サービス業界に関心のある学生向けに、業界研究に役立つ情報を解説します。GDPの7割を占めるサービス業の概要と分類はもちろん、将来性と今後の課題や、サービス業界ならではのやりがいなどをまとめました。
サービス業界とは、教育、福祉・介護、旅行・ホテル、レジャー、外食、人材、不動産といった、形のないサービスを販売・提供している事業分野です。総務省統計局が実施している「サービス産業動向調査」では大きく9つに区分されています。
大分類 | 中分類 | 具体的な職種例 |
情報通信業 | – 通信業 – 放送業 – 情報サービス業 – インターネット附随サービス業 – 映像・音声・文字情報制作業 | – システムエンジニア – ITコンサルタント – 通信設備の保守・点検作業員 – 記者 |
運輸業、郵便業 | – 鉄道業 – 道路旅客運送業 – 道路貨物運送業 – 水運業 – 航空運輸業 – 倉庫業 – 運輸に附帯するサービス業 – 郵便業(信書便事業を含む) | – タクシードライバー – トラックの運転手 – パイロット – 郵便配達員 |
不動産業、物品賃貸業 | – 不動産取引業 – 不動産賃貸業・管理業 – 物品賃貸業 | – 不動産仲介営業 – 土地ブローカー – ビルメンテナンススタッフ |
学術研究、専門・技術サービス業 | – 専門サービス業(他に分類されないもの) – 広告業 – 技術サービス業(他に分類されないもの) | – 弁護士 – 会計士 – 行政書士 – デザイナー |
宿泊業、飲食サービス業 | – 宿泊業 – 飲食店 – 持ち帰り・配達飲食サービス業 | – ホテリエ(ホテルで働く人) – シェフ – 飲食店の店長 |
生活関連サービス業、娯楽業 | – 洗濯・理容・美容・浴場業 – その他の生活関連サービス業 – 娯楽業 | – 美容師 – ブライダルコーディネーター – 遊園地のキャスト – ダンサー |
教育、学習支援業 | – その他の教育、学習支援業 | – 教師 – 保育士 |
医療、福祉 | – 医療業 – 保健衛生 – 社会保険・社会福祉・介護事業 | – 看護師 – 医師 – 介護士 |
サービス業(他に分類されないもの) | – 廃棄物処理業 – 自動車整備業 – 機械等修理業 – 職業紹介・労働者派遣業 – その他の事業サービス業 – その他のサービス業 | – 特殊清掃員 – 自動車整備員 – 人材サービススタッフ |
9つの事業タイプの特徴について、簡単に見てみましょう。
情報の伝達・処理・提供などのサービスを提供する事業です。通信や放送に必要なインフラの整備や、雑誌やテレビ、映画といった媒体で発信するコンテンツの制作などが含まれ、幅広いサービスを担っています。
鉄道や自動車、船舶、航空機といった運送用具を使った運搬サービスを提供する事業です。貨物や人の移動をサポートしているほか、輸送前の荷物を保管する倉庫の管理なども担います。
不動産売買・賃貸の仲介や、物品の賃貸サービスを提供する事業です。企業例としては、不動産会社やレンタルショップ、幅広い商品を貸し出す総合リース会社などがあります。
専門的な知識や技術サービスを提供する事業です。学術研究機関による調査・研究をはじめとして、法律・会計・デザインなどの専門サービスや、エンジニアリングといった技術サービスを通して、社会の発展を支えています。
一般客や特定の会員に対して、宿泊サービスや飲食サービスを提供する事業です。宿泊業なら旅館やホテル、飲食サービス業ならレストランやカフェ、居酒屋などが含まれます。
美容や洗濯、浴場といった生活に関連するサービスや、娯楽に関する幅広いサービスを提供します。娯楽業の例としては、映画館・劇場・陸上競技場・ジム・遊園地などの運営が挙げられるでしょう。
学校および学校以外の場での学びをサポートする産業です。具体的には、学習塾や予備校、語学教室、各種技能スクール、家庭教師派遣、図書館、博物館、通信スクールなどが含まれます。
医療施設や福祉施設などで、医療サービスやケアサービスを提供している事業です。高齢化社会が進んでいる背景を受けて、特に需要が高まっています。
