「あなたにとって仕事とは」面接で聞かれたときの答え方<掘り下げ方と回答例も紹介>

面接で「あなたにとって仕事とは」を質問された際、「そもそも仕事って、どう考えればいいの?」「具体的に、どう答えればいいの?」と悩む学生は少なくないものです。そこで、就職・転職支援スクール、我究館の館長を務める熊谷智宏さんに、仕事の価値観に対する考え方や面接での伝え方のポイントについて聞きました。

「あなたにとって仕事とは」を聞くことで、企業は学生の何を見ている?

企業が面接で「あなたにとって仕事とは」を質問する際、学生の何を見ているのでしょうか。まずは、そのポイントを紹介します。

学生の「仕事に対する価値観」を見ている

企業は、学生が「仕事に対してどんな価値観を持っているのか」を知りたいと考えています。その人が大事にしている価値観は、社会人となったとき、仕事に対してどんな問題意識やプロ意識を持って取り組むのかに大きく関係するものといえます。例えば同じ営業職でも、人との信頼関係を大事にしている場合、「信念として、顧客に必要のない商品は売らない」というケースもありますし、組織に貢献することを大事にしている場合、「顧客にさまざまな提案をし、売り上げアップを目指す」というケースもあるでしょう。「仕事に対する価値観」は、その人の仕事に対する取り組み方や姿勢、意欲など、本質的な部分につながるものといえるのです。

学生と企業、双方の価値観がマッチしているかを見ている

企業には、それぞれ大事にしている価値観があります。「信頼を守ること」「挑戦を重ねていくこと」などを企業理念として掲げているケースもあり、それは事業内容や社員に求める姿勢にもつながっているものです。そのため、企業と学生、双方の本質的な価値観がマッチしているかどうかは、採用における重要なポイントとなるのです。「長所・強み」などを回答する際には、いくつもある中から「その企業で活躍する際に求められていること」をクローズアップすることができます。しかし、「あなたにとって仕事とは」という質問への回答は、「自分が働く上で最も大事にしたいこと」であり、入社後、仕事に向き合っていくための本質的な基軸となるものです。ここがマッチしていない場合には、「うちの会社には合わない」と判断される可能性もありますが、学生にとっても、「本質的な価値観がマッチしているかどうか」は非常に重要です。その企業を志望するかどうかの判断ポイントとすることも大事でしょう。

「あなたにとって仕事とは」を考える際のポイント

「あなたにとって仕事とは」という質問に対し、「希望する仕事や職種を答えればいいの?」と思っている学生もいるでしょう。しかし、それでは企業が知りたいと考えている「仕事に対する価値観」を伝えることはできません。ここでは、自分の軸となる価値観や信念を見つけるポイントを紹介していきます。

自分にとって「Must(必須のもの)」となるものを考える

人にはさまざまな価値観があるものなので、「何のために働くのか」を聞かれた際、一つだけには絞れないものです。しかし、自己分析を進めた結果、「働く上で、これだけは絶対に譲れない」というものが必ずあるはずなのです。「仕事において、何を一番大事にするのか」を考えてみれば、「あなたにとって仕事とは」の軸となる価値観を明確にすることができるはずです。

仕事に対し、「Want(欲しいもの)」と「Must(必須のもの)」をごっちゃにして考えてしまうケースがよくあります。「できれば高い収入を得たい」「なるべくワークライフバランスを大事にしたい」「好きなことにかかわる仕事ができれば」など、希望レベルのものは「Want」に当てはまるでしょう。一方、自分にとって「これがないと無理」というものが「Must」です。「信頼できる仲間がいないと無理」「自分のやりたいことを目指せる道筋がない企業は無理」など、それぞれの価値観によって、その答えとなるものは変わってくるでしょう。しかし、「Must」となるものは、「それがなくなったら、仕事そのものがやりたくなくなる」ことであり、この価値観は、入社後、働き続けていくためにも非常に重要なものとなるのです。まずは、「Want」となるものをどんどん書き出し、そこから「なくても大丈夫」と思えるものを消していきましょう。最後に残った一つが、「仕事において最も大事にしたい価値観」となるでしょう。

