
飲食業界には、店内で食事を楽しんでもらったり、自宅などに持ち帰るための料理を販売したりするさまざまな企業があります。本記事では、飲食業界の詳しい業態からビジネスの仕組み、主な職種、市場の動向まで解説します。
飲食業界とは?
主に飲食サービスを提供している飲食業界には、大きく分けて「外食」と「中食」の2種類の業態が存在します。それぞれの業態では、次のような事業を手がけています。
外食
店舗などで食事をしてもらうサービスを提供する業態で、レストラン・カフェ・居酒屋をはじめ、焼き肉や回転すしなどの専門料理店といった幅広い種類に分かれます。中には店内での食事だけでなく、自宅に持ち帰るテイクアウトに対応するファストフード店も多くあります。なお学校や社員食堂などにおける給食サービスも、外食に該当します。
中食
お総菜・弁当・パン・ピザ・すしなど、調理品を持ち帰って食べてもらうサービスを提供する業態です。例えば、デパ地下やスーパーで販売されているおかず品をはじめ、コンビニエンスストアで売っている弁当やおにぎりなども中食となります。
中には店舗での食事・持ち帰り・宅配と幅広く手がけていたり、持ち帰りメインでイートインサービスも提供していたり、外食と中食のどちらも両立する企業も多く見られます。このように外食と中食を切り分けず、多彩な業態を展開する企業を含めて、総称して飲食業界と呼びます。
飲食業界の仕組み
外食と中食のいずれの業態でも事業者ごとに経営方式は大きく異なり、全国各地に複数店舗を展開する大手チェーンから、個人オーナーまでビジネスの規模もさまざまです。食事内容や顧客層なども事業者によって違いがあり、それぞれ多彩なコンセプトで競合しています。
また、法人が経営する飲食店では自社直営のほか、出店数の増加や各店舗での味・品質の統一化に向けて、フランチャイズやセントラルキッチンを導入するケースもあります。さらに最近では、店舗に足を運ばなくても料理を購入できる、フードデリバリーを取り入れる飲食店も見られます。
フランチャイズ
自社ブランドを持つ事業者を本部として、そのサービス内容や店舗の運営方法などを加盟者(法人・個人)に提供する経営方式です。本部では、加盟者の売り上げの一部を自社ブランドの使用料(ロイヤルティー)として受け取ることなどで収益を得ています。また加盟者にとっては、既存のブランドを使うことで、一定の売り上げを確保しやすくなる利点があります。
セントラルキッチン
外食も中食も共に、ほかの事業者から食材を仕入れて現場で調理するのが一般的です。しかし近年では、食事を調理する専門施設のセントラルキッチンを持ち、まとめて完成品を作って各店舗などの現場に届ける手法も見られます。各現場では、温めるだけなどの簡単な作業だけで食事を提供でき、どの拠点でも同じ品質を維持できる利点があります。
フードデリバリー
フード配送専門の事業者への外部委託により、自宅などの現地までの出前に対応するデリバリーサービスも普及しています。フード配送専門の事業者に手数料を支払い、配達を外注することで幅広いニーズに応じる仕組みです。こうしたフードデリバリーの発達から、店内の飲食スペースを省略して、ほぼ厨房(ちゅうぼう)のみで営業するゴーストキッチンやバーチャルレストランなどの業態も出てきています。なおフードデリバリーは、コロナ禍の巣ごもり需要における業績アップに一役買った手法ですが、現在でも引き続き高いニーズを集めています。多くの外食・中食事業で、フードデリバリーを通じて、一定の売り上げを確保しています。
飲食業界の主な企業
飲食業界には、業態や規模なども大きく異なるさまざまな事業者が存在していますが、中でも代表的な企業は以下の通りです。
【外食】
- 株式会社ゼンショーホールディングス
- 日本マクドナルドホールディングス株式会社
- 株式会社すかいらーくホールディングス
- 株式会社FOOD&LIFE COMPANIES
- 株式会社コロワイド
【中食】
- 株式会社プレナス
- 株式会社ロック・フィールド
- オリジン東秀株式会社
- 株式会社ハークスレイ
- 株式会社柿安本店
- KOZOホールディングス株式会社
普段利用している飲食店を、どのような企業が運営しているのか調べてみると、飲食業界に携わるさまざまな企業を知るきっかけになるでしょう。
飲食業界の主な職種
飲食業界には、主に次のような職種があります。
店舗スタッフ
飲食サービスを提供する現場で、接客や調理など店舗営業に伴う作業を担当します。配膳やレジなどの接客をするホールやサービス、調理をするキッチンというように役割を分けていることもあります。
店長
飲食サービスを提供する現場のマネジメントを担当します。シフト作成やアルバイトの面接・指導などのほか、売り上げ・食材の在庫・運営コスト・店舗目標といった、現場を回していく上での幅広い管理を担う職種です。
スーパーバイザー(SV)・エリアマネージャー
特定の地域にある複数の現場を統括し、売り上げ向上を図るためのマネジメントを担当する職種です。各現場の飲食サービスの品質管理をはじめ、顧客満足度アップに向けた指導や販売促進・集客施策の立案など、現場運営をフォローして業績につなげていきます。
マーケティング
自社の宣伝活動などを担当する職種です。広告・情報発信をはじめ、来店特典・キャンペーン・イベント出店の企画など、販売促進や集客に向けた認知度向上を促す戦略を立てていきます。
