百貨店・専門店・流通・小売業界とは?詳しい業態から仕事内容、業界の最新情報まで解説

百貨店・専門店・流通・小売業界では、消費者にさまざまな商品を提供しています。そんな百貨店・専門店・流通・小売業界における、詳しいビジネスの仕組み・業態の種類・職種例や、今後の動向などを解説します。

百貨店・専門店・流通・小売業界の仕組み

百貨店・専門店・流通・小売業界では、以下のような仕組みで、消費者にさまざまな商品を提供しています。

まずは消費者に販売するための前工程として、各店舗に対し、メーカーからの仕入れ・在庫保管などを担いながら、商品を提供する卸売業が存在します。その卸売業などから仕入れた商品を、消費者に販売するのが百貨店・専門店・小売店(小売業)です。そしてこれらの卸売業と小売業を総称して、流通業と呼びます。

ちなみに流通業の中には、メーカーによる製造から小売りまで全工程を手がける、製造小売業(SPA=Specialty store retailer of Private label Apparel)を行っている企業もあります。

また小売業においては、幅広い業態が展開されており、代表例として次のようなものがあります。

百貨店・ショッピングモール

衣食住を幅広く網羅し、さまざまな商品を販売する大規模な小売店です。

百貨店では、自社が仕入れから販売までを手がけるほか、各専門店(テナント)へのスペース貸しも行っています。さらに百貨店では対面販売を重視しているのが特徴で、高級感のあるサービス提供に注力しています。

ショッピングモールは、さまざまな専門店(テナント)が集まった商業施設で、そのオーナー企業が全体のマネジメントをしています。運営元のオーナー企業は、施設全体の管理をはじめ、各拠点の宣伝・集客活動や出店してもらえる専門店(テナント)の探索・交渉などを行っています。

いずれも近年はインバウンドの影響から、海外消費者の需要を集める高級路線が好調で、ラグジュアリーブランド・ジュエリー・時計・化粧品などが売れ筋となっています。

スーパーマーケット

青果・鮮魚・精肉・飲料などを中心に、さまざまな食料品や日用・消耗品などを販売する小売店です。中にはこれらの商品に加えて、衣料品・生活雑貨・家具なども取り扱う、総合スーパーマーケット(GMS=General Merchandise Store)と呼ばれる業態も見られます。

近年の物価高による節約傾向から、時流に応じた経営戦略が求められている業態でもあります。そこで各企業ではグループ内での経営統合をはじめ、エリア別会社の再編(複数の地域会社の一本化)や、業界内の他社買収(M&A)などが進められています。またライバル企業間で資本提携し、仕入れを共有してコストを削減するなどの動きもあります。

さらに最近では、都市部の小型スーパーマーケットの展開が注目されています。都市部の不動産事情によるスペースの制約から、品ぞろえを絞りつつも、気軽に食材などを入手できる業態となっているのが特徴です。生鮮食品を購入したい需要を満たしつつ、いつでも便利に立ち寄りやすい立地に店舗を出すことで、スーパーマーケットとコンビニエンスストアの機能を両立した業態となっています。

コンビニエンスストア

食料品や日用・消耗品をはじめ、宅配便の集荷・銀行ATM・公共料金やチケットの支払いなど生活を便利にする幅広いサービスを提供する小売店です。24時間またはそれに準ずる長時間営業かつ小規模店舗で、さまざまな立地に存在しています。

コンビニエンスストアの特徴は、必要なものがいつでも近くで、手軽に入手できる便利さを重視している点です。お総菜・お弁当・おにぎりなどの中食で、特に売り上げを伸ばしている傾向にあります。またコストを抑えたプライベートブランド(PB品)なども展開し、お値打ち感のある商品提供にも力を入れています。

専門店

特定領域の商品を取りそろえる小売店です。代表例には、アパレル店・ドラッグストア・家電量販店・ファッション雑貨店・生活雑貨店・ホームセンターなどが挙げられます。最近ではインバウンド需要から、ドラッグストアでは、特に化粧品の売り上げが好調です。ホームセンターではDIY関連商品、家電量販店では家事負担を減らす生活家電などが需要を伸ばしており、各領域で成長の兆しも見られます。また、専門店の中には、商品の企画・製造・販売まで一貫して行い、中間コストを軽減する製造小売業(SPA)の業態も見られます。

百貨店・専門店・流通・小売業界の主な職種

百貨店・専門店・流通・小売業界における主な職種には、次のようなものがあります。

販売

来店したお客さまの要望や悩みなどに応じて、最適な商品を提案する仕事です。店頭での接客・販売をはじめ、在庫発注・売り場作り・販促のキャンペーンやイベントの立案などを担当する場合もあります。

店長

現場における店舗運営のマネジメントを担当します。スタッフの指導・育成やシフト作成、売り上げ管理、店内レイアウト、販促企画の統括など、日常業務の円滑な遂行や業績アップに向けた取り組みを行います。

バイヤー

自社店舗の売れ筋やコンセプトに合わせて、卸売業者やメーカーから、店頭で販売する商品の購買を行います。仕入れ値の交渉や新たな購買ルートの開拓などを含めて、店舗の売り上げや利益につながるような買い付けをする仕事です。

