【初任給とは?】いくらもらえる?就活生がチェックしたいポイントを解説!

「初任給」とは、就職して最初にもらえる給与のこと。社会人として自立するためにも、実際にどのぐらいのお金がもらえるのか気になりますね。そこで専門家の監修の下、初任給の平均的な金額や、「基本給」「額面」「手取り」などの違い、入社後にもらえるおおよその金額の見積もり方などについて解説します。

初任給とは

「初任給」とは、就職して、初めて受け取る給与のことです。給与とは、企業から社員に対して支払われる労働の対価であり、「基本給」に加えて「各種手当」「インセンティブ」「賞与」さらに「自社製品」などの現物支給も含めた、企業から受け取るすべての報酬を指す言葉です。

初任給はいつもらえる?

初任給が支給されるタイミングは、その企業の「締め日」と「支払い日」によって異なります。

例えば「月末締め、当月25日払い」の企業であれば、4月1日〜30日の1カ月分の給与が4月25日に支払われます。この場合、4月25日〜30日分の給与は前払いということになります。
「当月払い」でも「15日締め、当月25日払い」の場合には、4月1日〜15日分の給与が25日に支払われることになるため、初任給の金額は約半月分になり、上記より少なくなります。

また、「翌月払い」のケースもあります。例えば「月末締め、翌月25日払い」なら、4月1日〜30日分の給与が5月25日に支払われます。この場合、入社して2カ月近く収入がないことになるため、特に一人暮らしの方などは、その間のお金のやり繰りを考えておく必要があるでしょう。

初任給の平均額

初任給の相場はどのくらいでしょうか。厚生労働省が2023年に実施した調査によると、大学卒者の初任給の平均は23万7,300円、大学院修了者の平均は27万6,000円となっています。
もちろん企業によって、この金額を上回ることも下回ることもあるので、あくまでも平均的な金額として捉えておきましょう。

●学歴別の初任給の平均額

大学院 大学 高専・短大 専門学校 高校
27万6,000円  23万7,300円  21万4,600円 21万4,500円 18万6,800円

※出典 厚生労働省  「令和5(2023)年賃金構造基本統計調査(9)新規学卒者の学歴別にみた賃金」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/dl/09.pdf

初任給に含まれるもの・差し引かれるもの

初任給を含め、企業の給与を知る際に注意しておきたいことは、初任給の平均額や、採用情報に記載されている金額は、一般的に「額面給与」であり、実際に銀行口座に振り込まれる「手取り」の金額ではないということです。

「額面給与」とは、基本給、各種手当、インセンティブなどを合計した、企業が社員に支払うすべてのお金=総支給額のこと。それに対して、実際に受け取れる「手取り」とは、総支給額から社会保険料や税金などが差し引かれた(控除された)金額=差引支給額となります。

額面給与-控除=手取り

初任給と基本給の違い

採用情報の給与欄を見ると、「初任給」ではなく「基本給」や「月給」と記載されているケースもあり、「違いがわからない」と戸惑っている就活生もいるかもしれません。

まず「初任給」と「基本給」の関係は以下のように表すことができます。

初任給=基本給+各種手当

●基本給
毎月企業から固定で支払われる「賃金の土台」となる部分です。一般的には年齢や勤続年数、職種、技能、役職などを基準に決められ、昇給によって金額が上がっていきます。

●各種手当
基本給以外に企業が支払う賃金のことです。その企業で仕事に携わる人全員に支給される手当(一律手当)や、一定の条件に当てはまる社員にのみに支給される手当、月々の業務内容によって変動する手当(残業手当など)と、さまざまなものがあります。

「月給」とは「基本給」と「固定手当」を合計したもので、毎月必ず支給される給与のことです。「固定手当」とは、役職手当や資格手当など、社員ごとに毎月固定で支給される手当のことです。

月給=基本給+固定手当

したがって、募集要項で「初任給」や「月給」として記載されている金額は、「基本給+社員全員に一律で支給される手当」、つまり「全員に毎月固定で支給される金額」と考えて良いでしょう。
入社して実際に支払われる初任給は、各自の残業時間や通勤にかかる交通費などによって、社員ごとに金額が異なってきます。

【含まれるもの】各種手当

実際に支給される初任給は基本給と各種手当の合計金額となります。初任給で支給されることがある主な手当には、次のようなものがあります。

●通勤手当…通勤にかかる費用(通勤定期代や駐車場代など)を補助するために支給される手当。

●時間外勤務手当…残業手当。会社が決めた所定の労働時間を超えて働いた場合、または法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合に加算される手当。

