デベロッパーとは?仕事内容や今後の展望をプロが解説

就活に向けて情報収集を進めていると目にする「デベロッパー」という言葉。不動産業界の中で、特定の事業を主に行う企業群を指す言葉ですが、具体的にどんな事業を行う企業のことなのでしょうか?仕事内容や今後の展望などについて、日本総合研究所のコンサルタント・樫原采佳さんに教えていただきました。

デベロッパーとは

土地・建物を扱う不動産業には、主に「企画・開発」「販売」「管理」「賃貸(『仲介』とも)」の4つの事業があります。

このうち、企画・開発事業をメインに行う企業が「デベロッパー」と呼ばれています。企画・開発事業とは、用地を取得し、その土地で各種開発事業を行うこと。開発事業には、街の再開発、リゾート開発、商業施設開発、マンション開発、大規模宅地開発などがあります。

例えば、街の再開発の場合、まず、エリア全体の方向性を決め、それに合わせてオフィスだけでなく商業施設やマンションを複合的に開発したり、駅や道路、歩道などのインフラ整備を同時並行で行ったりして街をつくりあげていきます。その過程では、建設会社や行政機関をはじめ、さまざまな企業・機関との連携が必要となりますが、その連携をとりまとめ、指揮をとって開発プロジェクトを進めていくのがデベロッパーの役割です。

「ゼネコン」「ハウスメーカー」との違い

土地や建物を扱う業種には、デベロッパーのほかにゼネコンやハウスメーカーがあります。

まず、ゼネコンとは、総合建設会社のことをいいます。総合建設会社は、建築物を建てるために必要となるすべての業者間の調整・工程管理や、安全、品質、材料などを総合的に管理して工事全体のとりまとめを行い、建築物をつくりあげていくことを事業としている企業のこと。デベロッパーとの関係でいうと、デベロッパーが開発計画を策定し、それをもとにゼネコンが施工し、建築物として形にします。

なお、大手ゼネコンは、自社内に開発部門を持ち、デベロッパーとしても事業を展開しています。

次に、ハウスメーカーは、戸建住宅の建築・販売を主な事業としている企業のことで、住宅の企画から設計、施工までを自社で行なっています。デベロッパーの中にも住宅事業を行なっている企業はありますが、その場合、まちづくりの一部として行なっているのに対し、ハウスメーカーの住宅事業は、個人の施主のニーズに合わせて住宅を設計・施工するという違いがあります。

このように、デベロッパーとゼネコン、ハウスメーカーで主な事業が異なるため、企業選びにあたっては、自分が携わりたいものがまちづくりなのか、建築物そのものをつくりあげることなのか、個人に寄り添って住宅をつくりあげることなのかを考え、携わりたいことと主な事業が合致する企業を選ぶとよいでしょう。

デベロッパーの仕事内容

デベロッパーの仕事は、「用地取得」「企画」「開発」「販売」「管理」という、事業の流れに応じて担当が分かれており、各担当が集まってプロジェクトチームを組んで1つの開発案件を進めていきます。

まちづくり(または「街の再開発」)を例に事業の流れと各担当の役割を説明します。

1.用地取得

用地取得とは、土地を手に入れること。用地取得にあたってまず行うのが情報収集で、不動産流通会社や地権者、現地調査などから土地に関する情報を集め、土地が持っているポテンシャルを分析して事業(まちづくり)に適している土地かどうかを検討します。そして、まちづくりに適した土地だと判断した場合、その土地の持ち主である地権者と繰り返し交渉を行い、土地を手に入れます。地権者が複数いる場合など、用地取得は困難を極めることもあり、大きな案件の場合、開発事業全体が完了するまで数年からそれ以上かかることもあります。

2.企画・開発

次に、手に入れた土地の歴史や周囲の環境などをさらに調査し、まちづくりの方向性やコンセプトを考え、その土地に最適な建物の計画を立てていきます。これが、「企画」と呼ばれる仕事です。そして、コンセプトや計画に基づき、建物の設計図を描いたり、外観や内装のデザインを考えたりするのが「開発」の仕事です。設計やデザインの検討においては、外部の設計士やデザイナーと協力して、細部まで表現していきます。なお、企業によって、企画と開発で部署が分かれている場合と、ひとつにまとめられている場合があります。

