦しくなるのは自分自身です。
これまで経験した出来事、育った環境を振り返ってみて、「就活の軸」の背後にある自分の価値観も明確にしておきましょう。本人のライフヒストリー(成育歴)に基づいているような理由とともに価値観を語ることができると、企業の選考担当者に根っこの確かな価値観であるということが伝わります。
価値観の深掘りの方法について、詳しくはこちら↓
【例文12選】新卒就活「志望動機」書き方と人事のチェックポイント
選考で「就活の軸」について話すとき、注意したいのが「その軸だったら、うちの会社じゃなくてよくない?」「その基準だったら、この業界じゃなくてもかなえられるのでは?」と聞かれたとき。正直な話をすれば、「そう言われてしまったら、そうですね…」としか答えようがない、いじわるな質問と言えるでしょう。そんな質問への対処法としてオススメできるのは「偶然の要素」を加えることです。
具体的には、「会社説明会で話をしてくださった社員の方が、仕事内容をこう説明しており、その内容に感銘を受けました」「御社の店舗に足を運んだ際、店員の方にこういう対応をしていただき、こんな人のいる会社で働きたいと強く思いました」などです。就活の軸を考える際、そんなエピソードをいくつか持っておくと安心だと思います。
そのほか、面接に向けた準備について詳しく知りたい人は、こちら↓
【就活面接で準備しておくことは?】面接マナーとよく聞かれる質問を確認しておこう!
最後に、「就活の軸」を考えて就活に臨み、現在は社会人として働いている先輩2人に、「就活の軸」は何だったか、見つけるためにどんなことをしたか、就活時に役立ったのはどんなときだったのかをインタビューしました。自分の「就活の軸」を考える際の参考にしてみてください。
「空間デザイン、建築に携わることができる仕事」です。高校時代から建築士に憧れを持っており、将来は建物づくりにかかわる仕事をしたいという思いがありました。大学は文系学部に進学し、環境デザインのゼミで環境や空間が人に与える影響について研究していました。就活準備のときにこれまで興味を持ってきたことを整理していくことで「就活の軸」を明確にすることができました。就活では、大手デベロッパーを中心に鉄道系、レジャー施設運営の企業を受けていました。
今やりたいこと、好きなことではなく、「昔から好きだったこと」を振り返りました。今興味あることは一過性のものかもしれませんが、子どものころからずっと好きだったことは、今後も好きだろうし嫌いになることはないと考えたんです。
親に子どものころの話を聞くと、ブロック玩具と積み木が好きで、ひたすら積み上げて建物らしきものを作っていたこと、大きなものを作って表現したいという欲求が子どものころからあったことがわかりました。それが今の関心にもつながっているのだと確認することができました。
面接では「どうしてこの業界なの?」「どうしてうちの会社なの?」と必ず聞かれました。
ただ「空間づくりに携わりたい」だけでは、「どうして当社なのか」という質問には答えられないので、軸をしっかり言語化しておかないと説明するのは難しいと感じました。また、面接当初は、企業に合わせて取り繕って答えたこともありましたが、本心から出る言葉以外は相手に響かないのだと痛感。
その後は、具体的にやりたいことを事前にいくつか考えておき、面接では企業に合う内容を選んで答えるようにしました。うそのない内容で、かつ、企業の志望動機に共通する要素を整理して話すことができ、面接もうまくいくようになりました。
「就活の軸」を理路整然と考えるのも大事かもしれませんが、生の情報に触れることで「楽しそうだな」「合いそうだな」と、自分だけの“感覚”を得ることも大切にしてほしいです。
総合職採用でしたら、多くの場合、仕事内容は配属が決まらないとわかりません。でも、何をするにせよ、企業風土や人の雰囲気は必ず自分にかかわってきます。
説明会や面接で、どんな人がどんな言葉を使い、どんな表情で事業内容を説明しているか。その空気に触れることは、自分が合う環境を選ぶ上でとても大事だと思います。企業ホームページを見るだけではなく、その会社が手掛ける商品やサービスに触れる、見に行くなど行動してみて、感じたことを自分なりに言語化していくと「就活の軸」を掘り下げることができると思います。
将来起業したいという思いがあったので、起業に向けた学びのある環境であることを「就活の軸」にしていました。具体的には、いろいろな事業のケースを俯瞰(ふかん)できる仕事であること、新規事業が多く生まれ、事業を作り出す過程を体感できる環境であることでした。就活中は外資のコンサルティング業界、社内ベンチャーが多く立ち上がる企業の方に話をうかがっていました。
これまでの自分を振り返ると、人にやれと言われたことをやるのが嫌で、いつも自分で「こうしたい!」と提案していたんです。学校の授業に疑問を呈して、授業のやり方を変えたこともあった。小生意気なんです(笑)。大学時代からWebメディアを立ち上げて起業していたこともあり、将来も自分で事業を作りたいなと思っていました。
インターンシップを利用して自己分析をしました。「将来成し遂げたいミッションを考える」というプログラムがあり、過去を振り返り自分の価値観や好きなことを整理しました。漠然としていた自分の特徴を言語化できましたね。
企業選びの納得度が高まると思います。自分なりの軸がないと、相対的な評価で判断することになり、入社してから「どうしてここに入ったのか」と思い悩むことが出てくるかもしれません。一方、「自分にとってこれが大事だから、この会社を選んだ」という絶対的な理由があれば、自信を持って働いていけると思います。僕は、起業というゴールがぶれなかったので、「こういう思考プロセスを持った経営陣、こういうミッションを持った企業で働きたい」と、選ぶときにも迷いがありませんでした。
簡単5分で、あなたの強み・特徴や向いている仕事がわかる、リクナビ診断!就活準備に役立ててくださいね。
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【調査概要】
調査期間:2022年9月13日~9月16日
調査サンプル:2023年3月に卒業予定の大学生、大学院生、短大生、専門学校生300人
調査協力:株式会社クロス・マーケティング
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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