就活をする際、企業によっては作文試験を実施するケースもあります。「作文をどう書いたらいいかわからない」と悩んでいる学生向けに、就活の作文について、押さえておきたい書き方や注意しておきたいポイントを詳しく解説します。また、出題例や回答例文も紹介するので、参考にしてみましょう。
目次
就活での作文試験とは
就活における作文試験とは、単に文章力を測るだけでなく、学生の価値観、論理的思考力、そして人柄を総合的に判断するために実施される選考プロセスです。
就活における作文試験には、主に以下の2つのパターンがあります。
- エントリーシートなどの記述回答
- 独立した試験としての「作文・小論文」
実施されるタイミングや目的が異なるため、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
| 概要 | 目的 | |
| エントリーシートなどの記述回答 | ・選考の初期段階である書類選考で課されることが多く、自己PRや志望動機などを記述する | ・エピソードやエビデンスが明確に書かれているかが見られている |
| 作文・小論文 | ・与えられたテーマについて自分の意見を論じる ・試験会場で実施される場合と、事前に課題として提出する場合がある | ・表現力を含む文章力が見られている |
作文や小論文は、公務員試験や教員採用試験のほか、マスコミや出版業界など文章を扱う一部の業界で実施される傾向にあります。共感を呼ぶ表現や比喩表現、語彙力の豊かさなども評価されることがあります。
一方、エントリーシートでは、文学的表現や比喩表現などは求められません。記述内容が選考の判断材料となるため、設問の意図をおさえた回答を書くように意識しましょう。
企業が作文試験をする目的
企業が選考プロセスで作文試験を実施する目的について、5つの観点から解説します。
1. 思考力を確認するため
作文試験を行う目的の1つに、思考力の確認があります。たとえば、作文試験を通じて以下の項目が見られています。
- 物事に対してどのような考えを持っているか
- 自分の考えを言語化できるか
単なる知識の有無を問うのではなく、社会の出来事や自分の経験に対して「なぜそう思うのか」という思考の深さが評価されています。
テーマに対して表面的な感想を並べるのではなく、根拠に基づいた自分なりの見解を示すことが求められています。
2. 伝え方が論理的か確認するため
作文では、文章全体の流れが論理的に構成されているか、筋道を立てて説明できているかなどが見られています。とくに、以下のようなポイントを意識して文章を書くことを心がけましょう。
- 話の道筋が通っているか
- 結論に至るまでの理由付けが明確か
3. 人柄や価値観を確認するため
企業は言葉選びやエピソードの内容から、履歴書からは見えない学生の性格を読み取ろうとします。
たとえば、困難な状況をどのように乗り越えたかというエピソードからは、問題解決へのアプローチや粘り強さが見えてくるでしょう。
また、作文は応募者が企業の価値観にマッチしているかを判断する要素になります。
4. 面接で話を深く聞くため
作文の内容を基に、面接で深掘りされるケースもあります。
たとえば、エントリーシートで「チームワークの重要性」について書いた場合、面接では実際のチーム活動での役割や、困難な状況での対応方法について具体的に聞かれる可能性があります。
作文を書く段階から「面接でこれを聞かれたらどう答えるか」を想定し、面接で自分がアピールしたい要素を盛り込んでおくことが大切です。
エントリーシートに記載した内容と、面接での受け答えに一貫性を持たせられるように事前に準備しておくことが重要です。
5. 企業の価値観に合うか確認するため
設問や出題テーマには、企業の価値観や企業文化にマッチする人物かどうかを見極める目的があります。
たとえば、スピード感が重視される企業で、「ゆっくりと慎重に取り組むタイプ」ということをアピールしても、ミスマッチになる可能性があります。
