経済学部の就職先と就活のポイント|業界・職種・強み・専攻を生かすかどうか

経済学部の卒業生が新卒時に就職した業界、配属された部署を紹介し、志望業界・職種の決め方などを解説。専門を生かすかどうか、企業が経済学部の学生に期待していること、生かせる強みなど、経済学部ならではの就活のポイントを、人事として新卒採用を20年担当してきた採用のプロが社会人の先輩へのアンケート結果と共に解説します。

経済学部の就職先「業界」

経済学部の先輩たちが就職した業界を、アンケート結果を基に紹介し、新卒ならではの「志望業界の決め方」も併せて解説します。

経済学部の先輩たちが就職した業界

経済学部を卒業した社会人200人に対して、「新卒で就職した企業・団体の業界」をリクナビが独自にアンケート調査したところ、経済学部が新卒で最も多く就職したのは1位「メーカー業界」(23.0%)という結果になりました。
次いで2位「サービス業界」(17.0%)、3位「IT・ソフトウェア・情報処理業界」(14.0%)となっています。

メーカー業界やサービス業界が割合としては高いものの、全体を見ると、経済学部の卒業生はさまざまな業界で幅広く活躍していることがわかります。

Q 新卒で就職した企業・団体の業界に最も近い業界を教えてください(n=200、単一回答)

「新卒で就職した企業・団体の業界に最も近い業界を教えてください」に関するアンケートの回答グラフ

志望業界の決め方

就活で志望業界を決める場合は、「できること」「やりたいこと」の2つの側面から考えてみましょう。「経済学部だから〇〇業界」などと固定概念にとらわれずに、まずは幅広い業界の中から考えてみることをオススメします。

1.「できること」から志望業界を決める方法

自分ができることから志望業界を探す場合は、自分の能力・性格・価値観がフィットする業界を探してみると良いでしょう。
例えば、採用ページや募集要項などに書かれている「求める人物像」が自分と似ているか、求められていることを苦なくできそうかなどを考えてみましょう。
ほかにも、ホランドの職業適性タイプ理論(RIASEC)などの職務適性理論を参考にして、「自分の性格に合っている可能性がある仕事」から業界を探してみるのも良いでしょう。

例えばホランドの職業適性タイプ理論は、同じ職業に就いている人々は類似したパーソナリティー特性を示すことが多く、環境とパーソナリティーは相互作用しているという考え方を基に、パーソナリティーと働く環境を以下の図のように6つに分類したもの。自分がどのタイプに当てはまるかを考えることで、自分の特性を生かしやすい職業領域を考えるヒントにもなるでしょう。

ホランド職業環境6分類_関連のある職業領域

参考)ホランドの職業適性タイプ理論について
厚生労働省による配布資料「平成27年度 大学等におけるキャリア教育実践講座 参考資料」より

2.「やりたいこと」から志望業界を決める方法

自分がやりたいことから志望業界を探す場合は、リクナビなどの就職情報サイトで、思いついた単語を入れて検索する「キーワード検索」を活用してみましょう。
例えば、ワインが好きなら「ワイン」とキーワード検索をしてみると、飲料メーカーだけではなく、専門商社やワインを自社で直輸入している小売店や外食産業などさまざまな業界がヒットするでしょう。こういった偶然の発見から、視野を広げてそれぞれの業界について詳しく調べていくことをオススメしています。

経済学部の就職先「職種」

経済学部の先輩たちが就職後に配属された職種を、アンケート結果を基に紹介し、新卒ならではの「希望職種の決め方」も併せて解説します。

経済学部の先輩たちが就職・配属された職種

リクナビが「経済学部の就職先」調査を200人に対して行った結果、経済学部を卒業した人が新卒で配属された職種のうち、最も多かったのは1位「事務系職種」(39.5%)となりました。次いで 2位が「営業系職種」(31.0%)、3位が「I T系職種」(11.0%)となっています。

Q 新卒で就職した企業・団体で、入社後に配属された部署に最も近いものを教えてください(n=200、単一回答)

「新卒で就職した企業・団体で、入社後に配属された部署に最も近いものを教えてください」に関するアンケートの回答グラフ

希望職種の決め方

新卒採用の場合は、「経済学部だから〇〇職」などと固定概念にとらわれる必要はないでしょう。ただし、入社後にどんなキャリアパスがあるかは確認しておくことが大切です。また、職種別採用に応募する場合も、企業のカルチャーと自分がフィットするかは確認しましょう。

