面接が短い時間であっさり終わってしまい、「落とされるのだろうか…」と落ち込んだり、逆にほかの人よりも面接時間が長くなり「自分に興味を持ってくれている」と喜んだり…面接時間の長短で一喜一憂している就活生は多いようです。
面接時間の長さは、果たして合否に関係あるのでしょうか?人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに、人によって面接時間が変わる理由を詳しく聞きました。
「面接時間が長い=好印象で話が盛り上がっているということだから通過する」「面接時間が短い=興味を持たれていないから落ちる」と捉えている就活生が多いようですが、必ずしもそうとは言えません。むしろ逆である可能性が高いのです。
面接担当者の役割は、「次の選考に通すか」をジャッジすること。特に1次面接など初期選考においては、たくさんの応募者をどんどんジャッジしていく必要があるので、1人当たりにそう時間はかけられません。
そのため、1次面接・2次面接では、2つ3つほどの質問への回答で、ある程度の合否を判断しています。具体的には、会話力や論理的思考力など、ビジネスパーソンに必要な基礎的な能力の有無を判断する傾向にあります。そのため、質問に対して的確な答えが返ってきて、答えの意図が明確に伝わってくる学生であれば次の選考に通しますし、答えがずれている、意図が伝わらない答えが続くと不合格とジャッジされます。
そんな中、「面接時間が長くなる」理由の多くは、合否のジャッジがつかないケース。選考に通したい学生だと可能性を感じているものの、例えば「答えが抽象的すぎて、合否のジャッジができない」という場合、面接担当者はさらに質問をかぶせて掘り下げてみたり、新たに具体的なエピソードを引き出そうとしたりします。その結果、ほかの学生に比べて余分なやりとりが発生し、結果的に面接に時間がかかっている可能性が高いのです。
これはグループ面接でも同様です。ほかの学生と比べて質問回数が多く、面接時間も長引いている場合は、「数いる学生の中でとりわけ興味を持たれている」というわけではなく、実は合否の分かれ目にいるのです。質問の意図に沿った的確な回答ができていたかどうか、自身の発言を振り返り、すぐにリカバーを試みた方がよさそうです。
一方、最終面接では1次面接・2次面接とは逆に、採用したい人、来てほしい人にこそ時間をかけて面接を行う傾向があります。人間の持つ心理の一つに「返報性の原理」というものがあります。「他人から何らかの施しを受けたら、お返しをしないといけない」という感情を抱くことを指します。
「ぜひ来てほしい学生」に対する企業の心理も同様で、「あなたに興味を持ち、あなたのことを理解しようとしている」という姿勢を示すことで、自社に好意を抱き入社を決めてほしいと考えているのです。したがって、最終面接では、面接時間が長くかかった方が内定の可能性があるといえるでしょう。
反対に、最終面接があっさり終わってしまった場合は、少し不安が残ります。
1次面接・2次面接の場合は、合否に迷っても「もう1回面接に来てもらって、そこでジャッジしよう」と次の選考に進めるケースもあり得ますが、最終面接はもう後がありません。「迷った時点で、落とす」という判断により、短時間のやりとりでジャッジが下された…という可能性があります。
ただ、企業によっては「最終面接は儀礼的なもので、最終面接に進んだらほぼ内定」というところもあります。そういう場合は、役員との顔合わせという意味合いが強いので、比較的短時間で終わる場合が多いでしょう。
以上のように、面接時間の長短で一喜一憂しても、あまり意味がありません。それよりも、自己PRや志望動機などが相手に伝わりにくい内容になっていないか確認する、企業研究を十分に行うなど、「企業がすんなりジャッジできる」よう事前の準備を十分に行うことが何より重要です。
企業側も、限られた時間の中で学生一人ひとりを知る努力をしています。あなたの持ち味や意欲が伝わるわかりやすい回答を意識しましょう。
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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