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「これから行く店の場所を知りたい」など何かわからないことがあると、パソコンやスマートフォンで、検索して調べるのが当たり前になった。ネット通販で買い物をするという人も多いだろう。このようなコンピュータやインターネットでの情報技術のことをIT(Information Technologyの略)という。
多くの企業はITを使って、業務の効率化やビッグデータ(後述)の活用による新規事業の開発を図っており、IT業界に対するニーズは高い。今後は、これまでITとは縁遠かった分野でも活用が進むとの期待が高まっている。
いわゆるIT業界はソフトウェア系、ハードウェア系、そして情報処理系の業務を行う企業などに分類することができる。
ソフトウェアとは、コンピュータ上でさまざまな処理を行うプログラムのこと。システム全体を管理するソフトウェア(オペレーティングシステム)と、アプリケーションソフト、そしてオペレーティングシステムとアプリケーションソフトとを仲介する役割を持つミドルウェアがある。
ソフトウェア系の企業は、セキュリティソフトや経営管理ソフト、顧客情報管理ソフト、各種アプリケーションなど、時代のニーズに合った機能や役割を持つさまざまなソフトウェアを開発している。
ハードウェアとは、一般的にコンピュータや周辺機器(マウスキーボード、モニターなど)などを指し、ハードウェア系の企業は、これらの開発・製造を主に行っている。ただし、近年ではスマートフォンやタブレット機器、ゲーム機、家電などにも高度なプログラムが搭載されるケースが増え、このような製品を扱う「メーカー」と「IT企業」の境界はあいまいになりつつある。したがって、コンピュータ以外の製品の開発・製造を行っている企業が、ハードウェア系企業に含まれる場合もある。
ちなみに「リクナビ」では、これらの企業は「メーカー」にも分類される。
情報処理系企業は、企業向けの情報システムや、Webサイト上で利用されるサービスを開発・運用していて、「システムインテグレータ(SIer)」とも呼ばれる。
顧客企業が抱える課題を聞き出し、必要なシステムを企画・提案。その後はハードウェアの調達やソフトウェアの開発を行い、システム完成後は運用も請け負う。大企業のシステム更新などを手がける場合、莫大(ばくだい)なコストをかけて数年にわたって多くの人が携わる大型プロジェクトとなる。
またSIerの中には、コンピュータシステムを開発するだけでなく、顧客企業の仕事の進め方や組織の在り方までアドバイスをするなど、コンサルティング業務を行っている企業もある。
ほかにも、ICT(Information and Communication Technologyの略語。情報通信技術のこと)に関連したセンサーやRPA(Robotic Process Automationの略語。ロボットによる作業の自動化のこと)、ドローンなどを活用した新サービスを提供する企業、スマートフォン向けのゲーム開発を行う企業などもIT・ソフトウェア・情報処理業界に含まれる。
なお、企業はIT技術の進化や環境の変化にスピード感を持って対応・変容していくため、区分や分類は固定的なものではない。例えば、ソフトウェア開発を中心に手がけている企業が、企業向けシステムの開発を手掛けて情報処理系の企業のような活動を行うケースも珍しくない。
なお、一般的に世の中の企業は、販売対象とする顧客によってB to B(=Business to Business)型、とB to C(=Business to Consumer)型に分けることが可能であり、IT系企業も同様。企業向けのソフトウェア開発や情報処理を行うB to B型を展開する企業と、主に一般消費者向けのソフトウェア開発やインターネットサービスを行うB to C型を展開する企業がある。
現在、ITは人々の暮らしに必要不可欠な存在となった。近年は、新型コロナウイルス感染症の流行により、IT分野も含めた各種ビジネスには停滞が見られた。しかし、非接触が推奨される中、リモートワークなどの新しい働き方を取り入れる企業が増加し、オンラインで業務を進めるためにさまざまなITサービスを活用する取り組みが盛んになっている。また、国を挙げたDX(※)推進の下、IT・デジタル技術を活用して従来の業務の革新や効率化を図るためのIT投資が積極的に行われている傾向もある。現在、IT技術は多様な産業を下支えするインフラのような存在となりつつあり、IT業界やIT人材には日本の経済発展をけん引する役割が期待されている。
※DX…デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語。デジタル技術を活用した変革のこと。企業が業務プロセスや、製品・サービス、ビジネスモデルを変革すること。