バイヤー
食事の提供に必要な原材料などの仕入れの管理を主に担当します。安定した品質や量で、なおかつ原価を軽減しながら原材料の仕入れができるように、購入先の開拓・交渉・関係構築などを担う職種です。
商品開発・研究
商品となるメニューやレシピの考案を担当します。世の中のトレンド・顧客ニーズ・日常的な仕入れに適した材料なども含めて、市場の動きに合ったメニューやレシピを生み出す職種です。栄養学などの調理関連だけでなく、経営学や統計学といったマーケティングの知識も役立ちます。
店舗開発
事業拡大に向けた、出店計画の立案を担当します。市場調査や物件選定をはじめ、新規店舗のオープンに伴う戦略企画や準備などを担う職種です。
食品製造
自社製造拠点における、作業計画の立案・品質向上・業務改善など、安定した飲食サービスの提供に向けた生産管理を担当します。セントラルキッチンがある場合に、多く見られる職種です。
本社管理部門
本部におけるバックオフィスを担当します。人事・労務・総務・財務など、円滑な現場運営や収益をサポートする業務を担います。各企業の本社管理部門では、多くの場合、人材分野や会計分野などのように、業務領域ごとにさまざまな職種に分かれます。
飲食業界のトレンドや今後の展望
飲食業界において、特に注目しておきたい最新の動向を紹介します。
食の安全・健康志向の高まり
一般消費者による食の安全性に対する関心が高まっている傾向にあり、契約農家や野菜工場などから、品質の保証された食材を調達する動きが見られています。また最近では、肥満や生活習慣病などの予防に向けた食事が高い注目を浴びており、健康志向の商品開発に力を注ぐケースも多くあります。例えば大豆ミートの活用やベジタブルメニューの導入など、健康に配慮したさまざまな取り組みが行われています。
SDGsへの取り組みに対する関心
SDGs(持続可能な開発目標)の中では、「つくる責任、つかう責任」として、食料やごみの廃棄量削減が提示されています。そこで自社のブランディングとして、フードロス対策やパッケージ・カトラリーのエコ化など、一般消費者からの信頼につながる社会貢献に努める動きが各企業で行われています。
「二毛作・三毛作店舗」の取り組み
特に立地条件のいい飲食店では、不動産コストの高騰や物件費用の調達などの対策として、営業時間外のスペースを活用した二毛作・三毛作店舗に取り組む例もあります。例えばスペースの貸し出しや間借り営業など、ほかの事業者に対して営業時間外に場所や設備を提供し、新たな収益の確保を行っているケースも見られます。またさらなる集客施策として、時間帯ごとに出すメニューや、カフェ・バー・テイクアウトというように業態を変えるなどの二毛作・三毛作店舗を導入している場合もあります。
インバウンド需要の上昇
少子高齢化による国内市場の縮小が懸念される一方で、インバウンドによる新たな需要の創出が見込まれている側面もあります。2023年には10年前に比べて、訪日外国人による国内飲食費が約4倍にも増加し、2024年も前年比約1.5倍と上昇傾向にあります(※)。今後もインバウンド需要が伸びていくことを考えるなら、集客の拡大にも期待できます。こうしたさらなる需要に向けて、多言語のメニュー表示や、SNSを使った海外向けの情報発信などの動きも見られています。
※経済産業省「コロナ禍に苦しんだ外食産業、今後の期待は賃上げとインバウンドか」
コスト負担の軽減に向けた対策
最近では物価高が続いていることもあり、業績改善・維持に向けて、飲食代金の値上げをはじめとした対策が行われています。さらに人材不足に伴う賃上げなどの影響から、人件費の高騰も進んでいる傾向にあり、さまざまな要因からコスト負担が増加している状況にあります。なお単純な値上げの継続は、集客の低下につながるリスクもあり、各企業では経費削減とのバランス感を意識した取り組みが求められています。こうした背景から、今後も引き続きDXの推進などによってコストカットを進める動きが継続すると予想されます。
DX推進の加速
コスト削減の必要性が高まっていることや、少子高齢化に伴う人材不足の影響の深刻化などもあり、業務効率化や省力化に向けたDXの取り組みが加速しています。今後も積極的にIT、AI、ロボットなどが活用され、現場の負担軽減や待遇改善などの対策が行われていく見込みです。一例として、店舗内で料理を運ぶ配膳ロボットや、入店予約・座席案内の無人システムなどが挙げられます。ほかにも、スマートフォンで決済をするモバイルオーダー、タッチパネルによるセルフ注文・レジ、各店舗の需要予測やそれを踏まえた適切な材料仕入れの助言を行うシステムなどの導入も進んでいます。
まとめ/飲食業界では幅広い可能性のもとで活躍できる
飲食業界は、企業ごとに手がける事業内容はさまざまで、経営の形態なども大きく異なります。またそれぞれのビジネスを支える職種も多様です。興味があれば、ぜひリクナビから、飲食業界のインターンシップ&キャリア情報をチェックしてみましょう。
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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