面接やエントリーシートで問われる「働くとは?」という質問。どう答えればいいか悩んでいる学生も少なくはないでしょう。そこで、これまでに1000人以上の学生の就活を支えてきた就活コーチ・廣瀬泰幸さんに、その考え方や企業が見ているポイント、アピールするためのポイントなどを聞きました。先輩の面接回答例も併せて、あなたの「働くとは?」を考えるヒントにしてみませんか?
「働くとは?」を考えるためには、「働く目的」を明確にすることが大事です。それでは、自分にとっての「働く目的」を明確にするにはどうすれば良いのでしょうか?具体的な方法について紹介します。
「働く目的」を考えるために、一般的な7つのパターンと、その目的を達成する際に必要な背景を紹介します。自分の価値観に重なるものは何かを考えてみましょう。1つに絞らず、複合的に目的を持つことも問題ありません。また、考えても答えが出ない場合は、「共感できないものを削る」という方法もあります。
“お金”を目的とするパターンです。人より高い収入を得る場合、特殊な業務や専門領域に携わるなど、必要とされる能力に高いハードルが伴うことが多いです。人生の設計図を想定し、いつまでにどれくらいの収入を得たいのか、それを実現するためにどんなキャリアを築きたいのかを考えておきましょう。
“社会貢献”を目的とするパターンは、誰かに役立ったときや、「ありがとう」と言われたとき、何かに貢献できたと感じたときなどに、喜びを感じる人に多いでしょう。社会全体に限らず、「両親に恩返しがしたい」「地元に役立ちたい」など、貢献の概念を狭めてみれば、より自分に置き換えやすくなります。
“自己成長”を目的とする場合は、できないことができるようになる瞬間や、スポーツをはじめ、何かが上達することに喜びを感じるケースが当てはまります。自分の能力を発揮して活躍したい人や、働くことでいろんな経験をしていきたいという人も、これに当てはまるでしょう。
働くことでほかの目的を達成するのではなく、働くことそのものを目的とするパターンです。「こんなことが好き、楽しい」「こんなとき、やりがいを感じる」という場合、仕事内容にそれを当てはめることができます。好きなことを手がけている会社に入っても、それに直結する仕事ができるとは限りませんが、本人の頑張り次第で実現できる可能性があります。
“地位”や“権力”を目的とする場合は、「人から一目置かれたい」「うらやましいと思われたい」「人を動かしたい」と思っている人に当てはまるでしょう。どのくらいの期間で実現していきたいのかを考えることも大事ですし、一度実現できても、永続的にその地位を守ることができるのかを想定しておくことも重要です。
ワークライフバランスを重視するタイプに当てはまります。キャリアやライフプランを考える際、生活面も大事ではあります。しかし、「プライベートを大事にしたい」「結婚し、素敵な家で暮らしたい」など、理想の生活を実現しようとするほどに、仕事の能力が必要になります。なぜなら、能力を発揮できなければ、働く時間をより短くすることも、やりたいことを実現するお金を稼ぐこともできないからです。理想を実現するためには、早いうちから実力を身につけることが近道となるでしょう。
『将来が不安』と考え、安定的な経営をしている大手企業などに入社し、そこで働き続けていきたいというパターンです。しかし、なぜその企業の経営が安定しているかといえば、社会の変化に対応し続け、新しい取り組みを重ねているという背景があるからなのです。入社しても、そこで働き続けていくためには、変化に対応できる能力を身につけることが求められるといえるでしょう。
7つの「働く目的」の中から自分の価値観に近いものを見つけたら、その価値観が本当に自分の価値観と合っているのかを自己分析で掘り下げていきましょう。自己分析の具体的な方法は、以下の記事を参考にしてみてください。
自己分析の詳しいやり方を知りたいあなたはこちら↓
【自己分析のやり方】手軽にできる9つの方法や目的・志望動機の作り方まで
「あなたにとって働くとは?」企業が質問する2つの理由
「あなたにとって働くとは?」という質問、エントリーシートや面接などの選考過程で問われるケースは少なくありません。企業が質問する理由を知り、何を見ているのかを理解しましょう。
「働くこと」に対し、どんな価値観を持っているのか、そのベースとなった本人の経験まで知りたいと考えています。今までの人生の中で、「どのように人とかかわってきたのか」「誰かのために役立った経験があるか」などを通じて、“組織の中で働くことができる資質”を見ています。
企業は採用する人材に対し、「成長を重ねてもらい、より高度な仕事を任せていきたい」と考えています。経営活動を続けていくためには、人材の成長は必須のため、“成長意欲を持って働き続けていけること”は大前提です。理由1に出てきた「働くことに対する価値観」と「自社の環境」が本当にマッチしているかどうか、それによってモチベーション高く働き続け、成長してくれるかどうかを知りたいと考えています。また、これまでに成長した経験や、そこで喜びを感じた経験を通じ、本人に成長意欲そのものがあるかどうかも見ています。
「働くとは?」を質問する際、企業が知りたいことは、「ベーシックな部分の働く資質」「働き続けていく資質」があるかどうかということです。
