就活を進めていくと、「営業」「企画」「開発」など、さまざまな職種があることを知るでしょう。今回は、職種の中でも志望する就活生も多い「マーケティング」について、具体的にどんな仕事をするのか、マーケティングに携わることができるのはどんな業界か、仕事のやりがい、キャリアパス、将来性などを解説します。教えてくれたのは、リクルートが運営する転職者向けサービス「リクルートエージェント」でマーケティング職への転職希望者を担当するキャリアドバイザーです。
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マーケティングとは、世の中が求めているものを探り、ニーズを満たす商品やサービスを効率的に提供するための活動の総称。新しい商品・サービスを企画したり、企画するための市場調査、販売に向けて営業戦略やプロモーション手法を検討したりするなど、活動内容は多岐にわたります。
では、企業でマーケティング部門に所属している人は具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。飲料メーカーを例に取って、マーケティング職の主な仕事内容を見てみましょう。
消費者調査などを基に、マーケットに今求められているものは何かを考え、競合会社の商品ラインナップなどを調査しながら、新しい商品やサービスを作り出す仕事です。
毎年多くの新しい飲料が発売されていますが、担当者がさまざまなデータを基に「今年の夏は、若者向けに新しいペットボトルのお茶を開発する!」というように方向性を決め、企画・開発をしています。
商品のコンセプトを考えたり、試作品を作ってブラッシュアップしたりしながら、販売に向けて経営陣へのプレゼンテーションも行います。
経営陣から販売の承認を得たら、実際に商品を作る製造ラインと連携していきます。味や風味など商品の細かい点を磨き上げつつ、どのように量産体制をつくっていくか、効率的な生産方法はないかなどを製造ラインの社員と共に検討します。
商品、サービスを拡販するための営業手法や販促施策を考える仕事です。ターゲットエリアや営業戦略、キャンペーン施策などを検討、実行します。
新しいペットボトルのお茶を発売するに当たり、市場調査・分析結果を基に、どのエリアが狙い目か、どのような販売促進策を仕掛けると売り上げが期待できるのかを検討します。それを基に営業戦略を企画し、営業部門の社員と共有します。
さらに、より多くの消費者の目に留まり、商品を手に取ってもらうために、購入特典やプレゼントキャンペーンなどを企画したり、スーパーやコンビニなど小売店の店頭で目に留まるような陳列のアイデアを考えたりもします。広報や宣伝部門の社員と共にプロモーション手法を企画したり、社外の広告代理店の人とやりとりをしたりします。
商品企画、営業企画、販売促進のベースとなる市場データを集めて、分析し、その結果を基に「どんな商品やサービスを作れば市場に受け入れられそうか」「どんなエリアが狙い目で、どのような営業戦略を立てればいいか」の方向性を示す仕事です。
飲料メーカーであれば、近年の国内における飲料市場の動向や消費量、ターゲット層の消費動向、競合会社の動向などに関するデータの調査・分析を担当します。
多くの人に商品・サービスの魅力を伝えるため、広告戦略や広告デザイン、広告を出す媒体などを検討する仕事です。
新発売のペットボトルのお茶の広告・宣伝では、商品のターゲット層に置いた若者に商品のことを知ってもらい、買ってもらうために、どんな広告を作っていくかを考えます。商品のコンセプトやターゲット層と照らして、起用するタレントやどんな世界観を広告で表現するかを検討していくのです。
そのほかにも、例えば若者の新聞購読率は低いので、インターネット広告とテレビCMに注力しようというように媒体の選定や掲載期間を決めていきます。
なお、上記の仕事をどのように担当するかは、企業によってさまざま。何人かのチームを組んで商品企画をしたり、商品企画と営業企画を担当したりするといった場合もあります。また、マーケティング職を担当する社員はごくわずかで、多くを外部のマーケティングの専門会社に委託するといったケースも。
企業のホームページや会社説明会などで、興味のある企業がマーケティング業務をどのような体制で行っているか確認してみるとよいでしょう。
入社後にマーケティングに携わるためには、上記で例に挙げた飲料メーカーのような「事業会社」のマーケティング部門で働くケースと、マーケティングを専門的に行う「支援会社」で働く2つのケースが考えられます。
また、新卒入社後すぐにマーケティング職に就くことができるのでしょうか。それぞれの傾向を紹介します。
商品の製造・販売やサービスの提供を行う「事業会社」においては、新卒でマーケティング部門に配属される人はほんのひと握り。というのも、マーケティング職には商品や消費者、マーケットの知識・理解が必要とされるからです。
まず営業部門を経験して、自社の商品、サービスや顧客、マーケットを十分理解した上で、マーケティング部門に異動となるケースが大半です。
ただし、学生時代にマーケティングや統計学を専門的に学んだ人は、入社後すぐにマーケティング部門に配属されるケースも、例外的にあるようです。
支援会社の代表例としては、広告代理店が挙げられます。クライアントである事業会社のマーケティングに係る役割をトータルで担うのが主な仕事となるため、「入社後すぐにマーケティングにかかわりたい」と志望する学生には、チャンスが多い環境といえるでしょう。
そのほか、市場調査を専門で行う会社やPR会社などがあります。
支援会社の中でも近年市場のニーズ、採用意欲共に高まっているのが、インターネット広告に特化したネット広告代理店です。
皆さんの中でも「雑誌やテレビより、スマホやPCでネットを見ている時間の方が長い」という人が多いと思います。ネット人口が増加するにつれ、さまざまな手法のネット広告が誕生していて、中でも運用型広告(※1)、動画広告のニーズは急激に伸びています。
