理系の就職活動はどう進める?理系ならではの就活スケジュールとよくある質問5選

理系学生の就活には、「研究と両立させる必要がある」「推薦応募と自由応募という2つの方法を選べる」などの特徴があります。忙しい学生生活の中で希望の就職先を見つけるには、就活スケジュールの立て方やポイントを押さえ、効率的に準備を進めていくことが大切です。本記事では大学生の就活事情に詳しい山田英子さん監修の下、理系ならではの就活のスケジュールや、効率よく進めるための具体的なアドバイスをお届けします。

理系学生の就活の特徴

理系学生の就活には、以下のような特徴があります。

  • 自由応募と推薦応募という2つの選択肢がある
  • 専門職に加えて文系職種も選べる
  • 研究との両立で就活スケジュールがタイトになりやすい

まず推薦応募とは、大学・大学院もしくは教授から推薦をもらって企業の選考を受けることです。一般的な自由応募よりも内定率が高いため、しっかりと準備をして選考に臨めば就活をスムーズに進めやすくなります。

また、専攻分野のノウハウが生かせる文系職種を選べるところも理系ならでは。ただ、就職先の選択肢が多いために、どの企業の選考を受けるか迷ってしまう学生も珍しくありません。さらに理系学生の進路は大学院で修士課程や博士課程に進んだり、就職も理系就職や文系就職があったりと、以下の図のようなバリエーションがあります。

<理系学生の進路>

理系学生の進路

就活準備についてもタイトなスケジュールになりやすいため、余裕があるタイミングに自己分析や業界研究といった準備を進めておくことが大切です。

理系学生の就活は文系と比べて有利?

文部科学省と厚生労働省が共同で調査した「令和5年度大学等卒業者の就職状況調査」によると、文系大学生の就職率は97.9%、理系大学生の就職率は98.8%とほぼ横ばいでした。

理系出身であれば就活が特別有利になるとは限らないことから、事前に就活スケジュールを把握しておき、余裕を持って就活準備を進めておくと焦らずに済むでしょう。

▼参考リンク
令和5年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)

白衣姿で顕微鏡をのぞき込む研究者のイメージ

いつから就活した?理系先輩の就活準備スケジュール

では、実際に就活を行った理系大学生・大学院生の先輩たちは、いつごろから就活をスタートしたのでしょうか。就職みらい研究所の「【2025年卒】理系の学科系統別活動状況」によると、「2025年卒の場合は大学生・大学院生ともに2023年6月に就活を開始した学生の割合が高い」という結果が出ています。

ただし、大学生・大学院生共に「6月単月に就活をスタートした学生より、6月以前から就活していた学生の累計の方が多い」という点に注意が必要です。例えば大学生の場合、6月に就活を始めた学生は全体の22.6%、5月までに就活を始めた学生の累計は30.0%でした。余裕を持って就活を進めた先輩が多いことがうかがえます。

また進路が確定した時期については、学科系統によって多少の差はあるものの、「大学生の場合は4月~5月がピークで、大学院生は3月が最多」でした。

まとめると、理系の就活スケジュールの開始時期と進路確定時期は以下になるケースが多いという結果が出ています。

■大学生の場合
就活準備スタート:大学3年6月ごろ
進路確定:大学4年4月~5月

■大学院生の場合
就活準備スタート:修士1年6月ごろ
進路確定:修士2年3月ごろ

就活スケジュールは志望先企業や大学によって前後する場合もありますが、目安として把握しておきましょう。

就活スケジュールの流れ

理系大学生・大学院生は実習や研究発表が忙しい時期も多いため、一般的な就活スケジュールと自分の年単位のスケジュールを照らし合わせながら、余裕があるタイミングで就活準備を進めていくことが大切です。

もちろん大学での活動など、就活よりも優先したい事柄は人によって異なります。就活準備をする時期は人それぞれですが、自己分析から内定までのスケジュールの目安として、一般的な流れをまとめました。

<理系学生の就活スケジュール>

理系学生の就活スケジュール

自己分析

理系の仕事とひと口に言っても、「研究職」「技術職」「開発職」とさまざまな種類があります。自身の研究で得たスキルやチームでの課題解決経験、得意な技術を書き出して、「どんな仕事に就きたいか」「どんな業界に進みたいか」を探ってみましょう。

