大学生になると、自分で時間の使い方を考える機会が増えるでしょう。この自由な時間を生かして何らかの目標を持ちたいと考える学生も多いと思います。そこで、社会人の先輩400人に「大学生活での目標」についてアンケート調査を実施。どんな目標を立てたのか、その内容をご紹介するとともに、就活支援のプロに目標の立て方や達成のコツなどについてうかがいました。大学生活での目標を立てる際の参考にしてみてください。
社会人の先輩400名に「学生時代に目標を持っていましたか?」と聞いたところ、「持っていた」と答えた人は53.8%でした。半数以上の人が、学生時代に何らかの目標を持っていたことになります。
■学生時代に目標を持っていましたか?(n=400)
「持っていた」と答えた人に、どのような目標を持っていたのか聞いたところ、「学業(授業・ゼミ)」が最も多い53.0%に。続いて、「アルバイト」(33.0%)、「趣味」(29.8%)、「部活・サークル」(27.4%)となりました。
■どのような目標を持っていましたか?(n=215、複数回答)
回答してもらった具体的な目標について、紹介します。
学業(授業・ゼミ)
「3年生で卒業単位を取り終える」
「GPAをできるだけ高く取ること」
「学会発表に参加することと、論文を出すこと」
「国家試験合格」
「しっかりと提出物は期限内に出して、いい成績を修める」
「将来なりたい自分になるために必要なことをしっかり学ぶ」
アルバイト
「学業とバイトの両立」
「バイト先で新人教育に力を入れる」
趣味
「ボカロPになる」
「ギターがうまくなる」
部活・サークル
「文化祭で一番大きいステージで演奏する」
「大会でリーグ1位になること」
就活準備
「学生のうちに働いてみて社会を体験してみる。得た給料をもとに就活準備をする」
「教員免許を取ること」
日常生活
「学生生活を楽しむ」
「充実した日々を過ごす」
その他
「人見知りの性格を克服する」
「自分が気になった分野を極める」
大学生活を通して何らかの目標を持つメリットとは何でしょうか?人材育成事業を手掛け、大学生向けの就活支援も行う株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズの高田貴久さんに、自分に合った目標の立て方について教えてもらいました。
大学時代は非常に貴重な時期です。後から振り返ると、余計にそう思います。
大学時代は、身体的にも頭脳的にも能力が高まっている時期です。加えて、アルバイトなどで自分でお金を稼げるようになり、一人暮らしを始めたり、車の免許を取ったりと、自分でできること=裁量も広がる時期です。小中高時代に比べ、段違いに行動範囲が広がり、自分で決断できる機会も増えていると思います。
しかし、その事実にあまり気づいておらず、小中高時代と同じような日々を送っている人もいます。ただ大学に通い、講義を受け、単位を取る…という生活を繰り返している人は少なくありません。それ自体は悪いことではありませんが、せっかくの貴重な時期を「ただ学校に通うだけ」で終わらせてしまうのはあまりにもったいない。
自分で何らかの目標を定めれば、その目標に向かって努力したり試行錯誤を繰り返したりすることができ、「目標に一歩ずつ近づいている自分」を感じることができるでしょう。大学生活に一つの軸ができ、日々のモチベーションが高まることで、大学生活をより有意義に過ごせる可能性が高まると思います。
中には「希望の大学に合格すること」が目標だったという人もいることでしょう。そして、目標を達成した人の中には、その時点で燃え尽きてしまい、これから何をすればいいのか方向を見失っている人もいるかもしれません。
大学受験はゴールではありません。そこから先の人生はまだまだ長く、新たな目標を立てることが必要です。
社会人になって思うのは、卒業した大学と社会での成功はそこまで関係性がない、ということ。いい大学に入学できたことに満足してしまい、毎日をなんとなく過ごしている人と、たとえ希望の大学に入学できなくても、大学時代に目標を持ち日々を有益に過ごしている人とでは、その後の人生に大きな差がつくはずです。視野が広がり、目標達成能力も高まることで、ビジネスパーソンとしてのベースも築けるでしょう。
大学時代は、多少のむちゃや失敗が許される時期でもあります。
社会人になると、会社の看板や社会的地位、家族の存在など、さまざまなしがらみが増えます。
社会に出る前に、自身の能力や裁量を最大限生かして、ぜひいろいろな目標を立ててチャレンジしてみましょう。行動してみれば、成功しても失敗してもそこから学びが得られ、視野も広がります。
目標を持つことで「学校に行くだけ」の大学生活を変え、より有意義に過ごすことが目的なので、目標の内容は基本的にはどんなものでも構いません。
前述のアンケートで挙がっているような、学業でもアルバイトでも、部活やサークルでもいいと思いますが、目標の立て方にポイントがあります。