1. 新卒では職種にこだわりすぎる必要はない

近年は、選考の段階で配属先の職種を決める「職種別採用」も増えてきていますが、新卒採用においては職種を定めず総合職などに応募するケースも多いでしょう。多くの企業では、入社後に適性や成果、希望などによって部署異動するチャンスがあるので、新卒で就職する際には、職種にこだわりすぎなくても良いでしょう。
「経営学部から経理職」などのように、固定観念で職種を選ぶ必要もありません。

2. 総合職などでの入社後にどんなキャリアパスがあるか要確認

ただし、研究職など一部の専門性が高い職種に対しては、大学院などで経験を積んでいる人しか採用していないケースもあります。企業研究時に、希望するキャリアパスがあるかを確認するようにしましょう。

3.職種別採用でも企業カルチャーと合うかは要確認

また、職種別採用の場合でも、新卒採用では企業とのカルチャーフィットを重視する傾向にあります。例えば同じ経理職であっても、企業によって「経理の視点から経営戦略の提言ができる人」「実直な経理処理ができる人」など求める人物像が異なります。
希望職種を決めて就活する場合も、「この職種で働けるならどこの企業でもいい」と考えるのではなく、企業ごとのカルチャーも確認することが大切です。

経済学部の専門性を生かして就職するかどうか

経済学部の専門性を生かして就職するかどうかを考えるために、「専門性を生かして就職した先輩たちの割合と就職先」「専門性を生かして就職したい人向けの業界・職種」を紹介します。

経済学部の専門性を生かして就職した先輩たちの割合

リクナビが「経済学部の就職先」調査を200人に対して行ったところ、新卒で就職した際に経済学部の専門性を生かして就職したと考えている人は、全体の約3割(31.0%)でした。
経済学部の卒業生の多くは、新卒は専門性を生かさずに就職しているようです。

Q 新卒で就職した際、経済学部の専門性を生かして就職したと思いますか(n=200、単一回答)

「新卒で就職した際、経済学部の専門性を生かして就職したと思いますか」に関するアンケートの回答グラフ

就活では無理に専門性を生かす必要はない

アンケートの結果でもわかる通り、新卒で就職するときには、経済学部の専門性を無理に生かそうとする必要はないでしょう。

新卒採用を行う企業の多くは、大学での経験にかかわらず、入社後に自社で必要な教育を提供して人材育成をしようとしています。さらに現在の就活市場は、企業が求める人材の数に対して、就職希望者の数が少ない状況です。そのため企業も、新卒者に対して専門性や実績などはあまり求めないケースの方が多いでしょう。

専門性を生かした先輩たちの就職先

アンケートの結果、「新卒で就職した際、経済学部の専門性を生かして就職した」と考えている先輩たちの就職先業界は、メーカー業界、サービス業界、インフラ業界、公社・官庁業界、商社業界、銀行・証券・保険・金融業界、百貨店・専門店・流通・小売業界、IT・ソフトウェア・情報処理業界など多岐にわたっていました。
配属された部署も事務系・営業系・販売系・IT系・技術系と幅広い回答が得られました。

ここでは、先輩たちが「就職先・配属先に対して、専門性を生かして就職したと考えている理由」をいくつか紹介します。

【公益社団法人に就職して、経営支援に従事】
簿記の資格を取得し、それを職場にて記帳専任職員として日々の帳簿の取りまとめや納期特例、年末調整や決算申告まで幅広く業務に生かせたと感じているからです。

【専門商社業界に就職して、事務系職種に従事】
市場分析やマクロ経済の理解、リスク管理に役立つ。経済学で学ぶ市場構造や需給理論は、取引先や市場動向の予測に生かせる。為替や国際経済の知識は、取引や投資判断に必要。さらに、データ分析力やリスク評価のスキルを通じて、リスクヘッジ戦略を立てることも可能。これらが総合的に商社のビジネスに貢献する。

【自動車業界に就職して、経理作業に従事】
大学時に取得した資格や勉強の知識が、仕事のベースになる部分もあるから。

【小売業界に就職して、商品開発の部署で品質管理に従事】
専門スキルの発揮が求められる、会社の根幹となる業務に従事したから。

【総合工事業界に就職して、プラントメンテナンスの営業と施工管理に従事】
経営的視点の営業活動ができるから。

専門性を生かして就職したい人向けの業界・職種は?