また、大学生の場合は大学院に進学するという選択肢もあります。自分の専攻に関する職種に就きたい場合は大学院修了の方が有利になることもあるため、希望の進路についてしっかりと考えてみることをオススメします。

【自己分析のやり方】手軽にできる9つの方法や目的・志望動機の作り方まで

業界・企業研究

自己分析と並行して、自身の専門性を生かせそうな業界や企業についてもリサーチしていきます。研究内容がマッチする企業に加えて文系職種も視野に入れることで、就職先の選択肢を広げることもできます。

業界研究のやり方・ポイントを徹底解説!

【企業研究シート付き】就活に役立つ企業研究のやり方を解説

インターンシップ参加

インターンシップとは、学生が企業で職業体験を行うプログラムのことです。大学3年生または修士1年の夏ごろから多くの企業でインターンシップが実施されるので、気になる企業の募集状況などをチェックしておくとよいでしょう。

なお、インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムは、以下の4つのタイプに分類されています。

「インターンシップ」と称さないタイプ
タイプ1:オープン・カンパニー
タイプ2:キャリア教育

<特徴>
企業説明会や教育プログラムなどが該当します。

「インターンシップ」と称されるタイプ
タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ(大学3・4年、修士1・2年向け)
タイプ4:高度専門型インターンシップ(大学院生向け)

<特徴>
就業体験ができるプログラムが該当します。

上記のうち、「インターンシップ」と称されるプログラムに参加できるのは大学3年生または修士1年からですが、インターンシップと称さないオープン・カンパニーやキャリア教育については年次を問わず参加することができます。また、インターンシップは自身の適性を確かめることができるほか、「企業の実務と研究の違い」を体感できる貴重なチャンスです。学業に支障が出ない範囲で参加を検討してみましょう。

リクナビでは、さまざまな「インターンシップ」「オープン・カンパニー&キャリア教育等」のプログラムをみることができます。気になるプログラムがあるか見てみましょう。

エントリーシートの提出と選考準備

大学3年または修士1年の3月ごろからは企業の広報活動が開始され、エントリーシートの受け付けもスタートします。学会発表や研究活動と選考が重なる可能性があるため、事前にスケジュールを確認しておきましょう。推薦応募を活用する場合は、特に早めの準備が必須です。

エントリーシート(ES)基本の書き方と例文|企業のチェック観点をプロが解説

推薦応募の就活スケジュールについて

推薦応募には、「教授推薦」と「学校推薦」という2つのタイプがあります。

「教授推薦」は研究室に推薦枠がある場合や、教授自身に企業とのコネクションがある場合などに利用できる推薦枠です。募集時期は教授や大学によって大きく異なり、年度によって募集がない場合もあるため、研究室の先輩や教授から例年の大まかな募集企業や募集時期について聞いておくとよいでしょう。

次に「学校推薦」ですが、こちらも大学によって募集時期が異なるものの、一般的には大学3年(または修士1年)の12月から年始ごろにかけて募集されることが多いです。

よって推薦応募の就活スケジュールとしては、以下の流れを把握しておくとよいでしょう。

■大学3年の春/修士1年の春
自由応募の場合と同じく、自己分析や業界研究を始める

■大学3年生の夏~冬/修士1年の夏~冬
インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムへ参加。志望先の企業のリサーチを進めつつ、教授推薦の枠がないか下調べをしておく。

■大学3年生の冬(12月)~/修士1年の冬(12月)~
学内の推薦応募枠の中に第1志望の企業があればエントリー。必要に応じて学内選抜を受け、推薦枠を獲得する。併せてエントリーシート(ES)や適性検査、筆記試験、面接の準備なども進めていく。

推薦応募といっても必ず内定が出るとは限らないため、自由応募と同様にしっかりと就活準備を行うことが大切です。推薦枠の決定に際して学内選考を行う大学も多いので、日ごろの学業の成績や教授の評価を高水準でキープできるようにしておきましょう。

