「面接がなかなかうまくいかず、苦手意識がある…」と感じている人へ。苦手と感じてしまう原因と対処法がわかれば、苦手意識を払拭できるかもしれません。人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛け、心理学にも明るい採用のプロ・曽和利光さんに今すぐできる苦手意識への対処法を聞きました。
面接に対する苦手意識を生み出す要因には、「緊張しやすい」といった心理的なものから、話のまとめ方など技術的なものまでさまざまあります。その中で、苦手意識を生み出す最大の要因だと私が考えるのは「緊張」です。
もともと緊張しやすい、年の離れた人と話し慣れていない、面接担当者から「なぜ?」と何度も聞かれるとどんどん緊張が高まってくる…などが原因で緊張してしまい、自分が出せなくなる。そうして面接への苦手意識が芽生える人は多いのではないでしょうか。
でも実は、緊張は、適切な対処や準備をすれば和らげることができるもの。苦手意識の最大の要因である一方で、即効性のある対策ができるものでもあるのです。今回は、緊張を和らげるための具体的な5つの方法をご紹介します。
人の気持ちや意識は、可視化したり、誰かに伝えたりすることでコントロールすることができると言われています。その心理的作用を利用して、「緊張しています」と面接担当者に伝えてみましょう。言葉にすることで緊張がほぐれますし、面接担当者も寛容な人が多いですから、緊張している前提で対応してもらえる場合があります。
なお、面接という特殊な場では、緊張しない人の方が少ないですから、緊張していること自体がマイナスに働くことはありません。評価されるのは、面接で話した内容そのものです。
入室から着席に至る動作や「よろしくお願いします」という発声を、意識的にゆっくりしてみましょう。特に、ゆっくりと動作することは、気持ちを落ち着かせるのに有効と言われています。
面接中の話すスピードも、早口では、学生にも、面接担当者にも良いことがありません。ゆっくりと話すように心がけてください。
というのは、学生の皆さんにとっては、ゆっくり話せば、話しながら考えをまとめる時間をより長く確保できますが、早口で話すと、その時間が短縮されてしまいます。面接担当者も、面接に慣れていない場合は学生が早口だと内容を十分に理解することもできませんし、次の質問を考える時間も取れません。
すると、熟考できなかったために「突拍子もない質問をしてしまう」→「学生は戸惑って十分な回答ができない」→「面接担当者もまた次の質問を熟考できず」…と悪循環が起こります。
緊張の原因が「年齢が上の人と話し慣れていない」という場合、慣れることが一番の対処法です。オススメの方法は、「苦手だな」「慣れてないな」と思う年齢層の人と接する機会をつくること。例えば、部活やサークルに属している人はOB・OG訪問をしてみたり、バイトをしている人はバイト先の社会人に話しかけてみたりするといいでしょう。こういった場でコミュニケーションを取ることに慣れれば、面接での緊張も軽減できると思います。
なお、面接担当者の目が笑っていない、にらんでいるように見える、怒った表情に見える、という場合もあると思います。これは、年を重ねて目の周りの表情筋を動かさなくなったり、口角が下がりがちになったりしているから。また、腕や足を組んでいる場合も、その方が楽だから。決して威圧したいわけではありません。その態度に影響を受けず、「年齢を重ねるとそういうものなんだ」と思っていつも通り話をしましょう。
「なぜ?」「どうして?」と繰り返し聞かれることで緊張が高まるという場合、面接での発言を見直してみましょう。質問に対して、原因や理由を1回で言えているでしょうか?きっかけだけを話したり、どこかぼかした回答をしたりしていませんか?
面接担当者が「なぜ?」「どうして?」を繰り返すのは、学生自身のことをもっと詳しく知りたいからで、詰問したいからでも否定したいからでもありません。「なぜ?」と繰り返し聞かれる原因としてよくあるのが、学生による原因・理由ときっかけの取り違えです。
例えば、自分の人となりを伝えるエピソードとして、ある一瞬の出来事を挙げて「その時から私はこうなりました」と話す学生がいます。しかしそれは、きっかけにすぎません。一度の出来事で考えや姿勢が激変する人はいませんから、何かしらの積み重ねがあって、最後のひと押しとしてその出来事があったということ。面接担当者はその積み重ねが何なのか、真の原因を知るために「なぜ?」とどんどん聞いていきます。したがって、本当の原因を1回で話せるように見直してみましょう。
また、固有名詞をぼかすこともやめましょう。例えば、アルバイト先を「飲食店」と伝えるのと、「東京駅構内の喫茶店(店名を伝えられるとなお可)」と伝えるのとでは、面接担当者が一度に得られる情報が異なります。後者であれば「1日の来店者数は相当だろうな」などと想像できますが、「飲食店」と言われると「飲食店ってどこ?」とさらに質問しないと、詳しい情報は得られません。志望業界を聞かれたときも同様です。「IT業界」と言われても、志望しているのがシステム開発系の企業なのか、ソフトウェア開発系の企業なのか、インターネットサービス系の企業なのか、もっと別の事業を行っている企業なのかがわかりません。そこでまた面接担当者が「具体的には?」と突っ込む手間が出てくるので、多くの人が理解できる固有名詞や具体的な情報は、最初から伝えましょう。
緊張して話が飛んでしまうという場合、話したいことのポイントをまとめた小さなメモを準備して「質問にしっかり答えたいのでメモを見ながら話していいですか?」と断りを入れた上で話すことをオススメします。面接担当者も資料や質問のリストを手元に置いて質問しているのですから、学生がメモを見ながら話すのは問題ないと判断する企業も多いと思いますよ。
これらの対処や準備をした上で実践したいのが、本番の場数を踏むことです。場数を踏んでいないことが苦手意識、緊張を促進する一因でもあるので、本番を何度も経験して、面接の雰囲気やそこでの受け答えに慣れていきましょう。そうすれば、緊張も払拭され、苦手意識も和らいでいくでしょう。
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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