採用面接を受けていると出合う可能性がある「圧迫面接」。 就活を経験した先輩から「圧迫面接を受けた」と聞いたことがある人もいるかもしれません。圧迫面接とは、どんな面接なのでしょうか。人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに圧迫面接の意図と対処法を聞きました。
圧迫面接とは、一般的に面接担当者が威圧的・否定的な態度をとる、意地悪な質問をするといった「マナーの悪い面接」のことを言います。
では、就活時に圧迫面接を経験した人はどのくらいいるのでしょうか?就活を経験した1~3年目の社会人212人に、圧迫面接の経験の有無についてアンケートを実施しました。
■新卒の就職活動で圧迫面接を経験したことはありますか?(n=212)
アンケートの結果、約64%が「圧迫面接を経験したことがある」と回答しました。
圧迫面接を経験した先輩たちのアンケートからは、「何度も『なぜ?』と聞かれる」「態度が横柄」「意見を否定する」「怒鳴る」などを圧迫面接と感じたという声が多く見られました。これに対して曽和さんは、「圧迫面接には、学生が『圧迫だ』と誤解している場合もある」と話します。その違いや背景・意図について、詳しく教えていただきました。
採用面接は、時間が限定されている中で面接担当者が学生の人となりを深く把握しないといけないという、ほかにはあまりない場面だと言えます。しかし、そのような特殊性を差し引いても「初対面の人同士がお互いを知る場で、そんな失礼な態度はないよね」と思える言動を面接担当者が行う「マナーの悪い面接」。このような面接を「圧迫面接だ」と受け止める人は多いと思います。
実は、学生が圧迫面接だと感じる面接にも、面接担当者の側に圧迫の意図はなく、別の意味や背景があるものがあります。もちろん、学生が「圧迫面接だ」と感じた時点で採用面接の方法としては不適切です。面接担当者の配慮や訓練が足りていません。ただ、「圧迫面接だ」と誤解して変に緊張して自分を出せなくなるのは非常にもったいないことです。
代表例を挙げて、それぞれ面接担当者の言動とその意図・対処法を次から説明するので、ぜひ参考にしてください。
皆さんが「圧迫面接」と感じるであろう面接担当者の態度について、代表的な例とその意図・背景をそれぞれ紹介します。
圧迫面接と誤解する最も多いパターンです。
面接担当者が「なぜ?」「どうして?」を繰り返すのは、学生自身のことをもっと詳しく知りたいから。詰問したいからでも否定したいからでもありません。
「なぜ?」と繰り返し聞かれた経験がある方は、質問に対してぼかして答えた覚えはありませんか? 例えば、所属するサークルや部活について、「なぜそのサークル(部活)を選んだのですか?」と聞かれて「面白そうだったからです」と答えていたり。この質問で面接担当者が知りたいのは、「何が面白そうだったのか」「なぜ興味を持ったのか」という真の理由です。「面白そうだったから」では答えになっていないため、面接担当者はさらに「なぜ?」「どうして?」を繰り返して真の理由を突き止めようとするのです。
また、面接の基本として面接担当者が指導されていることの一つに、「相手が話していないことを想像して解釈・判断しない」があります。これも、面接担当者が「なぜ?」と繰り返し聞く理由の一つです。
ただ、日本語の「なぜ?」という言葉には、相手の発言を否定する意図を含む場合があるため、企業によっては、真の理由・原因を聞き出すときには、「なぜ?」という言葉を何度も繰り返すのではなく、「理由は?」「背景は?」「きっかけは?」「原因は?」などと表現を変えて聞き出すよう面接担当者を指導しています。
私も人事時代には、面接担当者を任せる社員に同様に指導していました。 しかし、すべての面接担当者がそのような訓練を受けているわけではありませんから、「なぜ?」と同じ言葉で繰り返し聞かれる場合があるのです。
こちらも学生が感じる圧迫面接の代表例の一つです。
これは、面接担当者の筋力が衰えている可能性があります。威圧したいからではありません。年齢が高めの面接担当者に見られる場合が多い態度かと思いますが、年齢が上がると、表情筋をはじめとした体の筋力が衰えるため、本人の自覚なしに表情が怖く見えてしまったり、威圧的な態度に見えてしまったりするのです。
例えば、目が笑っていない、にらんでいるように見える、怒った表情に見えるというのは、年を重ねて目の周りの表情筋を動かさなくなったり、口角が下がりがちになったりしているからです。また、腕や足を組むのは、その方が楽だから。腕組みは非言語コミュニケーションの文法で考えると「拒絶」の意味合いがありますが、決してそうではないのです。あとは、目を合わせないという面接担当者もいるかもしれません。それも、単にシャイなケースが多いです。
