新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンライン上でグループディスカッションを実施する企業が増えています。グループディスカッションを対面で行う場合と、オンラインで行う場合とは何が違うのでしょうか?また、就活でオンライングループディスカッションに臨むときは、どんなことに気をつけるとよいでしょうか?事前準備や参加の際のポイントについて、就職・転職支援スクール「我究館」でコーチを務めている八木橋育子さんにうかがいました。
目次
グループディスカッションとは、複数の学生がグループを組んで、与えられたテーマについて議論するプロセスを人事担当者などが審査する、集団選考の一つです。企業によっては「グループワーク」と呼ばれることもあります。新型コロナウイルスの流行以前は、グループディスカッションに参加する学生が選考会場に足を運び、同じグループの学生と机を囲んで話し合う様子を見て、人事担当者が評価するのが一般的でした。
一方、オンライングループディスカッションは、同じプロセスをオンライン上で進行します。これは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、学生を一カ所に集めて実施するのが難しくなったためで、今後もこうしたオンライン上での選考は増えていくと考えられます。
オンライングループディスカッションは、複数の人が一度に参加できるWeb会議ツールなどを使用して実施します。企業が承認してからではないと、会議ツールに入室できないケースも多くあります。定刻になると人事担当者からテーマや制限時間、ルールなどが伝えられ、自己紹介などをした後に意見を出し合い、グループとしての意見をまとめて発表します。
オンラインでは1グループが3〜5人、ディスカッションの所要時間は20〜30分ほどの場合が多いようです。Web会議ツールでディスカッションをするのに適した人数と時間を考慮して、対面の時に比べると、1グループ当たりの人数、時間を少なくしていると考えられます。
グループディスカッションの概要については、以下を参考にしてください。
グループディスカッションとは?流れやポイントを紹介
グループディスカッションの最大の目的は、正解のない問いに対してチーム全員の英知を結集し、最高の議論をすることにあると考えています。それは対面でもオンラインでも変わることはありません。
また、企業が評価するポイントについても同様です。企業の人事担当者は、以下のようなさまざまな観点で、学生のディスカッションでの振る舞いを見ています。
(1)個人の能力…論理性、発想力、思考力、知識、人柄など
・議論の矛盾点に気づくことができるか
・独自の切り口でアイデアを出せるか
・議論の流れをつくるような提案ができているか
・発言の中から引き出しの多さを感じるか など
(2)チームプレーの能力(対人能力)…コミュニケーション力、リーダーシップ、フォロワーシップ、傾聴力、協調性など
・場を盛り上げるなど、短い時間で人間関係を構築できるか
・議論を引っ張ろうとする姿勢があるか
・誰かが場を引っ張っているときは、フォローに徹することができるか
・対立意見が出されたときに意見調整ができるか
・発言が少ない人に質問を振るなど、全員で協力する意識があるか など
学生の中には、オンライン上でのコミュニケーションに戸惑い、「画面越しの議論でちゃんと評価される?」「アピールポイントが伝わりにくいのでは?」と不安に思う人も少なくないようです。
しかし、対面の場合には人事担当者が各グループを遠巻きに見ながら評価することが多いのに対し、オンライングループディスカッションでは人事担当者も同じ会議グループに入り、議論の一部始終やチャットでのやりとりを見ることができるという違いがあります。その意味ではむしろ、今までより近い距離から学生の特徴を把握し、しっかり評価することが可能だと言えるでしょう。
また、対面では会場の雰囲気に飲まれてしまう学生もいますが、オンラインでは自室などで臨むことができるため、リラックスして参加できるという利点があります。
オンライングループディスカッションに参加するに当たって、Web会議ツールならではの注意点や、評価を上げるためのポイントを紹介します。
対面の場合は、その場の空気で発言のタイミングを計ることもできます。しかしオンライングループディスカッションでは、音声や映像にタイムラグが生じることもあり、発言がかぶったり、逆に譲り合いが起きたりして時間をロスしてしまうことも。それを避けるコツは、ほかの人の話が終わったらひと呼吸置いてから次の発言をするよう意識するとよいでしょう。また「最初の発言は名前順にする」「手を挙げてから発言する」など、画面越しでもわかりやすいルールを最初に決めておくのも一つの方法です。
Web会議ツールでは画面が分割されて小さくなるため、一人ひとりの表情が見えにくく、誰がしゃべっているのかもわかりにくいことがあります。そのため、自分が発言するときも、人の発言を聞くときも、表情や身振りは「普段の5割増し」にすることを意識するようにしましょう。また、発言のときにはカメラを見るように心がけてください。画面を見てしまいがちですが、メンバーに視線を送ることで、意思がより伝わりやすくなります。もしあまり発言ができない場合も、笑顔で大きく相づちを打って、「しっかり聞いて議論に参加している」という姿勢を見せることが大切です。
対面の場合には、会場に集合して選考が始まる前に、学生同士で会話をするアイスブレークの時間がありますが、オンライングループディスカッションでは、それができないのが難点です。ただ、人事担当者がテーマを発表してルールを説明した後に自己紹介の時間を設けてくれるので、その機会を大切にしましょう。メンバーの名前や情報をメモして特徴を捉え、ディスカッションが始まったら名前を呼びながら進められるようにします。短い時間で自己紹介ができるように、あらかじめ準備しておくことも大切です。
