エントリーシート(ES)や履歴書の「趣味・特技」「資格」の欄。「特技と言えるほど書けることがない」「こんな趣味や資格も書いていいの?」と頭を悩ませる就活生もいるのではないでしょうか。“採用のプロ”曽和利光さんに、「趣味・特技」「資格」を書くときのポイントをそれぞれ教えてもらいました。
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就活では、学生に対してさまざまな質問がされますが、人事や面接担当者が知りたいことは、一貫して「あなたはどんな人ですか?」ということです。どんな価値観を持ち、どんなことに喜びを感じ、どんなことにモチベートされる人間なのか、それはどうしてなのかを知ることで、自社に合いそうか、入社後に活躍できそうかなどを判断しようとしているからです。
ESの趣味・特技・資格欄でも、人事や面接担当者が知りたいことは本質的には同じです。何にやりがいを感じるのか、仕事にもつながるエネルギー源はあるのかなど、応募者の人となりや価値観を、ガクチカや自己PRとは違った方面から知ろうとしているのです。
就活という選考の場で、趣味・特技の欄に突飛な内容を書くのは抵抗があるという人もいるでしょう。例えば、「本当は推し活にハマっているけど、オタクだと思われたくないから、ESで書く趣味は当たり障りのないものにしておこうかな…」と考える人もいるかもしれません。
しかし、趣味・特技が突飛な内容だったとしても、「独自な観点を持っていてよい」とする企業は増えています。同様に、何か特定の分野に執着する「オタク性」を、ポジティブに捉える企業も多いです。最近では、のめり込んで深く掘り下げる力、徹底的にやり抜く力を評価して、「オタク性があること」を採用基準に設定している企業も珍しくありません。
企業がオタク性に注目する背景には、採用ニーズの変化があります。これまでの多くの日本企業では、部署異動などでさまざまな業務を経験し、広範な知識を身につけていけるゼネラリスト志向の人の採用ニーズが高い傾向がありました。しかし、個々の業務の高度化・複雑化に伴って仕事の分業化が進み、特定の分野を専門にしたいというスペシャリスト志向の人を評価し、採用したいという企業も増えてきています。
特定の領域を担当することになったときに、「面白い!」と思って深く追究し、熱中することができる「オタク性」は、仕事をする上での強みにつながるケースもあるのです。
就活では、好きな内容についての是非は問われないので、自分が本当に好きなもの、ハマっているものがあれば、積極的に書くことをオススメします。
人事や面接担当者の印象に残りやすい趣味・特技は、「意外性」のある内容です。ここでの“意外性”は、珍しい内容の方がよいという意味ではありません。その人の属性(学部やサークル、バイト先、人柄など)からは想像できないような内容が書いてあると、興味をそそられるという意味です。
例えば、穏やかで内向的な思考だと思っていた学生が、趣味・特技の欄に「毎年、富士登山を行い、友人と登頂タイムを競っています。」と書いていたら、「実はアクティブで競争心もあるんだな、もっと詳しく聞いてみたい」と思うかもしれません。
同様に、コミュニケーション能力が高く、外交的な思考だと思っていた学生が、「書道によって自分と向き合う時間が好きです。」と書いていたら、新たな一面を掘り下げたくなるでしょう。
ここでは、ESで趣味・特技を書くときの3つのポイントと例文を紹介します。
前述のとおり、趣味・特技はあくまでも「あなた」について知るための項目です。「“何”が好きなのか」だけではなく、「“なぜ” 好きなのか」「“どのくらい” やっているのか」も書くようにしましょう。加えて、趣味・特技に取り組んだ影響として「どういう性格や価値観になったか」「自分なりにどんなことに生かしているか」なども書かれていると、人事や面接担当者はより興味をそそられます。
書くスペースや、制限文字数に余裕がある場合には、趣味・特技を始めたきっかけ、続けている理由についても触れておくとよいでしょう。
「“なぜ” 好きなのか」を伝えようとして、好きな対象についての説明を長々としてしまう人がいますが、これは避けた方がよいでしょう。人事や面接担当者が知りたいのは、あくまでも「あなた」についてであり、対象についてではないからです。
例えば、アイドルの推し活を趣味としてあげる場合、「努力家で、ダンスがうまくて、コミュニケーション能力が高くて会話のテンポが良いところが好きです」などと、推している人物の素晴らしさばかり伝えてしまわないように注意しましょう。
「趣味・特技」が思いつかない場合も、記入欄がある以上は、何かしら書くことをオススメします。
記入欄のある設問について、空欄や「特になし」で終わらせてしまうと、「この人は入社して仕事で壁にぶつかったときも思考停止してしまう人ではないか…」という印象を企業に与えてしまう可能性があるからです。
広く浅く、いろんなことに関心を持っている人の中には、趣味・特技と言うほどやり込んだものがないという人もいるでしょう。その場合は、「趣味・特技と呼べるかはわかりませんが〜」など、“謙遜”を交えながら書いてみるのも一つの手ではないでしょうか。
