就活を進める中、企業からの電話に出られず、学生が折り返しの電話をかけるケースも少なくはないでしょう。その際、「企業に電話をかけるとき、どう取り次いでもらえばいいのか」と困ってしまったり、「急いで電話したものの、うまく用件を伝えられず、印象を悪くしたかも」と落ち込んでしまったりする学生もいます。そこで、就職・転職支援スクール、我究館にてコーチを務める八木橋育子さんに、企業への折り返し電話について、心構えをしておきたい点や注意ポイントについて聞きました。
目次
就活中、企業からの留守電が入っている場合は、学生に直接連絡したいことや確認したいことがあり、「メールよりも迅速にやりとりしたい」と考えているケースがほとんどといえるでしょう。面接日程の調整など、今後の選考スケジュールにかかわる連絡の可能性もあります。相手のためにも、自分のためにも、なるべく早く折り返しの電話をかけたいものですが、慌ててしまったことで、重要事項を聞き漏らすケースも少なくはありません。まずは、就活で企業への折り返し電話をかける前に、心構えをしておきたいことを把握していきましょう。
連絡事項についてメモを取るために、筆記具を用意しておきましょう。口頭のみでやりとりした場合、大事なことを忘れてしまうケースがあります。再度の電話をかけて聞き直せば、相手に余計な負担をかけることになりますし、「自己管理ができない」というマイナス印象につながりかねません。「電話を切ってからスマートフォンに打ち込んでメモをしよう」と考える学生もいますが、記憶違いで間違ったままメモしてしまう可能性もあります。自分自身のためにも、必ずその場でメモを取りましょう。また、面接日程の調整・確認をそのまま電話で行うケースもあります。自分の予定をすぐ確認できるよう、スケジュール帳も広げておいた方が慌てずに済むでしょう。
電車に乗っている最中に着信に気づき、「なるべく早く折り返し電話をかけなくては」と考えて、駅のホームなどで電話をかける学生は少なくありません。しかし、構内アナウンスや発車ベルなどの大きな音によって、相手の声も自分の声も聞こえにくくなり、何度も聞き返すことになる可能性があります。人が多く、ざわざわとしている場所にも同様のことがいえるので、なるべく静かな場所に移動してから電話をかける方がいいでしょう。また、電波状況が良い場所を選ぶことも大事です。途中で通話が切れてしまった場合、電話をかけ直すことになり、再度取り次いでもらう手間をかけることになってしまいます。急いでかけ直すことより、しっかり話ができる場所に移動する方が、相手のためになると考えましょう。
折り返し電話をかけるタイミングについては、相手の状況に配慮することも大事です。昼休みに重なりそうな時間帯は、相手が食事中のために電話を受ける態勢が整っていない可能性があります。一般的な昼休みに当たる12時〜13時は避け、前後30分程度ズラしてかける方がいいでしょう。また、始業時刻の前後や、終業後などに折り返し電話をかけることも避けた方が無難です。始業時刻の前後は、相手が出社した直後のために落ち着いて対応できない可能性が高く、終業後の場合は相手に残業をさせてしまう可能性があるので、注意しましょう。
一方、昼休みを自由に取れたり、フレックス勤務によって個々の始業・終業時間が違っていたりする企業もあります。「相手の昼休みまで調べた方がいいのだろうか」と考える学生もいますが、そこまで気をつかわなくても問題はないといえます。常識的な範囲として、一般的な昼休みの時間帯、10時以前の時間帯、18時以降の時間帯は、避けておくと安心できるでしょう。ただし、相手からの留守電に、「19時以降にこちらからかけ直します」「20時まで勤務しているので、可能なら折り返してもらえれば」などのメッセージが残されていた場合は、その時間帯に折り返し電話をかけても問題はないでしょう。
慌てて折り返し電話をかけたことで、自分の名前を名乗ることを忘れるなど、相手を混乱させてしまうケースはよくあるものです。また、日ごろ、友人と会話するような言葉遣いになってしまう学生もいます。企業の電話は、携帯とは違い、電話をかけたい相手以外が出ることも多く、自分のことを知らない人に取り次いでもらう流れが発生する可能性があることを理解しましょう。また、ビジネスで使用する電話のため、それにふさわしい礼儀正しい言葉遣いを意識することも大事です。友人同士のような言葉遣いで会話すれば、「TPOを理解できていない非常識な人物」と思われる可能性があるので注意しましょう。以下で、折り返し電話の具体的なかけ方を紹介するので、よく使う言葉遣いと、やりとりの流れを把握しましょう。
