就活の自己PRで「向上心」を強みとして伝えたい場合、どのような点に注意するといいのでしょうか。人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。
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性格特性や強みの一つとして挙げられることが多い「向上心」。「上に向かう心」という文字通り、「高い目標を目指し努力する心、成長しようとする心」のことを指します。「成長意欲」とも言い換えることができるでしょう。
向上心のある人は、現状に満足せず努力を続けられる人を指します。これから社会人になり、スキルを身につけようとする学生の皆さんに、一定の向上心は必ず求められるものです。
企業が自己PRで知りたいのは、学生の能力や性格を表す「具体的な行動に支えられた“事実”」です。そのため、向上心として「高い目標を掲げていた」という目標設定の高さだけを伝えても、主観的であまりアピールにはなりません。思うだけなら誰でもできますし、それが仕事で本当に行動に結び付くのか、イメージしにくいからです。
自己PRで「向上心」をアピールするなら、掲げた目標自体の高さだけにこだわらず「掲げた目標に向かって、実際にどう活動してきたのか」を伝えましょう。
一般的に、どれだけ高い目標を掲げるかということよりも、実際に向上心を持って着実に活動していくことができる人の方が、ハイパフォーマー(髙い成果を上げる人)になる可能性が高いと考えられています。逆にいくら高い目標を掲げても、行動が伴わなければ空回りしてしまいます。ですから、学生さんの場合はそれほど高い目標を掲げたことがなかったとしても、目の前にあった目標に向かい頑張る「向上心」と「そのための活動」をセットで語ることができれば、十分アピールになるでしょう。
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【例文5つ】自己PRの書き方・伝え方と、人事に評価されるポイント
では、「向上心」をアピールする際、具体的にどのように伝えるといいのでしょうか。
学業やアルバイト、サークルなどそれぞれのテーマでの例文を見ていきましょう。
ゼミ活動を通じて、学びの機会を自ら広げようとする向上心を鍛えられました。
私が所属する国際協力のゼミでは、例年夏に途上国で子どもたちへの教育支援のボランティア活動を行ってきました。ただ、コロナ禍で渡航が難しくなり、実体験を積むことができなくなってしまいました。落胆は大きかったのですが、今自分にできることをやろうと、ゼミの教授や先輩方のネットワークを使って現地の大学生とのつながりを持ち、子どもたちとオンラインセッションができる環境づくりを進めました。ゼミのメンバーとオンラインで楽しめる企画を立て、実践と改善を繰り返した結果、毎月1回の定期的なつながりの場をつくることができました。どんな環境でも、自分の向上心次第でできることは増やせるのだと感じました。
私の強みは、任された業務で最善を尽くそうとする向上心です。
3年間続けた飲食店のアルバイトでは、アルバイトスタッフ約30人のシフト管理を任されていました。当初は、これまでのメンバーが入れていた固定の希望と合理性からシフトを決めていましたが、都合がつかないメンバーが数人辞めてしまう事態が発生しました。そこで、一人ひとりの希望をくみ取るために面談を実施し、個別の事情を聞いた上でシフトを組み直しました。
また、月ごとにヒアリングシートを作成し、共有することで、年間を通じて全員がバランスよく休めるようになりました。
みんなが楽しく心地よく働けるためにどうしたらよいのか、自分にできることは何かを考え行動に移したことで、辞めるスタッフの数を減らすことができました。
私は、自分が決めた目標を一つひとつ達成する向上心と行動力があります。
高校時代からビジネスの成り立ちに興味があり、大学1年の時にビジネス企画サークルを立ち上げました。在学中にビジネスコンテストに出場し、他大学の学生からも刺激を受けたいと考え、半年ごとに活動目標を設けました。最初は基礎知識をつけるためのサークル内勉強会の開催、次に起業家のOB・OGを招いた講演やインタビューの実施など、できることを増やしていき活動を拡大。大学3年の夏には、全国規模のビジネスコンテストに参加することができました。プレゼンテーション技法が未熟で結果にはつながらなかったので、また挑戦したいと思っています。
私の強みは、地域活性の活動を通じて引き出された向上心です。
私の地元は**県**町という小さな町です。都心の大学に進学後、大学1年の夏に久しぶりに帰省して初めて、当たり前にあった“食の豊かさ”に気づかされました。そこで、都心でもそのおいしさを伝えようと、地元の料理を提供する飲食店30店舗に協力してもらい、「**地域の食を味わう会」を開催しました。参加した友人たちの喜ぶ顔がうれしくて、定期開催をする中で地域をPRするコンテンツも企画するようになりました。
どうしたらより伝わるだろう?と向上心を持って取り組んだ経験を、仕事にも生かしていきたいです。
在学中に公認会計士の資格取得を目指し、向上心を持つ大切さを学びました。
私は自営業の家に育った影響から、事業づくりに関心がありました。会計を学べば、あらゆる事業の成り立ちを知れるのではないかと、大学1年の秋から約2年間、公認会計士の資格の勉強に力を注いできました。毎日少なくとも2時間以上は勉強に励みました。
残念ながら資格取得には届かなかったのですが、合格するために毎日やるべきことを決めて一つひとつクリアする過程には、「わからなかったことがわかるようになる」喜びがありました。もっと知りたいという向上心が引き出された、貴重な経験になりました。仕事においても、高い目標に向けて努力する姿勢を大切にしていきたいです。
例文からもわかるように、エントリーシートの自己PRで「向上心」を伝えるには「実際に取った行動」を具体的に伝えることが大切です。その際、「アピールしたいポイントから書くこと」と「数字や実績などを具体的な事実と共に伝えること」を意識しましょう。また、どうしてその行動を取ったのかを、自身のバックグラウンドを含めて記すと、あなた自身がより伝わりやすくなります。
面接では、聞き手が理解しやすくなるよう、結論を先に伝えることを意識してください。集団面接やオンライン面接などでは、面接担当者との質問のやりとりがない「プレゼンテーション型の自己PR」も少なくありません。その場合は、伝えたいポイントを一度ですべて伝えきれるよう整理しておくとよいでしょう。
社会人になると「向上心の高さ」だけでは、成果につながらない面があります。
仕事や組織への適性を診断する適性検査の中には、ハイパフォーマーの特徴を測る軸に「意欲的側面」を設定しているものもあります。ここでいう意欲には、「達成意欲」と「活動意欲」の2つがあり、能力を発揮するためには、この両方が高いことが求められるのです。
達成意欲を向上心と考えると、活動意欲は向上心を支える活動へのエネルギーや、そのエネルギーを持ってどれだけの量の活動をしたのかを指します。「ここまで成長したい」という達成意欲の高さはもちろん大切です。しかし、「達成するために行動しよう」という活動意欲が伴っていなければ、成果にはつながらず空回りしてしまうのです。
また企業は、向上心が非常に高いタイプの学生には「それ相応のバイタリティーがあるか」を慎重に見るでしょう。「将来は絶対に社長になる」「最速で昇進したい」など、具体的であっても実現するには困難が予想される目標を掲げていると、それがかなわなかったときのモチベーションダウンが大きな損失になるからです。
中には、「向上心をアピールするためには、すごく高い目標を掲げた具体例を出さなければ」と思ってしまう学生さんもいるかもしれません。
しかし大切なのは、目標自体ではなく、プロセスです。「目標達成には至らなかった」という結論であっても、どんな試行錯誤を経たのかを丁寧に伝えることが大切です。
「向上心」のほかにも自己PRで伝えるアピールポイントがあるかも?気になる人はリクナビ診断を活用して、自分の強みや特徴を調べてみましょう。
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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