推薦応募を活用するメリット・デメリット

大学推薦枠を使うメリットとしては、やはり自由応募と比べて内定率が高い点が挙げられます。書類選考や1次選考といった一部が免除されることもあるため、短い期間で就活を終えやすいところが魅力です。

一方デメリットとしては、以下の2点が挙げられます。

  • 推薦応募の場合は基本的に内定辞退ができない
  • 大学の要請により、自由応募との併願ができない場合がある

推薦を受けた学生が内定辞退をすると、来年度以降はその企業からの推薦枠がなくなってしまうリスクがあります。学生の内定辞退をできるだけ防ぐため、推薦応募の結果が出るまでは自由応募を制限する大学も珍しくありません。「内定が出たら必ずその企業に入社する」と決めた上で、推薦を受けるようにしましょう。

また、大学が推薦応募と自由応募の併願を許可している場合であっても、推薦応募の結果が出るまでは自由応募でのエントリーを控えるのが一般的です。推薦応募の結果が出てからだと応募できる企業が限られてしまいやすい点がデメリットといえます。推薦応募を使う場合であっても、就活準備は入念に行うことをオススメします。

理系就活生のよくある就活の悩み5選

理系の就活でつまずきやすいポイントをあらかじめ知っておけば、困ったときも落ち着いて対処しやすくなります。理系就活生のよくある疑問点を、Q&A形式でまとめました。

Q.研究や学会と就活スケジュールが重なるとき、どちらを優先すべき?

大学生の就活は「規定の年度に大学を卒業すること」が前提になっているため、卒業へのリスクが生じるほどの状況であれば、学会や研究を優先しましょう。ただ、企業によっては選考の日程をずらしてくれることがあるため、選考日程の調整ができないか交渉するのも一つの手といえます。

Q.就活準備が遅れてしまった場合、何から始めればいい?

まずは自己分析をしましょう。専攻を生かすのか、理系ならではのスキルを生かすのか、理系にこだわらない就職を目指すのかなど、大まかに方向性を探ることからスタートしてみましょう。だいたいの進路の目安がついたら、大学のキャリアセンターや就職情報サイトのスカウトサービスなどを活用して、自分に合った求人を効率よく探していきます。ESや筆記、適性検査、面接準備などのアドバイスを受けられるサービスも積極的に活用してみるのも一つの方法です。

Q.技術職以外のキャリアも検討しているが、どう準備すればいい?

就活準備ですることは、文系職種も理系職種も基本的には変わりません。自己分析や企業研究、ES、適性検査、筆記試験、面接準備といった一連のプロセスをしっかりとやっていきましょう。

Q.研究内容が企業の業務と関連していない場合、どうアピールすればいい?

専攻以外の職種または企業を志望する場合、「なぜこの仕事に就きたいのか」という志望動機が特に問われやすくなります。

まずは志望先の企業への理解を深め、説得力のある言葉で伝えられるよう準備しておくことが大切です。その上で、研究活動を通じて得た学びや研究のプロセスと、志望企業の業務内容との共通点を洗い出し、その点をアピールしていきましょう。

Q.「後付け推薦」って何ですか?

後付け推薦とは内定もしくは内々定をもらうタイミングで、企業から「学校または教授から推薦状をもらってきてほしい」と指示を受けることを指します。

本来、推薦状とは優秀な学生であることを学校が証明するために、選考に先立って企業に提出するものです。一方、後付け推薦は内定辞退を防ぐ目的で要求されるものであり、学生にとっては複数の内定先を比較しにくくなるというデメリットがあります。大学によっては「後付け推薦は出さない」と公言していることもあるため、企業から後付け推薦を打診された場合はその場での回答を控え、大学のキャリアセンターに相談するようにしましょう。

就活準備を効率よく進めるコツ

最後に、就活準備を効率よく進めるコツをご紹介します。

1.積極的に情報収集を行う

就活を効率的に進めるには、就活に関する情報を定期的にキャッチアップすることが大切です。就職みらい研究所「【2025年卒】理系の学科系統別活動状況」によると、大学生全体で実施率が高かった情報収集方法として以下のようなものが挙がっています。