経済学部の専門性を生かして就職したい人は、自分が興味を持って身につけた知識・スキルで活躍できる業界を目指してみましょう。経済学部で学んだ内容を生かせる業種・職種であれば、選考の際に評価されやすいのも特徴です。 

ここでは人事・採用コンサルティングを行う人材研究所の曽和利光さんに、専門性を生かしやすい業界、職種の例を挙げてもらいました。

経済学部の専門性を生かしやすい業界の例(9選)

  1. 金融業界
  2. 商社
  3. メーカー業界
  4. マスコミ・広告業界
  5. 情報通信・IT業界
  6. コンサルティング業界
  7. 人材サービス業界
  8. 国家公務員・地方公務員
  9. 会計事務所・税理士法人

経済学部の専門性を生かしやすい職種の例(13選)

  1. 経理職
  2. 企画・マーケティング職
  3. 営業職
  4. 財務職
  5. コンサルタント
  6. 税理士
  7. 公認会計士
  8. アクチュアリー
  9. ファイナンシャル・プランナー
  10. 証券アナリスト
  11. 金融ディーラー
  12. ファンドマネージャー
  13. マーケットリサーチャー

経済学部の強み・企業が期待していること

ここでは経済学部での学生生活を通して得られやすい強みや、経済学部の学生に対して企業が期待していることの例を3つ紹介します。

  1. ビジネスにかかわる幅広い分野の知識
  2. データ分析力
  3. ビジネスに関する資格

1. ビジネスにかかわる幅広い分野の知識

経済学部生の強みとしてまず挙げられるのは、ビジネスにかかわる幅広い分野の知識があることでしょう。経済学部では、マクロとミクロの視点で社会構造から人やモノ、お金の動き方といった経済の仕組みについて学ぶことが多いでしょう。家計などの小さな観点から、国や世界などの大きな視点まで経済活動の仕組みを分析・研究するので、ビジネスの流れを理解していることが期待されています。
どの業界においてもお金や商品・サービスの流れの理解は必要なことなので、幅広い知識を持っている経済学部の学生を採用したいと考える企業は多いでしょう。

2. データ分析力

経済学部では、数字のデータを取り扱うことも多いため、確率、微分・積分といった数学の基礎知識が必要となるだけでなく、それらをデータ分析に活用する力を身につけている学生も多いでしょう。財務や会計、経済学・経営学に加えてマーケティングなど社会人になってからも必要とされる知識を学生時代に学んでいるのは経済学部の強みの一つです。
どんな企業もビジネスを展開している以上、どの業界を志望したとしても数学や数字に強いことは大きな強みになるでしょう。

3. ビジネスに関する資格

経済学部では、ビジネスに関連する資格を取得しやすいのも強みと言えるでしょう。
資格の中には経済学部での学びを生かせるものもたくさんあり、例えばファイナンシャル・プランナー(FP)や中小企業診断士、日商簿記などを在学中に取得する学生も少なくありません。
資格は履歴書の資格欄に書くことができるため、アピールになりやすいでしょう。また、入社後に生かせる資格の場合は、就活においても大きな強みになるでしょう。

授業を聴いている学生

経済学部の就活のポイント

ここでは、経済学部ならではの就活のポイントを5つ紹介します。

  1. 一般的な就活スケジュールに加えて、企業の独自選考スケジュールをチェック
  2. データ分析力を生かして自己分析を行う
  3. インターンシップの就業体験によって実際の働き方を知る
  4. OB・OG訪問で社員の声を聞く
  5. 資格を取得する

1. 一般的な就活スケジュールに加えて、企業の独自選考スケジュールをチェック

経済学部生が就活をするときは、政府が主導する一般的な就活スケジュールに加えて、企業独自の選考スケジュールもチェックするようにしましょう。
外資系コンサル企業や、外資系金融企業、ベンチャー企業などの中には、独自のスケジュールで採用選考を進める企業もあります。過去の選考・開催時期やエントリーシートの受け付け時期などを調べ、カレンダーにメモをしておくと良いでしょう。

<一般的な就活スケジュール(政府が主導する現行ルール)>

一般的な就活スケジュール

就活スケジュールまとめ|学年ごとの流れ・卒業年次別の動向

2. データ分析力を生かして自己分析を行う

経済学部生は、論理的思考が高いのも特徴の一つです。データ分析をするように自己分析を進めてみるのも良いでしょう。
例えば、過去に参加したインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムや学業の成果を数値で整理し、どの場面で自分が最も力を発揮したかを客観的に振り返ってみましょう。自分の強みや成果を客観的に数字や事例で表現することができれば、エントリーシートや面接でも効果的なアピールになるはずです。