OB・OG訪問で「仕事の本質」を掘り下げる

学生の中には、「社会人になるのが怖い」「仕事とは苦痛なもの」というネガティブな意識を持っていることで、仕事の本質を掘り下げること自体を避けようとするケースがあります。一方、自分の中の漠然としたイメージや憧れのみで考え、背景にある地道な仕事に目を向けていない学生もいます。こうした場合、OB・OG訪問でいろんな社会人に直接話を聞いてみるといいでしょう。すると、自分が考えているよりも、仕事とは楽しく、面白いものであることがわかりますし、充実した毎日を送る社会人の姿を見て「自分もこうなりたい」と思えるはずです。

また、OB・OG訪問の際は、「何に喜びを感じているのか」「どんなやりがいがあるのか」「信念として大事にしていることは何か」「どんな大変さや難しさがあるのか」などをどんどん聞くことがポイントです。リアルな経験談を通じて、仕事の本質を知ることができますし、共感できる部分とできない部分が必ずあるものなので、「自分が仕事に対して望むこと、望まないこと」が見えてくるでしょう。そこから、「なぜそれをやりたいと思ったのか」「なぜ意義を感じたのか」「そこで自分はどうありたいのか」を掘り下げていけば、自分なりの仕事への価値観を見つけることができます。そこから「Must(必須のもの)」となる価値観を探していきましょう。

「あなたにとって仕事とは」という質問への答え方のポイント

それでは、「あなたにとって仕事とは」を面接で聞かれた際の、答え方のポイントを紹介していきましょう。

最初に結論を述べてから、その価値観の育まれた背景を伝える

質問に答える際には、「自分はこういうことを大事にしている」という結論を簡潔に述べましょう。そこから、その価値観が育まれた背景を伝えていくことが大事です。一場面を語るエピソードではなく、「こんな環境の中でその価値観が芽生え、こんな経験をして、それが自分にとって不動のものとなった」という、これまでの背景を語ることがポイントになります。人生の中で一貫性を持って大事にしてきた価値観は、単発のエピソードより、大きな説得力を持つものだと考えましょう。

その企業の価値観と「本質的にマッチしている」ことを伝える

仕事に対する価値観を伝える際には、「企業の価値観の本質的な部分とマッチしていること」が伝わるような内容を目指すといいでしょう。「仲間を大事にしてきたため、仕事でも人を大事にしていきたいと思う」という価値観を例に考えてみましょう。「OB・OG訪問で、先輩社員が学生に向き合ってくれる姿を見て、御社なら人を大事にしていくことができると感じた」と回答した場合、「社員の対応には個人差があるもの。企業としての本質を理解できていない」と受け取られかねません。多くの社員が向き合ってくれると感じたなら、「なぜそのような企業風土になったのか」まで調べてみることが大事です。企業分析をしっかり行い、「一人ひとりの顧客に向き合うことを大切にし、ここまで信頼を積み重ねてきた」など、その企業の風土や文化が培われた背景・理念などを理解することがポイントになるでしょう。企業のWebサイトをチェックし、採用ページに掲載されている言葉をそのまま使うのではなく、なぜその言葉を使っているのかという背景まで知ることで、企業が本質的に大事にしていることを理解することができるでしょう。