  • 企業研究(業種や職種研究を含む)をした
  • 企業にエントリー(資料や情報の請求)をした
  • 就職情報サイトに登録した
  • 大学で開催される就職ガイダンスに参加した
  • インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムに参加した
  • 大学もしくは大学外で開催される合同説明会やセミナーに参加した
  • 逆求人やスカウトなど、ダイレクトリクルーティングサービスを利用した
  • キャリアセンターに相談した
  • 個別企業の説明会やセミナーのうち、Web上もしくは対面で開催されるものに参加した

上記のような方法で仕事や企業についての情報を広く集めることにより、進路のイメージもつかみやすくなります。また、大学生の場合は「就職か進学か」を判断する手がかりにもなるでしょう。

2.インターンシップを活用する

インターンシップはキャリア形成支援に関する取り組みであって選考ではありませんが、志望企業の雰囲気を感じられる貴重な機会です。専攻外の分野も含めたいろいろなインターンシップを体験することで、新しい進路が見つかることも珍しくありません。

また、学生の長期休暇中に一定期間以上開催することを条件とした「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」と、大学院の修士・博士課程を対象とした「高度専門型インターンシップ」については、採用活動開始以降に限り、企業が学生の個人情報を採用活動に活用できるようになっています。学業や研究をおろそかにしない範囲でインターンシップへの参加を検討するとよいでしょう。

3.研究とのバランスを取る

研究と両立させながら効率的に就活準備を進めるには、「計画」「コミュニケーション」「効率化」の3つの軸が大切になります。

計画

理系学生は実習や研究発表などにより、思ったように時間が取れない時期も多くなります。あらかじめ年単位で自分のスケジュールを確認しておき、研究やレポートなどの準備を前倒しで進めたり、比較的余裕があるときに自己分析などの就活準備をしたりなど、余裕を持って行動できるようにしておくと安心です。

企業の採用選考が本格化すると、ESの提出締め切りが重なったり、指定された日時に面接に行ったりするなど、企業が指定したタイミングを中心に行動することが増えていきます。研究室の先生と日ごろからコミュニケーションを取っておき、就活への理解を得られるようにしておきましょう。

コミュニケーション

企業の採用選考が本格化すると、ESの提出締め切りが重なったり、指定された日時に面接に行ったりするなど、

企業が指定したタイミングを中心に行動することが増えていきます。研究室の先生と日ごろからコミュニケーションを取っておき、就活への理解を得られるようにしておきましょう。

効率化

就活は限られた時間で進める必要があるため、就活のノウハウを有している組織やサービスの支援を受けるのも一つの方法です。大学のキャリアセンターや就職情報サイトのスカウトサービスを活用することで、効率的に就活を進めやすくなります。

まとめ

理系ならではの就活のスケジュールや、効率よく進めるためのアドバイスについてご紹介しました。

<本記事のまとめ>

  • 理系の就活は大学3年または修士1年の6月からスタートする人が多い
  • 推薦応募は内定率が高いが、基本的に辞退ができない点に注意
  • 理系の就活スケジュールはタイトになりやすいため、余裕を持って準備をすることが大切
  • インターンシップには就活の視野を広げるメリットがあるので、学業をおろそかにしない範囲で積極的に参加したい

インターンシップや推薦応募を活用しながら、効率的に就活を進めていきましょう。

——————————————————

山田英子さんプロフィール写真

【監修】山田英子(やまだ・えいこ)さん
早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒業。 大手ファーストフードサー
ビス企業、人材サービス企業を経て、IT系コンサルティングファームに入
社。採用部門のリーダーとして新卒・中途採用業務全般に加え、就職セミナ
ーでの講演などの広報活動や人事制度設計などに携わる。2005年5月に個人事業
主として独立し、大学生の就活支援、社会人の転職支援などを中心に活
動中。 【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント。米国CCE,Inc.認定G
CDF-Japanキャリアカウンセラー

——————————————————

記事作成日:2025年2月10日

インターンシップ&キャリアや就活準備に役立つ情報をX(旧Twitter)でも発信中!

リクナビ」公式Xアカウントはこちら

この記事をシェアしよう

合わせて読みたい記事