コンサルティング業界とは、企業や官公庁などが抱える課題の解決を支援する業界です。業務改善やIT・DX支援、人事制度の見直しなど扱うテーマは幅広く、近年は課題解決に向けた提案に加えて実行支援まで担うケースも増えています。コンサルティング業界の概要や仕事内容、今後の動向など、業界研究に役立つ情報をまとめました。
コンサルティング業界とは
コンサルティング業界は、企業や官公庁といったクライアントが抱えている、さまざまな経営課題の解決をサポートする業界です。顧客の抱える課題の調査・分析や、課題解決に向けた企画の立案、解決のための伴走支援などを担います。「自社だけではノウハウが足りない」「社内調整が難しい」「第三者の助言が欲しい」といった多様なニーズに応えるため、専門性が求められるところも特徴と言えます。
企業から寄せられる経営課題の例としては、以下のものが挙げられます。
- 経営戦略に関する課題:売り上げアップ、競争力の強化、新規事業の立ち上げ、海外進出など
- 業務改善に関する課題:業務プロセスの効率化、コスト削減など
- IT・DXに関する課題:システムの導入、AI活用など
- 組織・人材に関する課題:人事制度の見直し、社員の定着率向上、次世代リーダーの育成、組織風土の改革など
- 財務・M&Aに関する課題:企業買収・事業売却の検討、企業価値の算定、事業再生、不採算事業の立て直しなど
- リスク管理やサステナビリティに関する課題:サイバーセキュリティ強化、脱炭素・ESG対応など
コンサルティングファームの主な種類
コンサルティング業界の各企業は、専門性に応じて以下の6つのタイプに分けられます。
また、コンサルティング業界では、コンサルティングを行う企業を「コンサルティングファーム(ファーム)」と呼びます。

各タイプの特色や主な企業をまとめました。
総合系コンサルティングファーム
業界を問わず、あらゆる企業の課題をサポートするファームです。経営層の課題だけでなく、組織内の人事改革や現場の業務効率化といった、幅広い課題を一貫して支援します。異なる専門性を有したコンサルタントがチームを組み、長期的に伴走することも多いです。
主な企業としては以下が挙げられます。
- アクセンチュア株式会社
- 合同会社デロイト トーマツ
- PwCコンサルティング合同会社
- KPMGコンサルティング株式会社
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
戦略系コンサルティングファーム
主に企業の経営層が抱える課題を分析し、解決に向けた立案を行うファームです。全社戦略、新規事業の立案やM&A戦略、海外進出などが主な担当領域となります。特に、「マッキンゼー・アンド・カンパニー」「ボストン コンサルティング グループ」「ベイン・アンド・カンパニー」の3社は世界的な戦略系コンサルティングファームとして知られており、「MBB」と称されています。
主な企業としては以下が挙げられます。
- マッキンゼー・アンド・カンパニー
- ボストン コンサルティング グループ
- ベイン・アンド・カンパニー
シンクタンク系コンサルティングファーム
経済・産業・社会課題などの調査および研究を得意とするファームです。民間企業向けの経営コンサルティングに加え、官公庁や自治体の調査研究のサポートや、政策立案支援なども手がけています。銀行や証券会社などの金融機関を母体とすることが多いほか、経済・産業・公共政策など幅広いテーマに携わることができる点が特徴です。
主な企業としては以下が挙げられます。
- 株式会社野村総合研究所
- 株式会社日本総合研究所
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
- 株式会社NTTデータ経営研究所
- 株式会社大和総研
国内独立系コンサルティングファーム
国内資本で独自に展開しているコンサルティングファームです。海外本社を持つ外資系ファームと比べて、日本企業の課題や経営環境に寄り添った支援を強みとしています。経営戦略の立案から業務改善、組織改革まで幅広い課題に対応しており、中堅・中小企業の支援を手がけるファームも少なくありません。
主な企業としては以下が挙げられます。
- 株式会社船井総合研究所
- 株式会社タナベコンサルティンググループ
- 山田コンサルティンググループ株式会社
- 株式会社リブ・コンサルティング
- 株式会社レイヤーズ・コンサルティング
- 株式会社ベイカレント・コンサルティング
IT系コンサルティングファーム
AIを活用した業務効率化やDXの推進、デジタルシステムの導入など、ITに関する課題解決を支援するファームです。IT企業やSIerを母体に持つファームも多く、企業の課題を分析した上で最適なIT戦略を提案します。構想だけでなく実装・運用までかかわるケースも珍しくありません。
主な企業としては以下が挙げられます。
- 日本アイ・ビー・エム株式会社
- SAPジャパン株式会社
- 日本オラクル株式会社
- 株式会社日立コンサルティング
人事系コンサルティングファーム
人事や組織に関する課題解決を支援するファームです。採用制度や社員育成、人事評価制度の見直しなどを通じて、人材の力を最大限に発揮できる組織づくりをサポートします。
主な企業としては以下が挙げられます。
- マーサージャパン株式会社
- 株式会社リンクアンドモチベーション
- 株式会社コーチ・エィ
- 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
