エントリーシート(ES)の作成方法には、「手書き」と「パソコン」の2通りがあります。作成方法を指定している企業のほかに、特に指定がなく自由に手法を選べるケースもあります。どちらで作るべきなのか、評価が変わることはあるのかなど、迷う方もいるのではないでしょうか。企業の視点や、手書きの場合の注意点について、人事として新卒採用を20年担当し現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんが答えます。
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面接や説明会のオンライン化が進んだ背景もあり、エントリーシートもパソコンでのテキスト入力が一般的になりつつあります。採用ホームページや就活サイトなどから、エントリーシートフォームに必要事項を入力して「送信」ボタン押して提出する形式や、エントリーシートのフォーマットをダウンロードして入力したものをメール添付する形式が増えているのです。
相対的に、手書きのエントリーシートを求められるケースは減少傾向にありますが、企業によってはあえて「手書き」を求めるところもあります。
企業が手書きのエントリーシートを求める理由には、次のようなものが考えられます。
手書きのエントリーシートは、「フォーマットを出力し(企業説明会などで受け取り)、書いて、郵送する」というプロセスを経るため手間がかかります。書き損じる場合もあり、パソコンで作成するよりも大変だと感じる方が多いでしょう。
だからこそ、「時間とパワーをかけてでも応募したいのか」という意欲を見るために、応募が多く集まる大手企業や人気企業が、あえて手書きを指定することもあります。
では、企業側からの指定がない場合、「手書き」と「パソコン」のどちらを選ぶといいのでしょう。学生の皆さんの中には、「手書きによって志望度の高さを判定する企業があるなら、パソコン作成は避けた方がいいのかな」と思う方もいるかもしれません。
結論から伝えると、入力や送付の手軽さ、文章の推敲(すいこう)のしやすさ、ミスの修正のしやすさなどの観点から、指定がないのであれば「パソコン」を選んで問題はないと思います。
なぜならば、私が、これまで採用をお手伝いしてきた企業の中で、作成方法を指定していない場合に「パソコン作成より手書きのエントリーシートの方を評価したい」という声を聞いたことがないからです。就活では書く手法よりも、書かれている内容が大事です。
「熱意を見せよう」と手書き作成を選択したことで、下書きや清書に時間がかかって中身がおろそかになってしまうよりは、パソコン作成を選択して内容の推敲に時間をかける方がいいのではないでしょうか。
ただ、当然ながら、指定があるのにそれに沿わないものを提出してしまっては、「ルールにのっとっていない」という観点で不受理(不採用)になる可能性が高くなります。あえて「手書き」または「パソコン」を指定している企業には、それぞれの意図があります。定められた方針に従って提出するようにしましょう。
作成する側から見たときに、「手書き」「パソコン」にはそれぞれどんなメリットがあるのでしょう。
パソコンであれば、
などのメリットが挙げられます。
一方、手書きだからこそ伝えられるメリットには、
などがあります。
手書きのデメリットは、どうしても時間がかかってしまうことです。
など、大変さを感じることが少なからずあるでしょう。
手間を最小限にして作成ができるのは「パソコン作成」ですが、自分が行きたい企業が「手書き」を求めている場合には、その方針に従って提出する必要があります。
では、「手書き」の場合、どのような点に注意して作成すればいいのでしょう。
エントリーシートでは「400文字以内でまとめなさい」など文字数が定められているケースがあります。手書きであっても事前にパソコンで文章を作成し、文字数制限にきちんと収まっているかを確認した上で、実際の用紙に鉛筆で下書きをすると間違いがありません。
下書きをせずに書き始めると、スペース内に文章が収まらずに文字の大きさがちぐはぐになってしまったり、詰めて書きすぎて空白ができてしまったりと、バランスが悪くなりがちです。
あまりにも空白が多いと、使えるスペースをすべて使って伝えたい、という意欲が感じ取れず、マイナスの印象を与えてしまう可能性もあります。
読み手の読みやすさを意識して、丁寧に書きましょう。文字がぎゅうぎゅうに詰まっていると読みにくいので、段落分けをしてスペースを適度に確保するなどの工夫が大切です。手書きを求めることにより、「読み手のことを考えて書いたかどうか」という姿勢を見ている企業もあります。
消せるボールペンのインクは熱に弱く、コピー機の熱や直射日光などによって消える場合があり、公的な文書には不適切とされています。そのため、就活でエントリーシートを書くときの使用は避けましょう。
企業からの指定がない場合、エントリーシートは「手書き」でも「パソコン」でも構いません。最も大切なのは「書かれている内容そのもの」です。手書きに固執して締め切り間際になってしまったり、何度も書き直すことにストレスを感じてしまったりするのであれば、パソコン作成を選んで、何ら問題はありません。手書きの清書に時間をかけすぎるよりは、自己分析や企業研究に時間を充てるなどして、エントリーシートの中身の推敲につなげてほしいと思います。
なお、提出前に、手書きの場合はコピーを、パソコン作成の場合はデータ保存をしましょう。後日、面接が行われる場合に、エントリーシートの内容を基に質問されることがあります。どの企業に提出したものかわかるように保管しておき、面接前に内容を見返すと安心です。
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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