「責任感」を自己PRで伝える際、どんな点に注意するといいのでしょう。人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。
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エントリーシートや面接で問われるあらゆる質問は、「あなたはどういう人か」を知るためのものです。自己PRは、それを最もダイレクトに聞く質問であり、企業は自己PRを聞くことで、あなたの「能力・性格(何ができるか)」が、「自社で仕事をしていく上で合っているか」という点を見ています。
ただ、一方的に自分がアピールしたい能力や性格を伝えても、それを企業が求めていなければ意味がありません。業務上の特徴や会社のカルチャー、どういう要素が求められているかを整理した上で、その環境で発揮できる強みは何かを考えるといいでしょう。
企業が自己PRを聞く意図について、詳しく知りたい人はこちら↓
【例文付き】就活で自己PRを聞く意図は?人事に評価される書き方・話し方のポイントは?
「責任感がある」「責任感が強い」という言い回しは誰しも耳にしたことがあるのではないでしょうか。しかし、「責任感」とは具体的にどのようなものでしょうか?また、企業はどんな「責任感」を求めているのでしょう。曽和さんに聞きました。
「あなたは責任感がある人だ」と言うとき、以下のどちらを指しているかで、タイプが異なります。
(1)すべての物事は自分に責任があると考える「自責」の人
(2)原因の帰属は他人(他責)にしながらも自分が解決しようとする「当事者意識」がある人
例えば、何か問題が起きたとき、「これは誰の責任ですか?」と問われたとしましょう。このとき、「問題が起きた原因は自分にある」と原因の帰属を自分だと考える人が(1)のタイプ。
「原因は自分にある」とは考えないものの、「この問題を解決するのは私だ」と、当事者意識を持って解決しようとするのは(2)のタイプです。
自責タイプ、当事者意識タイプにはそれぞれ特徴があり、企業の業務の特性や社風によって、どちらのタイプが評価されるのかが変わってきます。
もし、その企業で評価される「責任感」がどちらなのか理解せずに入社してしまった場合、評価されるポイントのズレに戸惑いやストレスを感じてしまうかもしれません。これは自分にとっても企業にとっても幸せではないので、相手の求める「責任感」がどちらなのか押さえておくようにしましょう。
自分はどちらのタイプか、志望する企業がどちらの「責任感」を求めるか、自己PRで伝える内容を準備する前に考えてみましょう。
何かが起こったときに自分に原因があると考える自責タイプの人は、自分の与えられた領域や持ち場で、高いパフォーマンスを発揮します。インフラや医療など命を扱う仕事、金融などお金や重要なデータを扱うミスの許されない仕事、法規制の厳しい仕事などでは、持ち場を守ってミスを自責で捉える責任感の強さは、業務上欠かせません。
仮に、「ルールがおかしい」「トップの判断がおかしい」という可能性があっても、与えられた環境を制約条件として考える傾向が強いため、変えようという発想にはならず、その中で自分はどうできるかを考えます。
一方で、すべての責任を自分で背負おうとするため、ストレスを抱えてしまったり、環境を変えていこうとする変革能力が低かったりするのでは、と企業から思われてしまう可能性もあります。
物事の原因を他責にしながら、自分事として課題解決に向かう当事者意識タイプの人は、環境の変革能力にたけています。ルールがあっても課題解決のためなら変えればいい、上の指示が課題解決の障壁になるのであれば説得すればいい、と考えます。
変革の激しいIT業界やベンチャー企業、新規事業や商品開発などに携わる職種や、次世代のリーダー候補人材などには、こうした人が求められる傾向にあるでしょう。
半面、与えられた業務や領域を守って仕事を遂行していく仕事の場合には、自責タイプの責任感のある人の方が好まれるでしょう。
「責任感」は2つのタイプに分かれるため、企業の業務内容や活躍している人のタイプによって、アピールするポイントはまったく変わってきます。
自責タイプが活躍できる企業の場合は、指示された業務を確実に遂行できる人を「責任感が強い」と評価します。また、当事者意識がある人材を求める企業では「言われたことにとらわれず、自発的に提案をして変革してくれる」ことが評価されるのです。
自己PRを考えるときは、志望する企業がどちらのタイプを求めるのか見極めて、それに合うエピソードを伝えられるように準備していきましょう。
自己PRをエントリーシートに書く際は、「アピールしたいポイントから書くこと」と「数字や実績などを具体的な事実と共に伝えること」を意識しておきましょう。
例 【「自責」の責任感をアピールしたい場合】
自分に任されたことに対して責任を持って取り組むことができます。アルバイト先の個人指導塾で、生徒さんが日時を間違えて無断欠席が続くことがありました。学校のテスト対策で通塾していたので、欠席が続くとテストの準備に影響してしまうため、月初の授業で1カ月のスケジュールを書いたカレンダーを一緒に作成したり、授業の最後に次回の日時を確認するようにしました。また、イレギュラーな日時で授業が入っている際は、前日に電話をかけてリマインドすることに。無断欠席はなくなり、生徒さんもテストで好成績を収めることができ、志望校の推薦枠を得ることができました。
面接でも、アピールしたいコミュニケーション能力は何かを先に伝え、面接担当者がイメージできるような具体的なエピソードを盛り込むことが大切です。
例 【「当事者意識」の責任感をアピールしたい場合】
ほかの人が困っていたら、自分事として捉えて解決のために責任感を持って動くことができます。大学1年から所属している地域活性を進めるボランティア団体で、商店街の活性化イベントの企画・運営グループに所属していました。渉外担当の後輩が、地域の方々と意見が合わずにイベントの企画が進まないと悩んでいるのを聞き、ボランティア団体の幹部の人たちに地域の人たちとコミュニケーションを取っていただけないか提案しました。上の人からイベントの趣旨や思いを地域の方々に直接説明してもらえたことで、われわれの思いや熱意が伝わり、無事イベントの企画・開催ができました。
責任感のほかにも自己PRで伝えるアピールポイントがあるかも?気になる人はリクナビ診断を活用して、自分の強みや特徴を調べてみましょう。
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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