この記事でわかること
■情報処理業界は、情報システムの企画・開発・運用を担っている業界です。
■SIerにはメーカー系、ユーザー系、独立系、コンサル系などがあります。
■IT人材不足やグローバル展開の難しさが業界課題となっています。
情報処理業界とは、企業や官公庁などから依頼を受け、情報システムの企画・開発・運用を担っている業界です。情報処理業界の特徴やSIerの種類、主な職種、業界の課題と最新動向など、就活準備に役立つ情報をまとめました。
情報処理業界とは
情報処理業界とは、企業や官公庁などからの依頼に応じて、業務に必要な情報システムの企画・開発・運用を担っている業界です。システムの具体例としては、インターネット通販のクレジットカード決済のシステムや、電車の運行情報などを流す掲示板システム、ネットバンキングなどが挙げられます。
情報処理業界はこうした便利なITシステムの開発や運用を通じて、企業活動や社会インフラを支えています。近年は、企業のDX(Digital Transformation)推進やクラウド活用、生成AIの導入支援などのニーズも広がっていることから、今後も引き続き需要が高い業界と言えるでしょう。
SIerとSESの違い
クライアントからの依頼に応じてさまざまなITシステムを開発する企業はSIerと呼ばれていますが、SESと混同されることもあります。それぞれの違いを簡単にまとめました。
■SIer…「System Integrator」の略。顧客の業務や課題を把握した上で、システムの企画や設計、開発、導入、運用・保守までを幅広く担う。プロジェクト全体を見渡し、システムや開発の進め方を考える役割が大きい点が特徴。
■SES…「System Engineering Service」の略で、システムの開発を検討している企業に対し、技術者による開発支援を提供するサービスおよび企業のこと。エンジニアは客先に常駐しながら、システムの構築や、構築後のシステムの運用・保守を担当することが多い。
就職後の違いとしては、顧客の課題分析やシステム全体の企画に携わりやすいのがSIer、システムを実際に作り上げる面白さを感じやすいのがSESです。ただし、両者の境界は明確に分かれているわけではなく、SIerからSES、またはSESからSIerへキャリアを広げる人もいます。
SIerの4つのタイプ
情報処理業界において、プロジェクトの中心的な役割を担うのが「SIer」と呼ばれる企業です。SIerは大きく「メーカー系」「ユーザー系」「独立系」「コンサル系」の4タイプに分けることができます。
メーカー系SIer
メーカー系SIerとは、大手ハードウェアメーカーを母体とするSIerです。ハードウェアやインフラ領域に強みを持ち、自社や自社グループでハードウェア(ネットワーク機器など)を生産し、顧客向けに構築するシステムで活用するようなケースも見られます。また、最近では顧客のシステムの一部に組み込むソフトウェアでも有力な自社開発商品を有しているケースも少なくありません。さらに、大規模なシステム構築や公共性の高いプロジェクトにかかわりやすい点も特徴の一つです。
主な企業としては、富士通株式会社、株式会社日立製作所、NEC(日本電気株式会社)などがあります。
ユーザー系SIer
ユーザー系SIerとは、金融・商社・通信・鉄道といった事業会社のシステム開発部門が独立する形で生まれたSIerです。主に親会社やグループ会社のシステム開発・運用で実績を積んでいるため、例えば金融系のユーザー系SIerであれば、銀行や証券、保険などの業務に関する知識をいかしながらシステム開発を行います。業界特有のルールや商習慣を深く理解できる点が強みであり、安定した取引基盤を持つ企業も少なくありません。
主な企業としては、株式会社NTTデータや伊藤忠テクノソリューションズ株式会社などがあります。
独立系SIer
独立系SIerとは、特定のメーカーや親会社に依存せず、幅広いクライアントに対してサービスを提供するSIerです。顧客の業種や使用する製品に縛られにくく、さまざまな技術やサービスを組み合わせて提案できる点が特徴と言えます。コンサルティングから開発まで、幅広く対応することもあります。
主な企業としては、富士ソフト株式会社や株式会社大塚商会などがあります。
コンサル系SIer
コンサル系SIerとは、企業の経営課題の分析といった、システム開発に向けたコンサルティングを得意とするSIerです。顧客の課題を整理した上で、どのようなシステムが必要かを考え、ITを活用した解決策を提案します。
主な企業としては、株式会社野村総合研究所やアクセンチュア株式会社などがあります。
情報処理業界の主な職種
情報処理業界の仕事は、システムの企画、設計、開発、導入、運用・保守といった複数の工程に分かれています。各工程で専門性の異なる職種がかかわり、チームでプロジェクトを進めていくのが一般的です。情報処理業界の主な職種と仕事内容をまとめました。
システムエンジニア(SE)
システムエンジニアは、顧客の要望を基にシステムの設計を行う職種です。顧客へのヒアリングを通じて業務上の課題を把握し、どのような機能や仕組みが必要かを具体化します。
プログラミングを担当することもありますが、主な役割はシステム全体の設計やクライアントとの調整、開発工程の管理です。対人的な業務や上流工程など、AIに代替されにくい業務も多く含まれているポジションと言えます。
プログラマー
プログラマーは、システムエンジニアが作成した設計書などを基に、実際にプログラムを作成する職種です。現場で経験を積むことで、システムエンジニアやプロジェクトマネージャー、ITコンサルタントなどへキャリアを広げる人もいます。