8つの区分に含まれない、幅広いサービスが含まれます。具体的には廃棄物処理業や自動車整備業、職業紹介業、労働者派遣業などが該当します。
サービス業界に関連する職種として、以下のような仕事があります。
サービス業界の事業タイプにはいろいろな種類がありますが、人から人へ提供される「形の残らない産業」であり、モノではなく提供されるサービスが価値となって顧客から対価を得るという共通点があります。また、一般にはサービス業界は以下の4つの特徴を持っているとされます。
サービス業界の中には一部在庫を持つ事業もあるなど、上記の特徴に当てはまらないものもありますが、サービス業界を理解するための傾向として参考にしてみてください。
サービス業の中には飲食業や観光業といった、お客さまとじかにかかわる業務も多くあります。一方で、ITのソフトウェア開発職や市場調査といった接客を伴わない仕事も珍しくありません。接客業はサービス業と同一ではなく、あくまで「サービス業の一部」と捉えておくとよいでしょう。
サービス業界は、GDPおよび日本の就業者数の7割を占める一大産業です。人々の生活を支えてきたサービス業界の現状と、今後の課題をまとめました。
サービス業界はGDPの大半を占める産業であり、今後の需要も増加傾向にあります。例えばホテルや旅行、飲食といったサービス事業は、インバウンド需要の回復によって需要が拡大中です。また、少子高齢化が進んでいる背景から、介護サービスはもちろんのこと、高齢者を意識した旅行プランや見守りサービス、在宅配食サービス、婚活支援といった事業も拡大しています。
さらにITの発達によって、オンラインからホテルや旅館の宿泊予約ができたり、バーチャルで不動産物件を内見できたりなど、サービスのバリエーションも多様化しています。今後もさまざまなビジネスチャンスが生まれやすい業界といえるでしょう。
サービス業界の今後の課題としては、以下が挙げられます。
まず課題として挙げられるのが、人手不足です。昨今は国内の労働人口が減っており、あらゆる業界で人手を確保しにくくなっています。加えて政府による「働き方改革」の推進により、社会人一人当たりの労働時間や賃金も是正される傾向にあります。そんな中で顧客から求められるサービスの質も上がり、ニーズも多様化していることから、「事業を成り立たせながら利益を確保すること」がますます難しくなっているのが現状です。
このような背景を受けて、サービス業界はITの活用を通じて事業の効率化や人手不足の改善を目指しています。例えば、セルフレジや配膳ロボットの導入といった工夫が挙げられるでしょう。業務効率化に役立つシステムを使って、顧客とのやりとりやシフト管理を効率化しようという動きも見られます。今後もこのようなDX化(ITを使った業務効率化)への取り組みは進んでいくといえそうです。
最後に、サービス業界のやりがいや、仕事で生かしやすいスキルを簡単に紹介します。
サービス業界はほかの業界に比べて、お客さまの反応を間近で見られる機会が多いところが特徴です。具体的なやりがいとしては、以下が挙げられます。
そのほか、ホテルやテーマパークなどで働く場合は、非日常を提供する達成感があるところも魅力です。お客さまが喜んでいる姿や感謝の言葉が、仕事のやりがいにつながりやすい業種といえるでしょう。
サービス業界は人と向き合うことが多い業種であることから、ホスピタリティ精神を生かしやすいところが特徴です。そのほか、以下のスキルを生かすことができます。
サービス業界では、顧客のニーズに寄り添い、「どんなサービスをしたら喜んでもらえるか」を考える姿勢が重視されます。サービス業界に興味がある場合は、自分が実際に受けてうれしかったサービスや、自分が欲しいと感じたサービスを普段から考えるようにしておくとよいでしょう。
サービス業界といってもさまざまな種類があるため、インターンシップやオープン・カンパニーなどを通して、興味を持てる事業やビジネスモデルを探してみることも大切です。
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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