ホテル業界は、客室の提供を中心に、宴会場の運営など幅広いサービスを行っています。本記事では、ホテル業界のビジネスモデル・事業形態をはじめ、職種ごとの仕事内容や業界の最新トピックスなどを解説します。

ホテル業界の仕組み
ホテル業界では、旅行や出張などに伴う客室のほか、食事やアミューズメントといった滞在中の各種サービスを提供する事業を主に手がけています。業態によっては、結婚式のチャペル・披露宴やパーティーなどの宴会で利用できる、会場の運営・貸し出しにも対応し、宿泊に限らず幅広い目的に応じた場所の提供も行っています。
客室の販売方法
ホテル業界では、大きく分けて、直接販売と委託販売の2つの方法で客室を提供しています。直接販売では自社サイトなどを通じて集客し、一方の委託販売では旅行代理店をはじめとした外部業者を介して客室利用の促進を図ります。
最近では、OTA(Online Travel Agent)と呼ばれるインターネットによる予約が主流で、特に旅行予約サイトなどでは、鉄道や飛行機のチケットと宿泊をセットにしたプランも販売されています。

ホテル業界の代表的な企業
ホテル業界に分類される主な企業を紹介します。
- リゾートトラスト株式会社
- ルートインジャパン株式会社
- 株式会社ミリアルリゾートホテルズ
- 株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド
- 株式会社東急ホテルズ
- 株式会社京王プラザホテル
ホテルの種類
ホテルは、それぞれの価格帯・設備・サービスなどにより、大きく5種類に分けられます。
リゾートホテル
テーマパークなどのレジャー施設や、高原やビーチといったリゾート地にあるホテルです。レストラン・カフェ・バーといった施設のほかに、プール・スパ・温泉などを備えていることもあり、長期のバケーションや観光目的で使われやすい特徴があります。宿泊料金に加えて、設備利用や飲食などのサービス料によって収益を得ています。
アーバンリゾートホテル
リゾートホテルと同様に、客室以外にもさまざまな施設を備えた、滞在そのものを楽しむ都市部のホテルです。非日常的な空間演出をしている場合が多く、特別な宿泊体験を提供しているのも特徴です。なお収入源は、リゾートホテルと同じく宿泊料金や各種サービス料となります。
シティホテル
都市部の繁華街近くにある、客室・レストラン・結婚式場・宴会場・アミューズメントなどをそろえたホテルです。宿泊だけでなく、幅広い機能性があり、さまざまな会合やイベントでも利用されます。宿泊料金のほか、飲食代や設備利用費による収益も大きいのが特徴です。
ラグジュアリーホテル
より高品質な宿泊体験を提供する、価格帯や設備なども含めて、特に高級志向のホテルです。アミューズメントやレストランなどの充実した施設を備え、例えば観光プランの相談やタクシー手配といったさまざまなサービスを行っている点では、ほかのホテルと重なる部分もあります。その中でも、豪華な客室やホスピタリティを重視した接客などにこだわっているのが特徴です。
ビジネスホテル
宿泊に特化した低価格のホテルで、部屋の広さ・設備やサービスなど、必要最小限に抑えられているケースが多く見られます。中には「朝食付き」「大浴場完備」などの場合もあります。基本的には、宿泊料金が最大の収入源となります。
ホテル業界での経営形態の違い
ホテル業界では、企業ごとに経営形態でも差が出やすく、各社のビジネスモデルにも違いがあります。ホテル業界の企業研究をする際には、以下のような経営形態も把握しておくとよいでしょう。
- 直営型:自社で保有する土地・建物を使ってホテル事業を展開している経営形態で、ラグジュアリーホテルなどで見られやすい特徴があります。
- フランチャイズ:既存ホテルのブランド名や、運営ノウハウを活用して事業を行う経営形態で、全国展開する有名ホテルチェーンが本部となるケースが多く見られます。
- リース:ほかのオーナーから土地・建物を借り、不動産賃料を支払いながらホテル事業を行う経営形態で、駅前やインターチェンジ付近など好立地のビジネスホテルでよく見られます。
- 運営委託:土地・建物を所有するオーナーより、ホテル運営の委託を受けて事業を行う経営形態で、外資系のラグジュアリーホテルなどでよく見られる傾向にあります。
ホテル業界で活躍する主な職種
ホテル業界における、主な職種としては、次のようなものがあります。
フロント
宿泊時のチェックイン・チェックアウトや精算の手続きなどを担当します。そのほかにも、滞在時の総合案内や予約管理など、ホテルの受付窓口全般を担います。
ベルスタッフ
主に来客時の荷物の受け取りや運搬、客室までの案内を担当します。案内中には、各部屋や設備の使い方など、館内サービスの説明にも対応します。
ドアパーソン
ホテルの正面玄関における誘導・接客・警備などを担当します。入り口の交通整理や宿泊客の代行駐車、館内までの移動案内などを担います。また別称で、アッシャー・グリーターなどと呼ばれる場合もあります。
レストランサービス