面接を受けている就活生

「あなたにとって仕事とは」内定者の回答例を参考にしてみよう

内定者の回答例を紹介するので、「あなたにとって仕事とは」を伝える際の参考にしてみましょう。

「シナジーを生み出すこと」化学メーカーに内定したケース

私にとって仕事とは、「各自が得意なものを持ち寄り、みんなの力を合わせてシナジーを生み出すこと」だと考えています。小学生時代からサッカーチームに入り、メンバーそれぞれが得意なプレーを生かしていくことの大切さを学びました。個々の能力は低かったけれど、みんなでそれぞれの力を発揮できる戦略を考え、強豪チームを倒していくことに大きな喜びを感じました。また、大学時代には、盛んに議論を交わすゼミに入り、誰かの意見が出るたびに、次の意見が出て、やがて一人だけでは思いつかないような視点にたどり着けることに気づきました。以来、みんなで議論を紡ぎ、新たな結論を導き出していくことが大きなやりがいとなりました。御社には、多様な製品を研究開発する自社施設があり、それらを結集することで、社会に役立つ新しいものを生み出していると感じています。私自身がこれまで経験してきたことを生かし、多くの人と一緒にシナジーを生み出しながら、社会にインパクトを与えていきたいと思います。

「人に感動を与える」酒・飲料メーカーに内定したケース

私にとって仕事とは、「人に喜びや感動を与え、元気にしていくこと」です。中学・高校時代に駅伝のチームに入り、大会にも出場していました。そのとき、「頑張って走り抜く姿に感動した」という言葉をもらったことがあり、自分の頑張りが人の心を動かせることを知り、大きな喜びを感じました。また、大学時代はレストランでウェートレスのアルバイトをし、料理を提供する際に調味料をかけるパフォーマンスもしていました。お客さまから歓声が上がるたびに達成感を味わうことができました。駅伝では、日々の練習を積み重ねる苦しさを味わい、ウェートスレの仕事では、パフォーマンスを誰も見てくれないむなしさも味わいました。しかし、人を喜ばせることができた瞬間には、圧倒的な達成感がありました。そのため、仕事においても地道な努力を重ね、自分の提供するもので人を感動させ、元気にしていきたいと考えています。御社のビールやワインを通じて、喜びや楽しさを味わえる空間を生み出し、多くの人を感動させる「明日の活力」となるような瞬間を提供していきたいと考えています。

仕事を楽しんでいる社会人を見つけることが近道

「あなたにとって仕事とは」を掘り下げていくためには、仕事に対してポジティブなイメージを持つことがポイントです。仕事とは楽しく面白いものだと感じれば、興味を持って企業研究を進めていくこともできるでしょう。ネガティブなイメージを持っている場合は、評価ばかりを気にすることになり、本質的な価値観にたどり着けない可能性もあります。自分の価値観にマッチする企業を見つけるためにも、「あなたにとって仕事とは」を掘り下げることは重要だと理解しましょう。

その際には、一人で考え込み、悩んでしまうより、OB・OG訪問に出かけ、仕事を楽しんでいる社会人を見つけることが近道です。「仕事に対するこの人の姿勢、カッコいいな」「イキイキしている社会人ってすてきだな」など、ポジティブな要素を集めていくことができます。また、自分が過去に楽しいと感じたことや幸せだと思った瞬間を先輩たちの仕事の話に重ねながら、「どんなことを大事にしていきたいのか」という価値観を導き出すことができます。それを基に、「どんな仕事、どんな企業ならそれができるか」という未来に接続させていきましょう。

「あなたにとって仕事とは」を明確にするために、自己分析ツール「リクナビ診断」を活用してみませんか?

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熊谷智宏さんのプロフィール写真 撮影/hikitachisato

【監修】我究館 館長 熊谷智宏さん

我究館館長。株式会社リクルートに勤務した後、2009年、株式会社ジャパンビジネスラボに参画。現在までに3000人を超える大学生や社会人のキャリアデザイン、就職・転職、キャリアチェンジのサポートを行ってきた。難関企業への就・転職の成功だけなく、MBA留学、医学部編入、起業、資格取得のサポートなど、幅広い領域の支援で圧倒的な実績を出している。また、国内外の大学での講演や、執筆活動も積極的に行っている。著書に、就活全般の考え方や面接対策などを指南する『絶対内定2021』(ダイヤモンド社刊行)シリーズがある。

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記事作成日:2020年4月2日
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