就活の自己分析にとても役立つと言われているモチベーショングラフ。「よく聞くけど、どうやって書けばいいの?」「何のために書くの?」と疑問を持っている人も多いでしょう。そこで、リクルートが運営する「リクナビ就職エージェント」で、新卒学生の就活支援を行っているキャリアアドバイザーが、モチベーショングラフを作成する目的や簡単にできる書き方を紹介。さらに実際の就活のプロセスで、どのように役立つのかも解説します。
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モチベーショングラフは、就活などに活用されている、自己分析の方法の一つです。
自己分析とは、自分の価値観や特徴を理解するために、これまでの経験や考え方を振り返って整理すること。「就活の軸」を探したり、応募企業に自分の価値観や経験を伝えたりするためには、欠かせないプロセスです。
モチベーショングラフとは、自分の人生を振り返り、「いつ、どんなときにやりがいを感じたか」「充実していたか」あるいは、「どんなときにやる気をなくしたのか」「気持ちが落ち込んだか」というモチベーションの変化に焦点を当てて、過去の経験を整理していく手法です。
一般的には、下記のように横軸に時間の流れ、縦軸にモチベーションのプラス・マイナスを設定し、モチベーションの波をグラフのように書き込んで作成していきます。
モチベーショングラフを書くと、自分がどんなときにやりがい楽しさを感じて、モチベーションが上がるのか、逆にどんなことがあると落ち込んでモチベーションが下がるのかを、わかりやすく可視化することができます。作成してみると、これまで記憶の奥にしまい込んでいた出来事を思い出して、「このことが自分にとって重要だったのか」と意外に感じるケースもあるでしょう。
また、モチベーショングラフはただ書くだけで終わりにするのでなく、可視化した心のアップダウンそれぞれについて、「なぜ?」「どうして?」と深掘りすることが大切です。
それにより、大切にしている価値観やこだわり、物事に向き合うときのスタンスなど、自分自身の特徴にあらためて気づくことができます。モチベーショングラフで自己理解を深めておくと、就活の中で自分と企業を接続するときに「より自分に合った仕事は?」「より自分が活躍できる環境は?」などの判断がしやすくなるでしょう。
なお、「人生を振り返りながらグラフを書くのは難しそう」と感じる人は、まず過去の出来事や経験を網羅的に書き出す「自分史」を作成して、次の段階としてモチベーショングラフに着手することをオススメします。
自分史について詳しく知りたい人はこちら↓
【例文あり】伝わる志望動機の書き方とは?プロの添削付きで解説(新卒向け)
モチベーショングラフに特に決まった書き方はありませんが、「どう書き出せばいいかわからない」という人のために、記入例、掘り下げ方のヒントを紹介します。これを参考に、自分で書きやすくアレンジしてみてください。
左端に縦線を1本引いて、そこに「モチベーションの上下」を、さらに中央に横線を1本引いて「小学校〜現在(大学・短大・専門学校)の時間の流れ」をそれぞれ設定します。小学校入学以前の出来事からグラフ化したい人は、横軸を「幼少期」から始めても良いでしょう。
Excelなどの表計算ソフトで作成しておくと、後から必要な書き込みを付け足していったりすることもできて便利です。
これまでの出来事や経験を振り返りながら、横軸の時間の流れに沿って、モチベーションのアップダウンを曲線で描いてみましょう。書くときは難しく考えすぎず、直感的に記入していった方が、的確なアウトプットになるでしょう。次に、それらのモチベーションが上下したときにどのような出来事があったかを、グラフの中に簡単に記入しましょう。
グラフが書けたら、モチベーションが上がったときの出来事(何があったか)と状況(どのような背景や環境があったか)を、少し詳しく箇条書きにしてみましょう。また、モチベーションが下がったときも同様に書き出してみましょう。
【満足度・モチベーションが高いとき】(出来事・状況)
① | ずっと保育園で同じ友達同士で育ってきて、小学校で初めて会う子が多かった |
③ | 修学旅行のリーダーに無理矢選出されて嫌だったが、やってみたらすごく楽しめた |
⑤ | 学校を休みがちだったころ、友達がわざわざプリントやお知らせを家まで届けてくれた |
⑦ | 帰宅部になったのを機に、好きだったゲームの攻略に没頭。SNSでさまざまな情報を発信した |
⑧ | 浪人時代は周りから一切干渉されず、勉強もアルバイトも自分で決めて進められた |
⑩ | コロナ禍でリモート授業の中、ゼミの議事録の取りまとめや打ち合わせを密にして、いいグループ発表ができた |
【満足度・モチベーションが低いとき】(出来事・状況)
② | 後から入学した弟妹の成績が良くていつも褒められていたが、自分は褒めてもらえなかった |
④ | 先生と相性が悪い、押しつけられる行事が嫌などの理由で、学校に行くのが嫌だった |
⑥ | 友達に誘われてバスケ部に入ったが、半年で退部してしまった |
⑨ | 志望していた大学のひとつに入学したが、授業内容や雰囲気も想像とギャップがあった |