ホテル内のレストランで、料理の提供や食事・飲み物のご案内などのサービスを担当します。オーダーの対応や予約受付などの接客のほか、テーブルのセッティングや片づけなどのホール業務全般を担います。
宴会サービス
ホテル内の宴会場における、各種イベントの準備や運営を担当します。パーティー・披露宴などに向けた、予約受付・料理や飲料の手配・会場設営・当日の進行といった、宴会サービスの管理全般を担います。
営業
各ホテルで提供する、サービス全般のセールス活動を担当します。旅行代理店などを対象に、宿泊利用に向けた企画・アプローチや、集客を図る利用プランの立案などを行います。例えば旅行代理店による観光ツアーの宿泊先や、団体旅行や親睦会などでの利用を提案します。
マーケティング
集客に向けた市場調査・分析をはじめ、宣伝戦略やキャンペーン企画などのプロモーション活動を担当します。広告の運用や情報発信など、自社ホテルのブランディング全般を担う職種です。
経営企画
新規ホテルの開発計画など、主に事業戦略の立案を担当します。新たに進出する立地の選定をはじめ、ホテルに導入するシステム・設備や必要なメンテナンスなど、事業成長を図るための施策の企画に取り組む職種です。
ホテル業界で注目したい最新トピックス
ホテル業界に興味がある学生さんが知っておきたい、最新トピックスを紹介します。
インバウンド需要による宿泊客の増加
外国人宿泊者数は2022年以降から年々増加しており、2024年には前年比39.7%増、コロナ禍以前の2019年と比べて42.2%増となりました。(※)
今後も政府による観光促進政策が推進されるなら、この先もインバウンド需要による高いニーズに期待できます。
最近では、インフォメーションの多言語表示や翻訳機能を備えたデジタル端末による接客なども進んでおり、外国語に対応しやすい仕組みも整えられています。一方でホテル周辺の土地の魅力を伝えたり、お客さまの国の風習に配慮した説明をしたりなど、国際的なコミュニケーション能力が必要となってきています。日本はもちろん、さまざまな海外文化への深い理解を持ち合わせた、高いホスピタリティも求められます。
※国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」
宿泊者増加に伴う客室の確保
インバウンド需要により、宿泊客も増加している傾向にあり、さまざまなホテルで客室が不足する状況も見られています。そこでこうした課題に対応するために、各ホテルでは新たな客室確保に向けた対策が求められています。例えば民泊施設と連携して宿泊場所を増やしたり、オフィスビルの空きテナントを客室に改装・転用したりなどの取り組みが検討されています。
省力化の取り組み
少子高齢化による人材不足の解消策として、近年では館内清掃やレストランの料理配膳・ルームサービスなどを自動化する、業務ロボットが積極的に活用されています。加えてフロントの無人化も推進されており、機械を使ったセルフチェックイン・チェックアウトも普及しています。さらに客室の鍵の開閉を暗号化(暗証番号など)したスマートキー化により、鍵の受け渡しや入室カードの発行などの手間も省ける仕組みを取り入れる例も見られています。
また、アプリを通じたルームサービスの受付や、タブレットで館内や周辺施設の案内をするAIコンシェルジュの設置など、客室における各種システム導入も進んでいます。このように業界全体として、できるだけ人手をかけないためのさまざまな対策が行われています。
MICEの会場招致
現状ではインバウンド需要により海外からの客足を多く集める動きが見られる中で、国内における大型の集客施策としてMICEの会場招致を行っている例もあります。なおMICEとは、「会議(Meeting)」「報奨・研修旅行(Incentive Travel)」「国際会議(Convention)」「展示会・イベント(Exhibition・Event)」の頭文字を取ったものです。こうした各企業や団体などで実施される大人数の会合に向けた、会場・客室・飲食サービスの提供により、利益創出を図るケースも見られています。
自治体との連携
近年ではホテルなどの宿泊施設と自治体が連携し、観光地を盛り上げる取り組みを行うことで、地方創生に寄与する事例も多く出てきています。
例えば、広島県尾道市と愛媛県今治市をつなぐ「しまなみ海道」では、その周辺でのレンタサイクルとホテルを充実させることで、観光の需要を増やしています。海辺の美しい景色を眺めながらサイクリングができ、さらにその道沿い付近にホテルが集まっている宿泊のしやすさからニーズが高まり、今では世界的な注目を浴びています。
まとめ/ホテル業界ではどの仕事でも高いホスピタリティが必要
宿泊の場を提供するホテルは、お客さまにとって長い時間を過ごす空間となります。ホテルでのより良い体験がお客さまの満足度に影響しやすく、また単発利用だけでなくリピーターの獲得にもつながるため、高いホスピタリティが求められる業界といえます。ホテル業界に興味のある人はぜひ就活準備に向けて、リクナビでインターンシップ&キャリア情報を調べてみましょう。
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。