●住宅手当…賃貸住宅に住んでいる場合の家賃補助や、持ち家の住宅ローンを補助する目的で支給される手当。

●資格手当…会社が定めた一定の資格を保有している社員に支給される手当。

●家族手当…扶養家族がいる社員に対して、生活費などの補助を目的に支給される手当。

●歩合給、インセンティブ…一定基準の売り上げや業績を挙げた場合に支給される手当。

【差し引かれるもの1】社会保険料

額面給与から差し引かれるものには、まず以下の4種類の「社会保険料」があります。

●厚生年金保険料
高齢になって働けなくなった場合や、身体に障害を負った場合、死亡した場合に、本人もしくは家族に年金を支給するための保険料で、企業と社員で半額ずつを負担します。保険料は、額面給与の金額を基にして、一定の保険料率をかけて算出します。

●健康保険料
社員や社員の扶養家族が病気やケガをした場合、通院・入院・手術などの費用の一部を負担する医療保険制度の保険料で、こちらも企業が半額を負担しています。保険料率は、加入している健康保険の種類や都道府県で異なります。

●雇用保険料
失業や出産・育児、介護などで一時的に仕事を離れた場合に、再び職場に復帰することができるように、失業給付や育児休業給付などを行います。保険料は、額面給与に一定の保険料率をかけて算出します。

●介護保険料
40歳以上になると介護保険に加入することが義務付けられています。介護が必要になった場合に、段階に応じて介護サービスを受けることができます。

ただし「厚生年金保険料」と「健康保険料」は、当月分を翌月の給与から差し引くため、4月に初任給が支給される場合は、翌月5月の給与から天引きされることになります。また、介護保険料は40歳以上が対象となるため、40歳未満の社員の給与から差し引かれることはありません。

【差し引かれるもの2】税金

次に差し引かれるものとして、税金があります。一般的に給与から控除される税金は以下の2つです。

●所得税
年間の額面給与(年収)から、仕事をするための必要経費(給与所得控除)や、社会保険料などを差し引いた「所得」にかかる税金で、所得に応じて税率も変わります。毎月の給与から暫定的に算出された金額が天引きされ、年末調整によって正確な所得税額を精算します。

●住民税
1月1日の時点で住民票がある都道府県が徴収する「都道府県税」と、市区町村が徴収する「市区町村税」の総称です。前年の所得に対して課税される「所得割」と、定額で課税される「均等割」で構成され、合算した額を納付します。

ただし住民税は、前年度の1月〜12月の所得(給与から必要経費を差し引いた金額)に対して課せられる税金であるため、アルバイトなどで前年の所得が100万円を超えていない限り、入社1年目から差し引かれることはありません。一般的には入社2年目の6月から控除されます。

その他

そのほかに月々の給与から引かれるお金については、企業の制度や個人の状況によってさまざまです。
例えば、社宅に入っている場合は社宅の使用料、社員食堂がある場合はそこでの食費が天引きされることがあります。また、最近は少なくなりましたが、親睦会や労働組合の会費、社員旅行の積立金などが給与から差し引かれるケースもあるようです。

給料袋とカレンダーのイメージ

実際に振り込まれる金額はいくら?

では、初任給の額面給与に対して、実際に銀行口座に振り込まれる手取り額はどのくらいでしょうか。
ここでは、「社会人1年目・東京で一人暮らし・額面給与25万円(賞与は計算から除外)・月末締め、当月払い」を想定したモデルケースをご紹介しましょう。
※給与例の金額の単位は円になります

入社1年目、4月(初任給)の給与例

入社1年目、4月(初任給)の給与例

・厚生年金保険料、健康保険料…入社初月なので控除されない
・雇用保険料…令和6(2024)年度「一般の事業」の労働者負担の保険料率は0.6%。したがって雇用保険料は25万円(額面給与)×0.006=1,500円
・所得税…「25万円(額面給与)−1,500円(雇用保険料)=24万8,500円」を「給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)」 に当てはめると、所得税額は6,530円
・住民税…前年度の所得が非課税限度額以下なので控除されない

入社1年目、5月(入社翌月)の給与例

入社1年目、5月(入社翌月)の給与例

・厚生年金保険料…25万円(額面給与)の「標準報酬月額」 26万円を、令和6年(2024)3月からの厚生年金保険の保険料額表 に当てはめると、月々の保険料は2万3,790円
・健康保険料…「全国健康保険協会(協会けんぽ)」東京都の場合、令和6年度の労働者負担の保険率は4.99%。したがって健康保険料は、26万円(平均報酬月額)×0. 0499=1万2,974円
・雇用保険料…令和6年度「一般の事業」の労働者負担の保険料率は0.6%。 したがって雇用保険料は25万円(額面給与)×0.006=1,500円
・所得税…「25万円(額面給与)−3万8,264円(社会保険料の合計額)=21万1,736円」を「給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)」 に当てはめると、所得税額は5,200円
・住民税…前年度の所得が非課税限度額以下なので控除されない

