鉄鋼業界とは、主に鉄鋼メーカーとその製品を仕入れてさまざまな業界に販売を行う金属卸事業を行っている事業者を指す。鉄鋼メーカーは、高炉メーカー、電炉メーカー、特殊鋼メーカーなどがある。
鉄を作るには、いくつかの方法がある。
高炉メーカーでは、原料となるのは鉄鉱石とコークス(石炭を蒸し焼きして炭素の部分だけを残したもの)だ。まずは高炉を使って、鉄鉱石とコークスから炭素分の多い「銑鉄」(せんてつ)を生み出す(=製銑)。続いて、溶けた銑鉄から炭素などの不純物を取り除いて「鋼鉄」を作る(=製鋼)。そして、ドロドロに溶けていた鋼鉄を一定の形に冷やし固めること(=鋳造)で出荷できる状態となる。
電炉メーカーは、くず鉄(鉄製品を作る際にできた鉄や鋼のくず。また、廃品となった鉄製品)を原料として、電気の熱で溶かすことで鉄を作る。
特殊鋼メーカーは、電炉を使って鉄スクラップを溶かす点では電炉メーカーと共通だが、マンガンやニッケル、クロムなどのレアメタルを添加することで特殊な機能を持つ鋼材を作る。
鉄鋼製品は、鉄鋼メーカー系列のグループ会社や商社などに、あるいは直接、自動車、建設、造船、産業機械などの各種メーカーに卸される。商社に卸した場合は、一次商社から加工業者を経る場合や、二次商社(特約店)を経て卸される場合もある。
原料から製鉄し、鉄鋼製品になるまでを一貫生産しているのが高炉メーカー。高炉は巨大な装置や設備を必要とする装置産業であり、企業規模は大きい。
くず鉄などを溶かして、建物や乗り物などの骨格部分などに使われる普通鋼材を製造する。一貫生産の高炉メーカーに比べると一つの炉で生産できる量は少ないが、生産量の調整が行いやすい。
くず鉄を電炉で溶解して不純物を取り除き、マンガンやニッケル、クロムなどを加えることで、特殊な機能を持たせた鋼材を作る。
自動車や航空機のエンジンや、ベアリング(軸受け)、パソコンなどの情報機器に使われる。
鉄鋼は建設、産業機械、自動車、造船など幅広い産業で利用されており、特にビルや鉄道、橋など社会インフラを担うものに欠かせない材料だ。
世界鉄鋼協会によると、2018年の世界の鉄鋼消費量は17億1210万トン。アジアを中心に需要が伸び2020年には17億5160万トンになると試算されている。これに対し2018年の日本の鉄鋼生産量は、1億432万トンで世界第3位。近年は、特に経済発展著しいアジア地域への輸出が増加している。
しかし、グローバルに展開する事業だけに国際競争も激しい。特に近年は、中国などのメーカーが生産能力を増強。中国メーカーの生産量は、世界の粗鋼生産量の半分程度を占めるほどになった。ところが、中国経済の成長率が鈍り国内需要が低迷したため、中国メーカーは安い価格で鋼材を輸出。日本の鉄鋼メーカーはそのあおりを食っている面もある。国内では需給ギャップを解消するために、2015年ごろから工場休止などの措置が相次いだ。
今後は、インフラ整備を必要とするインドなどアジアが成長マーケットとみられている。しかし、中国の成長が頭打ちとなれば鉄の過剰供給に対して、いっそうの国際競争力の強化が求められる。
国内メーカーでは、生産拠点の集約による効率の見直しやM&Aによる設備の統合などを図っている。また国際的な提携や合併による、海外での生産拠点設立も進んでいる。
価格競争ではなく、技術力の高さを生かし、付加価値の高い製品を生み出して利益を確保しようとする取り組みも活発だ。
日本の鉄鋼技術は世界的に見ても高く、コンテナ船の大型化に対応した安全性・強度の高い「高アレスト鋼」や、自動車などに使われる高い強度で加工性にも優れる「ハイテン鋼」などの製造を得意としている。高い技術力でグローバルな競争をリードしていくことが、各社の経営のカギを握るだろう。
地球温暖化対策が世界的な問題となる中、日本の鉄鋼業界では、省エネルギー設備を導入し、その普及率はほぼ100%に達している。排エネルギー(鉄鋼の製造を通じて生じるガスや熱など)の回収や有効活用も、世界でも特に高い。
しかし、鉄鋼の生産には大量のエネルギーが必要となり、業界全体で二酸化炭素の排出は不可避である。各鉄鋼メーカーではさらなる取り組みが重要な課題になっており、製造過程で発生する二酸化炭素を分離して回収する技術の開発などが進められている。
ここでは、国際競争力を強化する取り組みの一つとして、技術力を生かして開発された2つの高付加価値製品を紹介する。
コンテナ船用の厚鋼材。鋼材にき裂が発生した場合、亀裂の伝播(でんぱ)を抑えることで船体の損傷被害を最小限にとどめるアレスト特性を備えている。輸送力向上のためにコンテナ船の大型化が進む中、船舶事故による海洋汚染の被害を回避するために開発が進められている。
高張力鋼板。合金元素を添加することで引っ張りに対して強さを実現し、焼き入れ・焼き戻しで高い強度を付けた鋼板。世界各国で研究されている合金鋼で、日本の技術力は高く評価されている。
一般の鋼板に比べ、薄くても十分な強度が得られるため、自動車の車体などに使われて軽量化に貢献している。そのほかにも、橋梁(きょうりょう)や建築などに使われている。
車体部分に使われる鉄鋼を提供。近年は、自動車の燃費を向上させるために、薄くて軽いのに十分な強度を保つ、高付加価値鋼材が求められている。
鉄の原料となる鉄鉱石、コークスを輸入したり、大量の鉄鋼を国内外に運搬したりするためには、大型の輸送用船舶が欠かせない。
ビルや橋などの大規模建築物には、大量の鉄鋼が使われている。オリンピック・パラリンピックの開催で一時的には国内需要は増えたが、中長期的に見れば人口減少による住宅や大型施設建設の落ち込みは避けられない。
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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※1 2024年3月6日時点のリクナビ2024の掲載情報に基づいた各企業直近集計データを元に算出