業種とは、事業の種類のこと。世の中のさまざまな事業・ビジネスの種類を区分するために用いる言葉です。就活では、まず業種ごとの特徴や傾向を理解するようにすると良いでしょう。ここでは、業界・業態・職種との違いに加えて、主な業種・業界一覧とその特徴、業種・業界研究のやり方などを解説します。
目次
「業種」とは、事業の種類のことであり、世の中のさまざまな事業・ビジネスの種類を区分するために用いる言葉です。具体的な区分の仕方はいくつかあり、総務省が定めている「日本標準産業分類」や、証券業界で使われている証券コード協議会が定める「業種別分類項目」が有名です。
日本標準産業分類では、最も大きな区分である大分類で20種類の区分を行っており、より細かな区分として、中分類、小分類、細分類を設定しています。また、業種別分類項目では大分類10種類、中分類33種類の区分を設けており、通常、中分類が「業種」に相当します。
なお、リクナビではメーカー、サービス・インフラ、商社(総合・専門)、銀行・証券・保険・金融、情報(広告・通信・マスコミ)、百貨店・専門店・流通・小売、IT・ソフトウェア・情報処理の7種類を大分類に、さらに中分類として119種類の区分を設定しています。
就活のためにどんな業種があるかを知りたい際には、証券コード協議会が定める「業種別分類項目」の中分類33種に目を通してみると良いでしょう。多すぎもせず、少なすぎもしないので、研究をする際にもちょうど良いと思います。
<業種区分の例1:証券コード協議会が定めたもの>
業種 | |
大分類 | 中分類 |
水産・農林業 | 水産・農林業 |
鉱業 | 鉱業 |
建設業 | 建設業 |
製造業 | 食料品 |
繊維製品 | |
パルプ・紙 | |
化学 | |
医薬品 | |
石油・石炭製品 | |
ゴム製品 | |
ガラス・土石製品 | |
鉄鋼 | |
非鉄金属 | |
金属製品 | |
機械 | |
電気機器 | |
輸送用機器 | |
精密機器 | |
その他製品 | |
電気・ガス業 | 電気・ガス業 |
運輸・情報通信業 | 陸運業 |
海運業 | |
空運業 | |
倉庫・運輸関連業 | |
情報・通信業 | |
商業 | 卸売業 |
小売業 | |
金融・保険業 | 銀行業 |
証券、商品先物取引業 | |
保険業 | |
その他金融業 | |
不動産業 | 不動産業 |
サービス業 | サービス業 |
出典:証券コード協議会「業種別分類項目及び業種コード」
<業種区分の例2:リクナビが定めている企業検索軸より>
業種 | |
大分類 | 中分類 |
水産・農林業 | 水産・農林業 |
メーカー | 食品 |
化粧品 | |
医薬品 | |
化学 | |
文具・事務機器・インテリア | |
アパレル・服飾・雑貨・皮革製品 | |
印刷 | |
自動車 | |
輸送機器 | |
機械 | |
プラント・エンジニアリング | |
総合電機(電気・電子機器) | |
医療機器 | |
精密機器 | |
重電・産業用電気機器 | |
コンピュータ・通信機器・オフィス機器 | |
半導体・電子部品・その他 | |
家電・オーディオ機器 | |
ゲーム・アミューズメント機器 | |
住宅 | |
建設 | |
設備・設備工事 | |
建材・エクステリア | |
繊維 | |
紙・パルプ | |
ガラス・セラミックス | |
タイヤ・ゴム製品 | |
石油・石炭 | |
金属製品 | |
非鉄金属 | |
鉄鋼・鉱業・セメント | |
農業・農林 | |
水産 | |
その他メーカー | |
サービス・インフラ | 旅行 |
ホテル | |
レジャー・アミューズメント・パチンコ | |
芸能・芸術 | |
スポーツ・フィットネス・ヘルス関連施設 | |
教育 | |
不動産 | |
公社・官庁 | |
航空・空港 | |
鉄道 | |
海運 | |
陸運 | |
タクシー・バス・観光バス | |
倉庫 | |
電力・電気 | |
エネルギー | |
ガス・水道 | |
外食・レストラン・フードサービス | |
人材サービス(人材紹介・人材派遣) | |
コンサルタント・専門コンサルタント | |
建設コンサルタント | |
シンクタンク | |
医療関連・医療機関 | |
福祉・介護 | |
ブライダル・冠婚葬祭 | |
エステ・理容・美容 | |
団体・連合会 | |
建築設計 | |
警備・安全・メンテナンス・清掃 | |
機械設計 | |
その他サービス・インフラ | |
