銀行は、顧客から預かったお金を企業や個人などに貸し出し、預金金利と貸出金利の差(=利ざや)から主な収益を得ている企業。
また、証券会社は、顧客が株式・債券などの金融商品を買う際の仲介をして得られる手数料収入や、自らが株式や債券を運用した際の利益などが、収益の大きな柱となっている。
保険会社は顧客から集めた保険料を株式や債券で運用し、そこから得られる利益を主な収益源としている。 いずれも、お金を取り扱って企業や個人顧客を支える企業だ。
銀行は、預金・貸出金の金額がきわめて大きな「メガバンク」、特定の地域を中心に営業活動を行う「地方銀行」、現金だけでなく、顧客の株式や不動産の管理なども行う「信託銀行」、特定の地域・業種を営業範囲とし、出資者である会員・組合員から預金を集め、相互扶助の理念のもと中小・零細企業や個人に融資する「信用金庫・信用組合」に大別される。
証券会社は、顧客の株式売買を仲介して手数料収入を得るのが収益の柱。 1990年代後半から台頭してきた「ネット証券」は売買手数料を安く抑えることができ、個人投資家を中心に利用者が増えている。 既存の証券会社もこれまでの店舗の業務に加え、ネット取引に力を入れると同時に、個人顧客の資産形成を手助けして、幅広い商品を案内するなどの動きが活発になってきている。 一方、法人向けには、企業の株式や債券を引き受けることによる資金調達支援や、M&A(企業の買収・合併)への助言・仲介といった「投資銀行業務」に従事している。
保険会社は、生命保険のように「人々の生存、または死亡による損失に対する保険」を提供する生命保険会社と、自動車保険や火災保険、地震保険といった「モノに関する損失に対する保険」を提供する損害保険会社とがある。 ほかに、第3の保険、とよばれる、医療保険やがん保険などもある。
以前は、銀行・証券会社・保険会社の業務には明確な棲み分けがなされていたが、2000年代以降、さまざまな規制緩和による金融の自由化がすすんだ。 その結果、銀行、証券会社、保険会社といった業界ごとの垣根が低くなり、金融機関同士の連携は強まる傾向にある。 自グループ内に証券会社を抱えている銀行も多く、銀行と証券が協力する「銀証連携」の動きは、今後さらに加速しそうだ。
また、金融各社は、ITを活用した取り組みによって新たなニーズの開拓にも注力している。 これが、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を組み合わせた造語「フィンテック」だ。 スマートフォンやタブレット端末に小さな機器を取り付けてクレジットカード決済を行う(モバイル決済)、人工知能を活用して融資の可否を判断する、インターネット上で通貨のように扱われる「ビットコイン(仮想通貨)」を手がけるなどの試みが、資金力の豊富なメガバンクを中心に進められている。
このところ銀行や保険会社を悩ませているのが、日本銀行が2016年2月から開始した「マイナス金利政策」である。 これは、金融機関が日本銀行に預けているお金にマイナスの金利をつけるという政策。 これにより、金融機関が企業や個人に貸し出す際の金利が低下し、利ざやを得にくくなってしまった。 今後もしばらく低金利時代が続くとみられている。
日本国内の企業だけでなく、海外でも屈指のIT系企業が、決済サービスなど、これまでは銀行が手がけていた業務に進出。 既存の金融機関にとって大きな脅威となっている。
ローンの借り入れ審査の際に、貸し出しの可否や、貸す場合に利率をどの程度に設定するかなどの判断を、人工知能を使って行う銀行が登場。
海外企業の買収によってグローバル市場への進出を加速する金融企業も多い。 ここ数年、メガバンク、生命保険会社、損害保険会社などが盛んに海外企業を買収している。 メガバンクの中には、新規雇用者のうち半分が外国人によって占められているところもある。
保険や証券などの金融商品を、個人に向けて販売する仕事。 顧客の要望に合わせて、適切な商品を提案する。
企業に対して金融商品を提案したり、資金の借り入れを勧めたりする。 相手企業の経営に深く関わるケースも多い。
銀行や保険会社などで、顧客である個人に対して資金計画や資産運用などの助言をする。 顧客の生活設計に合わせた提案力が求められる。
富裕層の顧客に対し、資産運用や事業承継、相続などのアドバイスやコンサルティングまで幅広いサービスを提供する仕事。 狭義のプライベートバンクはスイスの限られた銀行を指すが、広義で富裕層の個人顧客に対する資産形成アドバイス、という意味合いで、国内銀行も「プライベートバンキングサービス」を提供するところが現れている。
銀行や保険会社などで、顧客から預かったばく大な資金を運用して利益を上げる仕事。 さまざまな企業の業務内容や業績、将来性を分析し、有望と判断した企業や国、金融商品等に投資を行う。
個別企業の将来性や社会の動向などを分析し、株価の推移を予測する専門家。主に証券会社にて活躍する。
世界あるいは日本経済の動向を調査し、今後の展望を提供する。
統計学を駆使し、各保険商品にふさわしい保険料や支払金額を算出する仕事。新たな保険商品の企画にも携わる。
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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※記事制作時の業界状況を基にしています
志望業界や志望企業を絞り込んだり、志望動機をまとめたりするうえで、業界や業種への理解を深めるために「
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都市銀行とは、大都市に本店を置き、全国規模でサービスを提供している銀行のこと。このうち、規模が極めて大きい銀行は「メガバンク」とも呼ばれる。一方、信託銀行とは、預金やお金の貸し出しといった通常の銀行業務だけでなく、顧客から託されたお金や有価証券、不動産などの運用や、遺言・相続に関する業務などの「信託業務」を行う銀行のことだ。
地方銀行(地銀とも呼ばれる)とは、特定の地域を中心に営業活動を行う銀行のこと。地域の有望な企業に融資して、その成長を金融面から支える、顧客の企業同士をうまく結びつけて新たな価値を生む、地元の個人顧客に住宅ローン・教育ローンなどのサービスを提供するなど、地域経済の中でとても大きな役割を果たしている。
保険は、人の生存や死亡に関して保険金を支払う「第1分野の保険」(年金保険や死亡保険などが該当)、交通事故、火災、地震、盗難などで生じた損害を保障する「第2分野の保険」(自動車保険や火災保険などが該当)、第1分野と第2分野の中間的な存在である「第3分野の保険」(医療保険、介護保険、がん保険など)に分かれる。このうち、損害保険会社が手がけるのは第2分野の保険だ。また、規制緩和により2001年からは、第3分野の保険も扱えるようになった。
保険は、人の生存や死亡に関して保険金を支払う「第1分野の保険」(年金保険や死亡保険などが該当)、交通事故・火災・地震・盗難などで生じた損害を保障する「第2分野の保険」(自動車保険や火災保険などが該当)、第1分野と第2分野の中間的な存在である「第3分野の保険」(医療保険、介護保険、がん保険など)に分かれる。このうち、生命保険会社が手がけるのは第1分野と第3分野の保険だ。
証券会社とは、株式や債券(国債や社債など)の売買、投資信託(投資家から集めた資金を専門家が運用する金融商品)、不動産投資信託(REIT/リート。Real Estate Investment Trustの略で、投資家から集めた資金で不動産に投資し、得られた賃貸料や売買益を投資家に配当する商品)の売買などを手がける企業だ。
信用金庫とは、地域の事業者や個人が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る、相互扶助を目的とした金融機関のこと。銀行と同様、預金を集めて個人や事業者に資金を貸し出す機能を持っている。
※1 2024年3月6日時点のリクナビ2024の掲載情報に基づいた各企業直近集計データを元に算出