自己PRでアルバイトのエピソードを伝えるときのポイントと例

エントリーシートや面接で、アルバイトでの経験を自己PRとして伝えるとき、どのような点に注意するといいのでしょうか。人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。

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企業が自己PRを聞く意図は?

エントリーシートや面接で問われるあらゆる質問は、「あなたはどういう人か」を知るためのものです。自己PRは、それを最もダイレクトに聞く質問であり、企業は自己PRを聞くことで、あなたの「能力・性格(何ができるか)」が、「自社で仕事をしていく上で合っているか」という点を見ています。

ただ、一方的に自分がアピールしたい能力や性格を伝えても、それを企業が求めていなければ意味がありません。業務上の特徴や会社のカルチャー、どういう要素が求められているかを整理した上で、その環境で発揮できる強みは何かを考えるといいでしょう。

 

企業が自己PRを聞く意図について、詳しく知りたい人はこちら↓
【例文付き】就活で自己PRを聞く意図は?人事に評価される書き方・話し方のポイントは?

アルバイトのエピソードを通して自己PRできることは?

アルバイトが部活やサークル、ゼミなどと違うのは、(1)対価をもらう(2)義務から始まっているという2点です。

アルバイトとして仕事をした際、労働への対価として給料が発生します。また、「仕事の経験を積みたい」「お金を稼ぎたい」など、始める理由はさまざまかと思いますが、趣味のように好きなことを始めるよりも、アルバイトは「依頼されたことをやる」という要素が強いと言えます。

そのため、アルバイト経験は、人から任された仕事に対して自分で意味を見出して、対価を超えるような取り組みや行動をし、成果を出してきたかがアピール材料の一つになるでしょう。

アルバイトのエピソードを選ぶときのポイントは?

どんなエピソードを話そうかと考えたとき、「アパレル店のアルバイトで1日限りのイベントを企画して成功した」「塾講師のアルバイトで、保護者とのトラブルに対応した」というような、華やかで目立つエピソードを話さなくては、と考える人も多いのではないでしょうか?実際、こうした目立った出来事や非日常的な事件・トラブルのエピソードで「こんなふうに力を発揮した」とアピールする就活生はいます。

しかし、企業は、平凡な日常業務にどう向き合う人なのかの方が知りたいと思っています。アルバイトは、雇用の特性上、マニュアルが決められていたりルーティンワークに従事したりすることが多くなります。特に、大手企業が展開する店舗や塾などのアルバイトであれば、マニュアルを基に社員のサポートとして業務に当たることも多いでしょう。そうした仕事にどう取り組んだかこそが、企業がその学生の特性を測るための重要な情報となってきます。

「それでは、地味でつまらないエピソードになってしまう…」と思うかもしれませんが、「毎日人知れずこんな工夫をしていた」「3年間、これだけは続けた」など、長い間続けてきた日常のエピソードをぜひアピールしてほしいと思います。

アルバイトのエピソードを伝えるときのポイント

アルバイトのエピソードを選んだときは、その経験によって培われた「継続力」と仕事に対する「意味づけ力」を企業に伝えられるように意識するとよいでしょう。

1. 「継続力」

短期間のイベントや突発的なトラブルではなく、一見すると平凡な日常業務のエピソードをアピールするようオススメするのは、コツコツと継続してきたこと自体に価値があるからです。これから社会人として任される仕事に、継続力は必ず求められるでしょう。携わる仕事はアルバイトのときに比べると大規模で、長期間にわたって取り組んでいくものとなるはずです。また、新しいスキルを身につけるために、知識を習得したり経験を重ねたり時間をかけなくてはいけません。そのためには、アルバイトを通して継続力を身につけていることを伝えることができると、社会人としての土台ができていると評価されるでしょう。

2. 仕事に対する「意味づけ力」

業種・職種を問わず、高い能力を発揮するハイパフォーマーの特徴の一つに、仕事への「意味づけ力」の高さがあります。同じ仕事を任されても、「ルーティンワークでつまらない」と思うのか、それとも「与えられた枠の中で創意工夫をして学びを得よう」と思うかでは、仕事の質と成長スピードはまったく変わってきます