インフラエンジニア
インフラエンジニアは、システムが動くために必要なサーバーやネットワーク、データベース、クラウド環境などを設計・構築・運用する職種です。システムの安定運用や、障害が起こった際の復旧なども担います。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、スケジュールや予算、リスクなどを踏まえつつ、プロジェクトを計画通りに進める役割を担います。特に大規模なシステム開発においては、多くの企業や職種がかかわるため、関係者間の調整が欠かせません。技術的な知識に加えて、マネジメント力やトラブルへの対応力も求められるポジションと言えるでしょう。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、企業の経営・業務課題に対して、ITを活用した解決策を提案する職種です。業務課題を整理した上で、DX推進や業務改革に向けて、どのようなシステムやIT投資が必要かをアドバイスします。
営業・セールスエンジニア
営業は、顧客企業の課題を把握し、システム開発やITサービスを提案する職種です。単に製品やサービスを売るだけではなく、顧客の業務や経営課題を理解した上で、最適な解決策を提案することが求められます。
一方、セールスエンジニアは、技術的な観点から営業をサポートする職種です。顧客に対してシステム構成や導入方法を説明したり、技術面での質問に答えたりします。営業力と技術理解の双方が必要です。
また、営業・セールスエンジニアは、顧客に対して最新のITトレンドほか、さまざまな情報提供を行うことで、顧客のITへのニーズを掘り起こしつつ、自社と顧客の関係性を強化していくことで、自社サービスの提案機会の獲得につなげていきます。
運用・保守エンジニア
運用・保守エンジニアは、導入されたシステムが安定して稼働するように管理します。システムの監視や障害対応、定期メンテナンス、機能改善などが主な役目です。
情報処理業界の現状と課題
昨今は多くの企業が、経営課題の解決に向けて「IT」を活用しています。情報処理業界はシステム開発などを通して、企業の業務改善や事業改革を支える役割を果たしていると言えるでしょう。一方で、市場の需要の高まりに対応するに当たって、業界全体で向き合うべき課題もあります。
IT人材の不足
長年、IT人材の不足という課題を抱えてきたIT業界ですが、昨今はAIの発達によって定型的な作業の省人化が進んでいます。一方で、顧客の課題を分析する仕事や、関係者を調整する仕事、プロジェクトを管理する仕事など、AIがカバーし切れない領域では引き続き人材が不足しています。今後はAIを使いこなす力や、業務理解力、コミュニケーション力を備えた人材がより求められやすくなるでしょう。
グローバル展開の難しさ
少子高齢化に伴う国内市場の縮小を受けて、情報処理業界の各社が目指しているのが、「グローバル展開」です。ただし、海外の企業は社内にIT関連の開発部門を設けていることが多く、既存のパッケージサービスと小規模な自社開発によってシステムを運用しています。日本のSIerが今後どのように海外へビジネスを広げていくか、対応が急がれています。
情報処理業界の知っておきたいトピックス
最後に、情報処理業界を目指す就活生が知っておきたいトピックスをご紹介します。
生成AIの活用
システム開発の現場において生成AIを取り入れ、効率化を図る動きがあります。一方で、生成AIは誤った内容を出力するリスクもあるため、人によるチェック体制も不可欠です。各社では生成AIを導入するだけでなく、安全に使うためのルール作りやシステムの連携支援を進めています。
ローコード・ノーコード
ローコード・ノーコードとは、従来よりも少ないプログラミングでアプリケーションや業務システムを開発できる手法のことです。専門的な開発知識が限られている場合でも、システムの内製化を目指せる場合があります。
一方で、システムにトラブルが起きた際は問題点がわからず、対応できなくなるリスクもあります。情報処理業界はローコード・ノーコードツールの導入支援や、利用者向けの研修などを通して、企業の内製化をサポートしています。
レガシーシステム刷新の需要拡大
古い言語や技術で作られたシステムのことを、レガシーシステムと呼ぶことがあります。古いプログラミング言語で作られたシステムの場合、その言語を扱えるエンジニアが減り、保守や機能追加が難しくなる点がデメリットです。
昨今、そんなレガシーシステムを新しいプラットフォームや言語で再構築する需要が高まっています。レガシーシステムは金融や交通といった、“止めることができないインフラ”を支えている場合も多いため、既存システムの安定運用を維持しつつ、将来を見据えた刷新を提案する力が重要になっています。
まとめ
情報処理業界の特徴や主なビジネスモデル、今後の業界の動向などについて紹介しました。IT業界には情報処理業界のほか、ソフトウェア業界や通信業界といった、さまざまな分野があります。IT業界への理解を深めたい人は、ほかの分野についてもあわせて確認しておくとよいでしょう。
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東京工業大学(現:東京科学大学)大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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