自分の長所や強みについて、「負けず嫌い」を挙げる学生は少なくないものです。自己PRの際、「負けず嫌い」を上手にアピールするためにはどうしたらいいのでしょうか。そこで、就職・転職支援スクール、我究館の館長を務める熊谷智宏さんに、自己PRで「負けず嫌い」を伝える際の考え方や、上手に伝えるために知っておきたいポイントについて聞きました。
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自己PRで「負けず嫌い」を伝える際、企業は学生のどんなところを見ているのでしょうか。「負けず嫌い」という特性に対し、企業が知りたいと考えているポイントを紹介します。
「負けず嫌い」という言葉は、多様な意味合いを持っているものであり、人によって解釈や定義が違うものです。その性質に対する一般的なイメージとしては、「競争心・闘争心が強い」「逆境にも負けない」「向上心がある」などが挙げられますが、非常に漠然としています。学生の中には、これらのイメージをベースに、「負けず嫌い」を自己PRするケースが多くあります。画一的なイメージをベースとしているため、話すエピソードも似たような内容になる可能性が高く、ほかの学生との差異がわかりにくくなるでしょう。
一方、企業が知りたいのは、「学生それぞれがどんな性格や特性を持っているのか」であり、「その人らしさ」です。同じ「負けず嫌い」という言葉を使った場合でも、人によってその定義づけは違うものであり、それこそが「その人らしい負けず嫌い」といえるでしょう。自己分析で「自分には負けず嫌いな性質がある」と感じた場合、そこで止まらず、さらに踏み込んで「自分にとって『負けず嫌い』とは何なのか。どういう性質なのか」を掘り下げることが大事です。
自分なりの「負けず嫌いとは、こういうこと」という定義を明確にした上で、「どんな場面でその性質が表れ、その背景にどんな思いがあり、どう行動し、どんな結果につながったのか」という具体的なエピソードを話せば、誰とも違う、自分らしさをアピールすることができるでしょう。
負けず嫌いにおける「逆境に強い」「向上心がある」などの性質には、「入社後、壁を乗り越えていける」「成長し続けていける」という姿をイメージできるので、多くの業界・企業において一定の評価をされやすいでしょう。一方、「競争心・闘争心が強い」という性質については、その内容によっては、「組織で働くことに向かない」と捉えられる可能性があります。社会人の仕事は、「人と一緒に働くこと」が大前提となっています。
つまり、周囲の人々やチームのメンバーと協調性を持って働き、一緒に目標を達成していくことが大事なのです。競争心や闘争心については、「周囲と良好な競争関係を築くことができるか」「チーム全体で勝つために、闘争心を発揮できるか」がポイントになるでしょう。
例えば、体育会の部活動などでレギュラーを勝ち取ろうとする場合でも、「お互いに頑張っていこう。チーム全員で切磋琢磨(せっさたくま)していこう」という良好なライバル関係を築けるケースと、「自分さえレギュラーになれればいい」と考えて個人プレーに走るケースとでは大きく違うものです。個人の成績や成果を争う営業職などの仕事でも、自分が活躍するだけでなく、チームや部署、組織全体に貢献していくことが求められます。
過度な競争心や承認欲求によって、自分個人の成果を追求したエピソードを伝えても、「組織におけるチームプレーには向かない」と判断されかねません。逆に、その競争心や闘争心を通じて、「周囲にこんな好影響を与えた」「チーム全体の力をアップした」という話を伝えることができれば、「組織を成長させ、企業全体の競争力を高めてくれる人材」として評価される可能性も高いでしょう。
ここでは、「負けず嫌い」を上手にアピールするためのポイントを紹介します。
ただ「負けず嫌い」とするのではなく、自分にとって、「具体的に、負けず嫌いとは何なのか」を定義づけしましょう。「みんなで一丸となって、壁を乗り越えたい」というケースもあれば、「自分の弱点を克服し、もっと成長したい」というケースもあるでしょう。過去に「負けず嫌い」が発動された場面を振り返り、それらの共通点を探した上で、自分ならではの表現で定義づけをすることがポイントです。
「人に負けたくない」という思いは、誰かに対する嫉妬心や敵愾(てきがい)心など、ネガティブな感情とつながっているケースもありますし、本人にそのつもりがなくても、ネガティブな性質と判断される可能性もあります。負けず嫌いをアピールする際には、「人に負けたくない」ではなく、「自分自身が置かれている状況や、自分自身の弱さに負けたくない」という思いに焦点を置くといいでしょう。
また、負けず嫌いをどう定義づけしたかによって、その対象も変わります。「組織やチームとして、逆境を乗り越えてライバルに勝ちたい」など、“対外”に対象を置いたケースもあれば、「自分自身の至らない点を克服したい」と考え、“対自分”として行動したケースもあるでしょう。いずれにしても、「他人や、ほかのチームを蹴落とすこと」ではなく、「自分や、自分の所属するチームが成長していくこと」をテーマにすることがポイントとなります。
部活動やサークル、ゼミ、アルバイト先など、自分が所属している何らかの組織の中で、負けず嫌いの素養を発揮し、組織全体にとって良い結果を出したエピソードを探しましょう。いずれにおいても、自分の行動によって、「組織内を刺激・活性化した」「組織の改革・改善に役立った」「周囲の人に良い影響を及ぼした」などの客観的な成果まで話すことができれば、より説得力を増すことができます。
また、「そもそも自分のためにしたことだから、『チームのためにやった』とまではいえない」と考えてしまう学生もいるでしょう。しかし、行動するプロセスの中で、「チームや組織のために貢献したい」と考えたり、行動した結果、「みんなに貢献できて良かった」と感じたりしたことは必ずあるはずなのです。それらを抽出し、「自分にとっても、周囲にとってもいい結果になった」という部分を見つければ、その行動や思いに自信を持って語ることができるようになるでしょう。