これらの態度はすべて、本来は面接担当者が気をつけるべきことです。ただ、すべての面接担当者が実践できているわけではなく、無意識にそのような態度になってしまっている人がいるのが実情です。 また、日本の「長幼の序」を重んじる文化が影響しているからなのか、年齢が上の人が偉そうに振る舞ってしまうこともあるようです。これは、普段からこのような態度を取っており、面接でもつい出てしまっているのです。面接が相互評価の場だときちんと理解していないことが原因だと言えます。
「それって違うよね」、「共感できないな」など発言を否定されるケースもあります。
これは、面接担当者が面接の趣旨を理解していない可能性があります。本来、面接の基本は「議論をしない」こと。面接は育成の場ではなく、学生の考えを知り、確認する場ですから、学生の意見を否定して考えを修正させたり、議論をしたりするのは目的に見合っていません。もし学生の考えに誤りがあったとしても、なぜ間違っているのか、あるいは、学生の真意と発した言葉に齟齬(そご)がないかを探っていくのが、面接担当者が本来取るべき行動です。面接担当者が慣れていないのか、単に自分の意見を主張したいだけでしょう。
「意見を否定した際の学生の反応を見る意図がある」という解釈も適切ではありません。面接は、初対面の人が一方的に相手の人となりやこれまでの人生を聞き出すという、ある種異常な場です。類似する場面はビジネスシーンにはほぼ存在しませんから、相手を否定してその反応を見ても役立つことはなく、良いテクニックとは言えません。
圧迫面接を経験した先輩たちには怒鳴られた経験をした人もいるようです。
面接の仕方としてあってはならないことです。面接は企業と学生が対等な場ですから、怒鳴るなんて失礼極まりないですし、時代錯誤としか言いようがありません。
なお、「圧迫面接は、ストレス耐性を測るために行われている」「圧迫面接を行うことで学生の人となりがよくわかる」などという解釈がされている場合がありますが、採用の世界では「圧迫面接でストレス耐性は測れない/人となりがよくわかることはない」が定説です。それでも圧迫面接を行う人がいるならば、その人はこの事実を知らないか、誤った持論があるのでしょう。
とはいえ、紹介したような面接に遭遇する可能性もありますので、次に切り抜け方を説明します。
「なぜ?」と繰り返し聞かれた場合は、先述した通り、面接担当者は「もっと詳しく知りたい」「真の理由・原因を知りたい」という可能性が高いです。質問に対して漠然とした回答をしていないか、遠回しに話を切り出していないか、真の原因・理由を話せているか、今一度自分の話し方を振り返ってみましょう。そして、真の原因・理由を端的に話しましょう。
面接担当者の態度が威圧的な場合ですが、これはもう、許すしかありません。面接担当者は決して威圧したいわけではなく、筋力が落ちていることを意識できていないだけなので、その態度に影響を受けず、「年齢を重ねるとそういうものなんだ」と思っていつも通り話をしましょう。
また、年長者が年少者に偉そうにしてしまうのも、無意識にしてしまっていることが多いです。ですから、この場合もいつも通りに対応するのがいいと思います。
面接の場で意見を全否定する、怒鳴る、といった行為は本来、あってはならないことですが、その場では許し、やり過ごすしかありません。ただし、これらの態度をとる面接担当者がいる企業は、面接担当者を訓練できていない、すなわち、採用を軽視しているか、入社後も同様の態度で扱われる可能性があります。この後の選考を受け続けるのは、再考してもいいかもしれません。
ここまで、曽和さんから「圧迫面接」によくあるパターンとその意図、対処法をお話しいただきました。では、実際に「圧迫面接」に遭遇した先輩たちは、どのように対処したでしょうか? 体験談をご紹介します。
■圧迫面接と感じた際、どのように対応しましたか? また、その面接に通過しましたか?
「圧迫の意図のない面接を『圧迫面接』と受け止め、その言動に振り回されたり、入社候補の企業から外したりするのはもったいないことです。仕方ないと思って、いつもどおりに受け答えしましょう」と曽和さんは話します。面接担当者らしからぬ態度を取られた場合は、選考の継続を再考してもよいかもしれません。
「リクナビ診断」では、自分の強みを知ることができます。面接前の自己分析に役立てて、選考に臨みましょう。
【調査概要】
調査期間:2018年6月14日~6月17日 調査サンプル:就活を経験した社会人1~3年目の212人 調査協力:株式会社ジャストシステム
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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