学生から社会人になったからといって、その瞬間に本人が大きく変化するわけではありません。「社会人の目線で考えなくては」と思う学生もいますが、それより、これまで生きてきた経験の中で、“楽しい”と思ったり、“有意義だ”と感じたりしたことをベースに考え、具体的な「働く目的」につなげてアピールするといいでしょう。
また、学生とは違い、社会人には、組織という“集団”の中で行動することが求められます。「働く目的」を伝える際には、「集団の中で何を経験したのか、何がやりたいのか」を意識しましょう。さらに、企業は「その会社で働く目的」まで掘り下げているかを見ています。自分の働く目的を、「この会社なら達成できる」という点に接続して語れることもポイントとなります。
先に挙げた「働く目的」パターンを基に、3つの面接回答例を紹介します。どんな企業に対し、どう伝えるのか、実際に内定を得た先輩たちの回答例を参考にしてみましょう。
内定先企業:精密機器メーカー(営業職)
私は働くことで、自分の目指す人生を実現していきたいと思っています。年収の高い両親に育てられたことで、海外留学の経験をさせてもらうなど、やりたいことに挑戦することができました。将来、自分の子どもにもそうした素晴らしい教育環境を与えていきたいと思っています。私自身には特殊能力はないので、ビジネスパーソンとして成長と活躍を続け、高い収入を得られるようになりたいと考えました。
*ポイント解説
高い収入を得たいという目的に対し、給与が高い企業を志望した学生のケースです。自分の経験を基に、なぜ高い収入を得たいのかという根拠を明確にしています。また、本人に特殊能力や専門性がなくても活躍できる営業職を選択した背景もきちんと説明できており、成長意欲の高さも伝わります。
内定先企業:不動産会社
私にとって働くとは、社会に貢献していくことです。私が暮らしている街は、数年前に都市開発によって美しく生まれ変わりました。学校、病院、公園などのインフラ施設を一つのエリアにまとめて整備したことで、子育てやお年寄りの生活は便利になり、古くからある商店街も再活性され、にぎわいを取り戻しました。街が便利で快適になり、暮らす人たちが笑顔になることを実感したこの経験から、私も地域社会に貢献できる仕事に携わりたいと考えるようになりました。
*ポイント解説
都市計画も手がける不動産会社を志望した学生のケースです。企業の具体的な活動に対し、自分が見たことや経験したことを重ねることで、社会貢献という大きな目的に対しても、リアリティのある回答ができています。また、誰かを喜ばせたいという資質があることも伝わります。
内定先企業:ベンチャー企業
私は働くことで成長し、自分のやりたいことを実現していきたいと思っています。大学時代に親しく付き合っていた先輩が御社で大きく成長し、新規事業に携わるなどの活躍をしているという話を聞きました。自分もそのように成長していきたいと思うようになり、いつか自分で考えた企画を事業として実現したいという目標も生まれました。御社には、さまざまな経験を通じて成長できる環境、やりたいことができる環境があると考えています。
*ポイント解説
その企業で働いている身近な先輩の例を挙げることで、説得力を増しています。実際に話を聞いた上で、先輩に憧れるだけでなく、自分がどのように成長し、どんなことを実現していきたいかを具体的に伝えていることもポイントです。成長過程にあるベンチャー企業で「働く目的」をより明確にしています。
これらの先輩たちの面接回答例は、あくまで例であり、考え方の参考とするものです。回答例をそのままマネするのではなく、自分の働く目的を探すためのヒントにしましょう。
「働く目的」を明確にすることは、就活のいろんな面で役立ちます。何のために働くのか、入社後に何をやりたいのかを明確にすることは、自分の価値観に合う仕事や企業を探す際の軸とできるでしょう。
また、エントリーシートの志望動機や面接の際、説得力ある自己PRを語れることにもつながります。実際、同程度の能力を持つ学生が複数いる場合には、より強い志望動機を持っている人物と働きたいと考える企業も少なくありません。さらに、自分の「働く目的」に合う会社に入社できれば、将来のキャリア形成や自己実現につなげていけるのです。
まずは自己分析をしっかりやることがポイントになります。ゼロから何かを考えることは難しいので、自己分析ツールなどを活用するのも便利でしょう。
外的な刺激を受けることで、思いもかけない自分を発見できますし、分析結果に違和感を覚えた場合でも、「なぜピンとこないのか」を探るきっかけになり、それもまた自己分析の一環となります。何より、自分自身でふに落ちていないことがある場合、相手に説得力を持って伝えること自体が難しいもの。そうした部分を発見するためにも、自己分析ツールは役立つでしょう。
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【監修】廣瀬泰幸さん
株式会社オールウェイズ代表。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。株式会社リクルートにて管理職として10年間勤務しながら、大企業からベンチャー企業まで1000社を超える企業の採用と人材育成を支援。その後、1部上場企業の人事部採用責任者として年間500名の採用と人材育成を行う。就活コーチとして独立後、現在までに1000名を超える学生に就活コーチングを実施。
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