このように初任給が4月に1カ月分支払われる場合、差し引かれるお金は雇用保険料と所得税のみなので、想定手取り額は24万1,970円となりました。しかし翌月以降は、厚生年金保険料と健康保険料が差し引かれるため、初任給よりも手取り額が減り、20万6,536円となりました。

一般的に初任給の翌月以降は、額面給与の約75〜85%が手取り額の目安となります。おおまかな額が知りたいときは、下表を参考に概算してみましょう。

額面給与 手取りの目安(80%)
18万円 14万4,000円
20万円 16万円
22万円 17万6,000円
24万円 19万2,000円
26万円 20万8,000円
28万円 22万4,000円
30万円 24万円

気になる企業の初任給はどこを見るとわかる?

就活の企業選びで「初任給がいくらか知りたい」という場合は、企業の募集要項の採用情報に記載されている給与欄を確認すると良いでしょう。

この場合、前述したように「初任給」よりも、「基本給」または、基本給に「全員に毎月固定で支給される手当」を加えた「月給」で記載されることがあるようです。
これらはいずれも、企業が新入社員に支払う給与の最低額を示しています。それ以外の手当については、各企業の制度や社員の状況によって異なるため、実際の初任給の額も異なると考えましょう。

なお、一部の企業では、月給に固定残業代(時間外労働の有無にかかわらず一定の手当を支給する制度)が含まれているケースがあります。そうした場合は、次の内容を記載することが定められています。

(1)基本給 ○○万円((2)の手当を除く額)
(2)□□手当(時間外労働の有無にかかわらず、●時間分の時間外手当として▲▲円を支給)
(3)●時間を超える時間外労働についての割増賃金は追加で支給

ここで、A社とB社の例を見てみましょう。

A社:月給24万円 ※固定残業代4万円(25時間分)含む。超過分、諸手当別途支給
B社:基本給22万円 ※別途諸手当支給

この場合、一見A社の方が好条件に映るかもしれませんが、A社の月給には固定残業代の4万円が含まれているため、差し引きすると基本給は20万円となり、B社よりも少ないことがわかります。

基本給はすべての賃金の土台となる部分であり、残業代やボーナス(賞与)、退職金なども基本給をベースに計算されます。したがって企業の給与を比較する場合は、手当を含んだ金額よりも、基本給に注目することをオススメします。

就活生が初任給以外にチェックしておきたいポイント

就活で企業を見る際に、初任給以外にも確認しておくと良いポイントについてご紹介します。
企業の開示情報から読み取ることができない場合は、会社説明会などの場で質問してみましょう。内定承諾前に、企業の人事に直接聞いてみても良いでしょう。

ボーナス(賞与)

ボーナス(賞与)は、月々の給与とは別に支給される賃金のことです。支給される時期は企業によって異なり、夏・冬の年2回支給されるケースが一般的ですが、それ以外の時期(年末や期末など)や、不定期(臨時)に支給されることもあります。募集要項に賞与の記載がある場合は、年に何回、何カ月分の支給実績があるかをチェックしておくと良いでしょう。

ただし、企業には必ず社員に賞与を支給する義務はありません。また、支給額は企業の業績や個人の評価などによって変動しますが、新入社員はまだ評価対象となる実績がないため、入社1年目から満額をもえらえることは期待できません。

福利厚生や手当の詳細

入社1年目で給与が低い若手社員にとっては、実質的な手取りアップにつながる福利厚生があると、とても助かるものです。例えば、社宅に入ることができれば家賃負担を軽減できますし、社員食堂や昼食代の補助などがあれば、食費も節約することができます。こうした日々の生活をサポートしてくれる福利厚生があるかどうかもチェックしてみましょう。

また、「通勤手当支給」と書かれていても、企業によって制度の内容は異なります。例えば、通勤手当の上限額は何万円までか、駅まで自家用車で通った場合の駐車代なども支給対象になるかなどは、企業によってさまざまです。内定承諾前に質問できる機会があれば、そうした手当の詳細について確認すると良いでしょう。

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【監修】社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸さん
大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、テレビ出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

 

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記事作成日:2024年9月27 日
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