他己分析を就活に役立てる方法 <具体的なやり方、メリットを紹介>

「他己分析」について、自己分析とどう違うものなのか、具体的にどうやればいいのかを知りたいと思っている学生も少なくはないでしょう。そこで、就職・転職支援スクール、我究館の館長を務める熊谷智宏さんに、他己分析の考え方やメリット、具体的な進め方、就活への役立て方について聞きました。

他己分析の考え方〜5つのメリットを紹介

「他己分析」は、自分を他人に客観的に分析してもらうことで、「他人から見た自分」を知り、自己理解を深めるために行います。心理学でよく使われる手法に「ジョハリの窓」というものがありますが、自分に見えている「自分の特徴」と、他人に見えている「自分の特徴」を挙げ、一致する部分としない部を4つの窓に分類することで、双方の認識のズレを理解し、自己認識を深めることができます。自分と他人の認識がズレている原因を探り、他人の認識を受け入れることで、本人も気づいていなかった「未知の自分」に気づくことができます。以下に、他己分析を行う5つのメリットを紹介します。

メリット1:自己分析の説得力を増すことができる

ジョハリの窓のように、人の人格や性質において、本人に見えていない窓はたくさんあるものです。他人が自分をどう認識しているかを知り、自分が思う自分と一致している部分を確認すれば、自己分析により説得力を増すことができるでしょう。また、一致しない部分について、ズレている要因を探ってみることで、自分自身がどういう人間であるのかをより深く分析することができます。

メリット2:自分では気づかない新たな価値観や強みを発見できる

他人には見えていて、自分には見えていない部分こそ、本人の考え方や価値観において、非常に重要なものであるケースは多いです。なぜなら、本人が大事にしていることほど、「自分にとって当たり前のこと」だからです。例えば、「人の話を聞き、応援することが好き」という人の場合、本人にとっては、「応援することが当たり前」のため、他人も当然そうしていると思い込んでいることがあります。他人から、「あなたはいつもそういうことをしている。なぜそこに情熱を傾けるのか?」などの指摘を受けることで、初めて自分の考えに気づくケースも少なくはないのです。また、他己分析では、他人の価値観を通じて、自分がどう見えるのかを知ることができます。「この人の視点では、自分が短所だと思っていた部分も長所となるのか」など、自分とはまた違う価値観があることにも気づけるのです。他己分析を通じて、自分の新たな価値観や長所、強みなどを発見することができるでしょう。

メリット3:自分の性質を言語化できる

他己分析は、強み・弱みなどの言語化にも役立てることができます。例えば、「コミュニケーション能力が高い」という強みがあった場合でも、「祖父や祖母などの年配者と触れ合ううちに、人に寄り添って話を聞くようになった」「サークルの渉外担当として活躍し、交渉力を身につけた」など、言葉の定義に違いがあるものです。「コミュニケーション能力とは具体的にどんな力か?どんな経験をして、その力を身につけたのか?」などを他人から聞かれることは、自分の中での言葉の定義そのものを考えることにつながり、自己認識を深めることができます。

メリット4:学生と違う立場の視点にも気づくことができる

社会人となった先輩やキャリアセンターの担当者などに他己分析をしてもらうことで、学生とは違う立場の視点に気づくことができます。学生の中には、「何らかの特別な経験がないと、アピールできない」と考え、サークル活動の役職名を無理やり作ったりする人もいますし、短期の海外留学に出かけてエピソードとして語ろうとする人などもいます。しかし、社会人の視点では、肩書や経歴より、本人の価値観や性質を表す出来事に興味があり、「なぜそれをやり、どんなプロセスを経て、何を得たのか」ということが大事なのです。特別な肩書や経験がなくても、「その場で本人が工夫したこと、気づいたこと、学んだこと」などが知りたいと考えています。学生同士の場合、サークルの代表などの肩書があることを評価しがちですが、社会人にとっては、「役職はないけれど、サークル全体に影響を与えた」というエピソードの方がむしろ興味を抱く可能性は高いのです。学生とはまた違う社会人の視点を知り、社会や仕事において評価されるのはどういう点なのかを知ることも大事でしょう。