例えば、コンビニエンスストアでアルバイトをしていたとしましょう。

商品を陳列棚に並べる品出し業務をする際、漫然と並べる人と、「こんな新商品が出ている!消費者ニーズが変わってきたのかな」と思いながら並べる人とでは、同じ仕事から得られる情報が違います。ほかにも、レジ業務で「作業の順番を少し変えてみたら一人のお客さまにかかる時間が短縮できた」、接客で「こういうお声がけをしたら感謝された」のように、ルーティンワークで終わらせずに工夫することで、仕事から得られるものが変わるでしょう。

たとえ地味だと思えることでも、「工夫しようと考えた」「実践してみた」というのは、社会人になって仕事をしていく中でも同様のことができるであろう、再現性のある強みだと言えます。企業は、自己PRの内容を成果自体ではなく、成果に至るプロセスを通して学生の特性を見ています。仕事へのモチベーションを自ら上げる工夫は、どんな職種においても欠かせないもの。

「アルバイトで自分なりにどう工夫し、行動してきたか」といった、仕事への取り組み姿勢を伝えられるようなエピソードを考えてみましょう。

飲食店でアルバイトをする学生

エントリーシートの自己PR欄にアルバイトのエピソードを書くときの例

エントリーシートの自己PR欄に書く際は、「アピールしたいポイントから書くこと」「数字や実績などを具体的な事実と共に伝えること」を意識しておきましょう。

例【飲食店でのアルバイトのエピソード】

仕事に必要と感じたテーマについて、継続的に勉強し続ける力があります。3年続けているイタリア料理店でのアルバイトを機に、ワインに関する知識の習得を追求してきました。週3日料理を運ぶウエーターとしてアルバイトを始めたものの、当初はお酒に関する知識がまったくなく、お客さまから質問されても答えられないことがありました。そのため、質問されることが多いワインについて学ぼうと決めました。シフト外の時間にワインセラーにあるワインの名前をメモしてリストを作ったり、料理に合うワインを提案できるようにシェフに聞いたりテイスティングさせてもらいました。また、ワインソムリエの資格を持っている先輩ウエーターがお客さまに説明している内容をメモする中で、さらに深く学んでみたいと思うようになり、1年かけて勉強し、ソムリエの資格を取得。お客さまだけなく、アルバイトの後輩にもワインについてアドバイスできるようになりました。

例【塾講師のアルバイトのエピソード】

私の強みは、自分で設定した目標を達成するための工夫ができることです。大学1年から始めた中高生向けの個人指導塾のアルバイトで、在籍している生徒全員の顔と名前を覚えることを目標に掲げ、徹底して実践しています。それは、始めたばかりのころに自分の担当の生徒のことを覚えておらず、「すれ違ったのに気づいてくれなかった」と悲しそうに言われたためです。そこから、出席簿に顔の特徴などをメモしたり、「どうしたの?〇〇さん」と名前を呼んだりするようにして、顔と名前を覚えるように工夫しました。担当以外の生徒には、初めて会った際に自分から声を掛け、名前以外にも少し話をすることで、相手を知るように努めました。その結果、3年の間で約200名の生徒のことを覚え、担当していない生徒からも質問や相談を受けるような関係性を築くことができました。

面接でアルバイト経験を自己PRで話すときの例

面接でも、「最初に結論を伝える」「エピソードの中に数字や実績など“事実”を具体的に入れる」ようにしましょう。

面接担当者も利用したことがありそうなお店でのアルバイトの場合には、具体的に名前や店舗名を言うと、アルバイトの様子がより具体的に伝わるでしょう。

集団面接などでは、面接担当者との質問のやりとりがない「プレゼンテーション型の自己PR」も少なくありません。その場合は、エピソードをすべて言い切れるよう、伝えたい内容を整理しておくといいでしょう。

例【居酒屋でのアルバイトのエピソード】

私は、大変と思えることも継続したり、その中で工夫したりすることができます。居酒屋〇○の△△店で、週2日夜10時から早朝5時までの深夜シフト勤務を2年間続けました。主な仕事は、お店がオープンしている間はドリンク作りと料理を運ぶこと、閉店後は翌日に向けた店舗内の掃除が主でした。トイレや廊下の隅など、何げなく目に入るところがきれいかどうかでお客さまの印象が違うのではと思い、閉店後の掃除だけでなく、営業中もゴミが落ちていないか注意を払うことを徹底しました。その結果、口コミサイト上で「清潔感のあるお店」という書き込みを頂き、「いつもお店の中を気にかけてくれてありがとう」と店長から声をかけてもらえました。