実際、日本の総広告費は6兆5300億円(2018年実績、電通調べ)。前年比102.2%と7年連続でプラス成長していますが、新聞、雑誌、ラジオ、テレビのいわゆる「マスコミ4媒体(4マス)広告費」は、同96.7%。一方で、「インターネット広告費」は前年比116.5%と5年連続で2ケタ成長しています。この流れを受けて、広告出稿先を「4マス」からをネットにシフトする企業が増加していて、ネット広告代理店の業績は好調。人材ニーズも拡大しているのです。
なお、ネット広告代理店の中でも、ネット広告全般を取り扱っている企業もあれば、SEO(※2)やリスティング広告(※3)、アドテクノロジー(インターネット広告に関連するシステム全般)など専門領域に絞って事業展開している企業もあり、裾野が広いのも特徴です。
(※1)リアルタイムにターゲットやクリエイティブ、広告枠、入札額などを変更・改善しながら運用し続けていく、インターネット広告のこと。
(※2)“Search Engine Optimization” の略で、検索エンジン最適化を意味する言葉。検索エンジンで上位に表示されるよう対策を行い、集客を拡大することを指す。
(※3)検索したキーワードに関連した広告を検索結果画面に表示する、検索連動型広告のこと。
マーケティング職に携わることで、どんな仕事のやりがい、醍醐味(だいごみ)を感じられるのでしょうか?「事業会社」「支援会社」それぞれの場合について紹介します。
事業会社においては、自社商品、サービスの企画開発に一からかかわることができるのが最大の醍醐味といえるでしょう。
市場調査・分析担当者のデータを基に、試行錯誤を繰り返しながら商品、サービスを生み出す。無事世の中に出したときは、まるでわが子のようないとおしさを感じるといいます。そして、その商品、サービスが世に出た後は、多くの人に購入されたり、利用されたりするのを見られる喜び、自身の働きが世の中に影響を及ぼしている醍醐味を味わうこともできます。
営業企画・販売促進として携わった場合も同様で、自身が考えた営業戦略や販促施策において、より多くの人の元に商品やサービスを届けられ、喜んでもらえたときの喜びは、何物にも代えがたいでしょう。
半面、担当する商品やサービスに愛着を持てない場合は、モチベーションを保つのが難しいかもしれません。
一方、支援会社では、若いうちからいろいろなクライアントのマーケティング業務に携わることができ、早く成長できるのがやりがいの一つといえるでしょう。
さまざまな企業の幅広い商品、サービスに携わり、企業ごとに異なるマーケティングの考え方やマーケティング手法に触れることで、視野が広がり経験値が上がり、自身の引き出しも増えるでしょう。
一方で、商品、サービスをじっくり育て上げたい、かかわりたいという志向が強い人には、物足りなさを感じる場面があるかもしれません。ただ、ネット広告代理店で経験を積み、事業会社のマーケティング職に転職する人はとても多く、キャリアの可能性は広がっています。
マーケティング職に携わる人はどんなキャリアを歩んでいくのでしょうか?また、さまざまな職業が「将来AIに代替される」といわれる昨今、マーケティング職は将来性のある職種といえるのでしょうか?
マーケティング職に就いている人の最も多いキャリアパスは、そのままマーケティングの仕事を極めるというもの。経験を積んでリーダー、マネージャーとなり、より視野を広げて活躍するという人が多いようです。
さらに、新しい商品やサービス、市場を作り上げた経験を生かして、事業企画や新規事業立ち上げを任されるケースもあります。より経営に近い位置で、業績に影響を及ぼす責任ある役割を担うことができます。
マーケティング職と近しい役割である、広報部門に異動するケースも少なくありません。メディアへの露出を増やして、企業の知名度やイメージをアップさせたり、自社商品、サービスを広く告知したりするために、社内外に発信するのが主な仕事。どのタイミングで、どんなメディアを使って発信すればより効果的か検討するなど、マーケティング職で得た経験をフルに生かすことができます。
マーケティング職は、企業が事業を継続するために必要な売り上げ、利益を上げるための「仕組みづくり」をする仕事。経験を積む中で、自然と経営陣に近い視点が養われます。この視点は、あらゆる仕事で生かせるスキルです。その意味で、マーケティング職で得た経験、スキルは応用範囲が広いといえるでしょう。
また、マーケティング職は景気にニーズが左右されにくい職種ともいえます。景気が良いときは、企業の新商品、サービスの開発意欲が旺盛になるため、当然マーケティング職の役割も増えます。一方で景気低迷の局面であっても、既存商品、サービスでどうすれば売り上げを巻き返せるかを考えたり、視点を変えて時代に合った商品やサービスを考えたり、より効率的で経費のかからない営業手法、販促手法を検討したり…など活躍の場面が大きい職種といえます。
「将来的にAIに取って代わられる」という心配もありません。確かに市場調査・分析の分野はAIがたけているといえますが、新商品、サービスのコンセプトを考えたり、ブランディングを行ったりする際には、人間のクリエイティブな思考、視点が必要とされるでしょう。AIを駆使して市場の動向を正しく読み、より市場にフィットした商品企画を行う…というように「AIを使いこなす側」になると予想されます。
「マーケティング」とひと口に言っても役割はさまざまですが、市場を読み、コンセプトを企画して、新しい商品やサービス、戦略を生み出し、企業の売り上げ、利益を支えるのは非常にやりがいも大きい仕事です。マーケティング職に興味のある人は、自分が商品・サービスとどうかかわりたいか、どんなキャリアを歩んでいきたいかを考えて、応募企業を探してみてはいかがでしょうか?
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