就活においては、自己分析がとても大切だと言われます。でも「自分の良さがわからない」「客観的に分析できる自信がない」という人もいるでしょう。そこで、自分への理解をより深めるために取り組みたいのが「他己分析」です。他己分析の目的や、協力してもらう人、具体的な質問、そして結果をどのように就活に生かすかを、就職・転職支援スクール、我究館で就活コーチを務める立川雄太さんに聞きました。
目次
「他己分析」とは、他者に自分の特徴について質問し、人から見たあなたの印象や評価を知って自己理解に役立てることを言います。他己分析は、自己分析と対立する概念ではなく、自分をより深く知るための、自己分析の手段の一つということができるでしょう。
他己分析の最大のメリットは、自己分析を他者の客観的な視点から補強できる点です。 一人で行う自己分析だけでは、主観的な視点に偏ったり、自分をなかなか肯定できなかったりすることもありますが、そんなとき他己分析で他者からのフィードバックを受けると、「自分にはこんな一面もあったのか」という新たな気づきにつながります。それを基に、再びこれまでの自分を振り返ることで、さらに自己理解を深める助けになるのです。 自己分析とは、「自分の取扱説明書を作る作業」に例えられます。自分の説明書を作るとしたら、「どんな環境で育ったか」「どう改良(成長)してきたか」「どんな機能(能力)があるか」などを盛り込むと思いますが、そこに「実際にどう使えばより効果を発揮するか」というユーザー(周囲の人)の声が加われば、さらに完成形に近づき、説得力が増すはずです。そのユーザーの声に当たるものが、他己分析であると考えましょう。
「他己分析は○○までにやる」という決まりはありませんが、自己分析と同様、早めのタイミングで着手した方が、エントリーシート(以下ES)作成や面接に生かしやすくなります。 また、自己分析と他己分析はどちらから着手してもOKです。一通り自己分析をしてから他己分析に取り組んでもいいですし、「よくわからないから、先に人に聞いてみよう」でも構いません。ただしどちらの場合でも、受け取った評価をもう一度自分の認識と擦り合わせ、「なぜそう見えるのか」「なぜそう評価されたか」をしっかり考えることが大切です。
自己分析だけでは難しい部分を補うため、他己分析を行うときは特に次の2つの目的を意識しましょう。後述するように、これらの目的に合わせて、ヒアリングする人や質問内容を選ぶのがオススメです。
他己分析の1つ目の目的は選考、特に面接での「自分の見せ方」を知ることです。 例えば、積極的な性格に反して一見控えめに見える人が、単純に面接で「私は積極性があります」とアピールしても、少し伝わりにくいものです。一方、同じケースでも「私は控えめに見えて…」「人には物静かだと言われますが…」と、ギャップを前提とした伝え方ができれば、説得力が増し、聞き手に興味を持たせることもできます。 他己分析によって、自分の見た目や話し方から想起されるキャラクターを自覚し、そこから「自分の見せ方」を組み立てることで、面接でより伝わりやすいプレゼンテーションができるようになるでしょう。
2つ目は「仕事をする人」としての、自分の長所や短所を理解することです。 選考で企業が見ているのは、「この人に入社してもらって一緒に働きたい」と思えるかどうかです。ですから就活においては、企業という集団の中で発揮される自分の能力や、逆に弱点となるポイントをきちんと理解し、選考で伝えられるようにしておく必要があり、そのためには他己分析がとても有効です。これまで属していた集団や、コミュニティーの仲間であれば、あなたが特に活躍していた場面や、もっと頑張ってほしかった点などについて、的確なフィードバックがもらえる可能性が高いでしょう。
他己分析の基本的なやり方とポイントについてご紹介しましょう。
誰かに他己分析を依頼する場合、雑談のついでに「自分をどう思う?」と聞いたとしても、良い回答は得られません。まず「就活の自己分析のため」という目的をきちんと告げて、基本的に対面できる時間を取ってもらうこと。そして、「短所も含めて遠慮なく意見を言ってほしい」と伝えて、真面目な場であるという雰囲気をつくることが大切です。あなたが本気度を高くして臨めば、相手も一生懸命考えてフィードバックをしてくれるでしょう。
他己分析は、多様なタイプの人に協力してもらうのが理想的です。仲の良い友人だけでなく、後輩や先輩、アルバイト仲間、顧問の先生、他校の就活生など、なるべくさまざまな関係や立場の人を選ぶことで、多角的な視点からの他己分析ができます。 なお「少なくとも○人には聞くべき」という決まり事はありません。他者のフィードバックから新たな気づきが得られ、自身が納得することができれば、数は意識しなくてもいいでしょう。
質問内容が曖昧にならないよう、事前に「この人にはこれを聞こう」と項目を具体化して臨むことをオススメします。例えば「自分の長所って何だと思う?」と聞くよりは「自分がいて良かったと思うことがあったら教えてくれる?」という聞き方の方が、よりエピソードを引き出しやすくなります。また、質問をするときは「自分では○○だと思っているのだけど…」など、自身の認識をひと言添えると、相手は答えやすくなります。
上で述べた、他己分析の「2つの目的」に応じて、具体的にどんな人にどのような質問をすると良いかをご紹介しましょう。
面接での「自分の見せ方」を知るためには、初対面の人や、比較的接点が少ない人に対して、自分の印象を聞くことが有効です。取り組みやすいのは、インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムなどで出会ったほかの就活生と、お互いに下記のような質問をし合うこと。自己紹介の際に、「他己分析をしてくれる人を募集しています」とアナウンスしてみるのも一つの方法です。