折り返し電話のかけ方の基本を、7つのステップで把握しましょう。各ステップで使われる例文をベースに、注意ポイントも紹介していきます。
<例文>
「お忙しいところを恐れ入ります」
「○○大学の△△と申します」
仕事の手を止めて電話に出てくれた相手に対し、配慮するあいさつを述べてから、自分の名前を名乗りましょう。また、名前よりも学校名を先に伝えることが大事です。ビジネスで使用する企業の電話には、顧客や取引先、社員など、さまざまな人から連絡が入るので、自分が学生であることがわかるように伝えるといいでしょう。特に注意したいのは、「お電話頂いたので折り返したんですけど」など、いきなり用件を伝えるケースです。面識のない人物が、何のあいさつもなく、名乗りもせずに用件を伝えてきたら、誰しも失礼に感じるものだと考えましょう。
<例文>
「先ほど、人事部の○○様からお電話を頂き、折り返しのご連絡をいたしました」
「◯◯様はいらっしゃいますでしょうか」
折り返しの電話であることを伝えてから、電話をくれた担当者に取り次いでもらいましょう。また、相手が留守電に名前を残していなかった場合も、「ご担当者様」とすれば、誰なのかを調べてから取り次いでくれるので、心配はいりません。もしも本人が出た場合には、そのままステップ3に進みましょう。ほかの社員に取り次いでもらった場合には、「少々お待ちください」と言われるので、「恐れ入ります」と答え、取り次いでくれることへの謝意を伝えましょう。
<例文>
「お忙しいところ恐れ入ります」
「私、先ほどお電話を頂きました〇〇大学の△△です」
「先ほどはお電話に出られず失礼いたしました」
「今、お時間よろしいでしょうか」
担当者につながったら、再度、あいさつをしてから、折り返し電話であることを伝えつつ、自分の学校名と名前を名乗りましょう。最初から担当者が出ていた場合も、あらためてあいさつをして名乗った方がより丁寧であり、相手にとっても再確認ができて親切です。また、電話に出られなかったおわびの言葉を伝えると、より丁寧な印象を与えることができるでしょう。この後、用件を話す前には、相手の都合を確認することが大事です。状況によっては、「今、バタバタしているので、手が空き次第、こちらから折り返します」と言われるケースもあります。その際には、「ご都合よろしい時間をご指定いただけたら、おかけ直しいたします」と申し出て、多忙な相手への気づかいを見せるといいでしょう。
<例文>
「本日、○時ころに頂いたお電話のご用件について、折り返しのお電話をいたしました」
相手が対応可能であれば、すぐに本題に入りましょう。学生の中には、「講義中だった」「電車に乗っていた」など、電話に出られなかった理由の説明を始めるケースもありますが、その分、相手の時間を奪うことになるので注意しましょう。また、重ねておわびしようとする学生もいますが、何度も謝罪する必要はありません。余計な話はせず、用件のみを簡潔に伝えましょう。電話をもらった時間帯なども併せて伝えると、相手も何の用件で電話をしたのか思い出しやすくなるでしょう。面接日程の候補日などを伝えられた場合には、あらかじめ用意しておいたスケジュール帳で素早く確認し、その場で返答・決定しましょう。
<例文>
人事担当者「それでは、◯月△日の◯時に当社ビル7階受付までお越しください」
「◯月△日の◯時に御社の7階受付ですね。かしこまりました」
電話の場合、聞き取り間違いをする可能性も多くあります。面接の日時や場所などを含め、大事なことを伝えられたら、メモを取るだけでなく、相手の言葉を必ず復唱し、間違いがないか確認しましょう。また、特に注意したいポイントとして、時間表現が挙げられます。学生の多くは、午後の時間帯を「1時」「2時」「3時」と表現しますが、社会人は「13時」「14時」「15時」と表現します。そのため、例えば、「14時からの面接」を、「4時からの面接」と勘違いしてしまうケースがよくあるのです。間違った内容をそのままメモしていた場合、大幅な遅刻となり、面接の機会を失う可能性もあるので、復唱と確認を必ず行うことは非常に重要です。