商社(総合・専門) | 総合商社 |
食料品 | |
化学製品 | |
化粧品 | |
医薬品 | |
繊維製品 | |
アパレル・服飾雑貨・貴金属 | |
インテリア | |
スポーツ用品 | |
教育 | |
機械 | |
医療機器 | |
自動車・輸送機器 | |
事務機器・オフィス機器 | |
電機・電子・半導体 | |
金属 | |
建材・エクステリア | |
紙 | |
石油製品 | |
その他商社(総合・専門) | |
銀行・証券・保険・金融 | 都市銀行・信託銀行 |
地方銀行 | |
信用金庫・信用組合・労働金庫・共済 | |
外資系金融 | |
政府系・系統金融機関 | |
生命保険 | |
損害保険 | |
証券 | |
クレジット・信販 | |
リース・レンタル | |
消費者金融 | |
その他銀行・証券・保険・金融 | |
情報(広告・通信・マスコミ) | 広告 |
出版・雑誌 | |
放送・テレビ・ラジオ | |
新聞 | |
通信 | |
百貨店・専門店・流通・小売 | 百貨店・デパート・複合商業施設 |
スーパー・ストア | |
コンビニエンスストア | |
ホームセンター | |
生活協同組合 | |
音楽・書籍・インテリア | |
ファッション・服飾雑貨・繊維 | |
ドラッグストア・医薬品・化粧品・調剤薬局 | |
スポーツ用品 | |
自動車・輸送機器 | |
家電・事務機器・カメラ | |
メガネ・コンタクト・医療機器 | |
その他百貨店・専門店・流通・小売 | |
IT・ソフトウェア・情報処理 | 情報処理 |
ソフトウェア | |
インターネット・WEB・スマートフォンアプリ | |
ゲームソフト |
一般的には、業種をさらにいくつかに区分したものが「業界」に当たります。
証券コード協議会が定める「業種別分類項目」では、製造業という業種の大分類の中には、食料品、鉄鋼、化学、輸送用機器…などといった中分類が設けられていますが、これらをさらに細かくすることで、業界として区分することができます。
例えば、中分類(業種)に「輸送用機器」というものがありますが、これは「自動車」「鉄道」「船舶」「航空機」「産業用運搬車両(クレーンやフォークリフトなど)」など、より細かく区分することが可能であり、これらが業界といわれるものになります。
業態とは、主に小売業や飲食業における、ビジネスのやり方の違いを指します。
例えば、同じ小売業であっても、商品ラインナップや、商品の価格帯、接客の方針(消費者が自分で商品をレジまで持ち込み購入するか、カウンター式の接客を受けて商品を購入するかなど)によって、スーパー、コンビニエンスストア、百貨店、ディスカウントストアといった業態の区分がなされます。
また、飲食業についても同様に、ビジネスのやり方の違いで、ファストフード、カフェ、バイキング(ビュッフェ)といった業態の区分がなされます。
職種とは、仕事の種類のこと。会社がある事業を手がけるとき、会社内では、複数の仕事・役割が必要になります。例えば、商品を作る(生産・製造)、商品を売る(営業・販売)、売り上げや経費支出等の数字面を取りまとめる(経理)など。このように、各人が主に手がける仕事・役割の違いが職種です。
結論から言うと、就活では、業種と業界の違いをそこまで明確に意識する必要はありません。業種と業界の違いは、事業・ビジネスをどの程度の細かさで意識するかにより生じるものです。その区分の仕方は総務省や証券コード協議会、就職情報サイトなどによって異なり、抽象的かつ曖昧な側面がある概念と言えます。したがって就活では、「業種」と「業界」の区分を厳密に行う必要はないでしょう。「業種」という区分が「業界」よりも大きい概念だと理解できていれば大丈夫です。それよりも重要なことは、世の中にはどんな業種・業界があるのかを幅広く知り、その後に興味を持った業種・業界についての理解を深めていくことです。
ここでは主な業種について、それぞれのビジネス概要や特徴を解説します。どの業種や業界をより詳しく研究するのかの参考にしてみるのも良いでしょう。
メーカーは、自社で商品を製造することがビジネスの基本です。そのため、より良い商品を作り出すために研究開発を行ったり、商品の品質を高め安定させるために製造ラインの構築・改善を行ったり、良い原材料を確保したり、顧客の声を把握して商品を改良したりすることが重要となります。
近年は、ITの活用などを通じ、販売した商品に対するアフターサービスを提供することで、商品販売後にも売り上げが得られるような取り組みを進める企業が増えているのが特徴です。