大学生の間に達成できそうな大きめの目標をまず考え、それにつながる小さめの目標をいくつか考え、スケジューリングするのがオススメです。
「大きい目標を1つ立てる」だけだと、目標達成のためには何をすればいいのかわからなくなるケースや、日々の頑張りがどれだけ目標につながっているのか実感しにくく、モチベーションが上がらないケースなどが考えられます。
大きな目標を達成するために必要だと思われる「小さな目標」をいくつか立て、それら一つひとつの達成に向かって突き進めば、頑張ろうという意欲が湧きやすい上、1つ達成するごとに充実感や成長実感が得られます。次の新たな目標に対するモチベーションも高まるでしょう。
例えば、「大学生のうちに司法試験にチャレンジする」という大きな目標を立てたとします。
この目標自体はかなり大きく、大学時代に達成できるかどうかというチャレンジングなものですが、司法試験につながる小さな目標――例えば「来月までに司法試験に受かったゼミの先輩に話を聞く」「年内に民法の教科書を1冊読み切る」など、努力すれば達成が容易なものを設定すると行動を始めやすく、モチベーションも維持しやすくなります。
学業でもアルバイトでもサークルでも、どんな目標でもいいとはいえ、なかなかピンと来ない、イメージが湧かない…という人もいるでしょう。
そんなときは、これまでの人生を振り返り「自分は何のためなら頑張れるのか」から考えてみるのも一つの方法です。自分が頑張り続けられた「原動力」を把握すれば、そこから大きな目標を立てやすくなります。
もし「高校時代の部活の練習はきつかったが、チームのために頑張れた」のであれば、「チームのため」「チームワーク」などが目標を立てる際のキーワードになります。
そこから、例えば「ゼミに入ったらリーダーを務めて研究成果を出す」「学園祭委員になって学校全体を引っ張る経験をする」などの目標が考えられるでしょう。
「勉強でも部活でも、コツコツ練習を重ね知識や技術が自分の身につくことがモチベーションだった」のであれば、「知識や技術を磨くこと」「自分自身が成長すること」がキーワードになり得ます。
例えば「吹奏楽サークルで練習を重ね、コンクールで入賞する」「英語の勉強に注力し、大学生のうちにTOEIC(R)〇点以上を目指す」などの目標が考えられるのではないでしょうか。
そして、その大きな目標を達成するためには何が必要か「目標達成のためにやるべきこと」を分解し、短期間で達成できそうな小さな目標を立ててマイルストーン(通過点)にすると、大きな目標も達成しやすくなります。
目標を立て実行する際には、気をつけておきたいコツや注意点があります。以下のような点に留意すると、自分に合った目標を設定しやすく、かつ達成しやすくもなるでしょう。
「大学卒業後、○○の仕事に就く」など、就きたい仕事を目標に置く人もいることでしょう。
もちろんそれが悪いわけではないのですが、あまり決め打ちしすぎないことが大切です。
学生時代は、職業に関する知識が少ないため、イメージだけで「商社に入る」「コンサルタントになる」などと決めてしまっている人も少なくありません。ただ、リアルに現場を経験すると、イメージとかけ離れているケースが多く、ギャップを感じてしまう可能性があります。
私は一時期、医学部への進学を検討していたことがあったのですが、親戚の医師に相談したところ、「医者は毎日毎日、病気の人の相手をする仕事だよ。その覚悟はある?」と言われ、ハッとさせられた経験があります。そこまでリアリティーを持って考えておらず、「人の役に立てそうだし、なんととなくよさそう」ぐらいの気持ちだったのです。
もし「○○の仕事に就く」など職業の目標を立てる場合は、具体的には日々どんな仕事をするのかリサーチし、その仕事に毎日やりがいを持って臨めるかどうか考えてみるといいでしょう。
小さな目標を設定する際、誰しも自分が苦手とすること、嫌だと感じることは避けたいと思うでしょうが、大きな目標を達成するために必要なのであれば、チャレンジすることも大切です。そして、その「苦手なこと、嫌なこと」に向き合った経験が、その後の人生に役立つことも少なくありません。
私は新卒の時の内定先の一つから、入社前の準備として、簿記やタッチタイピングを課せられました。興味もないし、苦痛でしかありませんでしたが、実はその後の人生でかなり役に立っています。
諸事情あって、その内定先には入社しなかったのですが、その時学んだタッチタイピングにより、仕事の処理速度が上がり、別の企業に入社した際に非常に役立ちました。新人の主な仕事は議事録作成などでしたが、同期に比べて作成スピードが速く、重宝されました。
簿記の知識は、30歳を過ぎてから、起業した後にフルに生かすことができています。
得意なこと、できることだけを目標化せず、必要であればあえて苦手なことも目標に加えてみると、大きな目標に近づきやすくなる上、自身の引き出しも増やすことができるでしょう。
「自分は何でも知っている、知識が豊富である」と自信を持っている人はあまりいないと思いますが、かといって「自分は無知であり、知らなければならないことが多い」と自覚している人も少ないと思います。