「負けず嫌い」であることによって、その企業のどんな部分に貢献していくことができるかまで伝えましょう。「自分の行動で周囲を巻き込む」「目標を設定し、モチベーションを高める」など、チームを団結させていくことで発揮する力もあれば、「組織の課題を見つけ、克服するための仕組みを考える」など、バックアップしていく形で役立てられる力もあるでしょう。
企業研究で、志望する企業の事業内容や仕事内容、働き方などを知り、自分ならではの「負けず嫌い」という特性を生かして貢献できる部分についても考えていきましょう。
「負けず嫌い」を自己PRする回答例を紹介します。自分らしくアピールする際の参考にしてみましょう。
私には、「今の自分に負けず、課題を克服しながら成長を続けていきたい」という、負けず嫌いなところがあります。アルバイト先で新人への指導を任されていたことで、「自分は仕事ができる」と思っていたことがありました。しかし、長期インターンシップに参加する中、活躍する社会人の先輩を見て、「自分にはまだまだ足りないところが多い」と痛感すると同時に、視野を広く持ってインターンシップ生の指導に当たる先輩のすごさを実感しました。
このとき、社会人と学生の違いはあっても、至らない自分に甘んじたくないと考えました。そこで、自分の経験を生かし、業務で把握できていなかった点を網羅したマニュアルを作成したところ、先輩に「これはわかりやすい。今後、インターンシップ生に配布したい」と評価してもらえました。御社に入社後は、自分に負けずに成長していきたい思いや視点を生かし、業務改善などにも貢献していければと思っています。
私の強みは、「不利な状況になるほど、燃え上がる」負けず嫌いなところだと考えています。中学、高校、大学を通じて、体育会系のバスケットボール部の活動を続けてきました。中学時代は未経験からのスタートでしたが、「経験者に負けたくない」と考え、人の何倍も練習機会を増やしました。頑張ってレギュラーの座を勝ち取った結果、みんなも自主練習に参加するようになり、チーム全体の力も底上げされました。
高校時代には、副キャプテンとして、どうしても倒せなかったライバル校に勝つために、基礎トレーニングの練習メニューを増やすことを提案しました。最初は不満を口に出すメンバーもいましたが、積極的に声がけし、成果を測る体力測定などもしていくうちに、チームのみんなのモチベーションがどんどん上がっていきました。基礎体力と団結力がアップしたことで、最終的にライバル校を倒して県大会に出場することができました。
また、大学時代には、「2部リーグから、1部リーグを目指そう」を目標に掲げ、戦略的な練習メニューを考案することに力を注ぎました。残念ながら1部リーグに上がる目標は達成できなかったのですが、自分の情熱でチーム全体を動かしていく喜びを味わいました。御社を志望したのは、現在、業界2位というポジションにあるため、これまでも、「トップに追いつき、追い越すこと」を目標にしてきた私にとって、モチベーションを維持しやすい環境だと考えたためです。負けず嫌いの情熱を生かし、チームが一丸となるようにモチベーションを高め、トップを目指したいと考えています。
就活の自己PRで自分の強みや価値観などを伝える際には、「その人らしさ」が大事であり、そこに“一貫性”があることが重要なポイントとなります。幼いころから現在までの間に、繰り返し発揮した力や、同じようなポジションで活躍した経験を探し、そこを掘り下げていきましょう。
場面や相手が変わっても発揮した能力や、自然と与えられている役割には再現性があるため、社会人となったときにも発揮できる力であり、本人が活躍できるポジションであるといえるのです。サークルやゼミ、部活動やアルバイト先など、集団の中で自分がどんなキャラクターとして認識されていたのか、どんなことで力を発揮できたのかを振り返り、一貫している部分を探してみることが大事でしょう。
また、エントリーシートや面接での回答に対し、「あなたらしさが見えない」と言われるケースがあります。その大きな要因は、自分の特性について、「負けず嫌い」「真面目」「向上心がある」「コミュニケーション力がある」などの大きな意味合いを持つ言葉で表現しているからといえるでしょう。これについては、「ほかの学生より目立つこと」が必要なのではありません。「負けず嫌い」に限らず、どんどん掘り下げ、自分なりに定義づけすれば、それに合わせて語るエピソードも自分らしい内容となるものです。
「自分らしさ」を伝えるためには、画一的な言葉から一歩踏み込み、よりフィットする表現を探していく意識を持つといいでしょう。
「負けず嫌い」な点のほかにも自己PRで伝えるアピールポイントがあるかも?気になる人はリクナビ診断を活用して、自分の強みや特徴を調べてみましょう。
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我究館館長。株式会社リクルートに勤務した後、2009年、株式会社ジャパンビジネスラボに参画。現在までに3000人を超える大学生や社会人のキャリアデザイン、就職・転職、キャリアチェンジのサポートを行ってきた。難関企業への就・転職の成功だけなく、MBA留学、医学部編入、起業、資格取得のサポートなど、幅広い領域の支援で圧倒的な実績を出している。また、国内外の大学での講演や、執筆活動も積極的に行っている。 著書に、就活全般の考え方や面接対策などを指南する『絶対内定2021』(ダイヤモンド社刊行)シリーズがある。
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