エントリーシートの設問に回答する際は、「この企業が知りたいことは何か」を考えることが大切です。
就活における作文の書き方の基本
企業によって異なりますが、採用担当者は膨大な数のエントリーシートや作文に目を通すため、最後まで読んでもらえないケースがあります。
最後まで読んでもらうためには、読み手がスムーズに内容を理解できる論理的な構成が重要です。冗長な表現を避け、結論から端的に述べることで、読み手の負担を減らす書き方を意識しましょう。
基本的には「PREP法」を活用して結論ファーストの文章を作ると良いでしょう。PREP法とは以下の順番で文章を構成する方法です。
- Point:結論
- Reason:理由
- Example:具体例
- Point:結論の再確認
ここでは、就活における作文の書き方の基本となる「序論(P)・本論(RE)・結論(P)」の3部構成について解説します。
序論
序論はテーマに対する結論や最も伝えたい主張を簡潔に提示する部分です。冒頭部分で読み手の関心を引ければ、その先を読んでみたいと思ってもらえます。
たとえば、「あなたにとって働くとはどういう意味だと思いますか?」という出題テーマの場合、「私は働く意味を、社会に価値を提供し続けることだと考えています」といった明確な主張からはじめることで、文章全体の方向性が定まります。
序論は全体の10〜15パーセント程度の分量で、コンパクトかつインパクトのある内容にまとめましょう。
本論
本論は、序論で述べた主張を裏付けるための理由や、具体的なエピソードを展開する部分です。
全体の70〜80パーセントを占める重要なパートであり、説得力のある内容が求められます。実体験や客観的な事実を盛り込むことで、主張の説得力を高められます。
エピソードを書く際には、5W1Hを意識して具体的に描写しましょう。また、体験から何を学び、どう成長したかという気づきや変化も示すことが大切です。
結論
結論はこれまでの内容を要約しつつ、あらためて自分の主張を強調する部分です。全体の10〜15パーセント程度の分量で、簡潔にまとめることを心がけましょう。
就活の作文で出題されやすいテーマ
就活の作文試験で出題されるテーマは多岐にわたりますが、以下で出題テーマの一例と回答を準備する上でのポイントを紹介します。
志望企業の選考で過去どのようなテーマが出題されたのか、先輩や学校のキャリアセンターで聞いたり、インターネットで調べてみたりすると良いでしょう。
| カテゴリ | 出題テーマの例 | 準備のポイント |
| 仕事に関すること | ・働くことに関する価値観 ・学生と社会人の異なるポイント ・仕事をする上で大事なこと | 社会貢献や自己成長の視点を盛り込む |
| 将来に関すること | ・5年後、10年後の自分 ・理想とする社会人 ・今後仕事で達成したい目標 | 企業の事業内容と自分の目標をリンクさせる |
| 過去の体験に関すること | ・学生時代に力を入れたこと ・一番努力したこと ・挫折を乗り越えた経験 ・学校生活で得たもの | プロセスやその経験から何を学んだかという「教訓」を重視する |
| 社会情勢に関すること | ・最近の気になる話題、ニュース ・志望業界に関連した課題 | ニュースに対して自分なりの意見や解決策を提示する |
| 自分自身に関すること | ・あなたの強みと弱み ・最近読んだ本とその感想 ・あなたを色に例えると | 具体的なエピソードを交えて人柄を伝える |
会社説明会に参加した際に、その場でエントリーシートを書く企業もあるので、それぞれの設問に対して、どのようなことを書くのかを事前に考え、伝えたい要素と根拠となるエピソードを整理しておきましょう。
また、「企業の掲げる価値観の中で、自分に当てはまるものを書く」など、企業に関連する設問が出題されるケースもあるので、企業研究もしておきましょう。
作文試験に出題されるテーマには、どんな傾向がある?