- 株式会社グロービス
就活におけるファームの選び方
コンサルティング業界のファームは上記のようにさまざまなタイプがあるほか、営業方法や風土、顧客とのかかわり方なども異なります。
例えば、外資系ファームは日系ファームと比べて、一定の成果を出して昇進できない場合は組織を去る「Up or Out」の文化が根付いていることが多いです。また、案件への配置・配属の傾向についても、「複数の案件を同時に担当する」「1案件にじっくり向き合う」など、ファームごとに傾向が大きく異なります。実際の働き方や担当する案件の決定方法について、各ファームの説明会やインターンシップなどのキャリア形成支援プログラムを通して確認しておくことで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなるでしょう。
コンサルタントの主な役職とキャリアパス
コンサルタントのキャリアはアナリストからスタートし、コンサルタント→マネージャー→ディレクターなどへ昇格していくのが一般的です。最初は情報収集や分析といった実務中心の業務を担い、役職が上がるにつれてプロジェクト全体の管理や顧客との関係構築、案件獲得に向けた営業なども行います。
なお、新卒生は即戦力としてではなく、今後の成長性を加味して採用されることが多いです。継続的に学び続けることができる知的好奇心や、クライアントと向き合うコミュニケーション能力があれば強みになるでしょう。
コンサルタントの各ポジションの特色をまとめました。企業によっては、下記とは異なる呼称が用いられることもあります。(例:マネージャーよりも上の役職をプリンシパルと呼ぶ など)
アナリスト
コンサルタントのキャリアの出発点となる役職です。上位職の指示を受けながら、情報収集やデータ分析、資料作成といった、プロジェクトの土台となるリサーチを担います。
コンサルタント
プロジェクトの中心となり、課題解決を推進する役職です。クライアントへのヒアリングや課題分析を基に解決策を検討し、提案内容をまとめます。プロジェクトによっては若手メンバーへの指示出しや進捗(しんちょく)管理を担うこともあります。
マネージャー
プロジェクト全体を監督し、予算や進行を管理する役職です。部下のマネジメントやクライアントとの折衝なども担います。
ディレクター
企業における、特定の部署の責任者に相当するポジションです。新規案件の獲得に向けた営業やクライアントとの関係構築、組織の人材育成など、組織の経営にかかわる部分に広く携わります。
パートナー
コンサルティングファームの共同経営者に相当するポジションです。新規案件獲得に向けた営業活動や、プロジェクトの最終責任者としての意思決定、顧客との長期的な関係構築など、経営を担う立場でコンサルティングファームを支えます。
コンサルティング業界の仕事内容
コンサルティングの仕事は、「提案フェーズ」と「コンサルティングフェーズ」の2つに大きく分けられます。
提案フェーズ
クライアントからの相談を基に、課題解決に向けたアプローチを提案するフェーズです。課題解決に向けた仮説を立てた上で、解決に寄与できるチームの構成や、契約内容などを決め、契約を行います。提案フェーズは企業の経営層とのやりとりが中心となるため、コンサルタントの中でもマネージャー以上の管理職が主導することが多いです。
コンサルティングフェーズ
課題解決に向けて、実際にサポートを行うフェーズです。ヒアリングや調査を通してクライアント企業の課題を分析し、解決に向けた施策をサポートします。費用対効果、定着化まで考えた上でサポートしていくことが求められます。
コンサルティング業界の現状と今後
昨今はITをはじめとする技術革新が早く、社内のノウハウだけで最適な業務を設計・構築することが難しくなってきています。業界を問わず慢性的な人手不足に陥っていることもあり、「外部の専門家の力を借りて効率的に組織の課題を解決したい」というニーズも高めです。このような情勢を受けてコンサルティング市場も拡大傾向にあり、各社の積極採用が続いています。「課題を定義する力」をはじめとして、ビジネスにおいて欠かせない能力が幅広く身につくことから、就活市場においても引き続き注目を集めやすい業界といえるでしょう。
今後も需要が見込める業界ですが、課題としては以下が挙げられます。
高い専門性が求められる
AIの台頭により、データ分析や資料作成といった業務については代替しやすくなっています。加えて、コンサルティング業界の成熟化に伴い、競合企業との差別化が難しくなっているのが現状です。コンサルタントにはこれまで以上の専門性と、付加価値のある提案力が求められています。
まとめ
コンサルティング業界の特徴やキャリアパスなどについてご紹介しました。コンサルティング業界は、幅広い業界や企業の課題解決に携われる点が魅力です。一方で、ファームによって担当領域は大きく異なります。業界研究やインターンシップなどのキャリア形成支援プログラムへの参加を通じて理解を深め、自分に合ったキャリアを考えてみましょう。
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東京工業大学(現:東京科学大学)大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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