最近、とても感激したことがある。
はるの生活介護とグループホームを利用されているTさんが約7年ぶりに両親と会うことができたのだ。
Tさんは重度の知的障害と自閉症がある青年だが、聴覚過敏が強く、なかなか集団で過ごすことが難しい。
特別支援学校時代も、昼すぎにお母さんが何とか学校に連れてきても教室には入ることができず運動場や体育館で一人で過ごすことが多かった。
Tさんには小学生ぐらいから関わらせてもらっているが、当時は放課後等デイサービスなどの児童系のサービスもなく、はるを立ち上げたときから作業所で使っていた古い一軒家で、放課後や土日に独自のサービスで自分やスタッフが一緒に過ごしていた。
当時はTさんを支えるご両親、特にお母さんは、使えるサービスがないこともあり、かなり疲弊されていた。
忘れならない記憶がある。
Tさんの支援会議が開催された時に、日頃の大変さを涙ながらに話されているお母さんの横に座っていたTさんの妹さんが、「仕方ないじゃない。これが我が家の運命だから。」と泣き出だされたのだ。
Tさんや家族を支えることができる仕組みがほとんどない中で、参加していた私たちはただ俯くしかなかった。Tさんは特別支援学校を卒業すると同時にはるの生活介護を利用されるようになった。
しかし、聴覚過敏が強いことで他の利用者の方たちの声が気になり、生活介護のなかでは過ごすことはできなくなってしまった。
それから生活介護では個別支援をずっと続けているが、当時もご家族の大変さは相当なもので悩みは続いていた。
Tさんと同じように、私たちが関わってきた方たちのなかで、ご本人の状態がきびしくなって、ご本人もご家族もとても大変なところがあった。
何とかしなければと重度の方たちを受け入れるグループホームを作り、Tさんもそのグループホームに入居された。
Tさん自身は聴覚過敏に配慮した個室での生活で落ち着いて生活されるようになってほっとしたが、ご両親はそれからTさんに会うことをためらわれていた。
ご両親が会うとTさんがまた自宅に帰りたくなるかもしれないという気持ちもあったと思うが、お母さんが「(Tさんと会うと)泣いてしまうかもしれない」「(Tさんとは)一生会わないつもり」などと言われていたことを聞くと、ご両親もたくさんの葛藤があったのだと思う。
それからTさんとご両親が会うことなく入居から7年ほどが過ぎた。
そして最近、ご両親が「そろそろTに会おうと思う」と言われるようになった。
その話を聞いて自分もすごくうれしかった。
いきなりTさんとご両親で過ごすのではなく、まずは生活介護のスタッフが毎日連れて行っているドライブの行き先でご両親を会ってもらうことなった。
当日、ドライブのスケジュールにご両親の写真を入れていたが、スケジュールを見たTさんはしばらくジッとご両親の写真を見て動かれなかった。
そして、いよいよ再会の時。
ドライブ先で車から降りて過ごしているTさんのもとにお母さんが近づいてタッチをする。
お母さんが手を出すとTさんも自然に手が出て、手と手が合わさった。
Tさんは不思議そうな顔をしていて、お母さんはとてもいい笑顔だった。
そして、お父さんともタッチ。
この様子を見てとても感激した。
本当に良かったと思った。
Tさんは、ご両親を会った3日後ぐらいにホームでシクシク泣かれていた。
Tさんはどんな気持ちで泣かれていたのだろう。
それからもう一度、スタッフと出かけているときにご両親が会いに来られて以降、Tさんが泣かれる様子はない。
親子の関係は私たち支援者では決して代わることはできない。
親子だからこそ、家族だからこそ、何にも代えられない大切なものがあると思う。
Tさんとご両親には(できれば妹さんにも)、是非これから家族の大切な時間を一緒に過ごしてほしい。
社会福祉法人はる
理事長 福島龍三郎
「りゅうさぶろぐ」より
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