ドラッグストア・調剤薬局業界は、消費者に医薬品や化粧品を届ける小売りの機能と、医師の処方箋に基づいて薬を調剤する医療サービスの機能を併せ持つ業界です。ドラッグストア・調剤薬局業界の概要やビジネスモデル、仕事内容、業界動向など、就活準備において知っておきたいトピックスを解説します。
この記事でわかること
・ドラッグストア・調剤薬局業界は、医薬品の販売や調剤に加え、食品・日用品の販売や在宅医療への対応などを通して、地域の暮らしと健康を支えています。
・業界には販売職、登録販売者、薬剤師、ビューティーアドバイザー、総合職といったさまざまな職種があります。
・市場は拡大傾向にある一方で、異業種との競争や薬剤師不足、デジタル化への対応などが課題です。
目次
ドラッグストア・調剤薬局業界とは?
ドラッグストア・調剤薬局業界は、消費者に医薬品や化粧品を届ける小売りの機能と、医師の処方箋に基づいて薬を調剤する医療サービスの機能を併せ持つ業界です。
例えばドラッグストアは、「OTC医薬品(処方箋なしで購入できる医薬品)」を主に扱いますが、近年は化粧品や食品、日用品といった幅広い商品を扱う店舗も増えています。ビューティーアドバイザーや薬剤師が常駐している店舗も多く、地域住民のセルフメディケーションを支えているところが特徴です。幅広い日用品がそろう利便性から、スーパーマーケットのように活用されることもあります。
一方、調剤薬局は、処方箋が必要となる「医療用医薬品」を主に提供しています。病院や診療所の近くにある門前薬局、複数の医療機関の処方箋を受け付ける面対応薬局のほか、ドラッグストアに調剤室を併設する店舗も増えています。
ドラッグストア・調剤薬局業界の主な収益源
ドラッグストア・調剤薬局業界の主な収益源は、食品やOTC医薬品などの売り上げと、処方箋が必要な医療用医薬品の調剤報酬・薬価差益などです。それぞれの特色をまとめました。
食品やOTC医薬品の売り上げ
ドラッグストアの販売額において大きな割合を占めるのは、食品、OTC医薬品、調剤医薬品、化粧品などです。従来は「ナショナルブランド商品を格安で売ることで集客につなげ、利益率の高いOTC医薬品の合わせ買いで収益を得る」というビジネスモデルが主流でしたが、2009年の薬事法改正によってコンビニなどの競合店舗でもOTC医薬品を扱えるようになり、事業の差別化が課題となりました。
そこで、ドラッグストアは生鮮食品なども含めた幅広い商品を店頭にそろえることで、競合との差別化を図っています。特に食品はドラッグストアの成長を支える重要な商品の一つになっており、食品スーパーに近い品ぞろえや価格訴求で集客力を高める企業も増えています。
調剤報酬・薬価差益
調剤薬局の収益は、保険調剤に関する調剤報酬と薬価差益が中心です。
■調剤報酬:薬局の機能や薬剤師の対物業務に対して、患者と保険者から支払われる報酬
■薬価差益:医薬品の仕入れにかかった卸売価格と、国によって定められている公定販売価格「薬価」の差額によって得られる利益
ただし、近年は競争の激化や薬価の見直しなどにより、薬を調剤・販売するだけでは利益を伸ばしにくくなっているのが現状です。そのため、調剤薬局では地域内で在庫を共有・配送する仕組みを整え、必要な医薬品をそろえやすくすることで売り損じを防ぐなど、収益性を高める取り組みにも注力しています。
ドラッグストア・調剤薬局業界の職種と仕事内容
ドラッグストア・調剤薬局業界には、店頭での接客や処方箋に基づく調剤をはじめ、地域の暮らしや健康を支える幅広い仕事があります。ドラッグストア・調剤薬局業界の主な職種と仕事内容をまとめました。
販売職
販売職は、店頭での接客や品出し、店内清掃などを通して、店舗の円滑な運営を支える職種です。季節に合わせた売り場づくりや、在庫管理、販促企画などにかかわる場合もあります。
登録販売者
ドラッグストアなどで市販薬の販売にかかわる専門職です。薬剤師でなければ販売できない第1類医薬品を除いた、第2類・第3類医薬品の販売を担います。単に医薬品を販売するだけでなく、年齢や持病、服用中の薬などを踏まえて、適切な薬選びをサポートするのも大切な役目の一つです。薬剤師ほど扱える医薬品の範囲は広くありませんが、地域のセルフメディケーションを支える重要な役割を担っています。
薬剤師
調剤併設店や調剤薬局で、処方箋に基づく薬の調剤や、服薬指導、薬歴の管理などを行う職種です。近年は患者の自宅や施設を訪問して服薬指導を行うなど、在宅医療の対応も増えています。また電子処方箋の利用が広がっているため、デジタルツールを活用した対応も求められるようになっています。
ビューティーアドバイザー
ビューティーアドバイザーは、化粧品売り場などでメイクやスキンケアのアドバイスを行う職種です。流行の商品を案内するだけでなく、予算や肌質の悩み、なりたいイメージなどをヒアリングし、一人ひとりに合った商品を提案します。店舗によっては、実際に商品の使い方を説明したり、タッチアップ(お試しメイク)を行ったりすることもあります。