作文試験では、社会性のあるテーマが出題されるケースがあります。
社会における課題に対し、どのような考えを持っているのかを問われるので、さまざまな時事ニュースに敏感になり、「今、世の中で何が起きているのか」を知っておくことが大事です。
また、掲げる企業理念に重なる経験を問うケースもあれば、「働くとは、どういうことか」など、本人の価値観を確認する場合もあります。
いずれのテーマにおいても、自分の考えを明確にし、しっかりと結論を書くことがポイントです。
設問別|作文の回答例文を紹介
ここでは、エントリーシートや小論文で出題されやすい設問例を紹介します。回答例文も紹介するので、作文の書き方のヒントにしましょう。
エントリーシートで出題されやすい設問
エントリーシートの設問でよく出題される、「志望動機」と「学生時代に力を入れたこと」の回答例文を紹介します。
「志望動機」に対する回答例
私が貴社を志望した動機は、「これまでの自分の経験を生かして、大きな挑戦ができる」と考えたからです。大学時代の3年間、若者向けのアパレルブランドの店舗で接客のアルバイトを続け、お客さまの魅力を引き出すコーディネートを提案することにやりがいを感じるようになりました。本人が気づいていない魅力を引き出し、イキイキと輝くような表情に変化する姿に大きな喜びを味わいました。
貴社は、幅広い世代に対応し、さまざまなアパレルブランドを展開しているため、より多くの人々を輝かせる提案ができると考えています。また、EC事業にも注力していると知り、全国の人々に向けて発信していけることにも魅力を感じました。これまで自分が培った創造力や能力を生かし、ファッションの新たな可能性を引き出す挑戦をしていきたいと思います。
「学生時代に力を入れたこと」に対する回答例
私が力を入れたのは、大学時代に所属していたアメリカンフットボール部の活動です。2年生でレギュラーとなり、試合に出場する中、作戦数が少なく、試合展開に幅がないことが課題だと気づきました。そこで、足りない部分は何か、どんな領域の作戦に力を入れればいいのかを自ら考えるようになり、具体的な作戦を立案し、チームのメンバーに提案しました。
当初は周囲から反発されましたが、なぜその戦略が必要なのか説明を続けるうちに、同期のメンバーが協力してくれるようになり、最終的には先輩も説得できました。それからは、試合で自分が考えた作戦を実行し、うまくいかない場合には再度戦略を練り直しました。3年生になった時、ついに強豪校を倒し、チームを勝利に導く大きな喜びを実感できました。この経験を通じて、さまざまな視点で戦略を考える力と、多くの人を巻き込む力が身についたと感じます。
作文の回答例文のポイント
エントリーシートを記載する際は、以下の2点を意識しましょう。
- 5W1Hを意識する
- 仕事への再現性を示す
まず、具体的なエピソードを書く際には、5W1Hの要素を漏らさず盛り込みます。
たとえば「アルバイトで大変だった」という表現だけでは、具体性に欠けます。そのため、5W1Hを活用することで、読み手は状況を鮮明にイメージできるでしょう。
次に、経験から得た知識やスキルを、社会人として業務にどういかせるか、入社後にどう貢献できるかという視点で結びつけることが重要です。
「この学生なら入社後も活躍してくれそうだ」と採用担当者にイメージしてもらえるように、仕事にどういかしていくかをアピールしましょう。
小論文に出題されるテーマと例文
小論文形式では、より論理的な構成力が求められ、テーマも「社会問題の解決策」や「企業に関する内容」などになることがあります。
【問題例】
市民が公務員に期待していることは何か、あなたの考えを述べなさい。
市民が公務員に期待していること、それは特別なことではなく「日々の仕事を誠実にこなす」ということだ。公務員の仕事は、予算や条例の原案作成や市の将来計画の策定、役所の窓口等での対応、苦情の受け付けなどさまざまあるが、これはどんな職務にも共通して言える。そして「誠実」には、二つの意味が含まれている。
一つ目は、自分の仕事を一生懸命にやるという意味だ。公務員は市民の税金から給料を頂いているので、これは当然のことと言える。どうすれば市の課題を解決できるか、どうすればもっと効率的に仕事が進むか、日々考え積極的に提案や改善をすること、また、上の立場になれば、後輩やスタッフの指導にも意欲的に取り組まなければならない。
二つ目は、コンプライアンスに反することをしないという意味だ。パワハラ・セクハラをしない、あるいは私生活も含め飲酒運転をしないなど、仕事を離れた場でも公務員として見られていることを忘れてはいけない。公務員がセクハラや飲酒運転などで処分されたり検挙されたりするニュースをしばしば見聞きするが、このような問題が起きると、市民からの期待を裏切ることになる。
私はこれらの点を十分に留意して日々の仕事に誠実に向き合い、市民の期待に応える職員になりたい。
『全試験対応! 直前でも一発合格! 落とされない小論文』より