形があり目に見えるものを扱うことに安心を感じる人や、「モノ」を介して社会につながっていくことに興味・関心がある人は、より詳しく業種研究・業界研究を進めてみても良いかもしれません。
サービス業は、教育、福祉・介護、旅行・ホテル、レジャー、外食、人材、不動産など、無形のサービスを販売・提供することを主たる事業分野としています。
また、インフラ業界は、鉄道、航空、空港、電力、ガス会社などのように、社会の基盤となる、私たちの生活に密着したサービス・仕組みを提供することが主たる事業です。これらは顧客への直接的なサービス提供や、そのための準備・サポートなどの業務で、人手が必要となるケースが多く、最近ではロボットの導入などの関心が高まっています。
サービス業はお客さまのために仕事をするという側面が強いので、人とかかわることが好きな人や、人のために役立つことに興味があるという人はより詳しく業種・業界研究をしてみると良いでしょう。
インフラ業は、人の生活に密着しているので、ビジネスとして比較的安定している傾向にあります。社会を裏で支えることや、社会のために役立ちたい人などは、より詳しく業種・業界研究をしてみると良いでしょう。
商社には、総合商社と専門商社があります。
総合商社は、幅広い産業分野で、原料や加工品、サービスなどあらゆる商材を扱って、売りたい相手と買いたい相手を結び付け、取引の仲介をすることが主な仕事です。また、自社が持つネットワークを生かし、より良い原材料の入手や、販売チャネルの開拓、物流の最適化などを手がけ、新たな事業・商品のプロデュースに取り組むケースもあります。近年では、天然資源開発や病院などの医療事業の海外展開などに対して自社のノウハウ・ネットワークを提供しつつ、大規模投資を行うような取り組みも見られます。
総合商社に対して専門商社では、医療・医薬、鉄鋼、食品など特定の分野に絞って取引を手がけています。
仕事をする際に、原材料の確保から販売までといった一連のビジネスの流れを最初から最後まで手がけたいと考えている人は、商社についてより詳しく業種・業界研究をしてみると良いかもしれません。幅広いネットワークを生かして、世の中にある良いもの同士を組み合わせて、新しい価値を生み出し販売することに興味がある人にもオススメです。
銀行は、顧客から預かったお金を企業や個人などに貸し出し、預金金利と貸出金利の差である利ざやから主な収益を得るビジネスです。
証券会社は、顧客が株式・債券などの金融商品を買う際の仲介をして得られる手数料収入や、自らが株式や債券を運用した際の利益などを、収益の大きな柱としています。
保険会社は顧客から保険料を受け取って、さまざまなリスクを緩和するための保険を販売し、利益を上げています。また、受け取った保険料で株式や債券を運用し、そこから得られる利益も収益源としています。
また金融には、信用金庫、ノンバンクと呼ばれるローン貸付業、リース業なども含まれます。
近年の金融業では、法人顧客を対象に、営業先の紹介や事業承継などの課題に対する経営サポートをするなど、顧客のビジネスに寄りそう付加的サービスを提供することを通じ、自社を取引先として選んでもらったり新たな収益源としたりする取り組みが盛んになっています。お金そのものや、お金を適切に社会に循環させること、お金という側面から世の中に貢献したい人は、金融業についてより詳しい研究をしてみるのも良いかもしれません。
いわゆるマスコミ業は、メディアを通じて多くの人々に多様な情報を届けるビジネスです。 マスコミ業には、新聞社、出版社、報道機関に記事を配信する通信社、テレビ・ラジオを運営する放送局、これらのメディアの広告枠を営業したり、メディアを通じて企業の宣伝を行ったりする広告代理店などの企業が含まれます。近年では、インターネットの普及に伴い、インターネット出版社やインターネット専業の広告代理店なども数多く登場しています。
通信業とは、固定電話や携帯電話、ケーブルテレビなどの仕組みを提供し、各種サービスを提供するビジネスです。
世の中に新たな情報や記事、映像作品などのコンテンツを提供することに関わりたい人や、報道やニュースなどによって正しい情報を伝えたい人、物事や商品の良いところを取り上げて魅力的に紹介していきたい人などは、この業種についてより詳しく研究してみるのも良いかもしれません。
メーカーなどが製造した商品を仕入れて、消費者に届ける事業を総称して流通業といいます。流通業は主に百貨店や専門店などの小売業と、卸売業とに分かれます。