総合職
店舗運営や本部業務などを通して、ドラッグストアの成長を支える職種です。入社後は店舗で接客や売り場づくり、スタッフ管理などを経験し、その後、店長やエリアマネージャー、本部職へとキャリアを広げていくケースがあります。
ドラッグストア・調剤薬局業界の動向と課題
医薬品や健康関連商品へのニーズが高まる中、ドラッグストア・調剤薬局は、地域の暮らしや健康を支える生活インフラとして定着しつつあります。一方で、スーパーやコンビニ、ホームセンターなどとの競争は激しくなっています。こうした中で各社は、食品販売の強化や調剤薬局の併設、プライベートブランド商品の展開、クーポンの発行などを通じて、来店頻度や収益性を高める取り組みを進めています。
また、大手企業を中心に、M&Aによって店舗網を広げる動きも目立ちます。調剤薬局でも、後継者不足や人材確保、調剤報酬改定への対応などを背景に、チェーン化や業界再編が進むことが予想されるでしょう。
業界の今後の課題や、就活生が知っておきたいトピックスとしては、以下が挙げられます。
薬剤師の地域偏在
薬剤師は全国的に増加傾向にあるものの、地域によっては人手を確保しにくい「地域偏在」が課題となっています。例えば厚生労働省が発表している「薬剤師偏在指標(2024〜2026年度データ)」によると、東京都や神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県、広島県などの都心部では薬剤師が飽和している一方、そのほかの都道府県では薬剤師の確保がやや難しいという結果が出ています。調剤併設型のドラッグストアや在宅医療に対応する薬局が増える中で、地域偏在をどう解消するかが、業界全体の課題の一つといえるでしょう。
医療DXへの対応
厚生労働省は、電子処方箋やオンライン資格確認など、医療分野のデジタル化を進めています。電子処方箋の普及により、重複投薬の防止や服薬管理の効率化、医療機関間の情報共有の円滑化につながることが期待されています。
また、オンライン服薬指導は、通院や来局が難しい人にとって利便性を高める仕組みです。一方で、こうしたサービスを円滑に運用するには、システム導入やスタッフ教育、個人情報管理などへの対応が欠かせません。医療従事者の不足も課題となる中で、業務負担を抑えながら医療DXを進めていくことが求められています。
セルフメディケーション
セルフメディケーションとは、自分の健康に関心を持ち、軽い不調は市販薬の活用や生活習慣の見直しで対応する考え方です。スイッチOTC(医師から処方される医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販薬に転用したもの)も増えています。
かかりつけ薬剤師
かかりつけ薬剤師・薬局は、患者の薬の使用状況を把握し、重複投薬や飲み合わせのリスクを減らす役割を担います。少子高齢化に伴って在宅医療のニーズも高まっており、調剤薬局だけでなく、調剤併設ドラッグストアにも地域医療を支える役割が期待されています。
ドラッグストア・調剤薬局業界のよくあるQ&A
最後に、就活生から寄せられやすいQ&Aをまとめました。
Q. 今後、ドラッグストア・調剤薬局業界はどう変わっていきますか?
A. 大手企業によるM&Aや業務提携が進み、企業規模を拡大しながら競争力を高める動きが続くと考えられます。例えば、株式会社ツルハホールディングスとウエルシアホールディングス株式会社の経営統合や、株式会社マツキヨココカラ&カンパニーによる地域企業の子会社化など、再編の動きが顕著です。また、生鮮食品の販売など、ドラッグストアの役割そのものを広げる取り組みも進んでいます。
Q. 文系ですが、業界で活躍できますか?
A. ドラッグストアは小売業としての側面も強く、売り場づくりや商品企画、マーケティングなど、文系出身者が力を発揮できる領域も多い業界です。薬の専門家だけでなく、顧客のニーズを捉え、店舗やサービスをより良くしていく人材も求められています。
まとめ
ドラッグストア・調剤薬局業界の特徴や主な仕事内容、業界の動向や課題などについてご紹介しました。ドラッグストア・調剤薬局は健康を支える身近な存在になっている一方で、異業種との競争や医療DXへの対応など、業界を取り巻く環境も変化しています。ドラッグストア・調剤薬局業界に関するインターンシップやオープン・カンパニーに興味がある方は、下記ページもぜひチェックしてみてください。
東京工業大学(現:東京科学大学)大学院社会理工学研究科修士課程修了。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長を幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな情報の多角的・横断的な分析を実施。
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