グループディスカッションでは、参加者それぞれが以下のような役割を担うと、スムーズに議論が進むと言われています。
1)司会進行を担うファシリテーター
2)議事録を取り、発言の論理整理をする書記
3)時間管理を担うタイムキーパー
4)発言者…発想力に優れさまざまなアイデアを出す人、ロジカルに論点を整理して意見を集約していく人、メンバーに心理的安心感を与えるムードメーカーなど
「どの役割だと選考に有利なのか」を気にする学生もいるようですが、結論から言うと役割で有利・不利が生じることはないでしょう。グループディスカッションの目的は、全員で議論をして、結論を導き出すこと。そのため、ほかのメンバーとの相対的な関係性の中で「自分はどの役回りなら最も貢献できるか」を考えることが大切です。例えば「自分は司会向き」と考えていても、より司会の能力が高そうなメンバーがいれば信頼して任せます。その上で議論に肉付けをする、盛り上げる、ほかの人に気配りをするなど、サポート役に徹することは大きな貢献であり、評価されるポイントになるでしょう。
オンライングループディスカッションと、対面のもう一つの大きな違いは、ツールを活用することで、簡単に情報共有ができるようになったことです。
対面では、ホワイトボードなどを使って手書きで意見をまとめていました。それに対してオンラインでは、チャット機能を使ったり、PCで資料を作って画面共有したりすることで、リアルタイムで議事録をメンバーと共有することができます。また、クラウド上で文書を作成してURLをチャットに共有すれば、全メンバーで書き込みをしていくことも可能です。この機能をうまく使えば、「今、何を話しているのか」がクリアになり、ディスカッションの質が上がります。プレゼンのためのまとめにも、議事録が大いに役立つことでしょう。
またこのことによって、書記役がアピールできる要素が増えたと考えています。人事担当者もPC上で書記の仕事を見ることができるので、議論の要旨をまとめる力や、グループ化、構造化する力をアピールすることができることでしょう。資料作成やWeb上での情報共有に自信のある人は、オンライングループディスカッションでぜひ書記役を買って出ることをオススメします。
オンライングループディスカッションでは、事前にどんな準備をしておくとよいのでしょうか。オンラインならではのチェックポイントをお伝えします。
ネット環境が不安定なためにフリーズしたり、接続が切れて途中退出してしまったりというケースはよくあります。再び会議に入り直しても、それまでの議論の内容を聞く必要が生じ、時間をロスしたりほかのメンバーに迷惑をかけたりしてしまうので、ネットの接続状況は事前に確認しておきましょう。家庭用で回線が切れやすい場合は、通信速度が速く、安定してつなげるプロバイダ(回線事業者)に変更した方がいいケースもあります。
ネット環境の整備が難しい場合は、学校のキャリアセンターなどに相談し、大学構内のWi-Fiの利用ができるか聞いてみるといいでしょう。
選考で使用するツールによって、接続の手順が違ったり、アカウントの作成が必要になったりするケースもあるので、事前に確認しておきましょう。初めて使うツールの場合は、操作説明をよく読み、わからないことはあらかじめ調べておくことをオススメします。もともとアカウントを持っているツールであれば、プロフィール画像を就活用の写真に変え、アカウント名も本名に設定しておくようにしましょう。
オンライングループディスカッションに参加する際は、できるだけ雑音が入らない静かな場所を選ぶようにしましょう。自分の後ろは、映り込む要素が少ない場所を背景にするのがオススメです。また、部屋の採光や照明の位置によっては顔が暗く映ってしまったり、表情が伝わりにくくなったりすることがあります。場所を移動したり、卓上ライトを利用したりして、顔全体が明るく映るように調整しましょう。
友人同士で、実際にツールを使って練習をするのもオススメです。チャットや画面共有の方法などを事前に試しておけば、緊張せずに本番に臨むことができるでしょう。就活は一人で頑張ると行き詰まりがちになるので、こうして友人同士で情報交換し、気づいたことを指摘し合うのは良い刺激になると思います。
オンライン会議は、テレワークなどが広がりを見せる昨今、実際のビジネスシーンでも行われる機会が増えています。そう考えると、オンライングループディスカッションに求められるスキルは就活中だけでなく、入社後に仕事をしていく上でも必ず役立つものです。
先輩就活生からは「事前準備さえしておけば、対面よりリラックスして臨める」という声も多く聞かれました。いたずらに恐れることなく、ツールに慣れるなど事前準備をすることで、ディスカッションに臨んでほしいと思います。
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株式会社リクルートにて広告提案営業を経験した後、女性の社会進出に対する問題意識を持ち、女性の再就職・転職に特化した人材会社に転職。女性のみで構成される営業代行チームのマネジメントやキャリアコンサルタントとして、結婚・妊娠・出産などのライフイベントとキャリアの両立に悩む女性2000人以上を支援。自身の結婚を機に、「キャリアデザインを一人でも多くの人にしてほしい」という思いから2011年に我究館コーチに就任。学生、社会人の受講生を担当し、本人のあいまいな夢や、隠れた本音を明確にすることを得意とする。特に、女性の就・転職におけるマーケットに精通している。メイクアップや服装・マナー講座も担当。
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