就活時、企業によっては提出を求められることがある自己推薦文(自己推薦書)。その書き方のコツを人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに解説していただきました。
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自己推薦文は、文字通り「自分自身を他人に薦める文章」です。就活の場においては、学生がその企業に適しているかどうかは、企業が履歴書やエントリーシート(ES)、面接などで個々人の性格、能力、価値観などを聞き出し、判断するのが一般的。しかし、企業によっては、その判断を補強する材料として、学生が自分自身をどう捉えているか、また、なぜその企業に適していると考えているかを知りたいと考え、自己推薦文の提出を求めるケースもあるようです。
したがって、もし自己推薦文を課された場合は、「なぜ自分はその会社に適している(合っている)のか」をアピールする文章を書くとよいでしょう。
実のところ、自己推薦文(自己推薦書)の明確な定義や書式はありません。というのは、一般的には「自己PR」を求める企業の方が多く、まれに一部の企業が「自己推薦文(自己推薦書)」といった名称の書類や文章を求める、というのが実情だからです。
前述した通り、自己推薦文は、「自分はこの会社に合っている」ということを伝える文章。説得力を持ってアピールするには、その根拠を具体的に示す必要があります。その際、陥りがちな落とし穴は、合っている根拠を「なぜならこの会社の仕事(事業、商品)が好きだから」とアピールすること。企業が自己推薦文で確認したいのは、「やりたい」ではなく「できそう」というケースが多いため、「好きだから」というアピールはマイナスではありませんが、やや訴求ポイントがずれたものになります。
したがって、自分がその会社に合っている根拠だとアピールしたいのは、「なぜなら自分は、この会社で成果が出せるから」ということです。すなわち、「この会社の業務に必要とされる力を自分は持っている。なぜならこんな場面でこういったことができたから」という構成でアピールするのがオススメです。
また、「合う」には「この会社の仕事に合っている」のほかに「この会社の風土や人、大事にしている価値観に合っている」もあります。新卒採用の場合、両者について見られるので、文字数が許すなら両方、難しいようならどちらかをアピールできるとよいでしょう。
この前提を踏まえて自己推薦文を書く前の準備としてやっておきたいことは、「自分の性格や能力、価値観などのどの部分がその会社に合っているのかを考えること」です。これは、以下の記事で紹介している自己PRのアピールポイントの見つけ方とも同じです。自分の性格や能力、価値観を書き出す、あるいは、リクナビ診断をはじめとした適職診断の結果として出ている自分の特徴を見て、その会社の業務に必要とされる力、ないし、その会社の風土や人、大切にしている価値観に合っているものを選び、それを裏付けるエピソードを根拠として伝えましょう。
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実際に自己推薦文を書く際のポイントは、「なぜその会社の仕事ができそうなのか」をその業務が求める能力を発揮できたエピソードを基に具体的に説明することです。「なぜその会社の風土や人、大切にしている価値観に合っているのか」を伝える場合も同様で、エピソードをできるだけ具体的に書きましょう。抽象度の高い説明では具体的な根拠に欠けるため、「合っている」とは判断しづらいものです。
具体的に書くためのポイントとしては、固有名詞や数字などを明記することです。これらをぼかして書くと、企業側が得られる情報量が減ってしまい、合っているかどうかを具体的にイメージしづらくなります。明記できるものはぼかさずに書きましょう。
ただし、アピールしたいがために盛り過ぎるのは厳禁です。書類選考は通過しても、面接でより具体的に聞かれて盛り過ぎていることがわかると、「自分のことを適切に理解できていない人」、あるいは「この程度のことをすごいと思ってしまう人」などと評価されてしまう可能性があります。
自己推薦文の例文を曽和さんに添削していただきました。書き方のポイントをあらためて確認しましょう。
<自己推薦文例文>
大学生活で培った「本質を突き止め、解決策を導き出す」(※1)ということを、ぜひ貴社の提案営業で発揮したいと考えています。私はこれまでの3年間、大学祭の実行委員として、参加団体・サークルのうち毎年約50の団体との調整を担当してきました。各団体からの要望や問い合わせに対応しつつ、参加ルールの徹底を図る役割です。要望は、持ち込み機材の確認や場所の使い方など多岐にわたります。私はルールの範囲内で要望に最大限応えるために、各団体の要望を丁寧に聞き取り(※2)、背景にある「本当の望みは何か?」ということを探ることを心がけました。それにより、ルール上は許されない要望であっても、代替案を提案する(※3)ことで、団体と実行委員共に満足のいく結論を出せたことが多々ありました。この経験を、ぜひ貴社でも発揮できればと思います。また、まずは参加団体の要望を第一に考える私の姿勢は、「お客さまを第一に」という貴社の企業理念にも合致すると自負しています。
まず、大枠の話はシンプルでわかりやすいのですが、全体的に抽象度が高く、実はわかりにくい文章になってしまっています。人事担当者の考えるわかりやすさとは、「シンプルなことではなく具体的でイメージができる」ということなのです。こちらを踏まえて、以下気を付けて欲しいポイントを紹介します。
今回のメッセージである「本質を突き止め、解決策を導き出す(※1)」というのは、基本的にどんな仕事でも必要なこと。ですから、エピソードとして選んだのは良いと思いますが、自分のどんな能力や性格的特徴によって可能となるのか、について記述しないと本当にそんなことが十分にできる人なのかは人事担当者にはわかりません。
例えば、本質を突き止めるためには、観察力や傾聴力など、いろいろなアプローチがあります。特に自分はどの力を発揮して本質を突き止めているのか、そして、その力はどのようにして培われて、ほかにはどんなところで活用できているのかなどの記述があれば、より人事担当者に伝わる内容になるでしょう。
「要望を丁寧に聞き取る(※2)」や「ルール上許されない要望であっても、代替案を提案する(※3)」などは、具体的にはどういうことをしたのか、それはどれぐらいの難易度なのかを示すとより伝わりやすくなるでしょう。
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【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。
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