社会はとても広く、知らない世界はたくさんあります。「自分には知らないことがまだまだたくさんある」ことを自覚すれば、情報収集に前向きになれるでしょう。その情報が、目標を立てる上での参考になるとも思います。
今の自分が見ている「実は狭い世界」だけで目標を決めてしまわないためにも、視野を広げ、積極的に幅広い情報を収集してほしいと思います。
自分はどんな人間なのか、何が強みで、何が足りていないのか、自分自身では意外にわからないものです。周りから耳が痛いことを言われる機会もあると思いますが、自分を知るための貴重な情報として、ぜひ耳を傾けてほしいですね。
そして、自分からも積極的に聞くことをオススメします。家族や大学・サークルなどの友人、アルバイト先の同僚など自分をよく知る人に「私の強み・弱みって何だろう?」「何ができていると思う?」「どんなときに熱中している?楽しそうにしている?」などと質問すると、第三者ならではの客観的な意見がもらえるでしょう。目標を考える際のヒントにもなるはずです。
目標に向かって行動を始めてみると、行動に伴い新たな情報が入ってくるので、見える景色が変わります。それによって、「この目標は少しずれているかも」などと感じることもあると思います。
そんなときは、臨機応変に目標を修正することが大切。「一度しっかり考え、立てた目標なのだから、その通りに遂行すべし」という考えは、この変化の激しい時代には合っていません。
こまめに目標を見直すことで、大きな目標を達成するスピードが速まったり、精度が高められたりするでしょう。もっと有意義で、自分に合った目標を立てられる可能性もあります。
先輩たちにアンケートで「学生時代に立てた目標は達成できましたか」と聞いたところ、77.7%が「達成できた」、22.3%が「達成できなかった」との結果になりました。
そして、「達成できなかった」人にその理由も質問したところ、「目標を立てたのが遅すぎた」「時間がなくなってしまったから」などの声が聞かれました。
専攻や学内外の活動などによって個人差はありますが、大学3年生になるとゼミや研究室に入ったり、就活準備が始まったりして、一気に忙しくなる人が多いようです。
学業や就活が忙しくなる前の低学年のうちに、今回ご紹介したような方法で目標を立て、大学時代だからこそできることにチャレンジしてみましょう。
そして、目標を立てそれに向かって行動するという経験は、就活にも役立ちます。
就活ではES(エントリーシート)や面接で「ガクチカ=学生時代に力を入れたこと」について聞かれることが多いのですが、目標を達成するために努力したり工夫したりした経験や、目標を持って充実した学生生活を過ごしたエピソードなどがあれば、ガクチカとして語りやすいでしょう。
何より、目標を持って試行錯誤しながら行動した経験は、大きな自信につながります。どんなチャレンジであっても、たとえ成果が得られなくても、その経験がこれからの人生の糧になるでしょう。
「リクナビ」ではインターンシップ&キャリアを検索したり、就活スケジュールのほか、就活に関するノウハウ記事をチェックしたりすることができます。学生時代の過ごし方を考える際、就活に関する情報も確認してみましょう
【調査概要】
調査期間:2024年9月18日~9月24日
調査サンプル:2024年時点で社会人1~2年目の400人
調査協力:株式会社クロス・マーケティング
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【監修】高田貴久(たかだ・たかひさ)さん
株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ グローバルCEO・代表取締役社長
東京大学理科Ⅰ類中退、京都大学法学部卒業、シンガポール国立大学Executive MBA修了。戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトルでプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当に携わる。マブチモーターで社長付・事業基盤改革推進本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズを設立。トヨタ自動車、イオン、パナソニックなど多くのリーディングカンパニーでの人材育成を手掛ける一方、個人活動でWebサイト「外資コンサル.com」を運営、15年以上にわたり就活支援を手掛け、多くの大学で入社後のキャリア形成など、長期的な視点からアドバイスを行っている。
著書に『ロジカル・プレゼンテーション』(英治出版)、 『問題解決―あらゆる課題を突破するビジネスパーソン必須の仕事術』(英治出版)がある。
▶プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 公式サイト