3. インターンシップの就業体験によって実際の働き方を知る

インターンシップの就業体験によって実際の働き方を知ることができれば、面接で強みの生かし方や志望動機を具体的に伝えることができるようになります。
経済学部で培った思考力や分析力を生かせるようなプログラムを実施している企業も多いため、インターンシップでの実践経験を、面接などでアピールすることもできるでしょう。

4. OB・OG訪問で社員の声を聞く

経済学部は、入学者の定員が比較的多い傾向にあるため、卒業生も多い学部の一つです。
卒業生が多いということは、学校のキャリアセンターなどからOB・OGを紹介してもらえるチャンスが多いということでもあります。そのメリットを生かして、OB・OG訪問で社員の声を聞いて、就活に生かしましょう。

5. 資格を取得する

就活における必須事項ではありませんが、経済学部生が取得しやすい資格には、実際のビジネスで活用できるものがたくさんあります。ほかの学部生や、経済学部生の中での差別化のためにも、時間があればビジネス系の資格を取得してみるのも良いでしょう。
ただし、資格がないと就活で不利になるというわけではありません。多くの企業は、新卒就活では「性格・能力・価値観」を重視しているため、ビジネス系の資格を持っていなくても問題はありません。

経済学部の就職についてよくある疑問

経済学部の就職についてよくある疑問にお答えします。

Q.経済学部は就活で有利ですか?不利ですか?

経済学部の就職率は文系の中でも非常に高い水準にあると言えるでしょう。
どんな企業であっても「ビジネス」にまつわることを学んでいる経済学部のニーズは高く、企業側が学生に対してスカウトを行うターゲティング型採用では、経済学部の学生を採用したいと考える企業も多いようです。
就活における初期段階で、企業からの働きかけがあるという意味で、「経済学部は就活では有利」と言えるでしょう。

Q.経済学部生が取得すると就活で有利になる資格はありますか?

経済学部の就活に役立つ資格としては、以下の7つが挙げられるでしょう。

  1. 日商簿記検定試験 ※2級以上が望ましい
  2. ファイナンシャル・プランナー(FP) ※2級以上が望ましい
  3. TOEIC(R) ※800点以上が望ましい
  4. 公認会計士
  5. 税理士
  6. 証券外務員
  7. 証券アナリスト認定資格(CMA)

特に、「日商簿記検定試験」の2級以上は就活の選考でも評価されやすいため、時間に余裕があれば取得をしておくのも良いでしょう。また、金融業界を志望する人は「証券外務員」や「証券アナリスト認定資格」を取得しておくと選考で有利になるかもしれません。

Q.公認会計士の資格を取得して監査法人に就職したいです。一般企業への就活も並行してすべきですか?

公認会計士試験の合格発表は、例年11月です。そのため監査法人への就活は11月以降に始まります。試験に合格するかどうかわからない状況下では、一般企業への就活も並行して進めておいた方が安心でしょう。
また、試験に合格した後、公認会計士として登録されるためには、2年以上の「業務補助」と「実務従事」が必要です。多くの人は、監査法人でこの業務補助と実務従事の経験を積むことになるでしょう。監査法人以外の一般企業で内定を得ていて、そのまま就職したい場合は、試験に合格した旨と併せて入社後の業務が実務従事として認められた実績があるかどうかを企業側に問い合わせてみましょう。
一般企業での実務が、業務補助と実務従事に認められるかどうかは、個別に判断されるようです。

 

「リクナビ」ではインターンシップ&キャリアを検索したり、就活スケジュールのほか、就活準備に関するノウハウ記事をチェックしたりすることができます。学生時代の過ごし方を考える際、就活に関する情報も確認してみましょう。

【調査概要】
調査期間:2024年9月18日~9月24日
調査サンプル:経済学部を卒業した社会人200人
調査協力:株式会社クロス・マーケティング

——————————————————

曽和利光さんプロフィール写真

【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。

——————————————————

記事作成日:2025年2月6日

インターンシップ&キャリアや就活準備に役立つ情報をX(旧Twitter)でも発信中!

リクナビ」公式Xアカウントはこちら

この記事をシェアしよう

合わせて読みたい記事