<例文>
「申し訳ございません、少々お電話が遠いようで、もう一度お願いいたします」
携帯の電波状況が良い場所から電話をかけても、相手の電話回線の通話状況が悪いなどで、声が聞き取りにくいケースもあります。焦ってしまい、「ちょっと聞こえにくいんですけど」など、うっかり普段の言葉遣いが出てしまう学生も少なくはありません。相手の環境に問題があった場合でも、本人は気づいていない可能性もあるので、聞き取れなかったときは、丁寧に聞き返しましょう。友人と話すような言葉を使った場合、「相手との距離感がわかっていない」と思われる可能性がありますし、「目上の人物に対する礼儀を踏まえていない」と捉える社会人もいるので、マイナスの印象を与えないためにも、できる限り正しい敬語を使うように心がけましょう。
<例文>
「お忙しいところ、ありがとうございました」
「それでは、失礼いたします」
用件がすべて終了したら、電話対応に時間を割いてくれたことへのお礼の言葉を述べ、「失礼いたします」などのあいさつをしましょう。また、あいさつした後、すぐ電話を切ってしまう学生がいますが、相手があいさつを返そうとした矢先に通話を切ってしまっている可能性もあります。また、古くからのマナーとして、「電話は目上の人物が先に切る」という考え方もあるため、目下である若者が先に電話を切ること自体を失礼だと感じる人もいます。相手が切るのを待ってから、自分も通話を終了する方がいいでしょう。
電話のマナーをもっと知りたい人はこちらを参考にしよう。
『社会人と接する最低限のマナー 電話編』
就活の折り返し電話をかける際、想定していないことが起きる可能性もあります。慌てないためにも、よくある「こんなことで困った」というケースも知っておきましょう。
A1:まずは、いつごろ担当者が席に戻ってくるのかを聞き、戻り時間に合わせて折り返し電話をする旨を伝えましょう。不明の場合は、「私から再度、◯時ころにお電話させていただきます」とし、その旨を本人に伝えてもらうようお願いするといいでしょう。せっかく折り返しの電話をかけても、そのまま切ってしまえば、担当者に「電話をかけた事実」が伝わらない可能性があります。「自分から折り返し電話をかけた」という履歴を残すためにも、かけ直す旨を伝えてもらうことが大事です。
また、対応してくれた相手が、「電話をかけ直すように伝えておく」と言った場合も、自分からかけ直すことにした方がいいでしょう。相手に配慮する姿勢が伝わりますし、かけ直すより先に、相手が折り返しの電話をくれるケースもよくあるものです。「相手がかけてくれるなら、待っていればいいか」と考えず、お互いに配慮し合う姿勢が大事だと考えましょう。
<例文>
学生「◯◯様は、何時ころにお戻りになりますでしょうか」
相手「こちらでは、わかりかねます」
学生「かしこまりました。それでは、私から再度、◯時ころにお電話させていただきますので、その旨、◯◯様にお伝えください」
A2:もしも相手のメールアドレスを知っている場合は、メールで連絡をし、謝意を伝えましょう。なるべく早く連絡をした方が、「電話に気づいていないかもしれない」という相手の不安を払拭できますし、「留守電を確認せずに放置するルーズな人物」という印象を持たれにくいでしょう。社会人は会社のメールアドレスを携帯に転送するよう設定しているケースも多いので、就寝前の22時ころまでの時間であれば、メールを送っても問題ないでしょう。
また、メールアドレスがわからない場合は、翌日の午前中に折り返しの電話をかけましょう。翌日の夕方まで放置してしまえば、「志望度が低いのでは?」「連絡しても折り返しをくれない、いい加減な人物なのでは?」と思われかねません。人事担当者が個々の学生に電話をかける場面は、選考過程が進み、面接を受ける学生の人数が絞られてからのケースが多く、大事な連絡である可能性が高いので、留守電をしっかりチェックし、素早いやりとりを心がけましょう。
お世話になっております。
◯◯大学△△学部のりくなび太郎と申します。
本日は、頂いたお電話に出られず、誠に申し訳ございません。
留守番電話に気づかず、ご連絡が遅くなりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