<例文1>
趣味は書道です。大学2年生から始め、毎日30分、写経をすることが習慣になっています。書を通して自分と向き合う時間が好きで、今では筆跡から書いた人の心情や性格を自分なりに推測できるようになりました。
<例文2>
趣味はアイドルの推し活、特技は人脈構築です。推しの努力する姿を見ることで自分も感化され、原動力になっています。倍率10倍以上のコンサートチケットを安定して入手するために交流を広げた結果、人脈構築が得意になりSNSのフォロワーが3000人を超えました。
<例文3>
趣味と言うほどのものではありませんが、毎年、富士登山を行っています。高校の合宿で初めて挑んだ際に登頂できなかった悔しさが忘れられず、大学1年生の夏に体力をつけて再挑戦しました。以降、3年連続で登り、登山仲間と登頂タイムを競っています。
<例文4>
特技と呼べるかはわかりませんが、好きなことはテレビドラマを見て印象的なセリフ、ユニークな言い回しを見つけることです。セリフから、その時々の社会の動きがわかることが多く、面白い表現を毎クール、ノートに書き留めています。
ESの欄には「趣味・特技」と一緒に書かれているケースもありますが、趣味と特技は、以下のように区別して考えておくとよいでしょう。
例えば「映画鑑賞」といった趣味でも、「中学生の時から映画が大好きで、監督の名前と手掛けた作品名はほとんど答えることができます」など、ほかの人から見れば感心するような知識があれば、それは特技とも言えます。
ESの「趣味・特技」欄に書くのは、「自分自身が打ち込み、熱中してきたもの」であれば、基本的には何を書いても問題はありません。
仕事をしていく上で役に立ちそうなスキルや強みは、「自己PR」や「長所」の欄にも書けるでしょう。しかし、「仕事にはつながらなさそうだけど、この分野にはすごく詳しい」と思うものがあれば、ぜひ「趣味・特技」の欄に書きましょう。ESに書いてよいか判断に迷ったら、家族や友人に趣味・特技について話をして、周りの反応を見てみるのもよいかもしれません。
熱中してきたものがない場合は、やったことがあることの中で、自分の特性をアピールするのに適しているものは何かを考えてみるのもオススメです。
<例>
・「論理的思考能力がある」→ 詰将棋、ナンプレ
・「小さなことにも気がつく性格」 → プラモデル、刺繍
・「一度決めたことはやり抜く力がある」→ フルマラソン など
そのほかESの書き方について詳しく知りたい人はこちら↓
プロが教えるエントリーシート書き方のコツと例文【企業のチェック観点も解説】
国や都道府県が認めるものから民間の機関が認めるものまで、取得しているものがあれば記入しましょう。「○○免許(××年×月取得)」「□□検定(××年×月合格)」と記載するのが一般的です。
<書き方例>
・普通自動車第一種運転免許(AT)(××年×月取得)
・TOEIC (R)LISTENING AND READING TEST 720点 (××年×月取得)
・実用英語技能検定(英検(R))2級 (××年×月合格)
・日商簿記検定試験2級 (××年×月合格)
・世界遺産検定3級 (××年×月合格)
記入時は、以下の点に留意しましょう。
学生時代に取得した資格は、基本的にすべて記して問題ないでしょう。ただ、自分の所属する学部や専攻と関連の深い資格に関して、取得の難易度が高くないものを書いてしまうとマイナスに取られてしまう可能性も意識しておきましょう。
例えば、英米文学科の学生さんが英検3級、経営学部でファイナンス専攻の学生が簿記3級と記した場合。企業によっては、「専門分野なのだからもっと上のレベルに挑戦すべきなのでは…」と捉えられることもあるかもしれません。
一方、理工学部の学生さんが、履修科目とは関係ない簿記3級と記入した場合。こちらは企業からすると、「新しい分野にも挑戦する意欲があるんだな」と好意的に捉えられ、アピールにつながるケースも多いでしょう。
一方で、学業や仕事とは関係ない資格も、興味・関心の幅広さをアピールできるので、持っているものは書いて損はありません。
就活生の中には「就活準備で何か資格を取った方がよい?」「ESに書く資格がないから、何か資格を取らないと!」と考える人もいるようです。
しかし、「資格」はあくまでも、自分を表現する一つの要素。たくさんの資格を持っていることも、採用に直接影響するとは限りません。
特定の資格が採用選考の応募条件になっている場合は例外ですが、「ESに書ける資格がないから」「就活のために」という動機で資格の勉強を始めるのであれば、適性検査のための準備やESに書く内容をブラッシュアップして注力した方がよいと思います。
ESの「学歴・職歴」欄の書き方について知りたい人はこちら↓
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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