そうして、建物のデザインや設計が決定したあとは、全体の計画に基づき、建設会社が建設工事を進め、企画を形にしていきます。デベロッパーは、工事を直接行うことはありませんが、品質のマネジメントやプロジェクトの進捗管理などを行い、関係者を牽引していきます。

3.販売

こうして新たな街を生み出したあとは、不動産流通会社や不動産運営管理会社の協力を得て、街のコンセプトに合致するような事業者、例えば、オフィスビルへの入居可能性のある企業や、商業施設への出店可能性のある小売業、飲食店、医療機関などをリサーチし、事業者側のメリットを提案しながら営業活動を行います。オフィスビルや商業施設に入る事業者(「テナント」と呼ぶ)からの賃料が、デベロッパーの大きな収益源となります。

4.管理

開発の仕事は、建物を建てて終わりではありません。建物が竣工した後、開発した街の価値が向上するよう、地域住民やテナントと良好な関係を築き、建物および街を運営していきます。その役割を担うのが、管理の仕事です。

なお、大手デベロッパーの場合、販売と管理はそれぞれ個別のグループ会社が主に行なっています。ただし、デベロッパーに入社した後、これらのグループ会社に出向して携わる場合もあります。

デベロッパーの仕事のイメージ

デベロッパーの種類

さまざまな用途の施設を総合的に企画・開発し、まちづくりに取り組むデベロッパーを「総合デベロッパー」、特定の建物の開発に特化したデベロッパーを「専門デベロッパー」と呼びますが、いずれも、明確な定義があるわけではありません。

専門デベロッパーの場合、マンションの企画・開発に特化したデベロッパーは「マンションデベロッパー」、オフィスビルの企画・開発に特化したデベロッパーは「オフィスデベロッパー」と呼ばれることもあります。

デベロッパーの今後の展望

デベロッパーを取り巻く課題の一つに国内の人口減少があり、中長期的に見ると、人口減少の影響を受けて国内のデベロッパー需要が減少することが懸念されています。

そのため、デベロッパー各社は、向こう10年ほどは人口流入が続くと予測されている首都圏、あるいは、自社が強みを持つ国内の地域での開発事業に資源を投入して収益の基盤を確保しつつ、さらなる収益源を獲得するための取り組みを計画しています。具体的には次の2つの動きが見られます。

1つ目は、まちづくりのソフト面の強化。例えば、開発したあとの街でイベントを開催するなどして人の往来を促し、テナントの利用者を増やしてしっかりと賃料を確保する動きです。

2つ目は、海外事業の強化。国内事業において蓄積したオフィスビルや商業施設の開発・運営ノウハウを海外に展開し、収益源とする動きです。

なお、国内の開発事業については、2020年まではオリンピック関連事業を着実に進めること、2020年以降は、オリンピック関連事業を優先していたために保留となっていた開発プロジェクトを推し進める予定の企業が多く見られます。

デベロッパーに興味を持ったら

デベロッパーと一口に言っても、企業によって特定のエリアの開発に強みを持っている企業、商業施設に強みを持っている企業、都内のオフィスビルを収益の中心に据えている企業、マンション開発に強みを持っている企業、駅を中心としたまちづくりに強みを持っている企業(主に鉄道会社を母体としたデベロッパー)などさまざまです。企業によって強みを持つ分野や力を入れている事業の違いが顕著であるため、自分が何を中心にまちづくりをしたいかを考えて、それに合致する企業を探すとよいでしょう。

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樫原采佳さん

【監修】樫原采佳さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 コンサルタント。東京工業大学大学院総合理工学研究科人間環境システム専攻修了。建設コンサルタント会社に勤務後、日本総合研究所に入社。専門は、都市計画、地方創生、交通計画など。最近は、産学官連携事業などのプロジェクトにも取り組んでいる。

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記事作成日:2019年11月25日
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