インターネット通販の際にクレジットカード決済で買い物をしたり、電車の運行情報が駅の掲示板に表示されているのを目にしたりするのが当たり前になった。暮らしのあらゆる場面でIT(Information technology)を活用したシステムが使われる時代になっている。
情報処理業界の企業は、さまざまな業界の企業の業務内容に応じたシステムの設計・開発や、システム構築、その後の運用・保守を請け負って、企業が円滑に業務を進められるように支えている。
情報処理業界の企業は、法人向けのビジネスを主としており、顧客企業が必要とするシステムの構築や運用の支援などを行う。企業のIT戦略の立案から、システムの設計、開発、運用・保守などのプロセス全体や協力会社をコーディネートする企業のことは、一般に「システムインテグレータ(SIer)」と呼ばれる。
システムは、ソフトウェアやハードウェア、ネットワークを組み合わせて構築するため、システム開発会社やソフトウェア会社、ハードウェア会社、通信会社など多数の協力会社がかかわる。協力会社は、SIerの要請に応じて、システムやソフトウェアの開発、ハードウェアの調達、ネットワークの構築などを受託して業務を行う。
顧客企業や求められるシステムの特性によって、ある案件ではSIerからの業務委託でソフトの開発や運用・保守を行った会社が、別の案件ではSIerとして発注することもある。
また情報処理業界の中には、自社で持っているソフトウェアや情報処理の仕組みを使って顧客のデータ分析などのサービスを行う企業や、顧客企業にITを活用してより良い業務の進め方をアドバイスするなど、コンサルティング業務を担う企業もある。
顧客が抱える課題を把握し、解決するためのシステムを設計する。仕事内容によって、ソフトウェアの設計などに携わる「アプリケーションエンジニア」や、ネットワーク設備やサーバーの設計などに携わる「インフラエンジニア」などに分かれる。
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完成したシステムを安定的に稼働させるために、システムの監視やトラブル時の対応をする。
自社のサービスやソフトウェアを、企業やソフトウェアの販売店などに売り込むほか、顧客企業のニーズを引き出し、システムの導入を提案する。
経済産業省の2018年の「特定サービス産業実態調査」によると、情報処理・提供サービス業の年間売上高は7兆2888億円。前年の7兆6683億円に比べ、わずかに減少している。
また、2017年の「情報処理実態調査」でも、1社平均IT関係諸経費は前年度比7.5%増のなか、サービス関連費用は2.7%減となっている。業界全体は伸び悩んでいるが、クラウドの利用率は2013年度の35.2%に対し2016年度は59.3%と1.7倍になっており、クラウド・コンピューティングの導入、情報セキュリティ対策の実施などで、今後も情報処理系の企業のニーズは続きそうだ。
近年では、顧客の個人情報管理の安全性の強化、サイバー攻撃への対策などセキュリティ対策が、各企業にとってますます重要になっている。個人情報の流出は企業の信用を大きく失墜させることになり、企業の存続にもかかわるような影響を及ぼしかねないことから、個人情報管理の安全性の強化に費やす予算は増加傾向にある。
Internet of Thingsの略。「モノのインターネット化」とも呼ばれる。モノに通信機能を持たせ、遠くからでも位置確認や操作、情報のやりとりができるようにする技術のことだ。人やモノの動きをデータ化し分析して、サービスや商品の改善に連携させる。製造や建築現場などの大規模なものから、身近なところではスマート家電や介護現場の見守りサービスまで、インターネットでつながった情報を処理するサービスなどがある。一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会の市場動向調査によれば、IoT市場は2023年度には9.5兆円になると予測している。
Webサイトの閲覧履歴や購買履歴、SNSの投稿文や写真、IoTからの情報など、増え続けるビッグデータをいかに活用するかは、多くの企業の課題となっている。そこで、自社内にデータ活用のノウハウを持たない企業から、情報処理系の企業に外注依頼が増加すると予想される。
Robotic Process Automationの略。単純な繰り返し作業や定型業務を自動化する仕組みは各業界で急速に進んでいる。例えば、手書きの文字を読み取ってコンピュータ上でデータ化したり、コンピュータの処理状況に応じて出力紙の補給を自動で指示したりするなど、効率化できずにいた業務に対するシステム設計のニーズが高まっている。
自動車の自動運転に向けて、自動車メーカーと情報処理系企業が連携して開発を行っている。衝突防止ソフトなどのさまざまなソフトを組み込んだ、高度なシステムの開発に注目が集まっている。
金融業界では、ITを駆使した新たな金融サービスの開発に積極的だ。金融(ファイナンシャル)とITを組み合わせた造語である「フィンテック」は、近年注目を浴びているキーワードだ。スマートフォンを用いたキャッシュレス決済の導入などが進んでいる。
社会の交通インフラを支えているのも情報システム。鉄道の運行システム、航空会社の管制システムなど、ITと交通インフラの関係は密接である。
自動運転に対応するためには、例えば物との距離、道幅など周辺のモニタリング結果や位置情報などの情報を処理し、最適なルート選択や操作を行うなど高度なシステムが必要になる。また、自動車の電動化に向けたシステム開発も需要は高い。
住民向けサービスを効率よく提供するためのシステム構築や、自治体間のデータを連携・融通するシステム開発による、利便性の向上などが図られている。
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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※記事制作時の業界状況を基にしています
志望業界や志望企業を絞り込んだり、志望動機をまとめたりするうえで、業界や業種への理解を深めるために「
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パソコンやスマートフォンを使って情報を検索する、文章を入力するなど、ふだん何気なく使っている、コンピュータ上のさまざまな処理を実際に行っているプログラムのことを「ソフトウェア」という。
暮らしのあらゆる場面で、ITサービスが活用されている。例えば、買い物をした時にクレジットカードで決済したものが翌月銀行口座から引き落とされるのも、電車の運行案内が駅で表示されるのも、情報システムが構築・運用されているからなのである。
※1 2024年3月6日時点のリクナビ2024の掲載情報に基づいた各企業直近集計データを元に算出