Internet of Thingsの略。「モノのインターネット化」とも呼ばれ、従来はインターネットと縁遠いと考えられたものに通信機能を持たせ、遠くからでも位置確認や操作、情報のやりとりなどを可能にする技術を指す。インターネットを通じてやりとりされる情報をデータ化して分析することで、商品への付加価値や新たなサービスを生み出せる可能性が広がっている。
メールやPOSシステム、GPS情報などITの進歩によって増え続ける膨大な「ビッグデータ」を人工知能などによって分析し、マーケティングなどに生かすこと。すでに、企業に向けてビッグデータの活用や分析サービスを提供する企業も登場している。
さまざまな情報を社内や自宅内ではなく、クラウド(ネットワーク上のコンピュータが提供するサービス)に置く傾向が進んでいる。自前でサーバーを管理・運営するコスト・手間に対し、常に最新のサーバー環境を安価に利用できるサービスを活用する方が合理的だと考える企業が増えている。また、コロナ禍の影響により、さまざまな業務を支援するSaaS(Software as a Serviceの略語。ソフトウェアをクラウドサービスとして提供する)系のサービスを活用し、リモートワークに役立てる企業も増加した。
IT業界は技術革新のスピードが速く、変化の激しい業界と言える。近年は、仮想通貨にも利用されるデータ保管技術のブロックチェーンや、インターネット上でバーチャルな3次元空間を提供するメタバースなどが注目を集めた。また、ネットワーク環境においては、2020年から5G(5th Generationの略語。携帯電話などに用いられる第5世代移動通信システムのこと)の商用利用もスタートしており、今後は社会課題の解決や産業創出への活用も期待されている。
さまざまな業界・サービスでITが求められるようになったため、エンジニア不足が深刻化している。経済産業省の調査によると、IT業界の人材(IT企業および企業の情報システム部門に所属する人材)は、2018年時点で約103万人いるが、それでも足りず約22万人の不足と推計している。さらに、2030年には不足数が約45万人に上る可能性が指摘されている。
IT人材の需給におけるギャップは、以前よりも緩和・改善されているが、経済産業省が発表した「2021年DX白書」によれば、エンジニアを含むすべてのIT職種について「不足している」と回答する企業が50%前後に上っている。
大きくはソフトウェアやアプリケーションなどを開発するシステムエンジニア、インフラ環境に携わるネットワークエンジニアに分かれる。開発設計に基づいてプログラミングを行うプログラマーからシステムエンジニアを目指すケースも少なくない。また、システムエンジニアから開発チームの責任者であるプロジェクトマネージャーとなるケースもある。
プロダクトマネージャー(PM)は、企業のプロダクト(製品・商品・サービス)における責任者として、企画立案からマーケティング戦略などを担い、プロダクトを成長・成功に導くことを役割とする。ビジネスの視点が求められるため、エンジニアのようなプログラミング技術を持たない人材が担当するケースも少なくはない。
さまざまなデータを科学的に分析することで新たな知見を獲得し、ビジネスにおける課題解決策や、望ましい新たな取り組みなどについて提言する。
企業の現状を分析し、ITを使って課題を発見・解決する。システムだけでなく、経営そのものにかかわる課題を手がけることもある。
自社のサービスやソフトウェアを、企業やソフトウェアの販売店などに売り込むほか、顧客企業のニーズを引き出し、システムの導入を提案する。
顧客が導入したサービスの利用におけるサポート・課題解決などで継続的に顧客とかかわり、顧客を成功に導く役割をカスタマーサクセスと呼ぶこともある。SaaS系のITサービスを提供する企業などに多い職種。
システムやネットワークの安定的な運用を担い、適切なメンテナンスの実施などを通じて障害の発生やシステムが停止することを防ぐ。また、不具合があった際に迅速にトラブル対応を行う。
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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※記事制作時の業界状況を基にしています
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パソコンやスマートフォンを使って情報を検索する、文章を入力するなど、ふだん何気なく使っている、コンピュータ上のさまざまな処理を実際に行っているプログラムのことを「ソフトウェア」という。
暮らしのあらゆる場面で、ITサービスが活用されている。例えば、買い物をした時にクレジットカードで決済したものが翌月銀行口座から引き落とされるのも、電車の運行案内が駅で表示されるのも、情報システムが構築・運用されているからなのである。
※1 2024年3月6日時点のリクナビ2024の掲載情報に基づいた各企業直近集計データを元に算出