商品企画

顧客のニーズに合わせて、商品を新たに開発する仕事です。市場の分析や商品コンセプトの設定をはじめ、本体の仕様・デザイン・販売時のパッケージなども検討していきます。

マーチャンダイザー(MD)

現場での売り方を企画し、売り場全体のコーディネートをする仕事です。顧客の興味を引くより効果的な商品ラインナップや店頭における販売方法の提案をしていきます。各店舗の客層に応じた価格設定や在庫管理などを手がけるほか、販促企画や集客にも携わり、商品企画にかかわる場合もあります。

スーパーバイザー(SV)・エリアマネージャー

複数店舗を取りまとめて、売り上げ・集客アップに向けた施策や現場指導などを行う仕事です。特定の地域に展開している、いくつかの店舗を統括することから、エリアマネージャーとも呼ばれます。本社と販売店舗をつなぐパイプ役として、各現場を回りながら業績向上を図っていきます。

店舗開発

自社店舗の出店計画を立てる仕事です。新たな店舗展開に向けた戦略の立案・企画や、新店を出す土地・物件の選定などを手がけます。

物流管理

商品の保管施設で、消費者のニーズに応じた在庫・出荷の調整などを行います。オンラインショップと実店舗が混合した業態では、商品の物流形態が複雑になりやすいため、特に重要な仕事です。

バックオフィス

本社において、各店舗で働く人材をサポートする管理業務を担当します。勤怠管理・給与計算・社会保険手続きなどの雇用関連の各種処理をはじめ、労働環境の整備や採用計画、社員教育といった総務・人事・労務関連の業務を主に行います。

百貨店・専門店・流通・小売業界の現状や今後の動向

少子高齢化が進む近年では、人口減少に伴う人材不足や国内市場の縮小が社会問題となっており、百貨店・専門店・流通・小売業界でも同様に大きな課題となっています。

また、物価高の傾向が続く中で仕入価格や人件費が上昇しており、各社は商品の値上げを進めています。値上げは、自社の業績改善につながる一方、顧客離れを招いて業績悪化につながるケースもあるため、各社が慎重に判断をしながら、物価高対策・価格転嫁に取り組んでいます。

一方で、こうした課題に対する取り組みから、業界全体の問題を解決するだけでなく、今後のさらなる市場成長や需要拡大につながっていく見込みもあります。

なお百貨店・専門店・流通・小売業界では、大きな動向として、次のような動きが見られます。

働き方改革の積極的な推進

百貨店・専門店・流通・小売業界では、働き方改革が積極的に行われています。例えば女性従業員の比率が高い百貨店では、産休・育休などの福利厚生を整え、性別問わず長く働ける体制を構築するなど、より幅広い人材が活躍しやすい仕組みによって人手を確保する動きも見られます。

また、業界全体で労働環境の改善に向けて、営業時間・日数を見直す動きも拡大しており、24時間営業の廃止や定休日の増加などの対策も実施されています。そのほかにも、セルフレジや無人店舗など、IT活用による店舗運営の省力化も推進されています。今後もこうした省力化・効率化により、働き手を確保すると同時に、各人材の負担軽減やコスト削減が図られていく見込みです。

最先端技術やオンラインサービスの活用増加

顧客ニーズの高い商品を分析して把握し、個々の趣味嗜好(しこう)に合った最適なレコメンドしていくなど、近年ではビッグデータやAIなどのITを活用し、国内需要の拡大を目指す動きが見られます。例えば、スマートフォンアプリやキャッシュレス決済などとの連携により、支払いの利便性を高めると同時に、購入データの収集・分析にもつなげるシステムを構築しています。また、ECサイトが拡大する中で、オンラインでの購入時に実店舗で使えるクーポンを発行するなど、ECサイトと実店舗が連動するような集客施策も推進されています。

海外需要による市場拡大

百貨店から専門店まで、幅広い業態で訪日外国人による購入のニーズが高まっており、インバウンド効果による売り上げアップが期待されています。長期滞在になれば、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなど、日常的な買い物で立ち寄る小売店の利用頻度も増えることが期待されます。こうした訪日外国人による購買促進に向けて、今後もインバウンドに対応した集客・販売体制が求められていく見込みです。

また、カジュアル系のアパレル店などでは、海外への店舗展開により、収益を増やしている例も見られます。さらに各業態のオンラインショップにおいても、国外向けの販売を行う越境ECサイトの市場が拡大しており、海外需要の獲得を図る動きも活発になっていくことが予想されます。

まとめ

暮らしを支える生活必需品から、ファッション品や趣味のグッズまで、幅広い商品提供を手がけている百貨店・専門店・流通・小売業界。消費者にとって、必要な商品を入手するために欠かせないビジネスですので、たくさんの人の日常に貢献できる仕事と言えるでしょう。また、少子高齢化に伴うさまざまな課題がありますが、さらなる利益・需要拡大を目指す積極的な取り組みも行っています。

百貨店・専門店・流通・小売業界に関するインターンシップやオープン・カンパニーに興味がある方は、下記ページもぜひチェックしてみてください。

吉田賢哉さんプロフィール写真

監修

吉田賢哉(よしだ・けんや)さん

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。