この業種では近年、インバウンド(訪日外国人)対応に関するビジネスやビッグデータの活用が盛んです。商品の売れ行きや顧客情報を分析・解析することで、より良い商品の提供や店舗のレイアウト改善などに役立てる動きがあります。
すてきなものを見つけて、お客さまに紹介・提案することや、それによってお客さまが喜ぶことに興味がある人などは、この業種についてより詳しく研究してみるのも良いかもしれません。
コンピュータやスマートフォン、インターネットが生活に根付いたことで、さまざまなソフトウェア・アプリケーションを利用することが可能となり、ビジネスや生活のいろいろなシーンが、以前に比べてより便利・快適になってきています。また、さまざまなデータを収集・蓄積・分析する取り組みが活発化しており、データの活用を通じて、より役立つ情報を入手するといったことも可能となっています。ソフトウェア・アプリケーションを開発する企業や、データを処理・分析するような企業の活躍の場は、近年ますます広がっています。
ITを通じてビジネスや生活を便利にすることに関心がある人や、さまざまなデータを活用してより便利なサービスをつくりたい人は、この業種についてより詳しく研究してみても良いでしょう。
業種・業界研究のやり方を、以下の3ステップで解説します。
ステップ1. 業種・業界について幅広く情報を集める
ステップ2. いいなと思う業種・業界について深く知る
ステップ3. いいなと思う業種・業界を比較検討する
まずは、世の中にさまざまな業種・業界があることを知りましょう。総務省の日本標準産業分類や、証券コード協議会の「業種別分類項目」、リクナビなどの業種区分を見てみることが第一歩になります。よく知らない業種・業界があったなら、その業種・業界を調べてみましょう。普段生活している中で接する機会が少ない業種・業界は、「よくわからない」といった理由で志望業界・企業の候補から外れてしまうケースが少なくありません。幅広く業種・業界を知ることができれば、自分に合う企業を考える際の選択肢が広がります。
気になる業種・業界があれば、インターネットや業界研究本・業界解説本などの書籍を活用しながら詳しく調べてみましょう。また、業界団体のホームページを見てみることや、業界の大手企業のホームページを何社か見てみることも、業界の理解を深めることに役立ちます。
情報を見ていく中で、疑問に思うことや、わからないことが出てきた際には、あきらめずに、追加で調べてみることが重要です。インターネットや書籍だけでは、解決できない疑問は就職をしている先輩や保護者など身近な大人に質問や相談してみるのも良いかもしれません。企業によっては、就活生向けに社員と会話することが可能な機会を設けているケースもあります。そういった機会を探してみるのも良いでしょう。疑問を解消することで、その業種・業界への理解がより深まれば、エントリーシート(ES)作成や面接を準備する際、志望動機などを具体的に書けるでしょう。
また、インターンシップやアルバイトなどで、企業業務の一部を経験できるケースもあります。気になる業界に属する企業のインターンシップ情報やアルバイト情報には目を配っておきましょう。
調べるときには以下の方法が有効です。
興味を持った業種・業界を1つ見つけた後も、そこで業種・業界選びを終わらせないことが大切です。ほかの業種・業界も見てみることで、最初に良いと思った業種・業界が本当に自分にとって良いのか、相対的な比較が可能になります。比較研究をすることで、業種や業界の良い点だけでなく、自分に合わない点や業界の課題などにも気づけることがありますし、良いと思った点について、どのくらい良いのかを整理することもできるでしょう。
リクナビ「業界ナビ」では、さまざまな業界についてより詳しく特徴、ビジネスの仕組み、近年の動向、どんな職種があるのかなどを解説しています。
業界研究の最初の一歩として、まずは業界ナビでいくつかの業界について調べてみるのも良いでしょう。
インターンシップ&キャリアや就活準備に役立つ情報をX(旧Twitter)でも発信中!
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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志望業界や志望企業を絞り込んだり、志望動機をまとめたりするうえで、業界や業種への理解を深めるために「
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