「ソフトウェア」とは、コンピュータ上でさまざまな処理を行うプログラムのこと。パソコンにインストールして使用する文字入力ソフトや図表作成ソフト、法人向けの経営管理ソフトなどのほか、家電製品や自動車といったハードウェアとソフトウェアが一体となった製品の開発など、ユーザーのニーズに合った機能や役割を持つさまざまなソフトウェアを開発しているのがソフトウェア業界だ。
ソフトウェアには、パソコンやスマートフォンなどを動かす基本のソフトである「OS(Operating Systemの略。オペレーティングシステム)」と、特定の作業を行うために使用される「アプリケーションソフト」がある。
OSとアプリケーションソフトの関係は密接で、基本となるOSごとにアプリケーションソフトは開発される。個人用には文字入力や図表作成のオフィスソフトやゲームソフト、セキュリティソフトなどのアプリケーションソフトがある。また、法人向けには、オフィスソフトやセキュリティソフトに加え、経営管理ソフト、勤怠管理ソフト、在庫管理ソフトなどがある。顧客のニーズの多様化・高度化を受けて、次々と新しいアプリケーションソフトが開発されている。
ソフトウェアの開発には顧客のニーズに応じてイチからソフトを開発する「受託開発」と、ユーザーのニーズなどを捉えて自社でパッケージ品を開発して販売する「パッケージ開発」の2つがある。
経済産業省の「平成30年特定サービス産業実態調査」によると、ソフトウェア業の事業所数は2万1953事業所(前年比2.9%減)、従事する人は70万7600人(前年比0.9%増)、年間売上高は14兆8401億円(前年比5.2%増)。今後はAIやIoT(後述)、ビッグデータ、セキュリティ対策などの分野で需要増加が続くとみられる。
ソフトウェアの導入を通じ、企業が自身のビジネスの進め方を変革していくような取り組みが、今後増えていきそうだ。
例えば、顧客情報を一元管理し分析するCRM(Customer Relationship Managementの略。顧客との関係を構築・管理するシステム・戦略のこと)に関するソフトウェアでは、
AIやビッグデータに関連した技術の発達よって、今までよりも膨大なデータ(検索やアクセス履歴、購入履歴など)を解析することで、顧客ごとに適切な情報提供や営業提案が可能になってきている。また、ソフトウェアにより、従来の企業のマーケティングや営業を効率化するだけではなく、今までは行ってこなかったような打ち手を実現することが可能なシーンも増えてきている。
IoTへの対応など、企業のIT投資は積極的で、ソフトウェア開発のニーズは高い。また、クラウド(後述)を活用してソフトウェアを取引先に提供するサービスへの転換も進んでいる。
こうした中、情報の適切な利用は今まで以上に厳正な管理が求められる。個人情報の流出は、企業の信用を大きく失墜させることになり、企業の存続にもかかわるような影響を及ぼしかねない。顧客の個人情報管理のための安全性の強化や、サイバー攻撃への備えなどセキュリティ対策は、各企業にとってますます重要になり、費やす予算は増加傾向にある。セキュリティソフト市場は今後さらに成長が予想されている。
個人向けソフトウェアの提供では、モバイル端末、特にスマートフォンを意識していくことがますます重要になっていく。総務省の「平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、スマートフォンの利用率は87.0%となっている。スマートフォン用のアプリケーションソフトやゲームソフトが今後個人向けソフトウェア開発分野をけん引するだろう。
Internet of Thingsの略。「モノのインターネット化」とも呼ばれ、これまでインターネットと縁遠いと考えられていたモノに通信機能を持たせ、遠くからでも位置確認や操作、情報のやりとりができるようにする技術のことだ。最近では、高齢化社会のニーズに対応するために、腕時計型の端末で高齢者の健康状態を管理することで、使用者に何か異変があった場合は、警備会社に連絡がいくようにシステムを組む、といった事例もある。
インターネットを経由してソフトウェアをダウンロードし利用するケースが増えている。このようなソフトウェアの提供方法の変更を「クラウド化」と呼ぶ。クラウド化されると、利用者は常に最新版のソフトウェアの利用が可能になる、異なる端末から利用してもデータを共通化できるなどといったメリットがあり、市場規模は年々拡大している。
Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)の略。企業に蓄積されたさまざまな情報を収集し、整理することで、経営の意思決定に活用する手法をビジネスインテリジェンスという。組織のあちこちに散らばっているデータを集約・分析してわかりやすく表示し、経営管理や売り上げのシミュレーションなどに役立てるBIツールとしてのソフト開発が盛んだ。
Marketing Automation(マーケティングオートメーション)の略。これまで人が行ってきたマーケティング活動をシステムで自動化することで、効率化を図るツールだ。購入客や見込み客への新サービスの案内の自動送信、メールを開く、リンクをクリックするなど顧客ごとに異なるレスポンスを情報として管理・分類し業務を最適化することで、一人ひとりに合ったマーケティング、One to Oneマーケティングの実現が可能になる。
エアコンが人のいる場所に合わせて冷風を送ったり、冷蔵庫がドアの開閉に合わせて温度調整したりする、洗濯機が洗濯物の量に合わせてすすぎの回数や乾燥時間まで自動で設定するなど、多くの家電製品にソフトウェアが組み込まれている。
アプリケーションソフトをダウンロードすればいつでもどこでも遊べる手軽さから、スマートフォン向けのソフトが急成長している。
IT関連業界には、企業の情報システムを構築・運用する情報処理系の企業があり、その業務の一部として、ソフトウェア開発が委託されるケースが多い。
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【監修】吉田賢哉(よしだ・けんや)さん
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 上席主任研究員/シニアマネジャー
東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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※記事制作時の業界状況を基にしています
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暮らしのあらゆる場面で、ITサービスが活用されている。例えば、買い物をした時にクレジットカードで決済したものが翌月銀行口座から引き落とされるのも、電車の運行案内が駅で表示されるのも、情報システムが構築・運用されているからなのである。
※1 2024年3月6日時点のリクナビ2024の掲載情報に基づいた各企業直近集計データを元に算出