例【家電量販店でのアルバイトのエピソード】

私の強みは、自分の仕事を高めるための工夫を考え、実践できることです。家電量販店のアルバイトで、お客さまの方から相談を受ける関係性を築きました。家電以外にも日用品や食品も扱う大型店舗で、接客や日用品の陳列業務を担当しました。住宅地にある店舗で、年配のお客さまも多く、接客の際には相手の目線の高さや、声の大きさ、話すスピードを意識しながら笑顔で対応するように心がけていました。また、商品の陳列中もお客さまの様子や会話に耳を傾け、困っていることがあれば率先して声をかけるようにしていたことで、お客さまから声をかけていただいたり、困っていることの相談を受けたりするようになりました。料理について相談を受けた際は、家電担当の方にフォローをお願いしながら、電子レンジや自動調理鍋をご提案しました。実際に購入いただいて、「買ってよかった」という言葉を頂けて、やりがいを感じました。

アルバイトのエピソードを自己PRで伝える上で注意したいことをQ&Aで紹介!

最後に、アルバイトのエピソードを自己PRで伝えようと思ったとき、悩んでしまいそうな疑問を曽和さんが解説します。

Q. アルバイトのエピソードを話す学生は多そうだけど、問題ない?

A. まったく問題ありません。ほかの学生とかぶらないように珍しいエピソードを話そうとする必要もありません。「大型チェーン店のアルバイトなんてありきたりだから話すのはやめよう」と思う人もいるかもしれませんが、非常にもったいない。企業が見ているのは、あなた自身が経験したこと、その中で感じたり行動したことなどなので、具体的なエピソードと共にアルバイトで発揮したあなたの特性を伝えることを意識してみてください。

Q. 役職(バイトリーダー、教育係)や実績(売り上げNo.1など)は特にないけれど、自己PRで話して大丈夫?

A. 問題ありません。企業が知りたいのは、「あなたはどういう人か」で、重要な役職に就いたことでも、華やかな実績でもないからです。アルバイトメンバーの一人として、日々の業務で工夫したこと、そのプロセスで得たことに意味があるのです。

また、バイトリーダーなどの役職に就いて学んだことを話す際は、その役職がどういう役割を担っているのかを先に説明するよう心がけましょう。同じ役職名でも、業界やアルバイト先によって、どんな仕事をしているかは異なります。「〇人のメンバーのリーダーとしてシフト管理を任された」「お店の売り上げ管理まで携わった」など、具体的に伝えることで、その役職の仕事内容や難易度が伝わりやすくなります。

Q. アルバイトの概要はどれくらい伝えるといい?

A. 例えば大手コーヒーチェーンでアルバイトをしているならば、具体的にどこで働いているのか、固有名詞を最初に伝えるとよいでしょう。そのほか、自己PRで話す内容に関連する情報(勤務先、スタッフ数、1日に対応するお客さまの数など)も具体的に伝えると、業務の難易度が伝わりやすくなるでしょう。

Q. 複数アルバイトをやってきたけれど、全部話した方がいい?

A. 一番力を入れたアルバイトがあるならば、あえて複数話す必要はありません。というのも、「一つのことを継続することが苦手な、飽きっぽいタイプなのではないか」という懸念を企業に抱かせる可能性があるからです。

一方で、いろんな経験を積むために、さまざまなアルバイトを経験したという人もいるでしょう。「経験の幅を広げるため」など、自分なりのテーマを持ってアルバイトを掛け持ちしたり、複数経験を重ねてきたりした場合は、テーマとセットで伝えるようにしましょう。

Q.アルバイトを途中で辞めたけれど、話すべき?

A. 辞める理由はさまざまなので一概には言えませんが、「途中で辞める=継続力がない」という印象を与える可能性があります。やむを得ない理由があれば、それもきちんと伝えるようにしましょう。

学業や部活など、アルバイト以外のことに時間を割くために辞めたのであれば、自己PRではアルバイト以外のエピソードを話した方がよいでしょう。「学業が忙しくアルバイトができない」という方も少なくないと思います。あまり力を割けなかったことをあえて自己PRの題材にする必要はありません。

アルバイトのエピソードのほかにも自己PRで伝えられるポイントがあるかも?気になる人はリクナビ診断を活用して、自分の強みや特徴を調べてみましょう。

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曽和利光さんプロフィール写真

【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。

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記事作成日:2020年1月27日 記事更新日:2021年11月26日
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