また、OB・OGなどの社会人にも同様の質問をすれば、社会人の視点から見せ方のアドバイスも含めて、有意義な意見がもらえるでしょう。
「仕事をする自分」の特徴を知るためには、友人グループや、サークル、部活、ゼミなど、自分が所属してきたいろいろな集団・コミュニティのメンバーに、下記の質問をするといいでしょう。同期、先輩、後輩、先生など、なるべく属性が異なる人に聞くのが理想。相手が見つからない場合は、高校時代、中学時代へとさかのぼって構いません。
質問をする際は「なぜそう思ったのか」という理由と、「具体的なエピソード」をセットで聞きましょう。そうすれば、のちに自分で掘り下げるときに、振り返りがしやすくなります。
最も身近な保護者や家族は、良き理解者である半面、逆に距離が近すぎて、あなたが所属してきた集団・コミュニティーで発揮している価値を、客観的に評価できないケースもあります。したがって、他己分析をしてもらっても、あまり効果的な答えが得られないかもしれません。 保護者や家族には、自己分析を進める際に、自分では忘れていた昔のエピソードを思い出す手助けをしてもらうなどするといいでしょう。
友人や知人から他己分析をお願いされたら、それは願ってもない機会。「喜んで引き受けるので、自分の他己分析も一緒にお願いします」と対応するのがオススメです。他己分析は一方通行で行うよりも、相互に行った方が、お互いに率直な意見が言いやすくなるからです。 大切なのは、相手の質問と真剣に向き合い、忖度(そんたく)や遠慮のない本音の指摘をしてあげることです。そうすれば相手からも、より良いフィードバックが得られると心得ましょう。
他己分析でさまざまな意見をもらったら、自分自身が納得できることも、意外に思ったことも、まずは真摯(しんし)に受け止めましょう。その上で「なぜこうした特徴があるのか(指摘を受けたのか)」をもう一度かみ砕いて考えることが大切です。
過去の経験の中で、自分が特に頑張れたことや、パフォーマンスを発揮できたことを思い出し、他己分析で指摘されたポイントが、その中で生かされていたかどうかを確認していきましょう。そうすると、それぞれのエピソードや、パフォーマンスに共通する特徴が見えてきて、選考や面接でアピールするべき内容が整理されていきます。他己分析から深掘りすることで、一人で自己分析をしていたときよりも、さらに強い確信が持てるでしょう。
他己分析の中では、何となく自覚していた自身の欠点を、はっきり指摘されることもあるでしょう。そんなときは「これも自分」と素直に認めてしまうことが大切です。例えば、しゃべるのが苦手だという人は、面接の練習をしても、すぐによどみなく話せるようにはなりません。しかしその欠点を自覚することで、自分のキャラクターに合ったしゃべり方や、ふさわしい表現を身につけることは可能です。欠点や弱みは、選考準備に生かせる材料としてポジティブに捉えましょう。 なお、他己分析で指摘された内容は、ぜひメモに書き留めて、就活中に何度か見返すことをオススメします。特に自分の第一印象や、他者からの見え方については忘れてしまいがちなので、いつでも見られるように手元に置いておきましょう。
他己分析の結果は、選考のさまざまな場面で積極的に活用していきましょう。
例えば、他己分析でコメントしてもらった「自分の第一印象から受けるイメージ」にぴったりマッチしたエピソードを持っていれば、面接で堂々と伝えるといいでしょう。逆に、イメージとギャップがある特徴を語る場合は、「印象とは違いますが…」などのひと言を付け加えると説得力が増し、自己認識がきちんとできていることも相手に伝わります。
あなたが集団の中で発揮する力に関しては、「あのとき活躍していた」「○○がいて良かった」と他者から高く評価されたポイントの方が、自己評価より的確であることが多いものです。ですから、自分では少し自信がなかったり、意外に感じたりしたエピソードも、素直に受け止めて、自分が納得できたら、「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」や自己PRに盛り込んでみましょう。 もちろん、自覚していた自分の強みと、他己分析が一致した点については、ぜひ自信を持ってアピールしてください。採用担当者に「その特徴があると言える根拠は?」と聞かれたら、「こんなときに力を発揮していたから」と、強い説得力を持って答えられるはずです。 他己分析で伝えるべきポイントが明確になるほど、自信を持って自分のことを伝えられ、面接で発揮できるパフォーマンスも上がるという効果が期待できるでしょう。
▼2026年卒向け詳細情報▼
「リクナビ診断」を受ける
性格検査や適職診断など、自己分析に役立つツールを活用してみましょう!
インターンシップ&キャリアや就活準備に役立つ情報をX(旧Twitter)でも発信中!
——————————————————
オーストラリアへの留学・学習塾講師やアパレル販売店員など9つのアルバイトを掛け持ちした後「人生の転機にポジティブな影響を与えられる存在になりたい」と決意。2019年にエン・ジャパン(株)へ新卒入社。人材紹介事業部の営業担当として関西の大手から中小まで300社の担当企業の採用支援に携わる。落ち込んだIT領域の立て直しや積極的な面接対策等の求職者対応を通じて確固たる地位を築く。3年の勤務を通じ、目の前の人の「やりたい」を実現できる仕事に就きたいと考えて上京。2022年、我究館・就学コーチに就任し、300名以上の就活生の支援を実施。
——————————————————
自己分析の目的は?先輩たちに聞いたオススメの方法を詳しく紹介!
就活準備を進めていると、「自己分析をした方がいい」と耳にすることもあるのではないでしょうか。とはいえ
「そろそろ就活に向けて準備しないといけないと思っているけれど、何から始めていいかわからない…」そんな
就活準備で自己分析や企業研究などを進める人も多いのでは?自分のこれまでの経験を書き出したり、会社説明