明日の午前中に、こちらからお電話させていただきます。
お手数、ご迷惑をおかけしまして恐縮ですが、
何卒、よろしくお願い申し上げます。
昨日は、頂いたお電話に出られず、大変失礼いたしました。
留守番電話に気づかず、ご連絡が遅くなりまして申し訳ございません。
頂きましたお電話のご用件について、お電話いたしました
A3:留守電を聞いた時点で、すぐに折り返しの電話をかけましょう。「またかけます」は、社交辞令としてあいさつ代わりに使うケースがあります。本人が「またかける」というメッセージを残したこと自体を忘れているケースもありますし、多くの学生とやりとりしている場合、うっかり忘れられてしまうかもしれません。また、「かけてくれるならいいか」と放置すれば、「相手任せの受け身な人物なのでは?」と思われる可能性もあります。すぐに折り返し電話をかけた方が、学生本人にとっても安心できるでしょう。
A4:電話をそのまま切ってしまわず、留守電を残しましょう。最初にあいさつをした上で、相手に自分が誰かわかるようにするために、学校名と自分の名前を名乗りましょう。その上で、電話に出られなかったことに対するおわびを伝え、「私から再度、◯時ころにお電話させていただきますので、何とぞよろしくお願いいたします」と続け、「それでは、失礼いたします」というあいさつまできちんと残すことが大事です。
企業から電話をもらった際、「社会人に折り返し電話をかけることが怖い」と思う学生もいますし、「メールで返事をしよう」と考える人もいるでしょう。しかし、相手には、「電話で確認したい何らかの意図」があるものなので、メールで返事をすることは避けた方がいいでしょう。また、最初から完璧に敬語を使いこなせなくても、「相手に失礼のないよう接しよう」「礼儀正しく話そう」という誠意や姿勢は相手に伝わるものだと考えましょう。社会人の先輩たちも、学生時代に完璧に敬語やマナーを理解していたかといえば、ときに失敗し、人生の先輩たちから指摘を受けながら成長してきたはずです。
苦手意識を持つより、まずは「よく使われる表現や敬語を実際に使って慣れていくこと」が大事でしょう。例文を見てから電話しても、とっさに言葉が出てこず、慌ててしまったり、沈黙してしまったりするケースもあるので、場数を踏んで成長していくことがポイントです。シーンを想定した電話のロールプレーイングがオススメです。友人同士で練習しても、間違っているかどうか判断できない可能性があるので、保護者や社会人の先輩、キャリアセンターの担当者などに協力してもらうといいでしょう。
簡単5分で、あなたの強み・特徴や向いている仕事がわかる、リクナビ診断!就活準備に役立ててくださいね。
▼2026年卒向け詳細情報▼
「リクナビ診断」を受ける
性格検査や適職診断など、自己分析に役立つツールを活用してみましょう!
インターンシップ&キャリアや就活準備に役立つ情報をX(旧Twitter)でも発信中!
——————————————————
株式会社リクルートにて広告提案営業を経験した後、女性の社会進出に対する問題意識を持ち、女性の再就職・転職に特化した人材会社に転職。女性のみで構成される営業代行チームのマネジメントやキャリアコンサルタントとして、結婚・妊娠・出産などのライフイベントとキャリアの両立に悩む女性2000人以上を支援。自身の結婚を機に、「キャリアデザインを一人でも多くの人にしてほしい」という思いから2011年に我究館コーチに就任。学生、社会人の受講生を担当し、本人のあいまいな夢や、隠れた本音を明確にすることを得意とする。特に、女性の就・転職におけるマーケットに精通している。メイクアップや服装・マナー講座も担当。
——————————————————
直接会わずに対話ができ、迅速な対応ができるのが電話のメリットだが、顔が見えないために誤解を生じやすいツールでもあることに注意したい。「顔が見えないだけに心を込めて明るく、丁寧に話すと同時に、重要な情報はメモを取り、復唱して確認することでミスを防ぎましょう。
就活時の髪型について悩む就活生も多いのではないでしょうか。この記事では、ヘアスタイリングで気をつけた
要件を簡単に、かつ丁寧に伝えるメールのマナー。ここでは押さえておきたいメールや手紙のマナーをわかりやすく解説する。