メリット5:マッチする企業を探すことや第一印象の改善にも役立つ

他己分析を行うことで、自分が周囲からどんなキャラクターとして認識されているのか知ることができます。企業や業界によって、社風も会社の文化も異なり、働く社員のカラーは異なるもの。働く社員と自分のキャラクターに共通点があるかどうかは、自分にマッチしている企業かどうかを見定めるポイントにもなります。また、自分が相手に与える第一印象がどんなものかを知ることもできます。社会人のマナーでは、相手に不快感を与えないように身だしなみを整えることは大事です。人から自分がどう見えるのかを知れば、改善に役立てることができます。さらに、話し方や振る舞い方についても、「はきはき話した方が、聞き取りやすい」「目を合わせた方が明るい印象になる」「もっとゆっくり話すと、落ち着いて見える」など、自分では気づかない改善点を指摘してもらうことができます。

「誰」に「何」を聞けばいい?他己分析の具体的なやり方を紹介

ここでは、他己分析の具体的なやり方について紹介していきます。

他己分析の相手、「誰」に聞けばいい?

他己分析では、回答が偏ってしまわないように、できるだけさまざまなタイプの人たちに意見をもらうことが大事です。年齢、立場、活動の場、自分との関係性などが異なる複数の人たちにお願いしましょう。以下に、他己分析をしてもらう相手の例と、それぞれに分析してもらえるポイントを紹介します。

  • 仲のいい友人
    →学校やサークル活動、部活動などで一緒に過ごしている友人には、日ごろの行動に表れる性格・性質や、それにかかわる具体的なエピソードを話してもらえます。
  • 保護者
    →幼いころから見守ってきてくれた保護者には、本人が本質的に持っている性格・性質について聞くことができます。
  • キャリアセンターの担当者
    →見た目の清潔感や話し方、振る舞い方など、第一印象についてのフィードバックをもらえます。
  • 社会人の先輩
    →社会人となった学校の先輩や、OB・OG訪問などで知り合った先輩には、社会人としての視点や、その業界や企業などを志望するに当たって必要な視点、本人に足りないものや足りているものを聞くことができます。また、他己分析で導き出した本人の性質に対し、その企業や業界にマッチするかどうかも教えてもらえるでしょう。
  • 長期インターンシップで触れ合った社会人
    →現場で働く社会人の先輩が、自分の働きぶりをどう捉えているのかを知ることができます。また、その人の仕事に対する価値観や働き方などを通じて、「自分が社会人となったとき、どういう環境でどんな力を発揮できるのか」を考えることにも役立ちます。

他己分析では、「最初に誰に聞くか」が大事

他人に自分を分析してもらうことを、「恥ずかしい」と思う人もいれば、「自分の問題点を指摘されそうで怖い」と感じる人もいるでしょう。そのため、まずは本音で語れる相手と一緒に、自分自身を掘り下げていくことがポイントといえます。他己分析を始める際、最初にお願いする相手には、自分が日ごろから信頼できると思っている人物を選びましょう。学校や部活動、サークル活動などで苦楽を共にした仲間や、大事な思いや悩みを打ち明けてきた友人など、互いに尊敬でき、応援し合えると思える相手を選ぶことが重要です。なぜなら、他己分析では、自分を大きく見せようとせず、過小評価することもせず、心の奥に隠していた本音をどんどんアウトプットすることが大事だからです。

また、最初の一歩で、率直に語り合える相手に向き合ってもらい、自分の思いや考えを言語化していくことには、非常に重要な意味があります。自分自身の核となる部分、軸となるものを明確にすることができるからです。他己分析を受けた際、社会人や内定者の先輩などの意見に左右され、自分を見失ってしまう学生もいますが、それは、自分自身の考えが明確になっていないからなのです。まずは、自分が大事にしている価値観を明確にし、その上で、さまざまな人々の意見に対してどう思うのかを考えることが大事です。他己分析は、多くの人の意見を聞き、新たな視点を取り入れるためのものだと考えましょう。

他人に自分を分析してもらう学生

他己分析では、どんな質問をすればいい?

