障害のある人たちの支援をしていると、何かと悩むことがある
例えば、
・本人はこうしたいと言うが、支援する側から見ると違う選択のほうがよさそうだが…
・本人や家族が困っているが、解決する手段が見当たらない…
・本人のためにもっとやってあげたいが、支援者の人数も時間も限られている…
・家族や他機関と支援の方針が共有できない…
・どこまで自分たちがやるべきか分からない…
などなど
考えてみると、支援はつくづく悩みが尽きない仕事だと思う
でも、人はそもそも、生き物としても、社会的な存在としても、一人ひとりがとても複雑なものなので、支援が人と人が支え支えられる営みだとすると、単純明快な解決方法がないのも当たり前かもしれない
それでも、できるだけ解決する方法を見つけていくために、社会や組織として法律やルールを作ったりするが、それだけでみんなが同じ気持ちや感情や行動になるほど人は単純ではない
また、人は複雑系の生き物だからこそ、様々な進化ができたり、社会化ができたり、助け合いの気持ちや仕組みができたり、そのことで、助け合うことのうれしさやよろこびを感じることができるようにも思う
このことは、福祉の支援に限らず、家族でも友達でも職場でも同じで、お互いがそもそも複雑な存在だから、悩みながら、うれしさやよろこびを感じながら、それでも一緒にいるのだろう
しかし、人は解決しないことやどっちつかずの状態にあることに対して不安を感じやすく、そのようなことを感じやすい福祉の支援者はどうしてもモヤモヤしたものを抱えることも多い
この解決しないことや状態と付き合っていくことについて、今のところ福祉の支援者は学んだり、教えてもらうことは少ない
人を支えている支援者は、支援において解決しないことやどっちつかずの状態にあるときに、人はそもそもそのようなものだと、どこかで受け止めて前向きに考えていくための学びや機会が必要だ
私たちは普段、障害特性に基づく支援やソーシャルワークに関わる支援を学んで、経験を積み、できるだけ本人の生活が良くなることに取り組んでいる
そのことは支援の仕事に関わっている私たちにとっての基本に大切なこと
その上で、解決しないことにどう付き合っていくかということを学び、経験を積んでいくことも大切なことかもしれない
「ライオンを飼いたい」
いきなり何のことかと思われるかもしれないが、これはいろんな人たちに読んでほしい本の題名
副題には「障害者支援の手前にあるもの」と書かれている
この本は強度行動障害支援者養成研修を一緒に作ってきた北海道の大友愛美さんが手がけた本
この本のなかで、支援において解決しないことにどう付き合っていくかということについて、「結論が出ないことを恐れないという専門性」として取り上げられている
何かをしてあげたり、何かを解決したり、それだけでは収まらない支援という仕事の側面を、もう一つの専門性として位置づけられていることはとても大切なことだと思う
「ライオンを飼いたい」には、他にも福祉や支援について本質的に大切だと思うことがたくさん書かれているので、ぜひ福祉や支援に関心がある人には一読をおすすめしたい
本の中を読んで、私はあらためて支援とは何かをということをたくさん振り返ることができた
「結論がでないことを恐れない専門性」について、これからもっと話したり、深めたり、広げていくことができればと思う
社会福祉法人はる
理事長 福島龍三郎
「りゅうさぶろぐ」より
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