放送・テレビ・ラジオ業界とは?仕組み・課題・最新トレンドを解説【業界研究】

放送・テレビ・ラジオ業界は、マスメディアを介してさまざまなコンテンツを発信しています。従来から高い需要を誇りますが、インターネットの発達によって業界のビジネスモデルにも大きな変化が表れています。業界の概要や動向など、業界研究に役立つ知識をまとめました。

放送・テレビ・ラジオ業界とは

放送業界とは、テレビやラジオを通じて、多くの人にニュースや音楽、ドラマ、スポーツといったさまざまな番組を届ける業界のことです。正確な情報を社会に伝えるのはもちろん、最新のエンタテインメントやトレンドを発信する役割も担っています。

放送・テレビ・ラジオ業界の企業は、主に次の4つのタイプに分けられます。

テレビ局

テレビ番組の制作・放送を担う企業です。放送形態や事業内容によって、以下の6つに分類されます。

1.公共放送局(NHK)

営利を目的とせず、政府や企業から一定の距離を保った形で運営されている放送局です。受信料を主な財源としているため、公共性の高い番組を制作・放送しやすいところが特徴といえます。日本放送協会(NHK)が該当します。

2.キー局

全国向けの番組を制作・放送している放送局です。いずれも東京に拠点を置き、自社が制作した番組を系列のローカル局などに提供しています。

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • 日本テレビ放送網株式会社
  • 株式会社テレビ朝日
  • 株式会社TBSテレビ
  • 株式会社フジテレビジョン
  • 株式会社テレビ東京

3.準キー局

大阪・名古屋などに拠点を構えている、キー局に次ぐ規模を持つ放送局です。キー局が制作した番組を放送するほか、自社でも番組の制作や、他局への提供を行っています。

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • 株式会社毎日放送
  • 朝日放送テレビ株式会社
  • 名古屋テレビ放送株式会社
  • 中京テレビ放送株式会社

4.ローカル局

キー局や準キー局が制作した全国向けの番組を提供しつつ、地域のニュースや天気予報なども発信している放送局です。地元グルメやイベントなどを取り上げたご当地番組の制作も行っています。

具体的な企業としては、以下が挙げられます。

  • 株式会社仙台放送
  • 南海放送株式会社
  • 株式会社中国放送

5.BS・CS局

人工衛星を介して、全国にテレビ番組を送信している放送局です。地上波よりも多くのチャンネルを持つことができるところが特徴で、映画やスポーツ、ドキュメンタリーといった、視聴者のニーズに合わせたコンテンツを提供しています。

具体的な企業としては、以下が挙げられます。

  • 株式会社WOWOW
  • 株式会社BS朝日

6.CATV(ケーブルテレビ)局

各家庭に引いた電線のような専用のケーブルを介して、番組を届けている放送局です。電波ではなくケーブルを通じて配信するため、地域ごとのチャンネル編成がしやすい点や、インターネット接続などの通信サービスもまとめて提供できるところが特徴といえます。JCOM株式会社などが該当します。

ラジオ局

音声を通してニュースや音楽、トーク番組などを届ける放送局です。テレビと違って映像がない分、通勤中や作業中などに“ながら聴き”できるメディアとして根強い人気があります。テレビ局と同じく、放送局の特徴に応じてキー局、準キー局、ローカル局に分類されます。

代表的な企業は、以下の通りです。

■キー局

  • 株式会社ニッポン放送(ニッポン放送)
  • 株式会社TBSラジオ(TBSラジオ)
  • 株式会社文化放送(文化放送)

■準キー局

  • 株式会社MBSラジオ(MBSラジオ)
  • 朝日放送ラジオ株式会社(ABCラジオ)

■ローカル局

  • 北海道放送株式会社(HBCラジオ)
  • 東北放送株式会社(TBCラジオ)

なお、ラジオ局の多くはテレビ局や新聞社といった、大手メディアとグループ関係にあります。例えば、TBSテレビは株式会社TBSラジオ、フジテレビは株式会社ニッポン放送とグループ関係です。

テレビや新聞などの他メディアとの連携により、放送できるコンテンツの幅が広がるところがメリットといえます。

制作会社

テレビ局やラジオ局からの依頼に応じて、さまざまな番組を制作します。また、自社で制作した番組を放送局に売り込むことも珍しくありません。主な収益源は、クライアントから支払われる制作費です。

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • 株式会社TBSスパークル
  • 株式会社日テレ アックスオン

インターネット配信事業者

インターネットを通して、テレビ・ラジオ番組や映画、アーティストのライブ映像といった幅広いコンテンツを配信する企業です。インターネット配信はスマートフォンやPCを通じていつでも、どこでも視聴できるという利便性から、若年層を中心に利用が拡大。放送業界における新しい収益源として注目されています。

代表的な企業としては、以下が挙げられます。

  • 株式会社TVer
  • 株式会社radiko

放送・テレビ・ラジオ業界のビジネスモデル

放送・テレビ・ラジオ業界の主な収益源は、広告枠を提供して得られる「広告収入」と、番組販売やイベント事業などの「放送外収入」です。それぞれの特徴をまとめました。

広告収入

民放のテレビ局やラジオ局にとって大きな収益源といえるのが、広告収入です。自社で制作した番組、あるいはキー局などから仕入れた番組に「広告枠」を設け、その枠を広告代理店やスポンサー企業に販売することで収入を得ます。