他己分析をお願いする際には、相手が答えやすいように、具体的な質問を準備しておくことが大事です。相手によってアレンジし、気になること、引き出したいことがあったら、項目の追加もしていきましょう。

他己分析の質問例

  • 長所、短所は?
  • 特徴は?どういう性格だと思う?
  • 第一印象は?親しくなってからギャップはあった?
  • 他人にどう紹介する?
  • どんな仕事が向いていると思う?
  • どんな場面で活躍できると思う?
  • 自分に関する、印象深いエピソードは?
  • 改めた方がいいと思うところは?
  • 尊敬できたり、すごいと思ってもらえたりする部分はある?
  • 人と接することに関して、何かアドバイスはある?

他己分析で気をつけたいポイント

せっかく他己分析を行っても、ただ質問し、意見を聞いて終わりにするだけでは、今後に役立てることができません。他己分析で気をつけたいポイントを参考にしましょう。

「思い出す」「深める」「多様な評価をもらう」3つのステップを意識すること

他己分析を進める際には、「自分で思い出す」「信頼できる人との対話で深める」「多様な人に評価してもらう」という、3つのステップを意識することが大事です。まず、自分自身で各質問に対する回答を考え、それにかかわる過去の経験などを思い出しておきましょう。その後、信頼できる友人に本音を話し、対話の中で自分の考えを深めていくステップへと進みましょう。これらを経て、自分の核となる考え方、軸となる価値観が明確になった後、多くの人に他己分析をしてもらい、客観的に評価してもらいましょう。

自分のコアとなる部分を明確にしてこそ、流されることなく、拒絶することなく、多様な視点を受け入れることができるはずです。「この人たちは、こう受け取るのか」「こういう属性の人には、自分はそう見えるのか」など、人ぞれぞれの意見をしっかりと受け止め、自分がどういう人間に見えるのか、自己認識とのズレがあるのかを分析していきましょう。

お互いに繰り返し質問し、深掘りすること

他己分析では、質問力がとても大事になります。分析してもらう相手には、「自分の回答に対し、疑問に思う部分をどんどん聞いて深掘りしてほしい」と伝えましょう。例えば、「面倒見がいい」という長所がある場合、「なぜそういう人になったのか」を聞いてもらうことで、「長女だったから妹や弟の面倒を見ていた」「部活動でマネージャーをしていた」「バイト先でみんなの意見をまとめていた」など、自分自身の背景について一貫性を持って言語化していくことができます。これにより、「どんな場所でも、そのような長所を発揮できる」という再現性のあるものを発見できます。また、「人を支えることに対し、自分はこんな喜びを感じる」など、経験を通じて育まれた価値観を発見することができます。

また、相手に対しても、「なぜ自分のことをそう思ったのか」「その背景にはどんな考えがあるのか」を繰り返し聞いて深掘りしていくといいでしょう。相手の考え方を明確にしていくうちに、その人の価値観も見えてくるので、「自分とは違う価値観を持つ人が、物事をどう捉え、どんな部分を良しとするのか」を知ることにもつながります。「他人の価値観を通じて自分がどう見えるのか」を具体的に知ることができますし、自分では忘れていたエピソードなどを話してもらうこともできるでしょう。

模範回答ではなく、本音を話すこと

企業が面接を行う際には、模範回答ではなく、学生それぞれの性格や性質が見える回答をしてほしいと考えています。挫折や失敗の経験やそれを乗り越えて得たものなどを聞かれることも多くありますが、「思い出したくない自分の恥」と考え、話さない学生もいるでしょう。しかし、そうした部分も明らかにし、客観的に話すことができなければ、自分自身を知ってもらう機会を逸してしまうことになるのです。他己分析で本音を語り、自分の考えを整理しておくことは非常に大事です。