モチベーションが高かったとき、低かったときについて「なぜ高く(低く)なったのか?」「そのとき自分は何を感じていたのか?」を考えて、書き出してみましょう。モチベーショングラフにどのような経験や思いを記入するかは、各自の自由です。その出来事が自分にとって重要なことであれば、どのような観点でも構いません(下記参照)。出来事ごとに理由が異なっていてもOKです。
また、数ある経験の中から「なぜこれを選んだのかな?」と意外に感じるものは、日常的には意識していないものの、自身にはとても大切な出来事だった可能性もあります。「自分はなぜこれを選んだのか?」という観点からも深掘りしてみましょう。
【なぜモチベーションが高かった?】
① | どんな子と出会えて、どんな遊びができるか考えてワクワクしていた |
③ | みんなが楽しそうにしているのを見て、大変だけど頑張れると思った |
⑤ | 強い刺激を受けて「自分も周りの人のことを考えて行動しよう」と感じた原体験だったから |
⑦ | 自分の発信で、同じ楽しみを持つ人たちとつながれて、交流の場を提供できたことに充実感があった |
⑧ | プレッシャーもあったが、何でも自分の責任で決めて実行できることがうれしかった |
⑩ | リモートでもコミュニケーションを工夫することで、充実したグループワークができたのがうれしかった |
【なぜモチベーションが低かった?】
② | 年上だからという理由で厳しくされるのは理不尽だったし、きょうだいでも人と比べられるのが嫌だった |
④ | 中学生だから何をしても認めてもらえない閉塞感があった。高校受験に打ち込むことで乗り越えようとした |
⑥ | 先輩との上下関係が厳しすぎて競技が楽しめなかった |
⑨ | 主に雰囲気が自分と合わないと感じたが「せっかく入った大学だし」と気持ちを切り替えた |
基本的にモチベーショングラフは、誰かに見せるために書くものではありません。ですから、「エントリーシート(ES)に使えるエピソードを探そう」「自己PRにつなげよう」といった就活視点ではなく、純粋に自分への理解を深めるための作業として取り組みましょう。
また、記入する出来事は「1番になった」「賞を取って評価された」など、必ずしも結果を伴うものである必要はありません。見た目は華々しいイベントであっても、自分にとって大切なものであるかどうかは、また別のことだからです。
「ゲームの攻略法を考えることに熱中した」「友達の小さな心遣いがうれしかった」など、日常のささいな出来事の中にこそ、自身のモチベーションに大きく影響した、象徴的な何かが見つかるかもしれません。モチベーショングラフはあくまでも、自分自身の心の動きを中心に据えて作成していくことがポイントです。
就活の中で、モチベーショングラフを活用するためのヒントをご紹介します。
就活で「企業選びの軸」を定めるとき、「業界」や「企業」の研究から検討していくことも大切ですが、もうひとつ、「どんなときにやりがいを感じるのか」「どんな人と働きたいのか」「どんなことで評価されたいのか」といった自分軸も重要な視点になります。
例えば同じ「評価」というポイントでも、結果を出して周囲に認められることでモチベーションが上がる人と、裁量権を持たせてもらい、コツコツ取り組めることに喜びを感じるタイプの人では、企業や仕事内容に求めるものが変わってくるでしょう。
モチベーショングラフを書くことで、「自分はこういう環境なら頑張れる」「こういう状況ではやる気をなくしやすい」などの自己認識を掘り下げておくと、業界・職種とはまた違う軸が生まれ、もっと広い視野で企業を選ぶことができるようになります。説明会やインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムに行くときも、そうした視点を意識しながら参加することができるでしょう。
複数企業のESの準備を並行して進めていると、「その企業ならではの志望動機がない」「どこでも同じような内容になってしまう」と頭を悩ませるケースは少なくありません。そのような場合は、モチベーショングラフを作成するときに深掘りしたエピソードを活用して、志望動機を考えてみましょう。
まず「自分はこんな環境なら頑張れた」「こんな人と一緒のときは充実していた」という経験と、応募企業のビジョンや仕事の特徴との間に接点を探してみましょう。それを見つけることで、「私は○○という環境の中でとてもモチベーション高く頑張れたことがありました(エピソード)。それは貴社の○○という部分と通じており…」と自分と企業を接続することができます。具体的なエピソードを交えた、その企業ならではの志望動機をまとめることができるでしょう。
企業研究が深まるにつれ、企業の規模や仕事内容、給与、評価制度、福利厚生など比較検討する条件が増えていき、自分の中でも優先順位が付けにくくなることがよくあります。さらに就活が進んで、複数の企業に内定したときに、どこに行くべきかの決断がつかずに悩んでしまう人も少なくありません。
そんなときは、あらためてモチベーショングラフを見返し、過去の楽しかった出来事や、やりがいを感じた経験を振り返ってみることをオススメします。「自分にはどんな環境が合っているのか」「頑張れるのはどんなときか」「仕事で何を得たいのか」を再確認し、企業選びの判断基準のひとつに加えることで、自分にとってより良い選択ができることでしょう。
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