広告枠の価値は、放送時間帯や視聴率・聴取率によって変動し、特に人気番組やゴールデンタイムの広告枠は高額であることから、高い収益が見込まれます。

放送外収入

放送外収入とは、広告枠の販売以外で得られる収入のことです。制作した番組をほかのテレビ局やラジオ局などに販売する「番組販売」や、制作したコンテンツにまつわる音楽ライブ、映画事業、ファンイベント、グッズ販売、オンライン配信サービスのサブスクリプション収益、自社が保有する不動産から得られる収益など、収益源は多岐にわたります。

放送・テレビ・ラジオ業界の主な職種

放送・テレビ・ラジオ業界では、「企画を立てる人」「技術で現場を支える人」「広告を獲得する人」といったさまざまなポジションが連携しながらコンテンツを制作しています。業界で活躍する主な職種を紹介します。

ディレクター・プロデューサー

番組作りの中心となる職種です。プロデューサーは企画立案から予算管理、番組全体の進行管理を担当し、ディレクターは現場の制作工程を統括します。

アナウンサー

ニュースやバラエティー、スポーツといった幅広い番組で進行役を担う職種です。原稿を正しく読み上げるだけでなく、コメンテーターに的確な質問を投げかけたり、緊急の報道に対応したりなど、臨機応変に情報を伝えていく力が求められます。

記者・リポーター

事件・事故・政治・経済に関するさまざまな現場を取材し、ニュースとして伝える情報を収集する仕事です。現場中継を行うこともあります。

技術職(音声・映像・編集)

番組制作を技術面から支える職種です。音声、カメラ、照明、編集といった分野ごとに専門スタッフが活躍しており、コンテンツの品質を支えています。大学や専門学校などで機材や編集ソフトの基礎知識といった専門的な素養を身につけ、局や制作会社に入社して技術を磨いていくことが一般的です。

営業職

スポンサー企業に向けて広告枠を提案する仕事です。番組の内容や視聴者層、放送時間帯の特性を踏まえ、企業のプロモーションに適した広告展開を企画します。番組とのタイアップ企画やイベント協賛の提案など、放送局のビジネスを広げる役割も担っています。

放送・テレビ・ラジオ業界の現状と今後の課題

マスメディアを提供する業界として、安定的な成長を続けてきた放送・テレビ・ラジオ業界。一方で、放送・テレビ・ラジオ業界にとって無視できない勢いで成長しているのが、インターネットメディアです。特に、ユーザーの購買行動を分析しやすいインターネット広告の躍進が目覚ましく、「2024年度にはテレビ広告の約2倍の規模に成長(※)」しました。放送・テレビ・ラジオ業界にはこれまで以上に、収益源の一つである「マスメディアの広告枠の価値」を高める工夫や、広告に依存し過ぎないビジネスモデルの創造が求められているといえるでしょう。

※出典:総務省「第34回デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」配布資料「放送局ビジネスの現状と未来(株式会社博報堂)」より引用

業界のそのほかの課題としては、以下が挙げられます。

若年層のメディア離れ

スマートフォンや動画配信サービスの浸透により、若者層ほどテレビやラジオに触れる時間が減りつつあります。一人暮らしを機にテレビそのものを手放す若者も多いため、新しい視聴者層をどう取り込んでいくかが、業界全体の課題です。

大型スポーツコンテンツの高騰

かつてサッカーの世界大会などのスポーツイベントは、テレビ番組における人気コンテンツの一つでした。しかし放映権料の高騰により、地上波で無料放送できないケースが増えています。業界はインターネット配信との共同放送やダイジェスト配信などを通して、社会に開かれた放送モデルを模索しています。

放送・テレビ・ラジオ業界の最新トピックス

最後に、放送・テレビ・ラジオ業界を目指す学生が知っておきたいトピックスをご紹介します。

配信サービスの拡大

昨今はTVerやradikoといった公式配信サービスにより、スマートフォンやPCからいつでも・どこでもテレビ番組やラジオ番組を楽しめるようになりました。放送後でもコンテンツを追いかけることができる見逃し配信や、全国各地の番組を視聴できるエリアフリー機能など、よりユーザーに寄り添ったサービスも展開中です。「スマートフォンからテレビやラジオを視聴できる」という利便性から、災害時のライフラインとしての役割も期待されています。

日本発コンテンツの海外進出

日本発のドラマ・アニメ・バラエティーは国内だけでなく、海外人気も高いコンテンツです。特にアニメは日本を代表する輸出コンテンツであり、現地での配信や劇場公開のほか、イベントやグッズ販売を行って収益化を図るケースも増えています。テレビ局や制作会社にとって、アニメは今後も注目度の高い収益源といえるでしょう。

また、日本で人気のある番組の企画や構成、制作ノウハウといったIP(知的財産)を海外に販売し、現地で制作された番組から収入を得るというビジネスモデルも活発化しています。番組や企画ノウハウなどのIPを国内外に展開し、広く収益化を狙う動きは、今後も続いていくでしょう。

まとめ

放送・テレビ・ラジオ業界は、社会に情報と娯楽を届ける重要なメディアとして発展してきました。近年は、視聴環境や広告モデルの変化によって転換期を迎えていますが、インターネット配信との融合やコンテンツの海外展開など、新しい可能性も広がっています。業界研究の際は従来のビジネスモデルだけでなく、各社が挑戦している新しい取り組みにも注目してみるとよいでしょう。

放送・テレビ・ラジオ業界に関するインターンシップやオープン・カンパニーに興味がある方は、下記ページもぜひチェックしてみてください。

吉田賢哉さんプロフィール写真

監修

吉田賢哉(よしだ・けんや)さん

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。