就活の作文の書き方で、押さえておきたい注意点
就活の作文では、内容の良し悪しだけでなく、基本的なルールや形式を守れているかも重要な評価ポイントです。
ここでは押さえておきたい注意点を、4つ解説します。
基本的な「書き方のルール」を遵守する
指定された文字数の9割以上を埋めることを意識しましょう。文字数が足りないことが原因で、選考から外れてしまうケースも少なくありません。
また、誤字脱字や、主語と述語の関係がわかりにくい文章は内容以前の問題として、評価の対象外となる可能性があります。
一文が長くなると、文章がわかりにくくなる原因になります。一文を60文字程度に収め、簡潔な表現を心がけましょう。
さらに、「です・ます調」と「だ・である調」の混在を避けるなど、文体の統一も忘れずにチェックしましょう。
文章の内容だけでなく、レイアウトや文字の密度も、読みやすさを大きく左右する要素です。適宜段落を分けたり、文字が詰まり過ぎないように余白を入れたりすることも意識できると良いでしょう。
設問の意図を考える
企業がなぜその質問をしたのか、その背景にある「求める人物像」や意図を正しく理解してから書くことが大切です。
多くの場合、企業は求める人物像や価値観と合致する人物かどうかを見極めようとしています。
たとえば「働くとはどういうことか」という問いには、仕事に対する価値観や姿勢を確認したいという意図が隠れています。
さらに、面接担当者がイメージしやすいように具体的かつ適切な情報量を盛り込むようにしましょう。
事前の練習と推敲を徹底する
いきなり本番で完璧な文章を書くことは難しいため、志望企業で過去に出題された設問やよく出題されるテーマについて、実際に書く練習をしましょう。複数のテーマで練習することで、さまざまな切り口で自分の経験を言語化する力が身につきます。
また、文章を書いた後は、推敲(文章を読み直して修正すること)する習慣をつけておきましょう。書いた直後ではなく、少し時間を置いてから見直したり、声に出して読んだりすることで、矛盾点や違和感に気づきやすくなります。
さらに、第三者に読んでもらい、客観的なフィードバックをもらうことも有効です。
会場で作文を提出する場合の注意点
試験会場で当日その場で作文を書く場合は、時間管理と見直しの工夫が重要になります。
まず全体の制限時間を「構成を考える時間」「執筆時間」「見直し時間」に分けて計画しましょう。たとえば、60分の試験なら「構成10分・執筆40分・見直し10分」といった配分が目安です。
また、見直しの際は、黙読だけでなく、可能であれば口を小さく動かして読むことで、誤字脱字や主述のねじれを発見しやすくなります。
AIを活用する際の注意点
近年では、就活の準備においてAIを活用することが一般的になりつつありますが、使い方を誤ると逆効果になる危険性があります。
ここでは、AIを活用する際の注意点について解説します。
AIだけで作らない
AIは、文章の構成を考えたり、アイデア出しの壁打ち相手や文章の叩き台として活用するには優れたツールです。
しかし、AIが生成した文章をそのまま提出してしまうと、一般的すぎて個性のない内容と判断されてしまいます。
AIの文章はあくまで叩き台として使用し、そこから自分の思考を深めていくプロセスを省略しないようにしましょう。
自分の言葉で表現する
AIが生成する文章は、一見すると整って見えるため、そのまま使いたくなるかもしれません。しかし、整った文章を読むことで「わかったつもり」「理解したつもり」になってしまうことがあります。そのため、面接で聞かれた際に、実は理解していなくて説明できないということが起こり得ます。
大切なのは、AIの提案をそのまま使用せず、内容を理解した上で自分の言葉で表現し直すことです。
本当に理解できているかを確認するには、作成した文章を友人や家族に読んでもらい、あえて質問を投げかけてもらうのも効果的です。
また、内容を誰かに説明することで、自分の理解度を客観的にチェックし、自分の言葉として定着させられるでしょう。
エピソードは自分の実体験を使う
AIは、志望動機や働く意味といったテーマに対して、論理的で整った回答を作成してくれます。しかし、あくまでインターネット上のデータに基づいた内容に過ぎません。
企業が作文を通じて知りたいのは、あなたの価値観や人柄、それを裏付ける具体的なエピソードです。
AIが作成した文章をそのまま使うと、誰にでも当てはまるような表面的な内容になり、あなたの個性が採用担当者に伝わらなくなってしまいます。
また、AIが出力した文章をそのまま提出してしまうと、面接で「この部分について詳しく教えてください」と深掘りされた際に、うまく説明できず、言葉に詰まってしまうリスクがあります。
AIの出力した内容はあくまで参考程度にとどめ、必ず自分の実体験や、その時々に感じた感情を盛り込むようにしましょう。
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。