また、学生時代に頑張ったことや周囲を巻き込んだことなどを聞かれた際、「実績を語るのは、自慢しているみたいで恥ずかしい」と思うケースもあれば、「話を盛って、自分をアピールしよう」と思うケースもあります。本音で話せる相手に他己分析をしてもらい、「そういう能力がある」「それは言い過ぎ」などの指摘を受けることで、客観的な視点を持つことができます。

他己分析の結果を、自己分析に照らし合わせること

他己分析の結果を、自己分析と照らし合わせ、再度分析していくことが大事です。例えば、自分が強みだと思っていたことと、他人から見た際の強みが異なるケースはよくあるものです。また、自分の中では強みだと思った部分が、世間の水準と比較した場合、強みではなかったというケースもあります。例えば、「行動力がある」という点について、「飲食店の接客バイトをやってみようと思い、応募して、実際に働いた」という話をした場合、「それは普通だよね」と言われてしまうものでしょう。逆に、「どうしてもやってみたいバイトがあり、求人募集していなかったけれど、直接電話して熱意を伝えてみた結果、働かせてもらうことができた」という場合は、行動力があると判断をする人がほとんどでしょう。他己分析で得た意見を自己分析の結果に照らし合わせ、「人が自分をどう評価するのか」をあらためて分析することが大事です。

一方、自分が憧れている業界に対し、強みや長所をPRできるように自己分析の答えを誘導してしまう学生もいます。例えば、クリエーティブな業界を志望しているために、なんとかそれに該当する能力を捻出していた場合、他己分析を通じて、「企画を考えるより、真面目にコツコツ積み重ねる力の方が長所だと思う」という評価を多く受けるケースもあります。こうした場合、憧れの業界や企業に自分の性格や性質、能力がマッチしていない可能性もあります。また、どうしてもその企業で働きたいと考えている場合には、多様な仕事や職種の中から、自分の力を生かして活躍できる場を探すことにも役立てられるでしょう。他己分析と自己分析のギャップを理解することは、自分にマッチする企業や仕事を発見することにつながり、よりアピールできる強みを発見することにもつながるでしょう。

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他己分析は、就活にどう役立つ?

他己分析で自分自身の考えや背景を深く見つめ直せば、エントリーシートや面接で語る内容により説得力を増すことができます。また、「他人から見てどう評価されるのか」という視点が抜け落ちている学生も少なくはありませんが、他己分析で自分の能力や経験を客観的に評価してもらうことで、「何をどう伝えれば自分の良さを受け止めてもらえるのか」を考え、語る内容を磨くことができるでしょう。

さらに、他己分析は、「語彙の精度が磨かれる」という点でも役立ちます。例えば、「自分の長所は、相手の立場に立つことができる点だと思う」という場合も、他人からの指摘を受けて深掘りしていくうちに「実は、『人と向き合って課題を発見する力がある』ということでは?」など、さらに進んだ答えを見つけることができるでしょう。ほかの学生とは違う、自分ならではの説得力ある表現ができることは、就活において大きな力となるはずです。

また、一人で行う自己分析は苦しいものですが、二人で行う他己分析は楽しいものとなるはずです。相手の思考力によって、自分の思考力が深まり、お互いに新たな発見をしていく楽しさを感じられます。相手との絆を深めていくこともできる作業なので、就活のパワーの源として、ぜひ活用していきましょう。

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熊谷智宏さんのプロフィール写真 撮影/hikitachisato

【監修】我究館 館長 熊谷智宏さん

我究館館長。株式会社リクルートに勤務した後、2009年、株式会社ジャパンビジネスラボに参画。現在までに3000人を超える大学生や社会人のキャリアデザイン、就職・転職、キャリアチェンジのサポートを行ってきた。難関企業への就・転職の成功だけなく、MBA留学、医学部編入、起業、資格取得のサポートなど、幅広い領域の支援で圧倒的な実績を出している。また、国内外の大学での講演や、執筆活動も積極的に行っている。著書に、就活全般の考え方や面接対策などを指南する『絶対内定2021』(ダイヤモンド社)シリーズがある。

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記事作成日:2020年3月3日

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